「大失態でしたな……、この落とし前どうつけるおつもりで?アズラエル新代表」
巨大なスクリーンに映し出されているのは、レクイエムの
今そこは、まるで惑星状星雲のように曇りがかっている。
事は5日程前に起こった、地球連合及びザフトの大同盟。所謂反ロゴス同盟とも呼ばれるそれ、実態はともかくジブリール等過激派を本来であれば始末する為に行われた軍事行動。
月進行作戦
とも呼べるそれにおいて、起こった諸々の出来事に対しての責任の所在を確かめる為に、国際会議場を中立国であり連合ともそれなりに関係の深い、オーブで行っている最中である。
「情報によれば、コペルニクスの奪還には成功。敵?機体の奪取…主導権の簒奪に成功したと言うことだが…、在住者の95%の死と言うのは、隠しようも出来ない事実だ。地球に残っている遺族間から、宇宙での戦闘結果が漏れ出している。
情報統制は極めて不味い段階へと移行しつつある。
それもコレも、こんな厄介な物を掘り当ててくれたロゴスとそのメンバーに責任があると…私は思っているのですがねぇ?アズラエル代表っ!!」
アズラエルは目出度くもロゴスの盟主となり、この会議に際してもその称号とともに招集されていた。
だが、ロゴスのその威光は地に落ちもはやソレは形骸化された成れの果てのようなものである。
そんな物の盟主となったらどうなるか?答えは簡単だ、人身御供にされるに決まっている。
だが、そんな状況で折れるような男では勿論アズラエルはない。
「今は責任の所在云々の話ではないでしょう?アレをどうやったら停められるのか?そう言う話をしに、態々オーブに集結したんです。
ここにいるアスハ代表も、そのつもりでこの場を貸してくださったんですから、真面目に行きましょう?」
「高々1機のMSを相手に、そんなに仰々しくも戦力の話か…片腹痛いな。」
「その高々1機のMSに我々ザフトも含め、6個艦隊が文字通り宇宙の塵になってしまった事をお忘れなきように!」
デュランダルと入れ替わるように地球へと派遣されていた、プラントの外相も参加してでの席は、針の筵の様な惨状である。
皆、今回の件で戦争というものに突入出来る余裕が無くなっているが為に渋々としているが、戦力があれば戦いを継続していたことは言うまでもない。
プラント内部から漏れ出たデスティニープランや、連合の非道な人体実験等々互いに看過できぬものを腹に抱えたまま、ズルズルと協力するほか無いのだ。
「ゔぅぅん、無駄話はそれくらいにして頂きたい。まずは現状整理から行いたいがそれでよろしいか?」
会議の主導権はこの時、オーブに有った。
現有する戦力の殆どを損耗せず、この場にいたどの国家よりも現有戦力が高くなってしまったが故に、他国が渋々としている。
「現在、我々はコペルニクスの奪還には成功したものの現有宇宙戦力の8割を損耗している。
我々オーブもまた、艦隊に随伴していなかったというだけの理由で生き残っただけだという認識でいる事は、始めに忠告しておきたい。」
つい1月前迄は、国をあげて傀儡国へと成り下がっていたオーブが、本音で話をし始める。
カガリは己のその役割を胸にしながら、グッと感情を抑えながら淡々と話を進めた。
「現在、レクイエム砲口周辺の宙域は黒い雲に覆われていて内部を伺いしれない。
重力波を用いた観測も試してみたが、完全に封鎖されているようである。
