機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第37話

 

ねぇねぇ聞こえた?

 

うん聞こえたよ、あっちだって!

 

ねぇ行こうよ。

 

ヒソヒソとした声が暗がりの中で響いている。その声は幼く、あどけない…。

そんな声を発するのは、避難民の子どもたちであり今は声を抑えて隠れなければならないのにも関わらず話をする。

必然的に彼等を守る役割を担った大人からは注意を受けた。

 

こら、駄目じゃない静かにしていなきゃ。

 

でもあっちのほうが安全だって叔父さんが!

 

子供達は一様に同じ事を言う、“叔父さん"一体誰だ?

子供達を、護るっているのは皆年若い女性ばかり、非力な彼女達は防衛戦力よりも保護者としていたほうが、周囲は安心出来るからか、彼女達はそこに配置された。

 

それ故に、叔父さんという相手が一体どういう存在なのか?この場には存在していない人間に困惑した。

 

「ねえ…、叔父さんってどんな姿をしてるの?」

 

それは好奇心から来るものであった。そして、子供をあやす為に言葉に乗る事も重要な方法でもあった。

 

「えっとね、金色の髪をしてて青い目にお顔の上の方に傷跡があるの。痛そうだなあって。あ!後とっても真っ赤な服着てるの!」

 

真っ赤な服を着ていればそれこそ簡単に分かるだろうが、そんな奴何処にも見当たらない。

 

更に特徴を聞いたのに感想を言われた。そんな事はどうでも良い、他の子供達も皆同じ特徴を言う。

ただ、一部の子供達…コーディネイターの子供達にはその傾向は薄かった。

そう、ナチュラルに近ければ近い程その叔父さんを見ている傾向が強いのだ。

 

だが、普通の人間にそんな物が分かるものではない。

集団幻覚として受け入れられようとしたその時、大人であったが故に保護者達はそれに気が付いた。

 

「あんなところに通路なんてあったかしら?」

 

今までここで待機していたのだから、分かるはずだ。だが、まるでそこに最初から"あったか“のようにその通路は存在した。

 

半円状である。縦幅は大人が2人くらい並んでも申し分ない。

 

「私班長呼んできます!」

 

一人がそう言って駆け出し。

 

「内部の探索するわね。戻って来なかったら…後をよろしく。」

 

好奇心に負ける者もいる。

 

戸惑う者もいれば、冷静に自分の仕事に勤めようとする者もいる。

ただ、一縷の望みと言うものが現れたのではないか?と言うのが全員の共通認識であった。

 

「ねぇ、行かないの?」

 

幼い少女がそう問いかける。

 

「危険かどうか分かったら行くから、それまで待っててねぇ。」

 

不満そうな子供達をあやすのはとても大変であるが、そんな事よりも危険かどうかが重要なのだ。

せっかく行きている生命をみすみす自殺に追い込むような事、あってはならないとそう考えるから。

 

 

……

 

レクイエム攻略部隊が戦闘に入ってから大凡1時間が経過していた。

部隊の配置は同様に、艦隊はその距離を詰めMSの展開を済ませて離脱する真っ最中であった。

 

また、ザフト艦隊は敵艦隊に突入しその中でMSをばら撒き、敵の出血を強いることに成功、後は戦力を徐々に削っていくだけとなっていた。

そう、事は順調に進捗していたのだ。

 

この時までは……。

 

「うん……」

 

「どうかされましたか?」

 

艦隊を率いる提督たる男は、現状に不満を抱いていた。明らかに動きの悪い敵、コペルニクス方面から現れた敵部隊を予備部隊で押さえつける。

これによってコペルニクスの防衛戦力をこの艦隊に誘引することに成功したとして、作戦の戦略目標も達成できていると言える。

 

だが、その動きがあまりにも稚拙過ぎて逆に不信感を抱いていたのだ。

 

「敵の動きが悪すぎる、どうして逐次投入等するのか?」

 

敵は部隊の損壊と防衛網を護る為に、戦力を局所に集中することが出来ていない。

その為、一度防衛線が突破されれば一気にそれは瓦解するだろう。それを抑える為に戦力の補充をするのだが、始めから戦力を何故投入しないのか?

