機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第45話 

互いに意思疎通を図る時、人というのは言葉にしてそれを伝えようとする。

しかし、その声が届かないところにいる相手に自らの意図を知らせる為に、情報端末は進化していった。

 

しかし、人と人のコミュニケーションにおいて嫌がらせをする為に、それを傍受する方法もまた時代とともに進化していった。

 

文明と文明の衝突が行われたとき、鳩を狩る為に鷹を使った様に電波を盗む為にその為の装置を作り出した。

それは必然的な事であり、争いをするというのはそう言う事だった。

 

さて、隔絶した技術を持つ相手に自分の使用する通信手段が、情報を抜き取られていると思われる時、どのような行動を取るべきだろうか?

新しい技術を開発する?それとも忘れ去られた程に古い技術を使う?

 

地球と宇宙の交信が傍受されているであろうということは、誰しもわかっていた。

相手の方が遥かに技術力は上であるから、どうしたものかと思うものもいるだろう。

 

だが待って欲しい、果たしてCE(コズミック・イラ)の各勢力が一致団結するとして、事前連絡をこまめに取るだろうか?否!断じて否である!!

 

 

 

……

 

暗黒の宇宙…星々は瞬きその傍らに小さく一際青く輝く星、地球が今日もまた太陽に照らされ神々しくその姿を漂わせている。

そんな地球の直ぐ横で、一つ巨大な人工物に小さな人影が映り込む。

 

其れ等は何やら大きな排気口を支えながら、その巨大な人工物へと取り付けていた。

その周囲を、ゴマ粒をまぶした様に同じ様な格好で次々と其れ等が組み付いては取り付けていく。

 

その数は10や20では効かない、少なくとも60機もの其れ等を取り付けていた。

 

 

 

「なに?L5宙域にて、連合に動きがある?」

 

議長執務室にて、デュランダルにそう報告が入ったのは、黒い雲がプラントへと到達する、ちょうど15日程前の距離まで近付いた頃であった。

 

「連合がな…、何をしているのか気にはなるが、国防委員会の見解は?」

 

「はい!推測の域は出てはおりませんが、恐らくは…建造途中で放棄された円筒形コロニーに推進装置を取り付けているのでは…と。」

 

もはや一刻の猶予も無い、そんな時期に連合の意図を図ろうとするプラントでは、同じく迎撃準備を着々と進めていた。

だが、勿論遮蔽物のない宇宙空間である。ミラージュコロイドで姿を隠していたが、巨大構造物メサイアを隠すには物資の動きまでも最小にしなければならない。

 

そんな折、地球連合は大袈裟に見えるほどにL5の建造途中であったコロニーに推進装置を取り付けている。

それはどういう事だろうか?

確かに、現在連合が持ち得る宇宙艦隊は最盛期の1割にも満たない数である。

従って攻勢に出る事など、もはや不可能に近く寧ろ余分な物資移動すら憚られる。

 

強大な敵に立ち向かう為の起死回生の一手を行おうとするならば、寧ろ隠して隠して隠し通さなければ奇襲の意味すら無くなってしまう。

そんな事も解らなくなったのか…、と首を捻る者達もいればその行動に対して正解を引く者もいる。

 

「連合は敵の目を引きつける為に、あの様な行動に出ているのではないか?」

 

臨時に開かれた国防会議にて、デュランダル出席の中で執り行われた中で1人の国防委員がそう発言した。

 

「敵の目を…、それは我々ザフトひいてはプラントの為に彼等は動いているというのか…?」

 

馬鹿馬鹿しい、砲思う者達も中には散見される。

呆れてものも言えないそんな風体をするのだが、実情はプラントの為ではなく…本当に、コロニーを敵にぶつけようとしているだけであった。

 

だが、敵の目を自らに引きつけるためと言う理由でも連合は動いていた。

前述の通り、連合にはもはや余力は無いに等しい。

寧ろ、予備艦艇込みで言えばプラント駐留艦隊の方が数でも質でも上であることは確かだ。

 

従って、出せる戦力に限界が生じた時連合の軍首脳部は単純明快で、威力も十二分に出せる物が転がっている事に気が付いた。

 

コロニーを加速させて、敵にぶつけてしまえば良いじゃないと。

 

勿論適当に思い浮かんだものでは無い、寧ろコロニーと言う巨大建造物だからこそ、このような雑多な作戦を思いついたとも言えた。

 

先の戦闘の折、地球や宇宙から観測された戦闘風景はこのように映っていた。

取り囲まれた艦隊が、敵に中央に突撃し見たこともない光を発光するMSによって、瞬く間に砂煙と化していく姿だ。

 

