機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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年明け仕事前にイデオンを見る、うわぁ…あ…あ…。

ふぅ…さて……。


第21話

大地を震わす地響きが周囲を照らす艶やかな光と共に、建物を破壊していく…、人々は逃げ惑い、老若男女問うこと無く等しく光は飲み込んでいく…。

惑う物の中でも其れ等を記録しようとするものや、何処かへと連絡を入れようとするものすらいた。

安全な場所へと誘導しようと試みる者達もいたが、そう言った取り零しを巨人達が摘み取っていく…。

 

光の先に存在するのは、円盤のようなものに脚が着いた巨大な人工物体。

それに備え付けられた砲身から光が発せられると、その射線上にあるものを薙ぎ払っていく…。

熱線によって様々なものが溶け、可燃物は燃え広がる。

 

昼間のように明るくなった街を見下ろしながら、それは狂ったように前へと進んでいた…。

 

それを遮るように、1機の翼を持った巨人が立ちふさがるとそれを阻止する為に、別の巨人がそれと交戦を開始した。

 

 

……

 

ミネルバが連絡を受けた。

ベルリン市街を闊歩する巨大なMAが出現した旨を報告されたからには、それを迎撃する為に機体を出さなければならない。

既にいくつか報告が上がっており、フリーダムがそれを阻止しようと交戦に入ったらしいものの、それを阻むように1機のウィンダムがフリーダムを押さえていた。

 

そのため、一向にMAの足行が止まることはなく火の海は広がるばかりか、損害はより深く深く街に傷をつけていた。

 

「おいおい、フリーダム様よ。そんなんで、デストロイの足を停められるとでも思っているのかなぁ?」

 

フリーダムのコックピットに、馬鹿にする様に声が響く。オープン回線ではない、フリーダムを狙ったレーザー通信をウィンダムは行っていたのだ。

ウィンダムを駆る、ネオはフリーダムのパイロットであるキラとの面識など皆無。だが、そのパイロットが何であれ余裕の表情を崩さない。

 

「なんで!どうしてこんな事が出来るんだ!!」

 

対してキラは焦っていた。フリーダムは確かに核動力機であり、性能は開発当時としては最高のものであった。

だが、目の前のウィンダムは白兵戦に特化されており、多対1を想定されて造られたフリーダムにとってやりにくい相手であった。

 

どこまでいっても迎撃戦用MSであるフリーダムは、白兵戦は本来不向きである。そこを1世代後に作られたというアドバンテージを生かし、ネオはキラの攻撃のスレスレを回避していく。

その動きはナチュラルのそれよりかは、コーディネイターのそれと近く寧ろ、コーディネイターを圧倒する程に繊細な動きである。

 

フレイと戦闘を行ったことがあるキラですらその動きには違和感を覚えていた。

ナチュラルであるならば、フレイやムウそしてラウのような、まるで未来を見ているかのような、荒唐無稽な動きならあり得るとそうキラは判断していたが、ネオは違った。

 

ネオの動きはフレイ達とは別のベクトルで常軌を逸していた。

キラは自分以上に反射神経が速い人間を知らない。

あのアスランですら、キラの反射神経よりかは少し遅いのだ。だが目の前のそれを見ろ、まるで精密機械のように人間の苦手なマイナスGすら苦にしていない。

 

そう、純粋にキラの上位互換のような性質を持った動きである。問題なのは、それがナチュラルと思われる人間が行っていて、ソイツは喋りながらやっているのだ。本気を出していないとも言える。反撃が少ないことが唯一の救いであろう、キラに致命傷は無い。

 

逆に言えば、キラはネオに傷を負わせられていないのだ。

 

「ハ・ハ・ハ、実に愉快だと思わないかね?自ら操縦する事で、生まれ故郷を壊していると言うことすら知らず、本物の両親がいるかも知れないという事すら知らない、憐れなパイロットがコレを殺っているなど!」

 

更にゲスであった。人の神経を逆撫ですると言う行為すら何とも思っていない。寧ろそれを以てして楽しんでいるのだから、救いようがない。

 

「貴方達はいったい何をしたいんだ!!」

 

「私達はただ駆除しているだけだ、ヒトモドキを失敗作を許容するなど、到底理解出来ない。そんな者達は駆除対象だ。」

 

ヒトモドキ、失敗作、それはきっとコーディネイターを意味することだろう、そこまで言う者はブルーコスモスでもそうはいない。最低でも化け物というくらいだろうか?

