機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第50話 未来(その先)

 

ピンピンピンピンポーーン

チクチクチクチク

アナログ時計は刻み続け、その真円を描く秒針は止まることなるただ時を見る。

 

雄大で恐ろしげな暗黒の中、ポツリと一隻の船が動いている…。いやポツリと言うのは僅か語弊があるだろう。

何故ならばその船の大きさは、地球圏に存在する中で尤も大きな船であると豪語出来るのだから。

 

木星圏航行用運搬船 ヴァスコ・ダ・ガマ

 

全長2kmにも及ぶその船の大半は、燃料となる核融合ペレットと重水素やヘリウム3を搭載する為の格納区画。そして乗員を収容する重力居住ブロックから成るものであり、自衛用のMS以外の武装は最低限の代物である。

 

アステロイドベルトへの処女航海を終えた後、プラント本来の役割である、外宇宙探査用基地としての本来の役割を果たさせる為、初期加速にジェネシス推進システムを利用した、故シーゲル・クラインの夢を実現した船である。

 

入植初期段階として、ジェネシスシステムを木星へと運搬するために、今回は初期加速を減速させる為に核パルス推進の連続使用を行い、ゆっくりとだが着実に木星衛星軌道へと近づきその動きを止めた。

 

止めたというには語弊があるが、木星の引力に捕まったと言うのなら問題ないだろう。

そして、そこから少し経つと幾つかの人影…いやMSが船外作業をする為に姿を現した。

 

「ほら!そこ、作業遅れてるわよ。いくらソーラーセイルで速度を維持していると言っても、食糧の自給自足は課題なんだから。しっかりやる。」

 

1機の作業用MS、本来は軍用であったものを転用したものであるが、を操縦する女性。

大人びていて、成人期へと至った立派な物を持っている女性…。

肩口までに切り揃えた赤髪をヘルメットに収めながらが、文句を垂れている船員に言う。

 

『何故こんな女にこき使われなければならないのか?俺はその為に創られた訳では無いと言うのに!!』

 

「シュラだか何だか知らないけれど、思考がダダ漏れよ?そんな青二才に、MS戦で負ける気は無いから。」

 

シュラと呼ばれた人物は、青みがかった白髪に怒りを込めながらも、件の模擬戦においてやられた事を思い出す。

勝てなかったのだ…、己の敵の思考を読み戦うと言う術がこの女には通用しなかった。

場数が違うというのをはっきりさせられたのだと。

 

「それと、ここは動物園じゃないんだから…。勝手に飯がでてくるわけじゃないのよ?わかった?」

 

周囲にいる他のパイロットも、渋々と言った体で彼女の言う事を聞いている。統率はかなりのものだが、その忠誠心の無さは如何ともしがたい。

 

「虐めるのもそれくらいにしておけ、余りやられて再起不能になっては、こちらの荷が重くなってしまうのだからな。」

 

そんな光景を嗜める様に、金髪の中年に足を入れた様な男が言う。木星船団の中でも、彼は責任者としての地位が高いのだろう。周囲からの視線は、実に良いものがあった。

 

「それよりもだ、今日はグリニッジ標準時18時から皆に出席してもらわなければならないものがある。仕事は確実に行い、きちんと休憩を取るように。良いな?」

 

暫しの作業の後、今日の作業終了を言い渡され各々が食堂へと集結する。

そこには、様々な食材がずらりと並びさながら何かしらのパーティーでも開かれているかのようである。が、実際にそうであった。

 

18時まで残り10分を切った辺りに、この船の船長である一人の女性がマイクを手に前に出る。

艷やかな黒髪に威厳のありそうな声色、軍人のような態度である。

 

「皆此処まで着いてきてくれてありがとう。と、まずは礼をさせてもらおうと思う。ここ木星と言う星への長い旅路の中で、この半年の間様々な人間関係が生まれたことだろう。

私もその一人だ。

操舵主任である、アーノルド…。彼の想いを告げられ、私自身面を食らったものである。

 

さて、本日皆に集まってもらったのは他でもない、非常に大きな出来事がこの後起こるのだということを、ここに宣言したい。詳細は…、手元の画面と大画面を見てくれ。」

 

緊張した声でそれを述べると、優しげな男の隣の席。船長用のデスクに座る。

そこには、酒の類は無いものの既に食事が用意されている。

 

画面に映し出されるのは、オーブ首長国の所有する軌道エレベーター…、アメノミハシラ。

そこに列席する多くの要人たちの姿である。

 

