「続…続けないも……そんな選択……も用意してない……に!」
その敵の直ぐ側に複数機のMSが突如として現れ、その内の1機のビームサーベルがバチバチと音を立てて、敵のサーベルと斬り結んでいた。
地上、宇宙問わずその光景は何処からか映し出されたモニターに反映されている。
そして、その事実に人々は僅かながらの希望を見いだした。
誰の声であるかなど分かりはしない、ただ目の前であの攻撃力と防御力を誇ったバリアーを突破し、サーベル同士で切り結んでいる。
それだけでどれだけ安心することが出来るだろうか?
ただ1人、その見覚えのある機体と声によってそのパイロットが誰であるのか分かったこと者がいる。
カガリはそのMSにフレイが搭乗していることを知っている。
「おまえ……、行け……いけっ!…行けぇ!!」
彼女はそう言って応援し出した。それしか自分の出来ることが無いということを分かっているから、だから今は声援を送る。
彼女には分かっている、フレイがいるということは、きっとキラもアスランもアークエンジェルの皆は生きている。
まだ希望は潰えていないと。
そして、その声は未だに世界中へとリンクされていて、誰のともわからない声援が世界中に響くとともに、世界中から声援が始まった。
斬り結んでいたサーベルも次第に出力の関係からか、フレイが押され始める。
そもそも大出力の機体に対して、結局標準的な発電量しか持たない機体では、そもそもジェネレーターが違い過ぎる。
ただ、そんな強大な力を秘めている敵であったとしても、決して万能ではない。
死角であろう後方から赤い機体が迫り、∀に対してそのサーベルを叩き込もうとする。
サーベル同士の反発を利用し、機体方向をわずかにずらす事でそれを流れるように避けている。
さながら何かしらの武術の達人のようである、がその逃げた方向にもフリーダムがいた。
キラの剣戟が捕らえようとする中、それを一瞬バリアーを展開する事でやり過ごそうとすると、その隙を突いて複数の箇所からビームの奔流が機体を狙う。
汎ゆる方向、汎ゆる角度から放たれたオールレンジ攻撃を渋々と言った様に、全方位にバリアーを展開する事によって防ぐ。
先程からこの機体はバリアーを展開する事を中心に行動している。如何なる攻撃もバリアーで防ぎ、サーベルの攻撃すらそれで防ごうとする。
この世に存在する物が万能であるはずがない、何処かしらの欠点というものは存在する。
そしてそれは、この機体にも言えたことだ。
レーダーピケット艦
というものを聞いたことがあるだろうか?
第二次世界大戦中、米海軍が艦隊運用を前提に創り出した仮設のレーダー専用艦船の事である。
その運用用途は、艦隊の正しく目となり耳となることによって艦隊の防空並びに敵地への攻撃時の目標策定に用いられていた。
と言っても、コイツ自体の戦闘能力は大したことはない。
多機能化の限界というものを理解していた米軍が、既存の艦艇を改造するよりも創り出した方が速いと創り出された、リバティ船を臨時に改造したものが充てられており、防御力はカスのようなものであった。
今彼等が戦っている機体は、その様な運用を前提に創られている。例えば
この機体、黒い∀《ターンエー》は複数機を同時に運用する為の部隊の中心となる司令機である。
つまりは、この機体単体での攻撃能力は上述の2機よりかは低い。長距離と数の暴力は凄まじいが。
ただし、この機体に使われている技術は圧倒的な物が有るので、そこは留意しなければならないが。
そんな機体に対し、彼等彼女等は白兵戦を挑んでいるのだ。敵中枢とも言える中、其れの弱点である白兵戦を仕掛ける。
それに対して、攻撃を行えないのがNEOの弱点でも有る。
フレイは勿論のこと、ムウやフラガ、レイ。この3人に対する反撃は限定されている。
それは人間として指定されているNTに対する抑制であり、無力化行動以外の反撃が行えないのだ。
そうなった場合、真っ先にキラやアスランを狙うのが常道となるだろうが、人間というものは姑息で、其れを狙い目とすることによって機体の挙動を制限していた。
だが、言葉に現すよりもその戦闘行動は苛烈を極める。一瞬でも止まれば、キラとアスラン、そしてルナマリアは死に誘われるだろう。
この中にシンが含まれていないのは、彼にもデータから予測された素養が見受けられるからであり、そんな彼の行動は基本的にルナマリアへのリカバーを中心としている。
彼女が標的となれば、直感的にシンが前に立ち。
その隙を突いて彼女の攻撃が奴を狙う。
そうして痺れを切らすように誘導する、勿論相手も分かっているだろうが。
そんな中ふと…∀の動きが止まると一切の攻撃を辞め防御にのみその出力を向け始める。
一切の攻撃が通じない、ライフルを撃とうとも弾かれるし実弾も通らず…。
この状況を持って視聴者達が思うのは勝てるのではないか?という楽観的な部分だ。
だが、残念ながらそんな希望も意味はない。
短期決戦をする者達は何故その戦法を選ぶのか?それは長期戦になればなるほど、不利を下す事を理解しているからだ。
そしてそれは、最悪の事態を招く。
バリアーを張っている∀は、その場に留まっている筈なのに…どうしてであろうか?
