機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第38話

誰かが騒いでいる。

本来であれば静かにしなければならない、微かな振動を検知した奴等がやって来るかも知れない。

そんな心配を他所に、女性は捲し立てる用にリーダー格の男へとその恐怖を投げかけた。

 

「こ、子供達が様子がおかしくて、そしたら道が出来て。」

 

「落ち着きなさい…、深呼吸をしろ。」

 

女は震えながら、子供達が声を聞いたことや見知らぬ道が壁に勝手に空いた事を話す。

男は暫し首をひねると徐ろにその内容にある種の希望を見出した。

 

「皆聞いて欲しい、コレから俺たちは別の場所に避難する。文句の一つも有るだろうが、ここに隠れていてもいずれ見つかるだろう。

なら一縷の望みを賭けて、敢えて俺は危険に飛び込もうと思う。」

 

女がした話を交えながら選択の余地の無い現状に、湧いてきた選択肢を選ぼうという男。

それに対して反論も多少はあったが、現状ですら危機的状況であるから次第にその男の判断に委ねることになった。

 

「男の人を見た子は手を上げて?」

 

男は子供達が何者かを見たというところから、子供の直感力と言うものを信じようとした。

烏合である民衆を曲がりなりにも纏める男は、根拠もない物事を信ずる事に躊躇は無かった。

 

一人の子供を抱き上げると、先頭に立って道を歩き始めた。

避難民達はそれを追うように、一人また一人と道へと進んでいく…。

数分の間、その道に人が殺到し最後の一人がその道へと入った後その道は忽然と姿を消した。

 

最後に入った者は入り口が塞がってしまった事に軽くパニックに陥るが、周囲はそれを宥める。

最後尾がそうなっている事など先頭には関係ないのか、その道を歩み幾つかの階段を降りたところで道が開けた場所へと出た。

 

「嘘だろ…。」

 

開けた場所に出た時、誰かがそう呟いた。

彼等の目に入った光景は非常に馴染み深く、寧ろ見知っていなければおかしいものであった。

そこは、コペルニクスの都市部それを臨む展望台そんな場所へと彼等は出てきた。

 

だが、おかしなことがある。

まず、どれもコレも壊れた場所はない。

そして、周囲の道路には薄っすらと埃が溜まっていた。

 

幸いな事に酸素は存在していて、植物達は繁茂しながらも行き渡った清潔な程に整備されていた。

どこもかしこも生活感というものもなく、動物はそこには存在しなかった。

 

「ねぇ!叔父さんがあっちに行こうって!」

 

感慨にふける大人たちを他所に、子供は無邪気にそう言うと駆ける。身体を動かせて楽しいのだろう。

リーダーの男は光景を脳裏に焼き付け、避難区域になりそうな場所を探し始める。

最も検討は簡単につく、もしもこの地下都市が上のコペルニクスと瓜二つなのだとしたら、中央の広場が休憩場所にはうってつけなのだと。

 

現状の確認等色々とやる事は有るだろうが、先ずは子供達を優先する。兎に角ここが安全な場所であると信じて。

 

 

……

 

月面都市コペルニクス周辺には小規模ながらMSの部隊が展開していた。

小規模と言うが、その数はそれなりなものである。

艦隊戦を行っている向こうとは違い、都市に対する防衛と言う物を行っているのだから地形を利用する者達もいる。

 

先行するキラとアスランの目には奇妙な光景が広がっていた。ダガーやウィンダムを中心に、見たこともないMS達。ダガーに似たような物から全く違う巨大なそれ等、まるで博物館のようにズラリと並ぶ光景に、それが現実であるとは思えなかった。

 

「なんなんだコレは…?」

 

「フレイが言ってた過去の遺物だとかそう言うのだと思うけど、コレが全部そうってことだと思う。」

 

様々な形態の物たちではあるが、一つ共通点があった。

それはそれぞれの機体が別個に熱源を持っていること、つまりバッテリーではなく内燃機関で動いていると言う何よりの証である。

宇宙空間でも駆動する機関としては、原子力か核融合か確立はどちらの方が高いか?

 

つまり何を言いたいのかと言えば、最低でもこの機体群はフリーダムやジャスティスと同じ様に推進剤が続く限り、この宇宙空間での戦闘を約束されていると言う事実であった。

 

巨大なミーティアでそれらの大群に飛び込んでいく二人には、当にそれは死地であった。

防御火線が雨霰と降り注ぎ、ミーティアへと殺到する。

ビームのエネルギー量はこの時代のそれとは一線を画す、ビームの粒子が散ると、それらがミーティアを削っていくのだ。

 

不幸中の幸いと言えば良いのだろうか?機動戦力であるMSが棒立ちで迎撃を行っているおかげで2人は未だに生存していた。

なぜ彼らが棒立ちしているのかはわからない、ただI.ジャスティスとS.フリーダムの動きにはきちんと対応して避けてくる辺り、決してそう言った行動が出来ない訳では無いのだろう。

 