それぞれが様々な国の国旗を背負い、その時を今か今かと待ち望んでいた。

そして……、一人の成年が壇上に立ち緊張からか息を整えながら声を発した。

 

「え〜…。皆さん、初めまして。私はザラ…アスラン・ザラというものです。今こうしてこの壇上に自らが立っている事に、驚きを持ちながらもこうして皆さんと語らう事が出来ている事に、不思議と平和が続いたという実感が湧いてきています。

 

現在時刻、CE92年18時02分。私達は嘗ての蟠りを越え、今ここにこうして共に立てている事に誇りを持っています。

 

思えば、長い長い冬の道を歩いていた様に感じている人も多いでしょう。

人類史にとって、多大な犠牲を払った戦争が終結し早18年…。私も今年で37歳となり、妻との間に4人の子宝に恵まれました。」

 

彼の横に並び立つように手を取り合うのは、金髪の美しい女性。オーブの政治参画者である証の赤紫の服を身に纏う。

 

「嘗て戦争へと赴いていた自分に、こう告げればきっとビックリする事でしょう。

『お前にはナチュラルの妻が出来、そこに更に4人の子供が生まれる。』と、色々と経験の浅い自分はきっと面食らうに違いありません。

 

今の少年達には、私達が子供の頃酷い差別をしあい戦争をしたなどと言う事は、はっきり言って分からないことでしょう。

皆すべからく、オールドタイプと呼ばれる人種として今では世界中で語られています。

 

そして私達オールドタイプと共に次に生まれてくるであろうNT(ニュータイプ)の人々との争いに発展してほしくは無いものです。

この世はフラクタル構造の様な血塗られた〘Red Fractal〙等ではなく、希望の連続であると言うことを証明して行くことこそに意味があると。

 

今ここに参列してくださった皆さんと、こうして顔を合わせる度に平和を実感し次の世代に何を残せるだろうか?と、私達は話し合いを続けてきました。

 

私がこの話を知ったのは、つい6年程前の事ではありますが今は決して、夢物語ではないと強く実感し今ここに宣言することが出来るのです。

 

これより、この地球。ひいては太陽系内に存在する全ての人類の共栄圏において、全く新しい政治組織がここに誕生します。様々な問題もまだまだ山積みではありますが、どうか私達(太陽系連邦)へと力をお貸し頂きたい。」

 

と言う長々とした話を聞いているものがどれだけいたかはさておき、そんな話に船内にいる子供達は我慢など出来よう筈もない。

 

「ねぇお母さん、この人アスランおじさん?」

 

「ええそうですよ、良く覚えているのですね。立派でしょ?自分であの道を選んだんですよ?」

 

ピンク髪の女性とその子供、そしてその横には小麦色の髪をした少し白髪が生えてきた男声が座る。

 

そんな光景を遠目で羨ましそうに見つめている人がいた。

 

「君もそろそろ身を固めたらどうかな?復縁の話はあったのだろう?」

 

赤い髪の女性だ。それを嗜める様に金髪の男声が言う。まるで父親のように。

 

「わかってるわよ、ただ私の心の準備の問題。」

 

そう言うと、チラリとその人物の方を見る。度の入ったサングラスをした少し髭を生やして威厳を出している人物。この船の会計官である。

 

「サイ君は君を待っているのだ。そんなにいい話も無いだろうに。」

 

「この仕事が終わったらって話はしてあるもの、それにそれを心配するならアンタはどうなわけ?」

 

「私にはもう時間の猶予はない、見届けるだけだ。それに、地球には奴とその子供達がいるからな。フラガ家は安泰だろうさ。何、心配は要らない。出航前に話はつけておいた。」

 

何の問題もないと胸を張っている。

 

「それでは、皆さん。新しい時代の平穏を祈って。」

 

盃を手に取りそれを飲み干す動作をする画面の中の人物は、笑顔でその場を後にする。

 

「さてと……、皆がやってる間にちゃちゃっとやりますか。」

 

そう言って赤髪の女性は、席を立つとその場を後にする。

各種のチェックシートを確実に済ませると、MSでの船外活動が始まる。

 

「本当に良いんですか?」

 

「元々の作業範囲にはなってるし、人手は多いほうが良いでしょ?やる事は知ってるし、上には通してあるから。」

 

木星での果たさなければならない事、それを成すために彼女はその巨大なガス惑星を見る。

コンソールを目の前にして意識を集中し、一つのものを見つける為に。

 

「…、…、こっちね…。シン、ルナマリア。本当に良いの?」

 

「ミッションですし、それに」

 

「一人よりも3人で探したほうが早いからな。」

 

