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揺れる空気、空間に反響するくぐもった音。
風切り音のない世界で、其れ等が人々の声を反映し人類の進歩と調和を象徴する…。
拍手の中でラクスは目を開くと、周囲はスーツや様々な民族衣装に身を包んだ人々によって囲まれていて、自分もまたプラントの議長服に身を包んでいた。
そして気がつけば、自分が椅子に腰掛けていることなど、そんな事に気を向ける暇もなく空を見上げる。
大きく曲がるような空と、そこから伸びる幾つかの柱。中央にそびえ立つ芯柱から枝葉のように延びているのが見える。
「コレは…コロニー?」
所謂スタンフォード・トーラス型と呼ばれる。小規模なコロニー、それこそ宇宙開拓黎明期模索された物の一つである。
オニール・シリンダー型よりも居住スペースが限られていると言う欠点から、次第に姿を消した物の一つであるが、そんな物であるにも関わらず様々な人々がそこにいた。
幾人かの人間が話をし終えている。
そんな中で気になる語句があるのだとすれば、
始め地球連合と聞き間違えたのだろうと思っていたソレは、多くの人々の宣誓によって事実だと認識される。
そして、いつの間にやら時間が過ぎて…、どうしてだろうか?
プラント最高議長してのラクスが壇上に立つ時間がやって来た。
しかし、単なる小娘でしか無い彼女には話すべき文言はなく、何を話せばと口をつむぐ他無い。
壇上への歩みは一人の男性がすれ違う事で、コレが夢であると認識した。
男は壇上に立つと暫く周囲を見渡し、満足気な顔をすると一つ深呼吸する。
そして言葉を紡ぎ始めた。
『……地球と宇宙に住むすべてのみなさん、こんにちは。わたしは地球連邦政府首相、リカルド・マーセナスです…』
地球連邦政府…、地球という一つの惑星上に存在する汎ゆる政治組織団体が一つとなり、地球を1個の国として構成する非常に大きな組織。
ソレは、国家間の垣根を越え戦争という時代の終わりを意味するような、そんな夢のある話。
そんな国が誕生する瞬間、誰もがそれを望みそしてそれを受け入れようとする。
そんな光景をラクスは目にし、そしてその初代首相となるべき人物、リカルド首相の一字一句に耳を傾ける。
ソレはCEと言う時代に対してのアンチテーゼ、全てが手を取り合うべきと言う理想を実現した恒久的な願い、それが目の前に広がろうとしている。
彼女はその言葉を光景を目にし、人というものに対する希望を強くする。
『現在、グリニッジ標準時二十三時五十九分。間もなくです。』
彼女はその瞬間を目にすべく、意識を集中し………そして悲劇が訪れる。
何処からとも無く爆発が起こると、次々とコロニー外壁が破壊されていく。
人々が宙を舞い、宇宙に舞い上げられまるで人形のように意識を刈り取られていく……。
人というものはどれ程愚かなのだろうか?
自らが許容出来ないとそう感ずれば、暴力で全てを解決しようとする。
せっかくの平和も、そんな小さな軋轢によって無に帰す…。
懲罰の戦争が起こり、その全ての責任をなすり付けそこに居住する人々を宇宙へと追いやる。
最初の宇宙移民とは決して建設的なものではなく、懲罰的なものとなり、ソレは国を挙げてのプロジェクトとなる。
積極的に宇宙へと進出しようとしていた者達が死に絶え、結果消極的な進出者によって全ての歯車が狂い出す。
人間狩り
棄民政策
軋轢
その全てによって醸造されたカクテルは、悲劇的な物語へと進んで行く。
その道を…、ラクスは一人観ていた。
ある時コロニーの中で小さな集会が開かれると、その集会は瞬く間に拡がり一つのコロニー郡はその思想に狂喜した。
一人の先導者によって創られた道を、多くのものが目にしその先にある希望に酔いしれ、そしてそれを利用する。
一つ目の巨人が現れた。
神話のサイクロプスのように、巨大で威圧的なソレは次々と他のコロニー群を破壊していく…。その周囲には人であったものが宙を舞う…陰惨で、狂気的な光景であるがある種牧歌的なものである。まるで森の木を伐採するように。
気が付くとラクスは地上にいた。そこはきっとシドニーと呼ばれる場所だろうか?特徴的な建物がある。
ただ、そこは見覚えのない場所もあった。
クレーターが無いのだ、だからだろうか?景色が少し違う。
周囲の人々は何かを見つけたのか、それを指さす。ラクスはその指の指し示す方向を見上げると、驚愕した。
巨大な何かが地上へとゆっくりと落ちて来ている。いや、良く見ればシリンダー型コロニーが、地上へと落下してきているのだ。
瞬く間にソレは落着し、周囲にある汎ゆる物を破壊していく。
誰かが言った。
『
と。
数百年とも千年とも呼ばれる長い長い戦いの歴史。もはや語られることもない、失われた時代。
幾度となく訪れる盛衰の歴史は、今もなお終わることの無い連続性。
フレイから聞いていた内容と合致するその映像は、聞いていた彼女にしても、絶望的と言わざるを得ない連続性を前に打ち拉がれる。
『コレを前にしても、貴女は前に進みたいですか?』
女性の声が語りかけてくる。
否定するのは簡単だ、だがそれを心から呼び掛ける事が果たして出来ようか?
