機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第47話

プラントへと進んでいた雲がピタリと止まり1機のMSの周辺へと集まり始める。

 

直径10kmに渡る巨大な円形リングが、直進するコロニーの方へと等間隔で5つ並ぶ。

その距離はリングの直径から一つの節で5km程はあるだろうか?

 

其れ等が何かしらの力によって膜のような物を創り出すと、それは光を屈折する。

巨大なI(アイフィールド)が砲身を創り出す。

たった1機のMSのその右腕にその腕と同じ長さの、ライフルのような物が握られると…、そこから光が宇宙を駆けた。

 

そこから射出された物がリングを通過する事に加速され、更に膨張されていく。

だが、その過程を目視で見ることは到底不可能に近いだろう。何故ならば、それは光に限りなく近い亜光速でもって宇宙を駆けるのだ。

 

みるみるうちに巨大な光の柱となったそれは、一気呵成の勢いで自らに直進するコロニーへと直撃すると、それを瞬く間に消滅していく。

それを護衛していた部隊諸共、綺麗さっぱり塵一つ残さず。

 

それが通過した時には、そこにあったのは柱に直撃せずに残ったカスのような残存艦艇であり、其れ等もエネルギーの余波に充てられてか、その側面を晒していた場所は軒並み融解し、柱から半径20kmの範囲までその影響は及んだ。

 

それだけではない、艦内は兎も角としてそのエネルギーは外見上何事もないかのように見えた艦艇…、その内部に生きていた人々に影響を与え。

柱より半径50km内ではさながら、火山の火口部のような猛烈な気温にまで上昇し、内部の者達は文字通り茹でられた。

 

その光景を目撃した人々にとって、それは悪い夢であって欲しいとそう思わざるおえない物だった。

あれほど巨大な物を一瞬にして消滅させる事が出来る、威力。そして、殆どチャージ時間も無いタイムラグの無い砲撃。

 

科学力や政治力などではない、ただ単純な等しく分かりやすい暴力でもってその力を誇示したのだ。

誰もがもう駄目だとそう想い

 

撃ち終わりに∀が腕を射線上から下げようとしたその時、それはコロニーの方角とは別の方角より到達した。

 

宇宙空間に存在する塵、周囲に存在する残骸等を呑み込みながらその光は一気にMSを呑み込み、先程の攻撃と同じ様に周辺を焼き尽くしながら直進していく。

 

直撃だった。その攻撃は、前大戦を生き延びた兵士達にはその輝きを目にした事があるものも多い事だろう。

ジェネシスの放つガンマ線レーザー、それと同様の輝きが敵を呑み込んだのだ。

 

 

時は少し遡り、カガリがNEOに対して応答を呼びかけている頃であろうか?

プラント本国から離れた月軌道上にそれは存在した。

 

機動要塞メサイア、プラント防衛の要として秘密裏に創り出され、プラント最高評議会の申請を通して完全に正式に戦力として戦場に導入された。

司令官は直接的な指導を行い、万が一起きないようにと議長がそれに乗り込んでいる。

 

連絡手段が乏しい中、デュランダルが自ら出撃する等異例な事であるが、最低限この要塞を隠匿しながら戦場に近づかなければならない以上、直接的指導が必要であったのだ。

 

「さて…、敵の動きはどうか?」

 

「はい、オーブ代表の呼びかけが始まって既に10分が警戒しました。電波もさることながら、量子通信も行っている以上応答が無いというのは些か不安のある内容です。」

 

「相手が乗るにせよ乗らないにせよ、我々に出来ることはこれ以上はありません。現在はこれ以上の前進を辞めるべきです。」

 

技官や操舵手、武官の意見を聞きながらその作戦行動の危険性を承知してこの場に彼は来ている。

メサイアに搭載されているネオ・ジェネシスは、その破壊力と射程はジェネシスに劣っており、相応の距離にまで詰めなければ充分な効果は発揮出来ない。

 

