機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第39話

 

ダイダロス基地を正面から攻撃している連合、ザフトの合同艦隊は危機的状況に対して、敵に対する肉薄攻撃を敢行している。

だが、敵からの迎撃の光が止むことはなく、一つの光が瞬く間に数隻或いは十数隻の艦艇が大爆発を起こす。

 

それでも、艦隊としての威容を今尚知らしめながら徐々にではあるが、敵中心部へと肉薄することに成功していた。

 

かに見えた。

 

「我が方の損耗20%を超えました。」

 

「まだまだ、敵中心部へと殴り込みに行く事こそ生き残る道なり。全艦そのまま、突撃を継続。敵の迎撃線に食い込みそのまま…」提督!新たなる敵影を確認、未知のMS群艦隊へと接近中!!」

 

「なんだと!監視員は何をしていたか!」

 

前門の虎、後門の狼とはこの事であろう。いや、状況にしてはもっと絶望的なものであろうか?

ソレは突然の出来事であった。

 

レーダーにしても可視光にしても赤外線にしても、汎ゆる監視網はそれを捉えることは出来ず、いとも簡単に艦隊の裏側へと敵の侵入を許していた。

迎撃戦闘を開始するMSもいるにはいるが、その性能差は埋めるには大洋を砂で埋める程に難しい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

兎にも角にも歯が立たず、それどころか其れ等の機体は次々とMSを無力化していく。

艦艇に関して言えば、対空砲群を破壊しエンジンそのものを破壊する事で航行能力を失わせ、一箇所に纏めようとしている。

 

そのどれもコレもが

 

無力化

 

に比重を置かれており、もはやソレは戦争とは言えず。

寧ろ駄々をこねる子供を宥めるように、片手間で行われている始末だ。

では、あの強力無比なMSによる砲撃は何のために有ったのか?

ソレは単純明快で、単に時間稼ぎに必要な物だったのだろう。

 

旗艦であるアガメムノンⅡもまた、その戦闘能力を完全に無力化されていく。

提督にとってこの出来事は、衝撃的な物事であった。

狡猾な猫であろうとも、鼠を侮ることはしない。そのようなことをすれば、万が一というものがある。

 

だが、今の光景を目にすれば相手は自分達を鼠とも認識していないという事だった。

 

「舐めていると言うレベルではないな…、コレでは躾だよ。」

 

ガッ…ガッ…ピー…

 

艦内モニターに顔が映りだす。

見た覚えがある様な、無いような…そんな顔だ。

その顔に不快感はない、寧ろ親しみを込めて言えるのは愛らしい素顔である事か?

 

汎ゆる人種の汎ゆるピースを当てはめた人類の究極的な平均値、その顔が今目の前のそれに映し出されていた。

 

『始めまして、挨拶が遅れた事申し訳ありません。

私は、

 

The nation of Earth operater system

 

親しみを込めて皆、NEO(・・・)とそう呼ばれておりました。』

 

呼ばれておりました。要するにそう呼べと言う強制的なお願いであろう。

提督の額には汗が滲み出る、嫌それは脂汗のそれではない寧ろもっと冷たいものだ。

 

「ネオか…、あの娘の話が本当だったとして、コレではな…、それで君の目的は何なのかな?

我々(合同艦隊、)を相手にして、何を願望をする?」

 

ソレを聞いて不気味に微笑むと、画面の中の存在は嬉々として話し始めた。

 

「私には、叶えなければならない願望等ございません。唯一あるのだとすれば、それはそう…全人類の繁栄でございましょうか?」

 

「それが何故この様な形になるのか?貴様が操った人間の姿を見たぞ、アレは人の所業ではない。」

 

提督!

 

大声で後ろから話しかけられ、提督は振り向く。艦橋要員は一様に、提督の顔を見るや恐怖の表情を浮かべると提督はソレを見るや再び画面に顔を向ける。

そこに流れるのは砂嵐とノイズだけ…だが彼の耳は、イヤ脳はハッキリとその声を拾う。

 

「私は平和の使者です。ですから、その戦争の種を何とかしようとしています。」

 

その言葉は誠実であり、善意に満ち溢れていた。

 

そしてソレを実現する為に、レクイエム中心部では一点にエネルギーが、送られ続けていた。

 

 

……

 

コペルニクス上空での戦闘が激化しているものの、その戦闘での損害は攻守共に軽微なものである。

攻め手である筈のキラ等の攻勢は、まるで謀ったかのように事前に準備されていたMS部隊によって受け止められている。

 

そのMS達の動きも積極的ではなく、寧ろ防御一辺倒であり殺気というものがまるで感じられない。

それ故か、フレイはこの時既に自分達の作戦の失敗を予見していた。

 

余りにも分かりやすい状況、そして其れ等を俯瞰して見ているからこそ、敵が何をしているのか分かってしまった。

アークエンジェル等に配置した部隊は、恐らくは艦隊内に存在する汎ゆる防御火器を破壊した後、艦隊の完全無力化を行って鹵獲する為に、態と攻撃をしていない。

 

