機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第29話

「画像データ入ります。ミネルバとのデータリンク良好、逐次データを送信中。」

 

「偵察機及び中継機、健在です。現在敵影並びに生存者らしき者確認出来ず。また……、死体らしいものが散見される!」

 

ミネルバとの協同での解析は思ったよりもスムーズに進んでいる。どれほど優秀と言えど、ドミニオンの乗員の殆どはナチュラルである。こう言ったものの解析が得意な者がいても、ミネルバクルーの特化したコーディネイターには太刀打ち出来ない。

それ故に、相互に補い合うというまがりなりにも協力体制が構築されていた。

 

「了解した。ミネルバに通信、これよりMS隊の発進を開始する。以後、戦闘指揮は各個の判断となるがくれぐれも、間違いは起こさないで欲しい。以上!」

 

そんな号令が発せられ、数刻の後に次々にドミニオンとミネルバが各々のカタパルトデッキを展開していく。

目標はヘブンズベース基地、今その大地は巨大なクレーターとなっていた。

 

グオングオン

 

という聞き慣れない音がミネルバの格納庫へと響き渡り、1機のMSガンダムが前へと歩み始める。

電源ケーブルも補助用のそれしか着けていないところからも、ミネルバの整備兵からはどう考えても条約違反機だと思われている。だが実際のところは条約に完全に抵触しないクリーンなものだ。

 

それが、ミネルバのカタパルトへと進んでいく。

 

連合とプラントは元はと言えば同じ技術発展をしていたものだから、互いに互換性のあるものばかり。

カタパルトへは、すんなりと脚を着けるとその機体は自らの武装を構えながら発進を待つ。

 

「インパルス並びにザク発進まで待機お願いします。」

 

「了解……やっぱり信用されてないわね

 

ガンダムのパイロット、フレイがそう小さく口にする理由は彼女の後ろで待機するもう一機のMSに対してのことであった。

赤紫の機体、セイバー。それが、ガンダムの後ろに備えている。何に備えているのかは…、当然のことフレイの裏切りに対してだろう。

 

「インパルス…ザク発進確認。お待たせしました。ガンダム発進どうぞ!」

 

「フレイ・アルスター、ガンダム行きます!!」

 

グググとシートが背中に押し付けられるのにも慣れたように、操縦桿とフットペダルを巧みに操作しながら、ガンダムは空へと飛び立つ。

それと同時にミネルバの別のカタパルトから、グゥルと呼ばれるSFS(サブフライトシステム)が発艦し、ガンダムの脚部へと吸い寄せられる様にやって来る。

 

MSは、本来空中戦を行うようなものではない。従って長距離侵攻をする場合、その推進効率の悪さから航続距離に限界が生ずる。

その為、オーブのムラサメのような航空機への可変能力があればそれを行い距離を稼げるが、人型からの変形を持たない機体は総じてこのような事になる。

 

「ストライカーユニットに互換性が無いのがたまに傷よね…、この子ならアレも有効活用出来るのでしょうけど…。」

 

その言葉の通り、ドミニオンに搭載されているダガーやラウのストライクにはジェットストライカーが装備され、換装された低出力融合炉のおかげか、その航続力は元の比ではない。

 

「ドミニオンより各機へと通達、映像送ります!」

 

コンソール内の小さなメイリンが、そう発すると有無を言わせずに画面が切り替わり、その中にナタルの顔が浮かぶ。

 

「各機、説明したように現空域において多量のM粒子の散布が行われている。現状、それに対処するノウハウを確立しているのは、我々ドミニオンの部隊のみであるがミネルバの隊にも慣れてもらう必要がある。

今後、戦闘となった場合有無を言わせずに我々はコレを使用するからだ。

 

ここより数km離れれば、まともな通信も難しいものとなるだろう。従って、各機光通信による直接無線並びに量子通信が求められるが、量子通信はM干渉波の影響を多少受けるようである。従って信頼はしないでもらいたい。

現状、動体の存在は確認できていないがくれぐれも用心して欲しい。

各機の武運を祈る。」

 

次第に効かなくなる無線、ザフトのパイロット達にとってコレは恐らくは恐怖だろうか?