また、1機のMSを中心にソレは拡がり続けていて、速くともプラントにそれが到達するには1月程の時間がかかり、地球へと到達するには二月程という計算が出されているものの、その間にアレが動き出すとも限らない。
そこまでは良いか?」
其々がジェスチャーをして、確認を取る。話さずともソレは当然の事だと、優秀である面々は話を進めろと軽く手を振る。
「ではそれに対抗するための戦力だが…」
「戦力ぅ?6個艦隊を失ったのに戦力か…馬鹿馬鹿しい。」
茶々を入れるのはこの東アジアの外相だ、彼や彼の祖国はもう諦めが入っている。
「対抗戦力だが、現状オーブが出せる有りたけは戦艦イズモ級が3隻と数隻の護衛艦のみ。
プラントは国防用の旧式艦艇が20隻程、地球軍に関して言えば駆動可能な艦艇はほぼ無い…でよろしかったか?」
さもありなんと言った有様である。
絶望する為には希望が必要だが、それすら持てない程の現状であった。
「ジャブローも高速建造を続けていますが、如何せん数が数です。最低数ヶ月は必要かと…。ああ、会談を設けて真意を問いただそうにも、普通の相手ではないから八方塞がり…ですかね?」
「そもそもだ、前代も含めてアルスターはどうしてあの様な物を隠し通していた?思惑は何だ?」
矛先はここにいない人間へと飛び火していこうとする。皆責任を取りたくない以前に、現実逃避に人身御供を要求する。
原始時代から変わらない人間の悪いところだろう。
「オーブには、〘触らぬ神に祟りなし〙という諺がある。それと同じ考えだった筈だ。ともかく、今ここにいない人間の批判をしてもしょうがないだろう?」
「だがね?手のうちようが無いのだよ?もはやそういう事をするほかは…」
「特にだ、あと数ヶ月で人類は滅びますなどと民衆に言えるか?」
ああだこうだ言い続け会議は踊る、されど内容は決まること無い。
「そう言えば…、プラント外相にお聞きしたい。ラクス・クライン嬢の消息は不明だとか?まさかと思いますが逃げ出したのではないかね?」
「何だと?ソレは聞き捨てならないな!!今直ぐその言葉を撤回して頂きたい!撤回しろ!!」
どんなに窮地に立ったとしても、人は変わらない。そんな短い期間で人が変われる訳が無い。
「し!ず!か!に!し!ろ!!お前等は子供じゃあるまいし!こんな年端もいかない子供に怒られて、大人がみっともなくないのか?!」
ハッとして…皆カガリの方を見る。
そう、最年少しかも未成年の少女がどうしてこんなにも肝が据わっているのか…、恥ずかしくも顔を顰める面々に堂々と啖呵を切る。
だが、そんなカガリもまた、内心心配していた。
コペルニクスとの通信はここ5日の間、取れていない。戦闘後直ぐには確認は取れたのだが、量子通信に干渉されているのか、完全に封止されている。
イライラとしたいのは自分の方であるが、情けない大人達が暴走しないようにするにはその気持ちを抑えるしか無かった。
……
廃墟と化したコペルニクス、その地下に一時的に避難区域が設定され、救出された人々が避難所を自ら設営していた。
殆どの住民は亡くなっていたが、それでも数万単位の人々がまだ生き延びている。
そんな彼等が大混乱の中、地上と瓜二つの地下の都市を使うと言うのは骨の折れることであったが、持ちつ持たれつのこの状況に以外にも皆協力的であった。
「コレで全員ね、アーサーありがとう。」
「いえ…、ですが補給もままならない中でコレだけの人数を賄う食事が有った事だけは奇跡です。」
「そうね…」
本当にそうだろうか?