正直に言ってトラウマものの光景では有るのだが、そこで1人の学者がそれに目をつけた。

敵の使用するその光る膜状の物は、如何なる方法で物質を完全に分解する事で、その黒い雲を発生させている。

雲は副次的なもので、本来の効果は物質の分解と言うところに有る。

 

従って分解するのであるなら、その分解量を超える物体をぶつければ、それを押し切る事が出来るのではないか?と。

そして、物体を分解している間に波状攻撃…この場合何でも良い。スペースデブリでも良いし、ビームでも良い。

兎に角、やたら滅多らに攻撃を行う事で敵の護りを突破する。

ただその一点にのみ集中した結果…。

 

一番手頃かつ現状で動かすことの出来る、最も重い物体であったのが、偶々L5のコロニーであった。

 

そして物のついでとは言ってはなんだが、コロニーを改装するのには一々それを隠蔽するには時間が必要である。

ならば、いっその事それに敵の目を引きつける為におおっぴらにやってしまおうと考えたのだ。

 

では何故、派手にやるのかと言えば…戦力が無いという事もあるが、一番の理由は。

 

プラントに対する信頼

 

この一言に尽きる。

尤も、この信頼は別に善意のある信頼ではない。寧ろ悪意を持った信頼である。

 

連合も考えていた、自分達がレクイエムのような攻撃方法を考えているのだから、プラントだって考えているに違いない。何よりジェネシスの前例も有るのだから、同様の兵器をどうせ(・・・)保有しているに違いない。

自分がそうだから相手も同じ様な物を創るだろう…。

うん、信頼と言うものだ。負の信頼であるが、互いに互いのことを良く知っていると言う現れだろう。

 

心を拡げずとも、互いにわかり合うことが出来ている。それを許容出来るかどうかは、別の話と言う何とも救いようのない文言であるが、プラントと連合の関係はそんなものである。

 

そして、其れ等一連の事をプラントにも知らせずにただ黙々と続けているのだ。

建前としては、傍受の危険性から独自の判断で動くと言う事であるが、本音は

 

『俺等は勝手にやる。だからテメェ等も勝手にやれ』

 

と言う事であろうか?

兎にも角にも身勝手な行いであるが、この時はそれが最善の一手であった。

 

「彼等も自分達のやる事を理解しているのだろう。ならば、我々も我々の出来る限りをするべきであろう。」

 

デュランダルはそう締めくくる。その間にも着々と、黒い雲はプラントへとその魔の手を伸ばしていた。

 

 

……

 

月面ゲンガナムでは、MS隊の最終チェックが行われる傍らそのMS達を運搬するテレポーターの最終試験が行われた。

短距離の目標に対する物質の転移であるが、それは見事に成功を収め作戦の現実味を加速させていた。

 

「あ"ああ…なんだよ、またかよ。」

 

そんな中デスティニーの調整を行っていたシンは、機体の不具合に対して対応を求められていた。

 

「どうしたのよシン、アンタまだ終わってないの?」

 

「しょうが無いだろ、コレ。なんか良くわかんないんだけどさ、ほらここ装甲が外れてるって認識になってるだろう?

だけどさ…」

 

ルナマリアがそれに対して質問をすると、シンは件の問題を見せるためにコックピットから這い出て、その場所を指差す。ちょうどコックピット周辺の装甲、胸部ハッチ辺りだろう。そこは暗い青色をしていた。

 

「ほら、装甲はきちんと着いてるだろ?なんかのバグだろうって思ったんだけどさ…、何処にも異常が無いんだよ。」

 

「………、ねえシン。アンタ、PS入れたまんまにしてない?」

 

ルナマリアのその言葉にシンは改めてそれを目にする。装甲はきちんと青い(・・)

そう青いのだ。

 

「ハァ?PSなんて入れた覚えないし、何より他の部分だって灰色だろ!コレもバグ?」

 

そう言う間も、デスティニーはその損傷箇所を示すアラートをしきりに点滅させている。だが、その答えは非ぬ方向から聞こえてきた。

 

「ナノスキン装甲、機体各部の情報を読み取りそれと同様に機体を包む、ナノマシン技術の集大成。」

 

「アンタ…、自分の機体は良いのかよ。」

 

二人は声の聞こえた方をみると、直ぐ近くにパイロットスーツを半分脱いだ形の、シャツが見えるその服装でフレイが現れた。

シンはそれを見た瞬間、フッと下を向く。汗がへばりついて、胸が強調されていたのだ。

 

「別に、多少アレだけど実態盾に変更したくらいで殆どは変わらないからね。

それよりも…、凄いでしょそれ。」

 

デスティニーガンダムの方を見ながら、その青みがかった装甲の直ぐ側を素手で触る。

 

「ちょっと辞めなさいよ!!」

 