3機1グループとなって作業することが大前提であるこの空間に、目的とする物が有るという。

所謂、ジョージ・グレン関連の物品を収集するのが目的でも有る本ミッションにおいて、この宙域には所謂人工物らしきものがあるという、ジョージ・グレン友の会からの嫌に詳細な物が提出されていた。

 

まるで本人がそれを打ち出したと言わんばかりに詳細な物と、現時刻の予想位置を割り出す為の方程式まで創ってあるのだから、誰か余程詳しい人物がいたのだろう。

 

ゆっくりと進んで行くと、レーダーに反応が現れた。

木星の強烈な引力と磁場によってレーダーは、その性質上不安定に成りがちであり、光子を使用するレーダーの方が頼りになる。

 

次第にその岩塊が見えてくると、その巨大な物に幾つかの人工物が付着しているのが見て取れた。

 

「本当に…有るですね。この歳になってもアレですけど、あの時のが夢なんじゃないかって思う事も有るんですけど、こう見ると…。」

 

「でも、ヤケに古いよなぁ。」

 

二人のそんな会話を耳にしながらも、彼女は冷静に周囲を警戒しながら目的の物を見つけた。

 

「フレイさん…そっちなんですね。」

 

「ええ、彼は必ずそこにいる。」

 

彼…とは、誰の事を指すのだろうか?何千年も前から小惑星はそこに有るのだから生きているはずは無い。

だが、その彼は少なくともここにいる全ての人々の生命を救った人物ではあった。

 

あの時、あの機体。RX78-2が現れなければ、きっと世界はアレが支配していたことだろう。

そんな機体には誰も搭乗していなかったが、そのコックピットに人がいたと証言する者達が幾人かいた。

 

警察での所謂似顔絵捜査と同じ様に、全員が見たその人物の顔を描くと驚く事にほぼ同様な絵が浮かび上がる。

天然パーマで青い瞳、穏和そうな顔をしていて自信ありげな20代前半から後半位の男。

 

そんな人物がいたという。

誰もがそれを信じなかった。だが、全員同じ顔を見たという。そしてそれを、見た人々の共通点は全てを現していた。

皆、勘が鋭いとされた人々である。

 

「あった…」

 

岩にめり込むようにそこにあったのは、何かしらのMSの残骸。バックパックにあったであろうスラスターは焼き溶け、あちこちが原型をとどめていないが、確かにMSであった。

ジョージ・グレンがそれを認識した時、MSとは認識出来なかったのは偏に、彼のいた時代には現代のMSがなかっただけであったのだ。

 

コックピットへはどう入るのか?

機体を側へと近づけ、慎重に岩場から引き剥がす。

機体が護るように胸下にあったのは、何かの脱出ポットなのだろう。外装の状況から内部がどうなっているのか等、明らかだった。こちらは変形が酷く、開くのは難しいだろう。

 

まずは機体νガンダムの電源接続部を探し出し、そこに変換ポートを取り付ける。彼等の技術解析からそのナノマシン機械を創り上げ、様々な形に変化するそれを使い解析し、電気を送る。

エアロックを開放するも内部には空気はない、気密性は等の昔になくなったのだろう。経年劣化と言うやつだ。

 

扉が開く。コックピット内部が露わになり、フレイはそこにコックピットを近づけるように機体を止めて降り、その内部へと進んで行く。

 

そこにあったのは確かに人の遺体、腐敗する事も乾燥することもなく。

恐らくは生前の姿のままなのだろうそれは、内圧で膨張することもなくそこに居た。

 

ヘルメットを被ること無く、最後の最後まで抗ったのだろう事を裏付けるように彼はコックピットに座り、フットペダルを踏んだ状態で事切れている。

 

「ずっとずっとここにいたんだよね…。誰も見つけられなくて、誰もここに来なくて。2人で彷徨っていて…。でも、良かった。まだ、貴方には帰る場所が有るのだから。」

 

そうしてその姿を見た彼女は徐ろに、宇宙の彼方に有る水の惑星の方を向く。

それは、彼の故郷が何処にあるのかを示していた…。

 




これまで本小説を読んでいただきありがとうございました。今回でこの小説は完結と成りました。
至らぬ事が多々ありましたが、今までのご声援ありがとうございます。

よろしければ、この小説の総評価と称し評価をつけていただければ幸いです。

またお気に入りユーザーに登録していただければ、次回作もまた読んでいただければと思っております。
次作は、数本短編をしたのち宇宙世紀物をやっていこうと考えております。

では、改めて。
ご高覧頂き、ありがとうございました!!
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