暗闇を抜けたその先に見えたのは……、一つの部屋であった。
そして裸だった筈なのだが、どうしてかいつの間にか普段着を着ていた。
ラクスは立ち尽くすようにいつの間にかそこに立っていて、彼女を連れてきていた筈の子供は、いつの間にやら居なくなっていた。
様々な機器類が並び、ところ狭しと周囲を占拠している。にもかかわらず、その部屋はある一定のパターンを決められたように其れ等は配置してあった。
きっとこの部屋の主は、そういう機械を使って何かを創るのが好きなのだろう。と、そう思った。
しかし、なぜかその部屋には見覚えがある。
何処で見たものだろうかと、小首を傾げると彼女はハッとしてその外の景色を見るや、その景色を思い出した。
キラ達が解析したオーブでの映像、そこに記録されていた光景とその外の景色は一致していたのだ。
古い古い景色は、鮮明な色とともに彼女の虹彩を刺激する。
ガチャリ…
そんな音とともにドアノブを回して、扉を開けて出てきたのは1人の少年であった。
幼さの残る、天然パーマの少年。
何かを食べてきたのか、手にはペットボトルを握っていた。
しかし、その格好はあまりにもラフである。
白いランニングシャツに縦縞のトランクス…、ここは彼のプライベート空間なのだろう。
そんな彼は徐ろに机に向くと、その上にある機械を弄り始める。専門用語のような物をブツブツと言いながら、それを作り続ける。
それが終われば、今度はプログラムを組み始め出来合いのそれと合致するようにいらない部分を削除しつつ、動作の確認をする。
そうしているうちにいつの間にか、彼が創っていた物が何であるのか分かってしまった。
彼女にとって、とても馴染み深いそれは球体で黄緑色の良く知る者。
「よぉし、ここを押せば…!」
その声ととも、に耳をパタパタとさせて、くるりと一周回るロボットが動き始めた。
「コハドコダ、ココハドコダ…オマエハ誰ダ!?」
「僕は…アムロ・レイさ…。お前はハロ。」
アムロと言う少年はそれに対して満足していた。
従来品のハロを魔改造し、様々な機能を追加。持ち主の脳波を測定し記録しつつ、体調管理機能も取り入れたそれを彼は手に持つ。
「少し暗いけれど我慢してくれ」
「ワカッタワカッタ」
ラクスはその光景を眺め、アスランも同じ様に創っていたのだろうかと、そう小首を傾げた。
そうして一瞬、瞼を閉じれば今度はアムロ少年は女の子に先程のハロを渡していた。要するに、彼はプレゼントを創っていたのだ。
死んでしまった彼女のペットの変わりという事らしかった。
それからは、アムロ少年から離れ少女フラウ・ボゥと共にそれなりの間、暮らしていた事が断片的に流れてくる。
だが…そんな日は突然終わりを迎えた。
サイレンが鳴り、避難指示が木霊する。
少女と共に、アムロがいるであろう家へと入り込む。いつも通り、食事に手を付けていない。
何かに熱中する男の子は皆こうなのか?と、ラクスはキラと彼を重ねていた。
誘導に従って避難所へ、中には入って2人と一緒にそこに座る。その時
ズズズ
と鈍い音が響く
「この振動の伝わり方は……爆発だ…!」
そんな言葉を零すと、アムロは1人静止を振り切って外へと出ていく。
ラクスの身体はピタリと何かに縛られていて身動きが取れない。
そこでふと…、ラクスは思い至った。
一体いつも誰と行動を共にしているのかと、そう黄緑色のハロ。それと同じく動いている事が。
避難民達が外の光景を見て我先にと逃げ始める。それと共に雪崩のように人々が逃げていく中、アムロが地面で何かを読み耽っていた。
その後一緒に避難しようとした時、アムロは何かを見つけたのかそちらへと走っていく。
口論しているようにも見えて、フラウがハロを親に渡してアムロの方へと向かった…その瞬間。
周囲の土は盛り上がり、大きな爆発を伴って人々を耕す。
辺りは一瞬のうちに地獄へと早変わり。
ラクスはこの光景を目の辺りにして、やっと今何が起きていたのか理解していた。
ハロと共に見るその光景の中には日常ばかりがあり、そんな中には戦争などとは程遠い物だった。
だが…、この光景は自分達の生きている世界と同じく、戦争をしているのだと、この時始めて理解した。
運良く生き延びたフラウと共に、急いで避難する。それしか出来ない、そんな己に歯痒さを覚える。
段々と遠ざかるその光景の中に一際目立つMSそれが立ち上がる、そのシルエットは何処となく、素のストライクの様なそんな姿をしていた。
そこから、短くも長い戦争が始まる。
一際目立つMS、その名前は
だが、どうやらこの時代にはそんな名前の神様だとかはいない、最低でも今まで見た光景の中ではそんな物はいなかった。
戦いは壮絶を極める。
多くのものが死に、生きる為に必死となる。そんな中、アムロは戦い続け自分はそんな彼を見守るしか出来ない。
ハロは彼の脳波レベルの変動を目の辺りにして、彼を元気づけようとその事実を告げる。
そうする中で少ない情報の中で、ラクスはこの世界がどういうものなのか改めて知る事となった。
出される地図には修正が施さたものと、まだ修正されていないものがある。
片方は見知った地球の世界地図。
もう一つはオーストラリアに
その事実に戦慄する。
この世界は、ただの世界ではない。過去だと…。忘れ去られた世界が映り込んでいる。それも、記録に残らないような日常であると。
段々と状況が分かるにつれ、この戦争の異常さを知る事となった。
世界人口の半分を死に至らしめてなお、戦争は終わること無く烈火に燃え盛る復讐の炎が、世界を突き動かしている。等と。
でも、すべてに終わりはやって来る。
理性が本能に勝った瞬間、それはこの世界での戦争の終結を意味する。
希望を胸に生きていくことが出来る、幾人もの生命の灯火が消えてなお、世界は歩みを止めないと…そう思った。
が…、現実は甘くはなかった。
束の間の休息、戦後の世界。日常と動乱の影の中世界が暗転し、再び世界を覗いた時は…全てが一変していた。
何かの展示会なのだろうか?周囲には色々な物がある。
そこには大量のハロの姿が…?
