機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第10話

 

12人の評議員からなるプラントの頭脳とも言うべき、組織。

通称〘プラント最高評議会〙評議会の構成員は、互選制と呼ばれる政治に適性のある成人から選ばれる制度で決まり、プラントを構成する12の市から1人ずつ選ばれている。

 

これは成人年齢に達すると、自動的に各市民の来歴が詳細に公表され、プラント市民の投票で決定されるというある意味強制的な民主主義システムである。

そしてそこから更に、評議会議長が一人選出されることによって、プラントの意思決定を行っている。

 

そして、その12人の評議員が湾曲したテーブルに腰を掛け、それに対面する形で、アスランとクルーゼは席に座らせられた。

そして、クルーゼは今回のヘリオポリス崩壊の件に付いての、具体的な内容を説明していた。

 

「――以上の経過から、ご理解いただけると存じますが、我々の行動は決してヘリオポリス自体を攻撃したものではなく、あの崩壊の最大原因は、むしろ地球連合にあったものだとご報告します。」

 

襲撃しなければ、地球軍の攻撃を誘発することもなく、ヘリオポリスの崩壊も無かったのだから、盗人猛々しいとも言えるだろう。

だが、現在有力な国家は全て戦争に駆り出されている為に、これを処断する相手は小国しか無いために、もしプラントがそれを言うならば押し黙るしか無い状態となっている、とも言える。

 

「やはりオーブは連合軍に組していたのだ! 条約を無視したのはあちらの方ですぞ。」

 

「しかしアスハ代表は……」

 

「地球に住む者の言葉など、当てになるものか!」

 

条約を無視したからと言って、中立国を攻撃して良いと言う口実には出来ない。

なぜならば、プラントの工業製品の部品には一部では有るがオーブ製品もあるのだ。

 

ならば、連合用の兵器製造もまたそれと同意義であり、それを糾弾する術をプラントが言うのならば、全ての国を否定する事になりかねない。

という事を、この評議会内でも解っていない者たちが多い。

所詮は工業や生物学の学者である、政治的に素人なのだ。

口々に言う無責任な言葉を遮るように、パトリックが口を開いた。

 

「しかし、クルーゼ隊長。

その地球軍のモビルスーツ、果たしてそこまでの犠牲を払ってでも、手に入れる価値のあったものなのかね?」

 

図ったかのようなタイミングでの発言に、芝居だと政治屋ならば解るだろうが、彼等にそれを見抜く事が出来るのかは、甚だ疑問である。

尤も、パトリックの盟友で議長たるシーゲルはこの程度見抜けない訳ではなかった。

 

「はい、その驚異的な性能については、実際にその一機に乗り、また取り逃した最後の機体と交戦経験のある、アスラン・ザラより報告させたいと思います。」

 

アスランにして、台本のある演劇のようだと思わせられる。臭い演技に、辟易としつつも彼は壇上へと立つ。

説明を行いながら、次々とイージスからの戦闘データから抽出したそれを出すと共に、周囲はざわめきに包まれた。

 

一つ一つ丁寧に説明されていく事実に、少しずつ議場内は暗くなっていく。

特にそれが、技術者ならば残酷なほどに機体の性能が解っただろう。

唯一、シーゲル議長のみそれを白白し目で見ていた。

 

「…以上、データが示すとおり、ハードウェアとしての性能は、我らザフトの次期主力として、現在配備が進んでいるシグーを上回るものと言えましょう。

……クルーゼ隊長のご判断は正しかったものと、私は信じます」

 

彼の言葉が終わると、議場は一瞬の沈黙の後、

 

「……こんなものを作り上げるとは……ナチュラルどもめ……!」

 

だとか

 

「でもまだ試作機の段階でしょう? たった五機のモビルスーツなど……」

 

のような呪詛や、悲観、現実逃避に明け暮れる言葉に包まれた。

 

「それに関して、もう一つ報告があります。」

 

クルーゼはすかさず補足をするように堂々と立ち上がると、とある機体のデータを出した。

 

「先程の戦闘データと合わせてご覧頂きたかったのですが、少しインパクトに欠けると思い、こうして後述することとなりました。

まずは、戦闘データを御覧ください。」

 

他のMSと同様な顔をした機体、何処かパッとしない見た目のそれが、次々と先程の機体奪取した機体と戦闘する姿が映し出されていた。

しかも、その挙動の恐ろしさはイージスが主要に相手していたストライクとは違い、戦い慣れしているのか明確に表れていた。

 