2人は現在窮地に立たされている。

ミーティアならびにSフリーダムの持ち味であるはずのマルチロック機能、それがあろう事かM粒子の影響によって機能していていない。故に、有だけの弾薬を戦場にばら撒く。

 

コレでは足枷である。寧ろミーティアに乗っているからこそ、コレでは言い的であった。だがそれで良かった、寧ろその御蔭で敵の目は二人の方へと向いていたのだから。

 

ミーティアの速力に追いすがる機体は現状確認出来ない、それによってコペルニクス数千キロの戦場は掻き乱されている。

 

 

コックピットの中でキラは目標を捉えると躊躇無く引き金を引いた。それは彼としては異例の事であった事だろう。

元来彼の戦いは甘い物がある。

それは彼が人を殺したくもないのに戦っていると言う事実から来るものであった。

 

しかし、今目の前にある数々の敵にその容赦は見られない。寧ろ一発一発心を込めて撃っているとすら言えた。

 

『アレ等は皆生きてない、だから躊躇したら駄目よ?』

 

と、それをキラ言った本人は何処へと行ったのだろうか?

 

ピピピピとフリーダムのセンサーに反応がある。

キラはそれに釣られる様に反応し、その速力に驚愕する。ミーティアは戦艦のスラスターに用いられるそれを使い、空間を縦横無尽に飛び回る機動兵器だ。

そんなミーティアに迫る勢いで、1機のMAが追いかけて来ている。

 

高性能スラスターを用いた加速は、ミーティアのそれを凌駕し彼を驚愕させた。

そしてその機体の腕部と思われるそれから、メガ粒子砲が放たれると機動陸と引き換えに運動性を失った巨大なミーティアではそれを凌ぐには問題がある。

 

「くっ…うっうっ…!」

 

間一髪で避け続けるのは流石であるが、キラにしても人間である。顔の皮膚が後ろに引っ張られるほどの加速をしてなお、その機体は追いすがってくる。

 

知っているものがいればその機体をこう呼ぶだろう。

 

ジャムル・フィン

 

と。

 

メガ・ブースターによって加速する本機が、ジリジリと近づき次第にビームの着弾点が近づいてくると、中央部の口吻部が開きそこにビームの粒子が集約され始める。

 

ただでさえ避けるので精一杯の現状、それを止める手立てはキラにはなかった。そしてその光景はキラの僚機であるアスランのミーティアも同様に追いかけられている。

 

二人にとってこの様な戦場は始めてであった。

自分の機体とほぼ同等な者が、量産機として宙域に展開しそして機体よりも高性能なそれに追いかけ回される。

 

連合のパイロットならば似たような経験をしたものは多いだろうが、それでも数はどうしようもない。

殆どの機体がその性能を生かしていないのが救いである。

 

と、キラの敵の口吻部が光り輝くよりも速くに爆発する。

 

キラとアスラン、敵に取り囲まれた二人の孤軍奮闘。それを他所に一人宇宙空間で物陰に隠れながら、その戦場の遥か彼方からそれを狙い撃った者がいた。

 

「アンタ等の仕事はコレからなんだから、まだ落とされないでよね。」

 

岩塊と光学シートに身を包んだ機体、ガンダムがそれを見ながら二人を援護し、一発撃てば場所を移り撃てば移りを繰り返す。

 

たった三機されど三機、囮としての役割は充分に果たしている。

敵の攻撃が積極的ではないにせよ、良く出来ているように見えた。

 

だが、それを相手する為に三機のMSが戦場に現れると、その大勢が変わることとなる。

 

 

 

 

フレイ等三機が戦闘を行っているところから、コペルニクスを挟んで真反対の方角、その空間には何も存在していなかった。

だが、1機の哨戒機がその方向を凝視している。

僅かにだが、星と星の位置がズレ空間が歪んでいるように映ると、その方角に対して迎撃行動を開始した。

 

「ちっ!気付かれた。ミラージュコロイド解除、艦隊最大船足、MS各自発進開始せよ!」

 

ラミアスは声を荒げてそう告げると、慣性航行から一気にスラスターを噴射させエンジン出力を臨界まで上げる。

アークエンジェルの巨体が急加速する中、カタパルトデッキの装甲が展開し中から機体が現れる。

 

黄金に輝く趣味の悪い色味のその機体、それは艦を護る為に現れた。

 

「ムウ・ラ・フラガ、アカツキ出るぞ!」

 

カタパルトの信号が赤から青に変わるとカタパルトから射出され、そしてその瞬間を狙ってビームが機体を撃ち抜かんと射撃される。

それを盾で受け止めた瞬間、フラガはそのビームの熱量の高さに舌を巻いた。

 

「おいおい、MSにそのレベルのビーム砲を積むのかよ!」

 

アカツキには、ヤタノカガミと言う所謂対ビーム兵器様の特殊な装甲板を持っているのだが、コレは対荷電粒子用の装備である。対荷電粒子ビームに対しては無類の強さを誇り、反射する事が可能であるが、ローエングリンのような陽電子砲に対しては、分散させる事により、その性質を霧散させている。