最後の名簿を受け取ったタリアは、自分の担当する仕事を行いながらこの5日間で起きた様々な事象に記録を付けていく中で、この都市の奇妙な点を探り当てていた。
まず、第一にこの都市では数万人が年単位で暮らせるだけの食料が備蓄されていたということ。
特に驚きを持って発見されたものは、水を圧縮し飴玉サイズとする事によって、一粒で1ヶ月分の水を供給することが出来るという、あり得ない仕組みである。
水という物質は圧縮が極めて難しい物質である。
ここCEにおいても、水を圧縮する事は不可能な技術であるがどうにかしてそれを実現していることから、あり得ないほど高度な文明がそこにはあったのだろうと言うことが分かってしまった。
コレだけでも大発見であるが、もう一つ。
コレは表面のコペルニクス上でシンと戦闘を行っていたMSを、この限られた時間で解析した結果驚くべき事が解った。
当初、戦闘用と思われていたそれが実は単なる警備用であり、本来戦闘に耐えきれない代物だという事だ。
問題はどのような物を戦闘として定義していたのかと言えば、もうそれはそれは恒星系内での戦闘である。
その為の機能が無いだけではあるが、それでも充分デスティニーと渡り合えたのだから、悍ましい事である。
そして名前が判明した。
『警備用MSポリッシングスモー』
と言うのが正式名称であると言うことだ。
「頭が痛くなる事ばかり……、コーヒーが飲みたいけれど…、そうも行かないのよね。」
そこまで考えてタリアは自らのお腹を擦りながらそう呟く。奇跡と言えばそう、自分と彼の間に新しい生命が芽吹く等、夢にも思わなかった。
誰よりも信頼し優秀さを知っているからこそ、このような事態になるとは夢にも思わなかった。
「さてと…行きますか。」
幸いな事に、コペルニクスの港湾機能は全損しておらず…ミネルバはその巨大を月面へと降ろしていた。
危機意識から、無線での連絡は最小限に留めここ数日の間は各艦長との会談が続いていた。
予定より少し遅れてしまった自分に恥じながら、タリアは入室する。
やはり、貧血が始まっているのだろう若干であるが、足取りに不安を覚えての到着であった。
「すいません、遅れました。」
「いえ、大丈夫ですよ。何より、お腹の子の事もあるのでしょう?」
幸い?無ことであるが、この艦長会議のメンバーの主要は女性で占められている。
数少ないバルトフェルドやイザークのような男もいるが、少し肩身の狭い思いをしている事だろう…。
「お心遣い感謝します。」
「他人行儀にしなくても良いのに…、でもそれが貴女の性分なのでしょうね。」
合ってそれ程期間があるわけでもない相手に、他人行儀にするなと言うのは無理がある。特に…矛を交えた事のある相手など遥かに難しいだろうに。
「そろそろ始めてもよろしいか?」
「ええ、ありがとうナタル。」
各艦の艦長級が揃い踏み、いざ機上のデータを覗いていく。
「現状、敵MS……アルスター少佐からの情報提供から、
そう言うと∀の映像が映し出される。
黒い機体に丸い頭額に∀のマークを装飾された、特徴的な機体。シンボルなのだろう、長いカイゼル髭がその異様さを際立たせる。
「機体情報は今のところありません、ですが先の戦闘?蹂躙劇から見て、我々の武装で効果のある者は限定的であると、言わざるを得ません。」
「連合の方へ、艦隊から送られた映像データの解析が出来たの?」
静かに首肯するナタルは、眉間に皺を寄せてそのデータを全員に見せる。
「核弾頭の直撃に耐えた…と?」
「コレは、欺瞞工作の一種ではないのか?」
核弾頭の直撃、それは要するに核分裂と核融合反応が発生したそ個所に生じる、強烈な熱反応の事だ。
大火球の中心にあってなお、無傷である事がどれ程恐ろしいことか。
「でも…コレのおかげで対策も考えられるのよ?」
ラミアスがそう言うと、オブザーバーとして情報分析のエキスパートであるメイリンが、映像解析で得た情報を投影していく。
「不可視のシールドに護られているけれど、その防御範囲がここにはある。
機体を中心に半径十数メートル、それがこの機体の最大の防御でありそれ以外の硬度はそれ程高くないことが分かるの。
だってそうでしょ?硬い装甲が有るなら、シールドなんて張る必要無いんですから。」
「と言うと…まさかと思いますが、MSでの肉薄攻撃しか対処方法が無い…と、そう言いたいのね?」
装甲部材のエキスパートとして、ラミアスは敵の弱点を看破する。尤もそれは単なる予想に過ぎないが、実際そうだろう。
要するに核弾頭以上の熱量を持った物を使ってシールドを可視化して、その隙に接近戦を仕掛けると言うことになる。
「あまりにも大博打過ぎるわ、第1そもそもアレに近付くことすらままならないと言うのに。」
「そこなんだがな…、色々と解析した結果突破が可能な方法が解ったんだよ。メイリン君、次のを。」
それは地下都市内部に存在する巨大なサイロ状の空間だ。それこそMS数両が、その中に収まるような。
「これなんですけど、一応テレポートマシン…らしいんです。」
テレポートそれこそSF映画等で出てくる、ご都合主義の塊のような、そんな装置だ。
「それで敵の近くまで行くと?確実に始動する保証は無いのよよ?」
「だがな、副案はないんだろう?やるしか無いのさ…!結局失敗しても、人類の滅亡までのカウントダウンにはさして影響は無い訳だからな。
ま、問題があるとすればその装置を使ったと悟られない様にするにはどうするかなんだが…。」
「あの〜…」
投影を担当していたメイリンが、話を遮るように手を挙げて徐ろに画像を弄りだす。
「副案…とかじゃないんですけど…、古代人の戦闘記録とか漁ってたんですけどね?