防衛出来るだけの戦力はあるというのに。

 

「ピースメーカー隊の仕事は無さそうだな。寧ろ使わずに済んでホッとして……!!」

 

そう言葉を発した時、突如として極大なビームの帯が付近の艦艇に突入する。

それは見たこともない光景であった。

 

あまりにも一際輝くビームの帯、それが艦艇の横をすり抜けると同時にその熱量によって、被っただけのはずの艦艇の装甲板が溶け落ち、撃沈判定を受けるほどのダメージを負ったのだ。

 

それだけではない、そのビームは艦艇一隻を葬った後更に後方の艦艇に直撃すると、その船体を前方から後方まで貫通するように抜けていった。

それは、そのビームの威力が既存のそれとは一線を画すものである証であった。

 

「嘘だろぉ…」

 

「戦闘中だ!報告はしっかりしろ!」

 

何かに困惑する監視員

 

「はっはい!高熱源場所は…月面上!」

 

「月面上だと…?そんなバカな話があるものか!」

 

この艦の艦長が常識では考えられない事実に疑義を呈す。

荷電粒子砲はそれ程の射程を保つことは難しい、距離が遠ければ遠いほど粒子が散って行き威力も減じていく…。

筈なのだが、この攻撃を行っているそれは極端に極大な例えばレクイエム等のビーム砲

ではない。

大径ではあるが常識的な、大型艦砲レベルの太さである出力は桁違いではあったが。

 

それが艦砲以上の射程を持って、艦隊を射抜いていく…。こんなものがあれば、レクイエム等作る必要すら無いのだ。

 

提督は静かに熟考し、艦隊の今後の行方を左右する決断に迫られている。

 

「射点確認、映像出ます!」

 

映し出されたそれは、一言で言えば異形であった…。頭部が肥大し、それに対して小さな腕。何より気持ちの悪いのは、下半身が動いているくせに上体が動いていないという、極限にまで研ぎ澄まされた姿勢制御であろうか?

 

もし、これを知っている人間がいれば確実に思うだろう。

艦隊でこれに挑む事は自殺行為に等しいと、そうコイツの役割は対艦用の大型MS。

その名も

 

ウォドム

 

と言った。

 

ウォドムは、対艦対要塞用に建造されたと言われている(・・・・・・)大型のMSである。

本来の開発者が誰であったのかは明確にされてはいないが、決してこの時代の技術ではなかった。

 

突然の被害に艦橋内では口論が始まろうとしていたが、それに対して低く唸るような声を持って場を鎮める声が響いた。

 

「全艦艇に通達、これより本艦隊は敵不明部隊に対して肉薄攻撃を行う。各艦隊、重りになるものは捨て置き果敢に突撃せよ。」

 

「指令……血迷いましたか!敵中に突っ込む等自殺行為も甚だ…!」黙れっ!

 

反論する声を徹底的に潰すように大声を張り上げると、状況判断を説いた。

 

「我々は敵の事をあまりにも知らなさ過ぎる。だが、我々は我々のことは良く知っている筈だ。

このまま後退したとして、果たして敵は攻撃を辞めるのか?嬲り殺し似合うだけの可能性もある。

君はそんな中、逃げろとそういうのかね?」

 

実際、機体の船体の性能差は如何ともし難い。自兵器類では届くことがない距離から一方的に攻撃される恐怖。

それは、人間が根源的に最も恐れるものである。それを許した場合、艦隊は意味をなさずそれぞれが落伍し、各個撃破されるしか無い。であるならば、少しでも勝率が高い物を選ぶのは必然であった。

 

「来れるものだけでも良い、人身御供でも良い…。それで少しでも多くのものが生き残れるのなら、私は喜んで突撃するだろう。」

 

提督は腹を括り、幕僚達はそれに息を呑み目の前にある敵に対して強い視線を送ると、通信員に命令する。

 

「全艦に突撃命令、本艦はこれより突撃を開始する。全艦我に続け。」

 

地球連合の艦隊は困惑するものの、突撃命令によって徐々にダイダロス基地へと足を進め始めた。

 

 

一方で既に敵艦隊への肉薄攻撃を敢行しているザフト艦隊では、また違った問題が起きていた。

満を持して投入したMS群、それを支援すべく艦隊は距離を近づけ敵へと肉薄する。

 

そんな最中であった、何処からとも見たこともないMSが現れたのだ。

黄色いレドームを頭部に持ち何か間抜けな顔のある、右腕に巨大な兵装を持つアシンメトリーの機体。

 

それはザフトが、持つ汎ゆるMSの動きを凌駕しまるで人間のように柔軟な動きと、途轍もない大推力を持って速度ですら翻弄する。それどころか機体の汎ゆるところに対ビーム塗装がなされているのだろうか?荷電粒子ビームが機体に当たっても、それが弾かれるように機体表面を飛び散る。

 

直掩の機体が迎撃戦闘を行うが、翻弄され一方的に攻撃される始末。

自慢のコーディネイターの反応速度も、その機体には着いてこれず結局落とされる。

自らの力に自信を持っていた自らを、力によって蹂躙する。人間の反応を上回るそれは、しかし確実に人と同じように状況を見ながら戦闘を行っていた。不幸中の幸いとでも言えば良いのか、数は少なかったのが救いである。

 