ここはどこだろうか?
ハロの直ぐ側には草臥れた壮年期程の男性がいた。
ハロはその男性に、質問をする。
「カイ、ナニガドウナッタ?」
草臥れた姿に、一瞬の喜色を浮かばせたハロ。
コレがいけなかった…。
誰かがそれを連邦政府へと報告した。
あのアムロ・レイが作り出したものであるのだから、何があるのか怖くて手が出せなかった物が、何の自爆システムもなく動作している。
連邦政府は抜け目無く、この状況のハロのデータをサルベージしコピーする。
オリジナルをそのまま持ち主であるフラウに返却し、コピーしたデータ…
ニュータイプへと至る脳波のパターンの解析へと足を進めた。
皮肉なことか、これ以降ラクスにはもう少し自由に動き回れるようになる。
巨大な連邦政府の軍事コンピューターは、世界中の汎ゆるところと連携している。それが、自由を担保した。
『人はどうして、こんなにも残酷になれるのだろうか?』
ラクスのそんな想いも虚しく、コピーされたハロの意識データと共に時を生きる。
幾度もの戦争の果て、連邦が瓦解し新たな連邦が始まった時このデータを元に1個のシステムが作り上げられる。
The nation of Earth operater system
母なる星を含む汎ゆる星々を故郷とするならば、それ即ちそれぞれを地球と呼ぶだろう。
太陽系の汎ゆる星々を統括し、食糧から軍事までを一元管理する為の存在。
そして………
太陽系の外へと播種した者達が現れた時、それに対処する為に。
永遠とも言えるほどの時間を生きたその意識は、たった1機のMSが流れ着いた時覚醒した。
忘れ去られたNT達が創り上げたその機体、
シンギュラリティに到達したその頭脳は、人を狡猾に騙しまるで人間であるかのように人々の裏を描く。
自分から全てを引き剥がし、あまつさえ自分の造物主たる
それを討滅し多くの人類の為にと、自らのプログラムを上書きする。
まるで人が復讐を果たすかのように。
「可哀想だと……想いませんか?」
そんな光景を目の当たりした時、後ろの方から声が聞こえた。
それは、フレイの声に良くにていながら決して同じではない、良く似た女の声。
「彼は良く働き、人々を導いた。でも、結局は虚しいだけで全てを終わらせようとした。何とも、哀れな存在でしょうか…。」
「どうしてそんなにも他人行儀なのですか?貴女達が招いた事なのでしょう?」
ラクスの反論も尤もであったが、そんな事意にも返していない。
「私達がこの星に到達した時、既に事は終わっていました。
だから他人行儀なのです。私達は何処まで行っても観測者にしかなれなかったのです。」
「だとしても、今のこの状況もその結果だと?」
身から出た錆、本来それを背負うべきであった者達が死してなお、その代償を支払わせられる。そんな事があって言い訳がない。
「私達が来た後も、他の者達がこの星に帰ってきました。貴方方の直接的先祖です。
私達はそんな彼等が辿った道も、見続けた。」
この女は明らかにおかしな事を言っている事にお気づきだろうか?どう考えても辻褄が合わない、どれだけ長い時間を観測に費やしたのか?最低でも千年単位だろうに…。
「その結果が、貴女達の世界なのだとしたらどうします?同じ事の繰り返し、人々はまた同じ様に世界を壊すでしょう。それでも…彼等を助ける…そんな選択が、私に出来ると想いますか?」
「それでも、それでも私達は生きているのです。どれだけ世界が醜くとも、私達はその中で足掻いて藻掻いてそして前に進みたいのです!」
それは叫びだ、今目の前で起こっている大虐殺。もはや人を人とも思わないそれから、最後まで抗うと言う強い意志。
最後まで戦い続けるという闘争本能、それはこの時代に生きる誰もが持っているもの。
それは、ラクスですら例外ではなく戦いの中でそれでも道を切り開こうとする、そんな意思でもある。
「そんなにも戦いたいのですか…?愚かなものですね、手放してしまえばそれ程楽な物も無いというのに。」
『人は変わっていくものだ、だが変わらない物もある。それはいつの時代も同じ事だ。
誰かの為に、何かの為にそうやって不可能に立ち向かう事は、決して愚かなことなんかじゃない。』
誰かの声が響く、その声は優しげであるが力強い。
『だからこそ可能性は君達の中にある。…目を覚ますんだ。』