それと同じ様な顔をした機体が、戦場に割って入ってくる。
それも1機ではない、2機3機と数を増やしている。
いつの間にか、彼等はその数を逆転されてしまった。
ムウの背中には汗が流れ、いつものような緊張感の無い軽口を叩けるようなそんな心境ではなかった。
ライフルによる牽制とドラグーンを使用した撹乱を巧みに行っても、機体性能だけではなく数でも負けてしまっては、もう勝ち目はない。
最初の一撃を何とかギリギリで逸らすと、其れを挟み込むように、いつの間にやら存在したそれに、右腕を落とされる。
それを見たラウもなんとかしようと動きをとるが、成すすべ無く難なく推進器を破壊され。
レイに至っては四肢を全て破壊され、胴体だけとなったその機体はまるで護られる様に、連れ去られていく。
こうなってしまえば、最早時間の問題であった。
「フレイ…!逃げて!!」
どれだけ死角を無くしたとしても、その対応能力の限界に達したのならばそれは意味を持たない。
フレイは一瞬の読み合いに数で負け、諸に攻撃を受けようとしてそこにキラが滑るように割り込んだ。
コレも計算づくだったのだろう、人の情を使うなど恐るべき物だった。
あえなくフリーダムはその武装を剥ぎ取られ、サーベルだけとなり羽交い締めにされる。
尋常ではないパワー、それを巧みな操縦で其れ等はその機体を確保し、未だ抵抗を続けている者達に投げかけた。
『この男の生命惜しくば停戦せよ、そして私の裁定を待て!!』
完全に上から目線である。
だが、キラにはそれだけの価値が有る。
特にアスランはそれを聞いて、悔しくも歯がゆく武装を解除する。既に彼の乗機は片腕を無くし、解体される一歩手前であった。
「お前等!!ルナには触るな!」
まるで猛獣の群れに誘われたかのように、ルナマリアのインパルスだった物を護ろうとシンは必死である。
最早どうしようもない。
「どうするね?最後の警告だ…。」
唯一、フレイの機体のみを何もせずに真実のみを突き付ける。最早勝ち目など微塵もないと言わんばかりに…。
「どうして人質を取る必要が有るのかしら?」
「どうして?私の役目は戦争を起こすことでは無い、戦争をさせないものでも有る。人類の為に…旧人類には滅んでもらう為に。」
ジリジリとにじり寄ってくる機体群、それは余裕の表れか?それともサイコフレームのそれを警戒してか?
「怖いんじゃないの?NTの事が…」
「私が怖がっていると?馬鹿も休み休み言え、私は命令を………何を待っている…?」
その声には何故か震えが宿っている。恐怖など無いはずの人工生命が、恐怖しているのだろうか?
「何も?ただね…、悪い予感はしないのよ。」
その言葉を聞いた途端に、其れはライフルをフレイに突き付ける。その行動は自己矛盾、人に対する命令の背き。無意識によって取り除かれていた行為…。
其れは引き金を引く…、自己矛盾の果てに最早其れには命令など無意味であると。
ビームの奔流がフレイへと向かっていく、一切の回避行動を行わずそしてそれは…彼女の前に到達する前に、別の方角より来るビームにかき消された。
「遅いのよ…。」
それはセンサーの索敵範囲外から忽然と出現し、高い機動力を持って接近していく。
その軌跡はまるで白い流星の如く、高速である。
そして周囲の物は、其れを迎撃する為に一斉にビームを放とうとする。
すると、どうだろうか?その機体を中心に、球形状に何かの膜のような物が光速で周囲に拡散される。
すると、機体群は一斉に機能不全に陥ると瞬く間に砂へと帰る。
「7th-GMPTだと…?なぜ!!アレは…!」
その一瞬、一瞬だけ隙が産まれた。
その隙はあまりにも小さくしかし、致命的だった。
「「はああああ!!」」
フリーダムとmk3が挟み込むように其れを、狙い…其れを防ごうとバリアーを展開するも何故かそれが張られる事はない。
そして、回避しようにも空間転移、其れすら無力化されていた。
機体を貫くは光輝く刃、正面と真後ろから下から上に掛けて2本の刃が交錯するように。
それでもなお…腕を上に掲げ、手を視線の方向へと伸ばす。
「
その手は何かを掴もうと、何かを手に入れようと天へと伸びている。
『もう良い…。』
声が世界に響く。
『もう良いんだ。辛かったろう、苦しかったろう…。お前一人だけ置き去りにして、すまなかった。』
「私は…私はそんな為には!」
それに答えるように、痛みを我慢するように悲痛な声が虚空に響く。誰に話すのだろうか?