コーディネイターを単なる、家電製品のように思っているのかもしれない。

 

「そんな事でっ!!」

 

「ほう…、なかなかにやるな。流石はキラ・ヒビキ成功作か…。」

 

キラ・ヒビキ、その名を聞いた時キラは目の前のパイロットが自分の出生の秘密を知っている事に動揺する。その隙を突くことなく見逃している辺り、キラをおちょくっているのか?それとも…。

 

「貴様には我々の脅威となるという役割がある、ここで落とすわけには行かんのでな!」

 

「こんのぉー!」

 

戦いは一進一退のまま推移していく、ムウはそれを端から見ることしか出来ない。デストロイへの対応に四苦八苦していたのだ。

あからさまに巨大なその機体は、物理的に破壊するには硬すぎた。

 

ビームが当たる寸前に光波がそれを相殺し、決定打を与えられない。何より、ムラサメの周囲には失敗作のエクステンデッド達が立ち塞がっていたのだ。

どれだけオーブ軍のパイロットの練度が高くとも、どれだけムウが努力しようとも、数の波には勝てない。

 

無情にもデストロイは街並みを進む、ベルリンは完全に破壊され尽くし、後に残ったのは巨大なそれが進んだ道である。

 

 

ザフト地上軍の中心であるジブラルタルは、この状況を危急と判断しミネルバへと迎撃するよう通達する。

 

しかし、この時ミネルバに戦力として残っていたのは、インパルスのみであり、その他の機体は軒並み修復作業中であった。

パイロット全員が歯がゆかった、こんな無差別な攻撃を行ってる連合に憎悪を抱き、そして今も死んでいっているであろう市民達を憂う。

 

そんな中、ミネルバから機体が飛び立った。

ミネルバから出撃した3機の飛行物体が連結すると1機のMS、インパルスへと変化する。

それはこの街並みを見て、そして立ちはだかる巨大な機体を見て、パイロットであるシンは叫ぶ。

 

「なんなんだよコレは!!」

 

映像でも見て知っていた、だがそれをいざ目の辺りにした時あまりの事態に、一瞬で冷静になってしまった。

その惨状は確認するまでもなく最悪のものとなっていた。それもコレも全て眼前に屹立する、巨大MAのせいであると簡単に説明がついた。

 

シンは怒りと困惑を織り交ぜながらも、戦場を駆け原因となっている者を倒す為に進んでいく。

そして、ある場面に遭遇した。

ミネルバや連合を相手に大立ち回りし、そして困難を乗り越えていたあのフリーダムが押されている光景を。

 

フリーダムのパイロットであるキラ・ヤマトがどれだけ凄いパイロットであるか、シンにはわからない。だが、フリーダムという機体の戦果は知っている。

だからこそ、その事態が実に異常な事であると直ぐに理解していた。

 

「おや?新手か…流石に分が悪いか?」

 

「はああああ!」

 

シンは機体をフルに動かし、そのウィンダムを目掛けて突貫する。

一瞬それの反応が遅れたのか、不意打ちに反応出来ずウィンダムは僅かに損傷した。

 

「君は!」

 

「今は協力する時でしょ!」

 

シンは眼前に広がる光景が更に拡大する事を恐れ、それを阻止したかった。

それはキラも同じ事で、だからこそ二人の利害は一致した。

 

「まったく…、失敗作が揃いも揃って相手をしたくないものだな。所詮はヒトモドキの癖して…、後退するほうが得策か…?それもそうだな。」

 

一人で何を言っているのか、完結したのか?ネオは言い終えると爆弾を投げ掛けた。

 

「よう、インパルスの少年。アレにはステラが乗っているんだがどうだい?唆るだろう?」

 

「嘘だ!どうしてそんな!」

 

シンはその言葉に混乱した、だがキラにはそんな事は気にも止めない事であった。

 

「いや〜、純粋だねぇ…。疑うって事を覚えなくちゃ?速く助けに行った方が良いかもよ?デストロイ…、自爆しちゃうからさ!」

 

それは真実かそれとも虚言か、デストロイ内部で今尚街を破壊していくのはステラである事は間違いなかった。

 

攻撃を避けながらネオは空へと信号弾を放つと、それまで戦闘を行っていた連合の兵士達は潮が引くように後退していく。

暴れ回る奴隷たちを置いて。

 

この時、ジブリール率いるブルーコスモスには既にエクステンデッド等という消耗品は既に用済みであり、廃棄事業としてコレを行っていたとも見て取れた。

そして、それ故にその虚言は真実であると言っても過言ではない。いや、寧ろジブリール派はもっと嫌なものを継承してしまったと言っても良い。

 

彼等は確かに核融合炉の技術獲得に失敗し、Iフィールドもメガ粒子砲も創り出すことは出来ない。

だが、臨界半透膜技術だけはいとも容易く模倣していた。

コレが何を表しているのかと言えば、レーザー核融合と言うものに関して言えば、それを行える土壌が出来ていた。

 