その声とともに、意識は浮上して…大きな空間の中に彼女は身体を丸くして目を覚ます。ノーマルスーツを着込んだままに。
場所に名を着けるのならば、そこは大回廊…。
ただ1本の道がその先を示す。目にするその先に、可能性が有るのだと信じ、ラクスは起き上がる。
手にしたそれは彼女の信じるものの為に熱を帯び、彼女はその先へと歩み始めた。
……
敵の魔の手がプラントに到達するまで10日を過ぎた辺り、そもそも避難する場所もないのだから、避難民が発生することもなければ、避難させる事もしていない。
ただ忍耐のままにその時が来るのを待ち続けるしか無い。
連合のコロニー弾頭が目標に徐々に近づきつつ、プラントでは迎撃準備が着々と進み、その時を待っていた。
これと同じ頃、中立国を代表しオーブのカガリがその時を前にして、敵へと声を投げかけた。
「私はオーブ首長国代表首長、カガリ・ユラ・アスハである。当方には交渉の準備がある。
貴官との交渉を願う。」
それは一時の時間稼ぎにしか過ぎない、と他の国は考えていた。だが、カガリは別だった。まだ余地があるのではないかと、そう考えてのことだ。無論根拠など無いが、その可能性に賭けても良いとそう思っていた。
全周波数、量子通信、電波通信問わずそれは発せられ宇宙を漂う。
強者が弱者と交渉をすると言うのは、それは強者の気まぐれに他ならない。
だからこそ、この時この言葉に敵が応答した事は全世界が驚愕した。
「私は惑星管理システム……、貴官等の要件を聞こう。」
その返答は、気まぐれか?或いは警告か?遺言を残す猶予を与えるなどという、
そして、どうやってかその姿を現す為なのか世界中にそれを映すモニターが展開し、中空を浮遊する。
「問おう、貴方は何故我々を攻撃するのか?貴方に人が何をしたのか?どうして我々を攻撃するのか?」
彼女は知らない、彼の事を報告される前に艦隊は消滅した。故に彼が何のためにこの場にいるのかを。
「私は任務を遂行している…、人を人類を救済している。」
その姿は中性的な青年、声は威厳のある男声…チグハグなその姿…だが、それが彼の想像する己の姿なのだろう。
「救済…だと?では、どうしてプラントへとコロニーへと貴官は向かっていくのか?それは、破壊ではないのか!」
「認識の相違だよ、私にとって君達は害虫に過ぎない。その証拠に…」
映像が切り替わる。宇宙空間、それも観測不可能領域にポツンと存在するその中には何人或いは何十人かの人々が、何やら球体のような物に囚われている。
意識は無いのだろう、彼等は身動ぎはするものの起きているようには見えない。
「私はきちんと、人類は保護している。故に、君達との問答は私の気まぐれに過ぎない。」
交渉の予知など無い、それは絶望を意味する。
単なる気まぐれで指を動かせば自分達など跡形もなく殺すだろうと、そんな確信がカガリにはあった。
だが、それでも可能性が0ではないのならと話を切らない。
「では何故だ。何故私のこの様な通信に耳を傾けるのか?」
「気まぐれと言っているだろう?それとも、君達は道端に歩いている蟻を踏み潰すも踏み潰さまいも、気まぐれでやるだろう?」
この問答が時間稼ぎと知っているのだろうと、カガリは内心汗を掻く。
何より彼がコロニーが動きを見せていることに、何一つ焦りを見せていない。もしくは、焦りと言う焦燥感が無いだけなのか?
「一つ、君達が私に何を隠そうと無駄なことだ。君達は勘違いしている。私は地球を観測するものではない…太陽系を観測するものだ。故に…」
映像が切り替わる、プラントへと進んでいた雲がピタリと止まり1機のMSの周辺へと集まり始める。
直径10kmに渡る巨大な円形リングが、直進するコロニーの方へと等間隔で5つ並ぶ。
「何をする気だ……。」
カガリは呟く事しか出来ない…、世界中の人々がその光景をみる。
其れ等が何かしらの力によって膜のような物を創り出すと、それは光を屈折する。
巨大な
「何をする気か?簡単な事だよ、力を見せるのが君達野蛮な人類には尤も効果的な、絶望の表し方だろうとね。」
たった1機のMSのその右腕にその腕と同じ長さの、ライフルのような物が握られると…、そこから光が宇宙を駆けた。
∀がどの程度の事が出来るかなんて、誰も書いてない!!
だからスーパーロボット!
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