こんなものがあったんですけど、使えないかなぁって。」
映し出された映像には巨大な小惑星が地球へと落ちていくのと、それを停めようと必死の抵抗をするMS達の姿があった。
そして、それを近郊から撮影したのだろう俯瞰した映像もある。音声付きで。
「昔の人の言語とかのデータもあって、直ぐに翻訳出来たんです。それで…」
気になった動画を映し続けると、突然小惑星が光の膜に包まれMS達が弾き飛ばされている光景が写されていた。
『光の膜の向こう…MSが跳ね飛ばされていますっ!!』
『もっと良く観測しろ…いったい何が起こっているんだ…。』
それは奇跡を映し出されたものだった。
落下を阻止した不思議な力は、人智を超えた現象であったと言う。
「コレに関連してアクシズショックとか、そんな言葉があるんですけど…、その中に 〘Psycho Frame〙っていう名前が出てくるんです。」
「……、それって要するにアルスターさんの機体に使っているのと同じ名前の?まさか、同じものだと?」
要するに、奇跡を引き起こす方法が分かれば対抗出来るのではないか?と言うことを言いたいのだ。
「流石に無謀過ぎる、そんな得体の知れない代物を使うのは。第1どうやってそれを引き出すんだ?」
そんな話をしている中、画面が暗くなる。映像データではなく、音声データのようだ。
『そうか…!?しかし、この暖かさを持った人間が地球さえ破壊するんだ…!それをわかるんだよアムロ!!』
『解ってるよ!!だから!!世界に人の心光を見せなけりゃならないんだろ?』
大声で互いに言い合う、2人の声が聞こえる。
そのデータにメイリンも驚いている…。
こんなデータ、さっきまで
「人の心の光?感情を力に転換する事が出来るシステム?」
ラミアスは一人驚愕した。エンジニアだったからこそ、その装置の異常さを理解したのだ。
それでも…
「それでも、不確定なそれを決定する訳には行かないわ。私はバルトフェルド艦長の作戦を支持します。」
全会一致で、バルトフェルドの案が採用される。
一人の囮を用意して。
……
暗い暗い世界の中、誰かが…泣いている。幼い声か?少年か少女か?
誰の声とも解らぬ声が響く……
それを聞くのはただ一人、ラクス。ラクス・クライン
気がつけば彼女に服は無く、産まれたままの姿のままにそちらへと歩みを進める。
彼女は歩く、その声のする方へと。
何故であろうか、声の主を救わなければと言うそんな、そんな感情が芽生えてくるから…。
声の主が目の前に現れる。
裸の…男の子?女の子?わからない、どちらかなんて判断出来ない。そう言う存在ではない…と、なんとなく理解した。
声を掛けようとした時、その子供が喋り始めた。
「みんな…みんないないの…。みんな…みんな何処へ行ったの?…みんなみんな…僕を置いて…。
みんな…みんな…みんな、僕の友達…。会いたいよ…辛いよ…。」
悲痛なものだった…感情の波が雪崩込んでいる。
人ではない…だが…それには確実に感情がこもり、暖かな記憶とその後に続く暗くて寒い記憶が続いていく…。
子供は憎いのだ…、自分から皆を引き剥がした人々が。自分を創ってくれた人と引き剥がしたことが、最後に一緒に遊ぶ事さえ出来なかったその歴史が…。
オールドタイプが憎い…。
書いてるとわかるんですよね、戦闘描写苦手だって。やっぱり戦闘よりもこっちのほうが書きやすい…。
誤字、感想、評価等よろしくお願いします。