連合の血色の悪魔等とは違い、不可思議な回避ではない。寧ろコンピュータ的な最適解をまるでそのままトレースしたような動き…、図らずも連合のパイロット達と同じように連携攻撃によって、落とされない戦い方をして行く。

それは、皮肉的な光景であった。

 

 

……

 

ギルバート・デュランダルにとって、今時の戦争は意図せぬ方向へと転がっていた。

最初こそ、己の筋書き通り地球軍は動き己の思惑通りザフトも動いてくれていた。

 

だが、何処から歯車が狂ったのかいつの間にやら、人類文明の存亡を賭けた戦争を行っていたのだ。

正直に言えば頭の痛い事象だった。

 

そもそも、人類の存亡を賭けた戦争等というものはそれこそSF映画の中だけの話であって、それこそ人類以外の異星文明との戦争とかそういうものが、一般的なものである。

未だに異星文明と出会えるほど文明力も発達していない人類が、そんな戦争出来るわけがないし、第一人間はそれが出来るほど手を取り合っているとは言えなかった。

 

彼がやろうとした事は簡単な事だ。

自らの想像する理想郷の体現を目的に動いていた。戦争の勃発だとかそういうものは副次的な物に過ぎず、結果的にそう転がってくれているのなら儲けものであった。

他力本願な話であるが、戦争そのものは本意ではなかったのだ。

 

だが、導火線に火は着けたのは事実であった。

それが、これほどのものを呼び起こすことになるなんて事、考える人間は暇人くらいだろう。

 

妥協を許されない人類の存亡を賭けた戦争に、ザフト軍の大凡全ての戦力を参戦させ、そして自らが座乗艦とするために開発していた宇宙機動要塞メサイア、それに乗って陣頭指揮をしようとゆっくりと戦線に近付いていた。

 

連合が窮地に陥っているのなら救うも良し、そのまま見捨てるも良しどちらを取っても自分には旨味しか無い。

古代文明の遺産と言ったとして、果たしてどれ程の脅威となるのか?デュランダルは敵を甘く見ていた。

 

「レクイエム映像入ります!」

 

いつからか建造されていたレクイエムと言う巨大なビーム砲台。その概要はスパイから知っていたが、目の前にするとその巨大さに目を剥く。

だが、それも別にどうでも良いのだ。

 

連合同士で潰し合っている戦線に、態々ザフトの艦隊も存在する。信頼を売りつけるのは悪いことでは無いと、首を縦に振って送り出したそれがどのような活躍をしているのか、興味本位で聞く。

 

「戦闘の状況はどうなっているかわかるか?」

 

「現在無線が通じません、光学映像でよろしければ…。」

 

光学映像、と言われて少し不満もあったがそれもまた良いだろうと思い直す。

スクリーンにデカデカと映し出されたのは、レクイエムの中心部の映像であった。

 

それは観測地点として登録されていたものであり、意図したものではなく偶然それを目にしたのだ。

だが、それは幸か不幸かあるものを目にする絶好の機会であった。

 

「なんだこれは…?」

 

メサイアは要塞である。

要塞であるが故に、その容積には充分に余裕があり高性能なCPU類もそれ相応に積むことが出来る。

そこから割り出された事によって、望遠映像もレンズを通するアナログ式とデジタル式の両方があった。

 

今回の映像はアナログ式から見たものであった。

白く美しい月面を見るに、これ以上のものは無い。それに惑星を観測するには持って来いの備品である。

が鮮明に映し出されたそれはまるで違う結果を齎した。

 

映し出されたのはミラージュコロイドが解かれたレクイエムの砲身中心部。本来であればそこにはビーム加速器や、照射装置が設置されところ狭しに機器が並んでいるはずである。

そうでなければ、巨大なビーム砲等撃てないからだ。

 

だが、それは異常な光景であった。

 

巨大な砲身の奥底に、1機のMSらしきものが横たわっている。解像度の限界でそれ以外のものは判断しかねたが、それでもその光景のな事この上ない。

 

様々な太さのケーブルに繋がれたそれが、ビーム砲の中心に寝かされている。ということはレクイエムは現在ビーム砲として使用されているのではない。と言うことだ。

 

ではどうしてそのMSは横たわってケーブル塗れになっているのかと言えば、バッテリー機と同様の状況であるのだろう。

つまり、エネルギーを得るために巨大なビーム砲で扱う、ビーム用のエネルギーポンプをたった1機(・・・・・)のMSの為に使っているのだから、その機体はどれ程の代物なのであろうか?

 

だが、そんな状況下であっても軍事について素人であるデュランダルに、その不可思議な状況に対して正しい判断など出来なかった。

 

だからこそ、映像を送ったのだ。

 

コレはいったい何であるのか?

 

と、連合側の元締めであるムルタ・アズラエルの元へと。

 

 




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