それ故に月面を滑るように前進し続けるメサイアは、己の効果範囲に敵を捕らえるまで近付いていた。

そして、それは同時に自身への危険を孕んでいる。

だが幸運?なことに、メサイアにそれが気がつくこと無く最適な場所へとたどり着いていた。

 

ちょうどその頃であろうか?オーブからの問いかけに、NEOが応答したのは…。

その内容は、人類を拒絶するものであり決して相容れない。コーディネイターとかナチュラルとかそんなものではない、もっと根本的な部分での拒絶である。

 

「ネオ・ジェネシス、発射シークエンスにかかれ。」

 

「え…?しかし、敵はまだ動きを」

 

技官がそう言うが、武官はその言葉に直ぐ様戦闘準備に取り掛かる。

そして…、事態は急変していった。

敵が動きを見せる。メサイアの事は本当にバレていないのであろうか?こちらに見向きもせず、淡々と射撃体制に入っていく。

 

「なんと速い…アレは収束リングです…何を打ち出そうと言うんだ…。」

 

この時、技官であった男は口早にそういうとそのエネルギー量の増大をその目で確かめていた。

 

「これは……こんな事有り得ない…。」

 

画面に映し出されるそのエネルギー量…、それはエネルギーで言うところの10の18乗Jに相当するエネルギーがそこにはあった。

 

それがどれ程のエネルギーであるかと言えば、自然現象である地震エネルギーにマグニチュード9.0に迫る勢いであり、地球上に存在する人類がこれまで観測してきた最大級の地震よりも高く極めて破壊的なエネルギーである。

秒間辺りのエネルギーは10の17乗Jであるジェネシス以上のものであり、現有する汎ゆる兵器の総火力を持ってしてもこれより破滅的なエネルギーは持っていない。

 

それがたった1機のMSから放たれようとしているのである。もっと言えば、片手間に見えるのだから恐ろしい。

 

「アレの射撃に合わせる…、寸分の狂いなく撃ち抜け。」

 

「了解しました…。」

 

誰もが冷や汗を流しながら、その時を待つ。

たった数秒、チャージ時間はその程度であった。

強烈な光が発せられたと思えば、瞬く間にコロニーは消滅していく。

 

エネルギーを放射しながらも、件のMSはその反動をまるで受けていないかのように、平然と撃っている。

そして、撃ち終われば次はどう出るだろうか?

コレは賭けだった。もしその一撃でエネルギーを出してしまえばシールドを張ること無くジェネシスの直撃を受ける。

 

そうすれば、いかな化け物のような機体であっても耐えられないだろう…という、希望的観測に基づいたそれは運命の時が訪れた。

 

「ジェネシス射軸固定、いつでも撃てます!!」

 

「射撃を開始せよ。」

 

デュランダルの号令が発せられると、ジェネシスはその光学兵器としての強大な力を遺憾無く発揮し、射線上の汎ゆる物を撃ち抜きながら、ソレへと殺到した。

 

「……直撃だ!!」

 

射撃によって若干メサイアは後退するも、後部スラスターで再び射線を安定方向へと向け、放熱を開始する。

連射が出来るようになったとは言え、やはり限界が有るのだ。

 

誰しもそんな破壊的な兵器の直撃を受けた者が、五体満足でいるはずがないと、そう思うだろう。

そして、それはこの時メサイアに在する汎ゆる人々が、等しくそう思っていた。

 

だが……現実は非情であった。

 

「そんな馬鹿な!!」

 

確かに直撃である。直撃である筈なのだが、その機体はまるで攻撃などされていないかのように、その場に悠然と立っていた。

それを目にした時、人々は最早思考を放棄するしか無い様なそんな絶望があった。

 

ジェネシスは現在この時代に存在する、汎ゆる兵器の中でも特に巨悪なものであった。

γ線レーザーという特異な攻撃によって、金属すら透過し内部そのものを破壊する事すら出来る。だからこそ、あの機体に対する決戦兵器と位置づけ。

故に汎ゆる装甲が無意味なはずだった……。

 

そう…装甲(・・)は無意味な筈である。

 