そして、誘い出されたMSは急所を外しながら撃墜する事を想定して動き、パイロットに対しては恐らくは…引き摺り出す為に殺そうともしていない。

 

遊んでいるのだ…遊んでいるからこそ誰も(・・)死んでいない。

 

自然と手に握力が入る、遠方のダイダロス基地攻略部隊はその混乱を感じ取れた。

サイコフレームによって強化された彼女の感知能力は、想像を遥かに超える距離を認識し汎ゆる方面での敗北を知るには充分な悲劇を、彼女の脳裏に届けている。

 

辛い痛い哀しい…怖い。

身体の震えを自分を鼓舞して抑えているが、彼女の精神は限界に近付きつつあった。

余りにも大きな絶望と、余りにも多くの死とを経験した彼女は冷や汗を流す。

ハァ…ハァ…と息を荒げる。

 

それでも、銃眼を覗くのを辞めることはない。せっかく二人が囮をやっているのだ、それを支援しないなどあってはならない。

最後まで足掻いて藻掻く、何があっても…と心を奮い立たせようとした時。

 

『もう、諦めたほうが良いのではないかな?』

 

脳裏に誰かが語り掛けてきた。

そして銃眼の先でも、事態は動き始めていた。

 

ミーティアのエンジンノズルが破壊された。それも2機とも別の角度から。

ソレは何処からともなく撃ち抜かれた、フレイが気が付いた時には既に射撃が行われた後であった。

射撃が行われた先、何も見えないような空間にフレイは意識を集中すると、確かにそこにはナニカがいた。

 

ソレは姿を現すと、その超大なライフルを更に破壊されたミーティアより脱出したフリーダムとジャスティスに向ける。

 

「殺らせない!」

 

フレイはソレをやらせまいとビームを放つ、がソレは無情にも粒子が霧散するように手前で消えてしまう。

射程距離が余りにもかけ離れている、現行のあらゆる通常兵器がその射程の外にある事は明らかであった。

 

猫目の機体は半円のを描く背部のソレを消すと、射撃姿勢から直立の体勢となる。

フリーダムとジャスティスを取り囲むMS群はまるで鳥籠でも作るかのようにそれぞれを包囲する。

 

それぞれに1機ずつの機体が割り振られ、その籠の中へと送り込まれていた。

アスランには赤い1つ目のMS、それこそジャスティスよりも一回り大きな機体。

そして色違いの同様の白い機体が、フリーダムへと送られる。  

 

『そう…、君達に勝ち目はない。2機にはre.シナンジュを宛てがってある。性能はこちらが圧倒的だ。』

 

フレイの背後にはいつの間にか(・・・・・・)MSがいた。

ソレは黒く、それでいて一角獣を彷彿とさせる意匠を黄金のと共に添えられている。

声は一見すればそれから発せられているが、全く別の角度に此等の気配がある。

 

「…どうしてアンタはこんな事をするの?」

 

『どうして…?ソレは簡単な事だ、私はこの為に創られた。人々を手助けし、より良い宇宙開発の為に今尚こうしてその使命に殉じている。

寧ろ、褒めていただきたいものだ。私は貴女方に奉仕する者だからな。』

 

イマイチその言葉の意味を理解できるものではない、特にオールドタイプと呼ばれる普通の人々にとってそれは意味を成さない。

だが、NTと呼ばれる者の洞察力とは当にこういった物事に対して発揮されるものなのだろう。

 

「じゃあ今直ぐに止めなさい、奉仕する者なら主の言葉に従うものでしょ?」

 

『ソレは出来るものではない。この恒星系に蔓延る寄生虫どもを駆逐し、人類(・・)を保護するのもまた、私の役目だ。

その為には何でも利用しよう、この地に眠る汎ゆる全てを使って。』

 

その言葉一つ一つに悪意というものは皆無であり、此等汎ゆる事象に対して行われている物は全て善意から来るもの…、余りにも傍迷惑な事柄であろう。

望んでもいないことを勝手にやられるのだ、迷惑この上ない。

 

だが、それよりも気になった事があった。

 

「……アンタ…そのパイロット…どうしたの?」

 

『コレかい?良い材料が手に入ってね、コーディネイターと言うものはつくづく頑丈なものだよ。

働いていない遺伝子を強制的に発掘し、強化人間とした。

 

ナノマシン兵は損耗は少ないが、統制が難しい。やはり生体CPUに勝るものは無い。

まあ、余分な物は必要ないからな。脊椎と思考することが出来るだけの脳だけ有れば充分。』

 

ソレを聞いただけに、フレイは目を大きく開きそして確信した。目の前のコレは、OTを資源としてしか見ていないと言う事を。

 

その時だ、大きな爆発と共にコペルニクスのドームが破損すると、ピンク色の軍艦が姿を現しドームへと強行接舷した。

 