「こちらは、我々の奪取した機体から駐出されたデータを下に、上げたカタログスペックなのですが、私はこの機体を連合のデータより〘ガンダム〙と呼称しております。

このガンダムは、他の機体のモデルになった機体であり最初期の機動試験用の機体です。

 

基本性能はシグーを上回っている事は確実ですが、その他のG兵器に対して優越するものはなく、至って平凡な機体…と言えるでしょう。」

 

「それで…?何が言いたい。」

 

シーゲルが閉ざされた口を開いた。回りくどい演出のようなやり方に、彼はしびれを切らして言ったのだ。

 

「この機体のパイロットは、ナチュラルであると…私はそう断定しております。」

 

その言葉に再び議場はどよめく、そして信じられないという眼差しがその映像に釘付けとなる。

そして、それに対して抗議するように一人が口を開いた。

 

「何を馬鹿な事を、この機体のパイロットこそコーディネイターではないのか!」

 

と、信じがたいものを見るように。

〘コーディネイターはナチュラルよりも優秀である。〙

という、自尊心を持っているものであるからこそ、信じ難いものには疑問を持たなければならなかった。

 

「その点に関して、私から補足させて頂きます。」

 

それに対して、今度は議員の中から挙手が上がる。

MS部門のトップである、ユーリ・アマルフィ。ニコル・アマルフィの父であった。

 

「私は、先程の映像を事前にに視聴させて頂いていたのですが、この機体のパイロットはコーディネイターではないと。そう確信を持っておりました。

私は、機体のデモに多く参加しその機動を、コーディネイターならではの耐G能力を目にしてきております。

 

そんな私から言わせて頂きますと、この機体はその様な機動をしていない。

もっと言えば、耐G戦闘においてのそれがまるでナチュラルのそれであると、私は感じました。

確かにナチュラルにもそう言う特殊な人間はいますが、一般的な見方としてこの機体のパイロットは、ナチュラル等ではありません。」

 

そう断定する彼の姿に、専門家である彼の口から聞いた言葉を彼等は信じるほか無かった。

そして、付け加えるようにユーリは更に言う。

 

「機体データを参照するに、連合は我々コーディネイターを凌駕する為のCSS(戦闘補助システム)の開発に成功したと、見て良いでしょう。」

 

それは半分正解、半分外れだった。

それは、運用者にしか判らないがこの機体のシステムはたった一人にしか反応しなかったのだから。

 

だが、そんな事実この時はどうでも良かった。プラントに対する明確な脅威を表するためならば、そんなもの無くてもよいのだ。そういう物があると、そう思うだけで人はそれを打倒するために動き出す。

 

「これは、侮辱です平和に、おだやかに幸せに暮らしたい……。そうした我らコーディネイターの願いを、再びナチュラルが打ち砕こうとしているのです。」

 

クルーゼは思ってもいない事を言う。

彼にとって、ナチュラルだのコーディネイターだのそんな些細な違いどうでも良いのだと、そう口には出せない声を心の中に隠しながら。

 

「私も、今回の作戦で多くの部下を亡くしました。

しかし、ただ平和でありたい、そんな我らの言葉を無下にし、ナチュラルは平和のために戦う私の部下を、我らの同胞を殺したのです

だからこそ!!私にもう一度チャンスを頂きたい!

 

死んでいった者達の為だけではなく、これから戦うであろう多くの者達が、これと似通った物によって殺されるかもしれない。

このデータが連合の手に渡れば、確実にそうなるでしょう。

 

ですから、私は今!!撃たねばならぬのです、プラントだけでなく、我らコーディネイターの未来の為にも!!

 

普段冷静な男が声を荒げて言うものに、心を打たれる者たちがいる。だが待ってほしい、眼の前にいる男は軍人であり戦術家である。という事は、この時この場所は戦場と同じならば、これこそ彼の術中だと。

 

火に油を注ぐが如く、それは消えかけていた復讐や恐怖に降り注ぎ、より激しく燃え上がらせる。

その中では最早、冷静な声など無く只々己の信じたい事を信じる、衆愚政治が其処にあった。

 

 

……

 

AAはデブリ帯の中を突き進んでいる。

なんの為にここに来たのか、それこそここを通っている原因であろう。

 

「あ、アレ駆逐艦みたいね。エンジンをやられちゃったのかしら?」

 

様々な物が漂流し、ここに集まってくる。

地球の引力圏の中で、比較的安定しているからこそ起こる現象は、この地球圏で起きた物事を封じ込める。

天然のタイムカプセルと言えよう。

 

「さあね……、良いなぁフレイは。どうしてそのMS操縦出来るんだよ。」

 