映像の中と同じ様に、また争いをし続けるだけなのではないか?ではいっそのこと、アレに管理されたほうがより良い生活を担保されるのではないか?
そう思えてしまう程に、迷いが現れる。
『それでも…「それでも前に進もうとするのが人間だ!」』
何処からか声が聞こえた気がした。
管理されて生きる…、ソレは果たして人間の生き方なのだろうか…?
おぎゃぁ…おぎゃぁ…おぎゃぁ…
何処かで赤ん坊が泣いている…。
隕石が地球に落ちようとする中、突如として虹が地球を覆い地上に生きる新たな生命の鼓動を救う。
ソレは軌跡だ奇跡だ。
人の思いが不可能を可能にするという、あらん限りの希望の光。人はいつか、争いという道を乗り越え手を取り合い生きる事さえ出来るという、紛れもない証。
思想も住む場所も何もかもが違う人間という生き物が、奇跡を起こす。
気がつけば、いつも奇跡のそばにはそのMSがあった。
人の顔を模した仮面を付け、その時代を象徴する為に創られたMS達…
ある者は巨大なコロニーと一体化した敵を恋人と共に打ち倒し、ある者は一人の少女と共に有るために戦いを終わらせ、ある者は人々の願いの為自らを犠牲にすることも厭わずに…。
奇跡を、起こし続けるガンダム。
ソレはいつも歴史の表舞台に現れる。
3機のMSが戦っている。
その内の2機は、仲間なのだろうか?丸みを帯びた顔にヒゲをたくわえたMSと身体をバラバラにしながらも戦いをするMS。
ソレに相対するは、ヒゲのMSに良く似た機体。唯一の違いがあるとすれば体色が黒いというところだろうか?
世界は機械に侵され、人々はそれから逃げ惑い地表を覆うほどの鋼鉄が世界を蝕む…。
戦いの終わりに、仲間であった者達は黒い機体を打ち倒すと思想の違いから激突し、ヒゲの機体が勝つ。
全てを帳消しにする為に、人々を星を護るために切り札が切られる。
その光は美しく、太陽系全土へと拡がる。
全ては砂へと帰り…
牧歌的な世界が広がる、その中を大きな違和感とともに巨人が歩く。
だが、ソレは争いをしているのではない、畑を耕しているのだ。
長い長い休息の後、多少のいざこざを経験した人類は再び歩みを始める…。
そして、今へと至る。
映像は映す、今もなお戦っているの人々をラクスは目にする。抗おうとする人々を。
キラとアスランの機体が、傷つきながらも月面上で戦う姿を。
宇宙にて、苦悶の悲鳴をあげる機体を操りながら戦うフレイを。
……
遊ばれている。
シンは何を思ったのか徐ろに機体を急加速させアロンダイトを叩きつけるよう思いっ切り振り被ると、一番近くにいたシェルターを護っている機体に対して斬り掛かった。
それを止めるために咄嗟に見知らぬ敵が瞬間移動をして目の前に立ち塞がると、アロンダイトを手から離してソレに対して突っ込む。
武器もない単なる突撃に虚を突いたのか、ソレは慣性に従って後ろの機体ともどもシェルターに突撃した。
流石にシェルターへと突撃したのは完全な事故ではあった、その為シンも最初は気が動転しそうになったが…。
シェルターの外壁が崩れると中身が見える。
シェルター内部には既に空気はなく、あったのは…
数十とも数百とも思われる人々の遺体と、ドロリとした緑色の液体。
ソレと共に羊膜に包まれるようにしている人々の姿だった。
彼はソレが異常事態である事など直ぐに理解すると、データを直ぐにでもエターナルへと送る。
と、その直後デスティニーが途轍もない力によって吹き飛ばされた。
デスティニーガンダムの重量は79.4tソレは全備重量ではない、すると武装を含めれば100t近い重さになるが、ソレが月面の重力下であるとは言え、上空1kmへと蹴り飛ばされた。
スラスターで抑え込まなければ止まらず、ソレがどれ程の胆力を目の前の敵MSが持っているのか、知らしめてくる。
距離を取りながら、地面に突き刺さるアロンダイトを拾い上げる。
あいも変わらず、攻撃は仕掛けてこない。
だからか、シンは上空からそれを見下ろすとその機体が何も武装を装備していない事に、やっと気がついた。