それを見てルナマリアは止めようとするがもう遅い、フレイの手はデスティニーの装甲を触るが…何も起こらない。PS装甲はその性質状電熱を帯びやすい。従って通電している間は、素手で触るなど御法度なのだが、それはまるで熱を帯びていなかった。

 

「これ…侵食されてるって事ですか!?」

 

「ま、そういう事になるけどでも面白いでしょ?破損箇所は軒並みコレに入れ替わり始めてる。

この子の場合は表層だけだけど、私の機体なんか関節もなり始めてるから。」

 

格納庫が俄に騒がしくなる、整備士達がこの状況に慣れていないのだ。一区画がやけに騒がしいのはその為だろう。フレイの機体周辺には人集りが出来ていたからだ。

 

「悪い事はないんですよね?」

 

「コレが本来の使い方らしいから、あの黒い雲に使われているもののね。」

 

デスティニーの機体表面の色は徐々にそれを拡大していた。傷に入り込むように、それに沿って流れていくように。嫌に目に付く、ルナマリアとシンはそれに警戒感を示す。コレが大丈夫なのか分からないからだ。

 

「そんな警戒しなくても、バッテリーの技術だって元は発掘品なんだから今更よ?」 

 

小さな爆弾を放って去っていく。それに対して二人は狐につままれた様な顔をしながら、突然の真実に混乱していた。

 

 

 

 

格納庫でその様な事が行われている事など知らずに暗室にてキーボードを叩いている男がいる。

目に隈が出来ていて、あからさまに寝ていないのだろう疲れ切った顔をしているのだが、その手を緩めるような事はしていなかった。

 

「おい!!キラッ!!」

 

暗室のドアが開くと、そこからアスランが現れキラに食って掛かるようにツカツカと歩み寄る。

そのまま傍らまで行きながら問い詰めるように言葉を発した。

 

「良い加減寝ろ!明日は作戦決行日なんだぞ!!そんな風体で行かれでもしてみろ、皆が迷惑する!!」

 

それを聞いたキラの手がピタリと止まるとアスランを見上げながら

 

「……ごめん、でもラクスを見つけなくちゃいけないから…。彼女はきっと待ってる筈だから。」

 

そう言うと再び操作しようと身体をモニターの方へと向けようとするところで、アスランはキラを反転させ襟首を掴み上げる。

 

「お前!!人の話は最後まで聞けよ!!俺だってラクスの事は探したいさ、けどな!今はそれどころじゃないことくらい分かっているだろ!!」

 

「……解ってるよ、でも…」

 

キラの目の焦点はあまり良くなかった。疲れ切っているところに、彼女の失踪が彼の精神にクリティカルだったのだ。

 

「この2年間ずっと一緒に暮らしてきたんだ、アスランよりも僕のほうが彼女の事を良く知ってる。だから…だからなんだよ、どうしてもっと彼女の行為の意味を知ろうとしなかったんだろうって。

彼女はたぶん……僕の事を愛してた、だから僕の事を支えようとしてくれたって、そう分かったから。

分かっちゃったから!だから今こうするしかないって!!」

 

過ごして来た時間は互いの事を知るには良い切っ掛けとなっていた。キラはラクスへ恋愛感情を抱くようなことは無かったが、いつも彼女の行為に甘えてきた。

偶にやっていた仕事の傍ら、彼女が始めて母と一緒に作ってくれた料理は、唐揚げだった。

 

プラントと地球とでは味付けに違いがあるのかと、そう想いながらも恐る恐る食べたそれは、少し焦げがあったけれど温かく彼は受け入れた。

次第に彼女がいる事が当たり前になり、それが日常になった。

 

そして今…そんな彼女の姿は何処もいない、誰も彼女を見つけられない。それどころか、皆それを辞めてしまった。では、誰が見つけなければならないのか?…そう思った時、キラは自分こそが見つけなければならないとそう思ったのだ。

知らずのうちに彼は彼女の事が…気になっていた。

 

「だとしてもだ、今お前に倒れられでもしてみろ!全てが終わったあと、誰がラクスを探すんだ…。今ばかり考えるんじゃなく、もっと後を考えるんだ!」

 

アスランのそんな言葉を聞くと、キラは涙を流し始める。

そんな姿を見せられたアスランは、現状を呪いそして何も成すすべも無い己に苛立ちを覚えた。

だから…、柄にもなくアスランは気休めを言う。絶望的な確率でも彼を安心させるために。

 

「あの感の良い女も、フラガ大佐だって皆言ってる。ラクスは必ず生きているって。だからお前は休め…。」

 

それ聞いて泣き崩れながら、キラは静かに寝息を立て始めた。

 

そうして大地に日は沈み、時は静かにやって来る。

 

 

 




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