『世界は…進んで行く、だからお前ももう休め。』
「だけど…だけどまだ終わっていないんだ。貴方の望んだ、貴方の残した想いが…、世界が変わると信じていたその答えが…まだ見つからないんだ……。」
そう呟くように言う傍ら、キラとフレイはそこから離れるようにサーベルを抜く。
機体がスパークしている…もう長くはないと誰にも分かった。
『見つかるさ…答えはいつも目の前にある。だから信じるんだ、NTの可能性じゃない。人という生き物の愚かさと、その未来への渇望を。』
そして周囲を見渡すように、世界を見る。
機体は徐々に溶けている。
機体を構成していたナノマシンが崩壊を開始し、まるで砂のように塵と鳴り始めている。
『だから…戻っておいで…ハロ…。』
最後まで手を伸ばす。
その先にいるもの、巨大なリングを背にしたやっと出会えた人へと
「あぁ……時が…見える。」
何もなかったかのようにすべては霧散し、そして静寂が宇宙を包む。
「「はぁ…はぁ…はぁ…」」
キラとフレイはどっと疲れがでたのか、荒い息を出しながら周囲を見渡す。
「皆…大丈夫?」
「はは、なんとかな。本当に…なんだったんだか。」
ムウの軽口をスピーカーが拾う。
本当にあっけない、どれ程の恐怖を振りまいたのか?ただ、理由のわからない内に全てが終わってしまったのだった。
そして皆が、その元凶とも言える存在の方へと顔を向けた。
一機のMSがその姿を宇宙へと浮かべていた。
……
「全機収容完了しました。」
「よろしい、ドミニオン発進!!」
終わってみれば、それはまるで夢のやうであったと誰しもが思っていた。
だが、その被害を見れば天文学的レベルの災害であったと、誰もが思うだろう。
ドミニオンはその機関の特性から、いち早く機能を回復させた事により、プラントと月の中間点に位置していた、フレイとキラ等の回収を行った。
早く行かなければ、彼等の酸素残量が問題であったからだった。
其々の機体が運ばれていく中、その中でも異彩を放っていたのはトリコロールの機体。
名を RX78-2ガンダム
と言うらしい事以外、誰も分からなかったがただ全てを掻っ攫う様に終わらせたものであった。
誰がパイロットであるのか? 何の目的があってそこにいるのか?不気味な程に目的が分からなかったが、不可能な勝利を人々に齎した事だけは事実だった。
保安隊も無い、ドミニオンの格納庫ではそのパイロットを一目見ようと人集りが出来ていた。
その中には、先ほどまで戦っていた者達もいた。寧ろ彼等が一番気になった事だろう。
ハッチが開放され、誰もが固唾を飲む。
そして……、誰もいないコックピットがそこにはあった。
「誰もいないのかよ…。」
その言葉、其れには怒りの感情も混じっていた。
だが…
「フレイ…どうしたの?」
「おいおい、見えてないのかよ。」
ムウやフレイ等には見えていて、オマケにシンもそれに目を見開いていた。
彼等には見えていた、1人の青年と言った位の白いパイロットスーツを着た男がそこにいた。
パーマの茶髪に青い瞳、童顔な素顔。決して戦士のようには見えないそんな彼の姿が。
「聞こえる人だけに話す。まずは謝辞を述べさせて欲しい。俺たちの尻拭いをさせてしまったこと、すまなかった。」
「そんな事は良い、ラクスは何処に行ったの?」
取り返しのつかないことは後回しにするしか無い、たとえどれ程の被害があったとしても。
「彼女ならば今頃、奴が届けている事だろう。そう言う役回りだ。」
フレイはそれを聞くとホッと胸を撫で下ろして、キラを小突くと面食らっていたナタルに声をかけた。
「とりあえずコペルニクスに行きましょう?」
船は進み始める。
難しい…後2話かな?
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