完全なる有視界戦闘という物を、彼等は経験したことが無い。使用出来る無線は、レーザー回線のみ。それも全方位に出さざるを得ない状況によって、敵にとっては闇夜の提灯である。

 

何より、戦闘中の換装を基本とした戦術を練り込められたこの時代の者達にとって、換装の為に連絡を取るには高度を取らなければならない。それは敵にとっては良い的となってしまうのだから。

 

ジェスチャーによる手信号は、連合とザフトは同じものである。それは元々の宗主国と、属国という関係上当たり前だった。それを利用した近距離信号が、今現在彼等の行える数少ないコミュニケーションである。

 

最低限のものを伝えるにはそれで良いのだが、普段の便利なものに慣れている人間にとって、それは難しいものだった。

 

「早いって!俺こう言うの苦手だったんだからな!」

 

シンはパイロット候補生としてMSの操縦技能は大したものがある。だが、彼のコーディネイターとしての調整は免疫系だけであり、頭脳面や身体能力としては周囲よりも1段劣ると言わざるを得ない。そんな彼が、座学の中で殆ど存在すら忘れ去られるようなものを、スラスラと解けるものではなかった。

 

アスランはその事を知らない、なにより彼はエリートであったから、シンのそう言った弱点を失念している。そういったところがアスランをシンが嫌っていると言えよう。

レイはそういった部分を知りながら、フォローをしようとするも残念ながら現在の彼はドミニオンの部隊と行動を共にする必要がある。

 

だが、一つのフォローが入った。

 

「手信号だけじゃなくて、接触回線も使える事忘れちゃ駄目よ?何より焦らないこと、良いわね?」

 

嫌に優しいフレイが、シンのそれをカバーする。アスランは一瞬それに反応しようとするも、他意が無い事を覚って事なきを得た。

自分が困っている時、それをフォローしてくれる人間を嫌いにならない人間は中々にいない。

実際、シンはそう言った人間は好みであるからシンの内では、アスランよりもある意味では良い評価であった。

 

2つのMS隊がヘブンズベースへと向かっている最中、偵察を行っていたスカイグラスパーはある異変を見つけていた。

 

「えーこちらコウノトリ、地上で動体確認。高熱源探知…、MSらしきもの認む!

アレは……、嘘だろ!」

 

更にその上空から中継機の役割を担っていたグラスパーは、その状況を逐次ドミニオンへと伝える。

 

「1号機への攻撃認む、敵機…数増大!こんな…動いている事が信じられない!」

 

大地を埋め尽くす人間だった者達、その中を我が物顔で歩くダガーだったものや、異形のゲルズゲーが意思もなくただ行進を始めている。

だが、1号機をセンサーで感知したのか迎撃戦闘を始めると、猛烈な勢いで弾幕を形成していた。

 

幸いな事であるがM粒子の影響により、誘導ミサイルの尽くが無意味な物と化していた事に、対空性能の低い連合の機体群の弱さに助けられていた。

 

だが、最大の問題はそれらの機体に関わらず、恐らくは死者しか存在しないにも関わらず其れ等がいったいどうして動いているのか?検証の余地は無かった。

 

 

……

 

熱波と光りに包まれた大地の中で、生命は生きる事など不可能とも言える状況が包みこんだ。

大地は抉られ、その地のものに降り注ぐのは中性子線。

だが……、幸いな事に?不幸な事に?そんな最中でも人という生き物は、生き延びることが出来ていた。

 

純水水爆と言うものは一見すると非情な兵器ではないか?と思う者もいるだろう、確かにその威力は凄まじく太陽がそうであるように、周囲の尽くを焼き尽くし蒸発させる熱量を持っている。

だが、同時に旧来の核兵器では問題となっているものがなくなっている。

 

核物質、特に高濃度放射線を発する物が残り辛く、殆どの放射線が中性子となって初期の爆発と共に周囲に散らばるため初期の殺害能力は高いが、土地に後遺症を残しづらいと言う物がある。

その為、核爆発から逃げ延びた者も少なからず存在した。

 

「こちらトータス…、応答願う…司令部…誰でもいいから…応答してくれ……」

 

ザザザ…ザザと音を拾うそれは決して外の声をそこに届ける事はなく、NJ影響下でも限定的ながら交信が出来るほどの性能を持ったそれを、嘲笑うかのように遮っていた。

 

「もう良い……もう沢山だ…俺達は…見捨てられたんだよ…。第一こんな事に付き合う気は、俺は鼻からなかったんだ。師団長に着いてきたらこのザマだ!!

 

悪態をつく者もいるが、そんな事を言ったとして現状が変わるはずもない。

彼等に残されているものは、様々な遺体から回収してきた食料と、歩兵が携行できるだけの武器弾薬。

 

そして、彼等がねぐらとしている塹壕に住まう、同居人たるネズミくらいなものである。

 

静かにしないか!彼奴等に見つかった連中がどうなったか…忘れたのか!」

 

彼等は最初の頃、生存者を探して周囲を歩き回った。確かに動く者が幾つか居たが、それは者ではなく物だった。

MS…融解し片腕を失ったそれが、まるで幽鬼の様に大地を歩いていく。

だれかがそれに通信を試みると、ワラワラと人間だった物たちが狂ったようにそれを囲むと、銃撃を食らいながら飲み込んでいく…。

 