いや、よくよく見れば
ソレが何であるか、分からないが兵器であるとシンの直感は身体に訴えた。
悪寒がする、直ぐに回避軌道を取ると機体の直ぐ傍に有った建物がひしゃげ、叩き潰されている。
不可視の攻撃、それもその攻撃は打撃系のものだろうか?センサーが攻撃判定する事を拒んでいる。
シンの背中に冷や汗が流れる。
「メイリン!解析急いでくれ!!」
エターナルの内部では幾人かのスタッフが、ラクス隊を待ちながら防衛線を張りつつ、シン等MS隊からの情報をいちいち整理していた。
「急いでって言われてもこっちだって大変なんだよ!!」
そう口にしながらもメイリンは、自らの能力をフルに活用して解析を急ぐ。
ドーム内部の映像も、地球だけでなくプラントへと量子通信にて送り付けた。勿論添付資料も創ってある。
それだけ見れば、目の前の奴等がどんだけ恐ろしいのか分かるような物を。
そして、デスティニーを攻撃してきた機体の所持しているものによる攻撃、ソレが何であるのかの解析を進めていくと、何やらおかしな現象が起きていることに気がついた。
ソレの発生した周囲では、光の屈折率が少しだけ変化している。
だが、ミラージュ・コロイドであればそこに物体が有れば直ぐに解析出来ようが、コレはそうではない。
攻撃の直前だけ発生する、所謂重力異常のようなそんな攻撃だろうか?
解析したデータを逐一各機に送りつけているのだから、メイリンの能力は大したものであるが…、ここに来てタイムリミットが迫って来ていた。
ミノフスキー濃度が上がってきている、エターナル内部の電路が徐々にではあるが死に始めており、早めの対策が急がれる。
だが、それはエターナルだけの問題ではなかった。
デスティニーの機体の色が少し斑のようになり始めている。コレはPS装甲が電気に依存しているという特性上起きている。
電位差によって硬度を担保されているPS装甲はミノフスキー粒子の電位差を均一にし平坦とする特性とは明らかに相性の悪い装甲である。
つまり、今のデスティニーは物理に対する圧倒的な防御力と言うアドバンテージが消えかかっていた。
シンはソレに気が付いていない、だが本能が叫ぶ次にアレが当たったら不味いのではないか?と。
NTにも似た直感が警笛を鳴らしているが、微動だにしない敵に対してどう対策をとるのか?
一瞬の思考と言う名の意識の空白、その虚を突くかのようにまた、いつの間にかデスティニーの懐へと侵入してきた機体が、殴り付けるように右腕を前に突き出そうとしたところで、シンは咄嗟にフットペダルを踏み込みながら、アロンダイトを盾とする。
すると猛烈な音を立てて、アロンダイトがひしゃげ呆気なく折れていた。
その作り出した隙間に、パルマをねじ込むと射撃する。
一瞬やったと思ったのも束の間で、それは敵機の表面をヌルリと曲がると明後日の方向に弾かれる。
その映像も逐一エターナルへと送られる解析され、そして遂に敵機の周辺に存在する力場を発見した。
それは本来であれば核融合炉の炉心を保護する為に使われる技術。それを用いて汎ゆる物体を防御する為の、不可視のシールドとしつつ尚且つそのIFを使用する特殊な駆動方式、IFビーム駆動によって機体を駆動させている。
それはフレイより齎された記述をデータ化したものをインプットしたものに当て嵌めただけではあったが、全ての数値がそれを裏付けていた。
それを飛ばして武器にすら転用している。
空間そのものを歪めるほどの出力をほこるソレを。
それぞれの場所において戦闘が続く中…、レクイエムの内部にて黒いヒゲのMSが今再び起動する。
怪しげな双眼の瞳を揺らしながら、その表情に憎悪を抱いて。
作者がいつも疑問に思うのは、∀が月光蝶を使い何故世界を砂へと変えたのかと言う問答の中で、ネガティブな意味合いで使用したと言う者が多いことだ。
たまにはポジティブな意味で使ったって解釈してもいいんじゃない?異論は勿論認めます。
誤字、感想、評価等よろしくお願いします。