問題はその機体が周囲に振りまく、M(ミノフスキー)粒子並びにその高濃度M粒子による、巨大なIフィールドが問題であった。M粒子の特性は、一部の可視光を含む汎ゆる電磁波に影響を及ぼし、一部のものに対しては絶対的な遮断能力を持つ。

 

そして、この一部の中にはγ線が含まれるのだ。

 

影響は少ないが、超高密度のM粒子に阻まれ、太陽風よりも弱々しいジェネシスのγ線レーザーは、そのM粒子の分厚い障壁に阻まれて機体に到達出来なかったのだ。

 

いや、そもそも太陽系外での戦闘すら視野にいれていた機体である。太陽圏から離れた空間に存在する宇宙放射線の雨霰の中を通過する為には、この程度の事で突破されてはならないのだ。

 

つまりは、ジェネシスは相性の悪い相手に使われてしまったのだ。

結果どうなるかと言えば…。反撃が来るわけだ。

 

まるでそれは躾をするが如く、その機体のビームライフルから1条の光が発せられると、メサイア周辺に展開されていた陽電子フィールドと衝突する。が相殺されたのは一瞬だけであり、その一瞬後まるでバターを切るかのようにビームは横薙ぎにフィールド発生装置を切り刻む。

 

そして、ちょうどジェネシス発射基部に接触するとその熱量によってそれも瞬く間に切断された。

ここまで来て、人々が何故自分達にそのような物を見せるのかというその理由を思い知らされる。

汎ゆる攻撃が効かない事を魅せることによって、抵抗の意思をくじこうとしているのだと。

 

「まだ続けるかね?」

 

勝てるはずがない、そもそも常識で推し量れる相手ではないのではないか?

それでも、人々に戦わないという選択肢は用意されていない。何故ならば…

 

「続けるも続けないも……そんな選択権も用意してないくせに!」

 

その敵の直ぐ側に複数機のMSが突如として現れ、その内の1機のビームサーベルがバチバチと音を立てて、敵のサーベルと斬り結んでいたからだ。

 

 

 

再び時を巻き戻す事にしよう。

 

カガリが呼びかけを行う数時間程前、コペルニクスではMSパイロット。この時の最高戦力である8名の人々が一同に介していた。予備集められたのは一つの大きな空間、そこにはそれぞれが操作する機体が既に起立している。

 

「各員揃ったようね。」

 

「作戦の概要は…皆も承知の通り、敵MSの撃破が主任務だ。敵MSは現在もゆっくりとプラントへと侵攻を進めている。

連合はコレに対してコロニーによる大質量攻撃を、プラントは何かしらの大量破壊兵器の投入を示唆している。

我々は其れ等の攻撃で敵機が破壊されない場合、この施設を使用してでの敵前への奇襲を行うものである。」

 

ナタルからさらりと言われる語句に、皆緊張の色を見せている。尤も、皆が皆それを覚悟の上でありその中の1人、キラに至っては目をギンギンに煌めかせている。その瞳には獣が宿っているようだ。いや鬼か…?

 

「皆、私達が支援できるのは此処までしか出来ないのは承知しているわよね?現在、各艦がこの装置を使用する為に発電量の過半を投入しているわ。だから、私達のことを戦力と思わないでもらいたいの。

言ってることは理不尽なのはわかっているし、無茶を言っているのも分かっているわ。

だから……必ず帰って来なさい。こんな事で生命を落とすなんて、馬鹿げていますから。

特にキラ君…貴方はね。」

 

皆がキラの方を見る。そんな彼は無自覚にも何かを言われて戸惑っていた。

 

「コレだけ長い付き合いなのだもの、全てが終わったら。またラクスさんを探しましょう?皆もそれで良いわよね?」

 

「まあ、不可能を可能にする俺が行くんだから…そこは大船に乗ったつもりでいろよ、なぁ?」

 

「ふん…軽口を。貴様の様な出来損ないに言われずとも、この男には絶望は似合わん。生きて帰って証明してもらわなければならない事は山程有るからな。」

 