次の瞬間には奴等の仲間入りだ。勿論、五体満足ではない姿で奴等の仲間となった者達は、今度は自らの脳に記憶してあった場所に奴等を誘導していく…。

そこからが地獄だった。

次第に減っていく仲間、夜間も続く悲鳴とうめき声…古いゾンビ映画のように、其れ等は徐々に真綿を締めるように彼等を追い詰めていく。

 

そして、最後に残ったのが…基地から凡そ40kmの地点にある、小さな古い塹壕とレンガとコンクリートで作られたトーチカ。

もう、周囲は囲まれていた。

息を殺して、生き残る…そんな日が続く……だがそれは突然にやってきた。

 

パパパパ…ドン……パラパラ、バッシューバンバン。

 

そんな音が暗闇を駆け抜け、眠りにつく彼等の頭を暗闇から覚ます。

 

「なんだ……?攻撃か?だが、俺達相手じゃない…?救助か!!」

 

誰かがそう叫ぶと、皆が一様に齧りつくように外を見やる。するとどうであろうか、あの立ち尽くした者達が一斉に空へと攻撃を敢行している。

あぁ、やっと生きている人間が俺達のことに気がついてくれたのかと、そう安堵する者もいるが残念ながらそれはない。

 

単に核爆発を検知したからこそそれを観にやってきただけなのだから。

 

一機また一機と、木偶となっていたはずのMSが見間違うかのような先鋭的な動きで出撃していく。

コックピット周囲は潰れていて、人がそこにいるはずも無いのだが其れ等は動き、バッテリーが尽きているにも関わらず攻撃を続行している。

 

恐らくは太陽光からエネルギーを得ていたのだろうが、その効率は軍事用のそれでもこれほどでは無い。

この空間そのものが、太陽光を受け持つ器として機能していれば話は別であるが。

 

暫くすると見覚えのある機体、それも損傷のないそれが彼等の直ぐ側に着地して応戦を開始する。

巨人同士の戦い、それも見たことも無い程に強烈な出力を誇ったビームライフルを撃ちながら、其れ等は戦う。

 

青白い光を発しながら射出されるビームの帯、其れ等は木偶の盾に当たると確かに弾けるが、それでも出力で盾を吹き飛ばす。

間髪入れずにそれを圧するその姿は、実に雄弁なものであろう。

 

そんな姿を見ていた者達は、我々もと武器を取る。

頼りない2戦級の兵装達、だがそれが一切の効果が無いというわけでもない。

気を引く程度ならばこれだけで十分役に立つのだから。

 

対MS誘導弾を肩に持ち、次々に釣瓶打ちするその殆どが命中し1機を吹き飛ばす。

だが、それを見て周囲の人型がワラワラと寄ってくる。

キャリバーをそれに向け12.7ミリの雨が其れ等を捉えるものの、それでもワラワラと進んでいく。

 

後100mもない中で、1機のMS特に敵であった筈のザフトのパクリ品が彼等を守るように奴等の前に立ちはだかった。

 

「おい!あんた達、俺達が戦闘してるんだからあんたらはさっさと逃げろ!」

 

そこからは少年の声が聞こえるものの、この時の彼等にとっては非常に頼もしいものに聞こえていた。

その時だ、巨大なビームの奔流が宇宙(そら)へと打ち上げられ、それが何なのか知るものにとっては絶望以外の何物でもない。

 

一際巨大な人影が、のっそりと幾つも姿を現す。デストロイと呼ばれる、連合の秘密兵器…。

たった数機のMSが相手をして良いものではないが、それに悠然と立ち向かおうとする姿があった。

 

ダガーやウィンダムが、周囲の有象無象を相手取る中、精鋭と思われる者達がそれを対処するべく並び立つ。

ザフトの者達は恐らくはバッテリー駆動なのだろう、攻撃にエネルギーに対する計算を入れた無茶の出来ない戦い方をする。

 

それに対して、連合のストライクを改修した機体は無理もなく悠然と粛々と対処していく。

白いストライクは、特に調子良く1人で一機を駆逐する。

エネルギーと言うものは、どれほど大切な事であろうか?

 

ザフトの機体が2機で1機を相手にしている間に、次の機体へと移動を開始するさなか。

 

それに対して薙ぎ払う様にビームを撃つデストロイ、だがそれは呆気なく撃破された。

ビームを撃つ瞬間、防御壁が緩まるその瞬間1条のビームによってそれを貫かれる。

 

それだけではない、より高出力の見たことも無い程に真っ直ぐに飛ぶビームは次々に防御壁を貫徹していった。

 

ビームの来る方向をみあげれば…そこには、アルスターの紋章を盾に掲げる1機のMSの姿があった。

 

 




機体性能の差は戦力の決定的な差である。

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