そして、こういった技術に関してもっとも速く導入出来るものは軍事技術であり、彼等の取得したものは当にそう言ったものであった。

 

Mk-82型核弾頭

 

核分裂反応を使用せず、純粋にレーザーによる高熱によって重水素での核融合反応を行う。完全なる純粋な核融合弾頭。

 

勿論完全な技術の獲得に至っている訳ではないため、その威力は概算上50メガトン程度に収まっていた。

とは言え、その威力が有ればベルリンをクレーターに変える等造作もないとも言えた。

 

月面クレーター内部に残る遺跡の中で得たその答えは、今当にデストロイの内部で静かにその時を待っていた。

 

当のパイロットであるステラはその状況を理解できていない、いや理解することも出来ない。彼女は死という恐怖に支配されていた。それはエクステンデッドとしての刷り込みが、彼女をコントロールしているのだ。

 

彼女は死にたくないから周囲を殺す、たとえ自分を傷つける者がいたくなっても、街を破壊し続けるしか無い。それは本能であるからだ。

だが、そんな無茶をし続ければ続ける程、身体を蝕んでいた治療痕は益々深く彼女を殺す。彼女が知らぬ間に。

そして、彼女の死と同時にそれは炸裂するだろう。

彼女は要するに、生きる時限信管だ。彼女の死そのものが、起爆装置だ。

 

それはキラにも、シンにも理解出来なかった。知らないものを理解する事など出来ないのだから。

だが、シンという男はこの時最適解を導き出していた。ただ只管に真っ直ぐに、ステラを救おうとしていた。

キラにもそれは分かっていたが、暴れ回るデストロイを停めるすべを持っていない状況で、それを成すのがどれ程難しいことか?

 

そこでキラは、1つの決断をした。

 

「シン…!なんとかして彼女を安心させるんだ、コックピットを開けられれば後は僕がハッキングを仕掛ける!」

 

「安心させるって言ったって何をすれば……!ステラ!俺だ!シンだ!もう君を狙う人はいない!君を傷つける人なんかいない!だから…、だから!コックピットを開けてくれ!」

 

オープン回線で真っ直ぐにステラを説得しようとするシンの言葉は半狂乱になっているステラに、確かに届いている。

だが、恐怖に駆られているステラは、見棄てられたと思ったステラは涙を流しながら、その言葉を信じられない。

 

だがそれでも、只管に真っ直ぐなシンは続ける。それしかシンには出来ないからだ。

その間にも、キラはムウや他のオーブの軍人にデストロイへの攻撃を辞めるよう説明している。

 

炎に包まれる街の中でたった一機、デストロイへと向き合うインパルスとインパルスのコックピットから身を乗り出し、両手を広げて安心して欲しいと言うシンの心からの言葉に、ステラはコックピットをオープンに切り替えた。

 

と、同時にキラは猛烈な勢いでキーボードを叩くと、デストロイのシステムに侵入を果たしものの見事に起爆プログラムを無効化した。と同時に、デストロイの機能は停止する。

歩み寄るように、ステラはシンの直ぐ側に行く…。そして、彼女はシンの腕の中に納まった。

 

 

……

 

クゥー、クゥー

 

というカモメの鳴き声が、まるで今を平和のように映し出しているベルファストでは、軍関係施設が大慌てで事の次第を見ていた。

 

ジブリール派によるベルリンへの無差別攻撃という、頭がオカシイとしか思えない暴挙に彼等は頭を抱えていたからだ。

実際、そんな事を行えば世論がどうなっていくのか簡単に判るであろうに、シンパばかりを侍らせていたジブリールにはまるで判っていなかったのだろう。

 

ここにきて、アズラエル派及びアルスター派はジブリール派に対する攻撃を決意するに至った。

改装を終えたばかりで試運転もしていないドミニオンは、直ぐに号令がかかった。

 

ジブリール派拠点、ヘブンズベース。大西洋上にあるアイスランド北部の連合基地司令部へと向かう艦隊への、強襲攻撃を採択した。洋上に存在する艦隊を、防御が厚い基地司令部に入る前に叩く。それをやれる戦力はザフトにも連合にも、この時はドミニオンしか存在していなかった。

 

補給を終えたドミニオンは直ぐ様離床を開始する。

増設されたミノフスキークラフトは、より船体を軽々と宙に浮遊させもはやそれは飛行とは言えず、文字通り浮いている。

 

見る人が見ればそれは当に天馬の如く、街の人々はその姿を見て感嘆の声を上げる。

連合の主導権を取り戻すために、壮絶な派閥争いの幕開けにしては優雅な一時であった。

 

 

 




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