ムウがおちゃらけて、ラウがそれを否定しつつキラにエールを送る。

 

「ごめんなさいね、私の身体がこんなで無ければ…」

 

「グラディス艦長…、大丈夫です。お腹の子の未来のためにも、ここで勝たなきゃ意味ないですからね!ねぇ!シン!」

 

「そうだよなぁ、この子には色々と重荷を背負わせたくないしな!」

 

「最後まで尻拭いをするのが先達としての役割だからな。俺達に出来るのはそれくらいだろう。」

 

ミネルバの三人組がそれを言う。

そして…、1人何もない空間を見上げながらを見上げながら

 

「今日も宇宙が綺麗ね…。コレがいつでも観られるよう…、戦わなくちゃね。」

 

フレイがそう言う。

そして、バラバラと各々の機体へと移動する間。

 

「キラッ、俺からは何かを言う事は難しい、正直に言って俺は不器用な男だから…、だからまぁ。生きて帰ろう。」

 

「そうだね…アスラン、お互い諦めが悪いからね。」

 

消え入りそうな笑顔で、キラはアスランにそう口に出した。

そして、時が来る。

 

『システムチェックオールグリーン、安全装置解除……、転送まで10,9,8………,2,1,』

 

「作戦スタート!」

 

装置が起動し、其々の機体が姿を消す。

残された人々はそれを様々な心持ちで見送るだろう。

 

「頼んだわよ。」

 

ポツリと、ラミアスの呟きだけが虚空へと消えていった。

 

 

 

……

 

巨大な構造物の中、さながらそこは神殿とも言える場所であろうか?

そこの大回廊をラクスは只管に歩き続けていた。いったいどれ程の時間が経ったのだろうか?

薄ぼんやりとしている道を、何かに導かれるように彼女は歩いていく。

すると、何かが薄っすらと見えてきた気がした。

 

実際に見えているかどうかという考えはその場に置き、彼女は小走りに走り始めた。

ノーマルスーツの中は汗を流し、ぐっしょりと気持ちの悪いものだろう。そんなものを構わずに、彼女は走った。

 

そして、そのぼんやりと見えていた物が何であるのか彼女は改めてその目で確かめるように、それを下から見上げる。

きっと今いるのは、その物体の胸辺りにいるのだろう。何故ならば、特徴的な青い装甲と黄色い排熱口がそこにはあったから。

 

そしてきっとそこはコックピットなのだろう、赤い脇腹とそれに左右を挟まれたそこに座席が見える。そして、其れ等の前に小さな石碑が屹立する。

何と書かれているのか、彼女にも判然としない。

だが、書いてあることは自ずとわかってしまった。

 

〘未来の為に、この鍵を託す。〙

 

そして、その石碑にはT字型の窪みが象られていた。

何をどうすれば良いのか、彼女には理解出来ていた。そして、彼女は手に持っていたそのT字の金属片をその型へと嵌め込むと、その石碑はそれを取り込むように一体となり…砂へと消えた。

 

グワン…

グワン…

グワングワングワン

グワングワングワングワングワン

 

という音とともに、何かの装置が起動し…彼女は見た。

誰もいなかった筈のその機体の操縦席に、白色のパイロットスーツに身を包んだ1人の青年の姿を、敬礼し操縦桿を握る彼の姿を。

 

そして直ぐにコックピットハッチは閉まり、その双眼に火が灯る。左右に置かれた装備を手にし、赤色の盾を左手に引っ提げそれは少し屈むと一気にスラスターを蒸しながら空を駆け上る。

 

それは神話の始まりにいた存在。

 

抵抗の象徴

 

勝利を掴む者

 

ガンダム

 

それが、蘇ったのだ。

 

 

そして彼女は倒れるように意識を手放した。

聞こえるその言葉を耳にながら。

 

『託しますよ…貴方方に、未来へと向かうこの(希望)を』

 

そうして彼女の身体は何処かへと消えた。

 




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