「しょうがないでしょ、この子が私が良いって言うんですもの。」

 

彼らが行っていることは所謂墓荒らし……。と言っても、お宝があるとかそう言う意味で行っているのでは無く、もっと根本的な問題。

水資源がそこにはあるでは?という、フラガの提案によるものだった。

 

尤も、こんな墓荒らしを行っているのだから心理的なダメージと言うものはある筈なのだが、少しずつ人は慣れゆくもので、宝探しのような感覚が出来始めてしまう。

 

「乗ってた人たちが、全員無事脱出したんだといいよな……」

 

ハッとして、そんな言葉を紡ごうともそれすらも直ぐに無意識の内になくなってしまうだろう。

人とは、環境に適応するものだ。良くも悪くも、環境が人を作るのだ。

 

「一応、私護衛も兼ねてるけど何かあったら教えてよね。」

 

「判ってるよ。」

 

MSのセンサーに映るよりも速く発見できるのか?

所詮は作業用ポッドである。そんなに速く発見できる訳が無い。

 

そんな二人とは少し離れた位置で、キラは一人。黙々と探索を続ける。少しでも早くここから出たいという、そんな欲求の中彼は一生懸命に無駄口叩かず動いていた。

 

「あ……」

 

「ああっ……」

 

「……これ……って……?」

 

作業ポッドにいた彼等も、MSに搭乗している2人もその光景を眼の前に、動きを止めた。

巨大な岩塊が、まるでユウレイクラゲのように宇宙を漂うその姿。

不気味な程に静かなそこには、人が住んでいたなどと考えられない程に、冷え切った大地が聳える。

 

そんな中であろうとも、嘗てプラントでの食糧生産を研究していた場所という事もあり、そこには多くのプランテーションや家畜が真空状態によって、完全に封じ込められている。

 

雑菌すら繁殖出来ない、究極の真空状態。

そこにあって、彼等の目的となるものは辺り一面を青白く覆っていた。

 

一人一人、船外作業服に着替えて外へと出る。

その真空によって凍りついた大地には、未だに人が住んでいたであろう証拠が、そこかしこに存在していて皆の心を寒々とさせる。

 

トールが1人で納屋を見て

 

「うわぁ!」

 

と声をあげる。それに連れられて、後ろから入っていくとそこには子供を抱きかかえ必死に守ろうとしたのだろう。

親子の亡骸があった。

 

 

……

 

 

「あそこの水を…!? 本気なんですか?」

 

AAの艦橋へと戻るとキラがそれを訴えるように、艦長等へ抗議をする。

それもしょうがないだろう、誰だってそんな事したくないないはずだ。

 

「あそこには一億トン近い水が凍り付いてるんだ」

 

ナタルは間髪無くそう言うが、彼女からして見てもそんな事しなくて良いならしたくない。

だが、彼女はそれをお首にも出さない。それをしてしまっては、割り切れなくなってしまうから。

 

「でも……見たでしょう? あのプラントは何十万もの人が亡くなった場所で……!」

 

キラは必死に抗議する、それでもナタルは首を横に振りそれを否定する。

この時ナタルはラミアスから1つの言葉を言われていた。

 

『キラ君やフレイさんにはあまり強く当たらないでちょうだい、二人共民間人なの。私達は協力してくれるだけでも、ありがたいのだから。』と命令されたのだ。

 

だからこそ、このときのナタルはキラの肩を掴み目を見て真っ直ぐ言った。

 

「だが、そう言いながら私は、彼らの様にこの宇宙を漂う物になりたくはない。

そうならない為に、君達に私達は命令しているのだ。

なら、おまえ達は気を楽に持って我々に従わされていると思ってくれて構わない。」

 

彼女の精一杯の説得だった。

それを聞いたキラは、彼女の本心を少し感じ取った。

誰もこんな事したくないのだと。

 

「……、解りたくは無いですけど…。でも、そう言うのなら…僕だってやりますよ…。」

 

ナタルはこの時、情に訴えるというものが如何に民人には効果的であるのか学びつつ、自分がそんな事をすることに嫌悪感を覚えた。

 

キラがそんな事をしている一方、フレイの方はと言えば……。

 

「ねぇ、復讐ってさ虚しいものなのかな。」

 

『………』

 

「そうなんだ…、そんな人歴史上にいたか知らないけどさ、そうやって身を滅ぼして、色んなことが嫌になっちゃったりすることもあるのね。」

 

そうやってガンダムに1人語りかける姿を、整備士に見られていた。

 

 

 

 

 

 




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