 

だが、今回受けたそれはMSが保持するには余りにも熱量が高く、物理運動として重い一撃であった。

メガ粒子砲…それが当たり前のように撃ち込まれてくる戦場、ヤタノカガミの接触箇所は瞬く間に赤色化する。

 

同時に複数発受けた場合、それはもう悍ましい結果が待ち受けている事だろう。

まだまだ、遠距離からの攻撃であるために至近距離から撃たれた場合、貫徹も考えうる結果であった。

 

「おい、こりゃ手に余るぜ?」

 

飄々としながらも、額には脂汗が滲み出ていた。

 

 

アークエンジェル等が姿を隠していたものは、連合の開発していたミラージュ・コロイド・ステルスその大型発展版。

元は、レクイエムの屈折リングを覆い隠す程の範囲を担保出来る代物であり、それの小型版をドミニオンは改修時に装備した。

 

完全に条約違反の代物であったが、この際この問題は極めて軽いものだろう。

小艦隊は、既にコペルニクスより400kmの距離まで近づき、相対速度を合わせ徐々に月面へと近づいている。

 

先の三機に対する迎撃戦闘の為に、戦力を持っていかれているため、この場に置いてMSの数はそれ程多くはなかったが、少数をこちらに配する敵を前に出し惜しみせずに戦力を投下した。

 

だが、その中にエターナルの姿は無かった。

 

エターナルを欠いたまま、コペルニクス近郊へと突入を開始する彼女等を前にして敵が姿を現す。

ソレは少し異質な敵であった。

 

小さいのだ、ソレは小さくそしてその姿はまるで虫を彷彿とさせるそれである。

ソレが、三機も目の前に立ちはだかった。

 

次々と発艦するMSその中にシンの駆るデスティニーの姿はない。だが、ミネルバから現れるレジェンドやドミニオンから現れるストライク、アークエンジェルからのアカツキは、其れ等と相対する敵に向けて突撃していった。

 

猛射の応酬、互いに一歩も引かずその反応速度は人間のソレではない。だが、三者三様にソレは続く。

少しずつ艦隊から離れ行く。

 

「やっぱり、エネルギーってのは足枷だよなぁ!!」

 

アカツキは存分に力を発揮する為に、突貫工事で取り付けられたジェネレーターを駆使して、己の持つ最大の武器であるシラヌイのドラグーンを展開する。

 

「こうやって連携するのも悪くは無いな」

 

ラウが答えるように呟き

 

「この数を相手にどう対処する!」

 

レイがその言葉に応える。

 

それぞれの機体がドラグーンを展開し、驚異的な空間認識力を保持する三者による波状攻撃が開始された。

…が、その中を敵は突っ切る様に、突撃してくる。

 

誤算があるとすればコレだろう、通常の敵であればドラグーンは展開された場合回避を優先される。

だが、目の前に立ち塞がる三機…

 

シャッコー

 

には対オールレンジ攻撃用のプログラムがしっかりとインプットされている。

無類の強さを誇るドラグーンは、この時明確に足枷になった。

 

接近を仕掛けてくる敵に対して、三人の中でレイだけが驚愕する。ムウとラウは無関心でそれに対応する為に機体を急激に動作させていく。

 

「レイ!虚を突かれるぞ!」

 

ラウはまだ余裕が少しある、レイにアドバイスするように声を放つ。ソレは無線を使わずの呟きの言葉。

 

「わかっています!貴方に出来るのなら、俺にだって出来るはずだ!」

 

それに無意識にレイは応えた。

 

「おいおい、わかってんじゃないのさ!」

 

茶化す様に言うムウにも、余裕はさほど無い。だが、今ここで敵を足止めしなければ艦隊が壊滅する事は目に見えていた。

 

その間にも、敵の増援が駆け付けると艦隊に近付いてくる敵を前に、ルナマリアは獅子奮迅の働きを見せる。

彼女はスーパーパイロット等ではない、どこまでいってもエース止まりだろう。

だが、エースであればこの窮地を脱する事など出来はしない。

 

インパルスが全てのシルエットを装備した姿で前線を張る。

ジェネレーターによって性能限界を引き伸ばされたソレは、デスティニーに勝るとも劣らない。

 

敵の姿は一様に標準的なMSよりも一回り小さい、何よりビームシールドを当たり前のように展開し、そのギョロギョロとした目玉のような双眼が艦隊を付け狙う。

すばしこい敵、それでも数はそれ程多くはない。

 

艦隊に配されたMS数、24機対する敵も24機…。

 

ナタル、タリア、ラミアスはほぼ同じタイミングでこれに疑問を感じた。

まるで敵が、始めからこちらの戦力を知っていたかのように、敵は駒を配置している様に感じられたからだ。

 

その駒、ゾロアットは艦隊との等間隔を維持しつつ、迎撃に出てきたMSを相手に余裕を見せながら悠然と戦っている風にも見えるのも、その要因であろう。

それでも、誘われていようとも彼女等は前に進まなければならなかった。

 




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