ソレを合図とするように、ガンダムは動き出す。マウントされたライフルを起動し、機体G.バンシィに向けると相手も超反応でそれに対応する。

 

ビームは機体表面で屈折し、その機体が変形を開始し見知った双眼が現れる。

 

『交渉決裂か?まあ良い、何れ理解していただける事を期待して…、迎撃戦闘を開始します。』

 

各戦場において、戦闘と言う名の元に一騎討ちが始まった。

 

 

 

……

 

 

「総員衝撃に備えろ!!」

 

バルトフェルドの声が艦内に響き渡り、指令席へと座るラクスもまた口を噤みながらその衝撃をなんとか堪えていた。

 

グガガガガガガ

 

と船底がドームを突き破り、コペルニクスの居住区画へと船体が食い破るように突入する。

そして、地球よりも遥かに弱い重力は推力の低下したエターナルを捕まえるのには充分な力を発揮した。

 

最後にガクンとして船体が地表に止まると、エターナル艦内から幾つかのMSが吐き出されていく。

その中にはシンの駆るデスティニーの姿もあった。

 

「急ぎましょう、もう私たちには時間が無いのですから。」

 

衝撃からいち早く立ち直ったラクスは、バルトフェルドの尻を蹴るが如く、編成されていた陸戦要員と共に艦内へと駆けていく。

バルトフェルドはソレを見送ると、ノーマルスーツに着替える為に席を立つ。

 

不時着した船は良い的だろう、ならば今自分の出来ることをするまで。と、彼は再びMSでの戦闘に行く。

 

コペルニクス内部の空気は既に全てが宇宙へと放出されており、音など響きようがない。

そんな空間の中、光源の消えた空間に幾つかの光が点々と灯っていた。

 

そこから強烈なビームが放たれると、周囲を警戒していた一機のザクの盾へと命中すると、そのビームコーティングをいとも容易く貫徹し、左腕事ソレをもいだ。

なんとかコックピットへの直撃は防いだものの、その機体の戦力価値は著しく低下したと言えるだろう。

 

「おい!皆気をつけろ、コイツら強いからな!!」

 

シンは周囲にいる相手が強烈な熱源を持っていることをセンサーで確認していた。

要するに、この敵も皆核融合炉で動いているのだと。

情けない顔をしたMS、周囲を囲むように点在するソレは弱々しい顔をしながらも、何処か工業製品めいた物を持っている。

 

本当のところ、その名を記すものは無いが知っているものがいればこう言うだろう。

 

ジムじゃねぇかと。

 

建物を障害物として利用しつつ、それぞれがバラバラに展開し市街戦が開始される。

 

シンはラクスの動く方向に敵を誘導しないように、最善の戦闘を行うことを心掛けている。

そんな彼は、真っ先に敵へと突っ込んでいった。

 

「ハァァァァ!!」

 

と言う気合いの入った声でアロンダイトを抜き放つと、ソレを真上から叩きつけるようにジムへと振り下ろす。

普通の機体、CEのMSであればその動きに対応する間も無くソレを食らうだろうが、この機体には信じられないギミックが存在する。

 

ソレは、

 

学習型コンピューターから得られた戦闘データ

 

ブラッシュアップされたそれから裏打ちされた戦闘方法論から、アロンダイトを左手を上に掲げ持った盾を、若干斜めに構えるとそのガンダリウム合金性の盾はアロンダイトのレーザーを受け止めながら、物理部分を弾く。

 

落ちた盾と平行に肩へと伸ばした左腕がサーベルの柄を握ると、そこにビーム刃が形成されデスティニーを狙う。

 

実体盾のないデスティニーは、光波盾でソレを受け止めようとしたが、

シンの脳裏に、ピキーンと何かが走るとソレを辞めスラスターの勢いのままに左足を回し蹴りする。

 

ソレを予見していなかったのか、ジムはソレを避けるように後ろへと飛び抜く。

 

エターナル所属のパイロット達は、ソレに翻弄されながらも前線しているように見える。

だが、敵は明らかにおかしな動きをしていた。

ソレは一部の場所に関しては、明らかにそこでの戦闘を行わない様にしていたのだ。

 

そこは…避難シェルターであった。

 

戦闘を続ける中、その場へと1機の機体が転送されてくる。ソレは艦隊を襲うそれと同型のMS、シンはソレに戦いを挑む。

 

 

戦闘の傍ら、ラクスは導かれるようにその場を走った。

ノーマルスーツに付属するエアクラフトも、活用しながら低重力下をひたすらに動き続けた。

その進行に迷いはない、寧ろ導かれているように見える。

いや、実際にコレは導かれていた。

 

ラクスには分かっていた。

フレイに託されたサイコフレーム、ソレは淡い温かな光を放ちながら、ラクスに道を示していた。

ソレがどういう原理であったのかなど、誰にもわからない。ただ、今はその光を信じる他無かった。

 




本項にて出現した物はこの物語の終演後、その性質を公開します。

誤字、感想評価等よろしくお願いします。
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