機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第19話

また大きな爆発が起きて、パパが乗っていた筈の船が爆発していく。

きっと、船の弾薬か何かに引火してしまったんだろう、あれじゃあ助かる訳もない。

 

私は、その現状を他人事のようにプカプカと宇宙に浮かびながら眺めている。

そして、また同じ様な映像が、何度も何度も何度も何度も繰り返される。

 

幾度となく繰り返された映像は、私の中にこびりついて離れない。私の心の中に大きく抉り込み、私そのものを殺すかのように永遠と繰り返す。

小さな瞬きが宇宙を多いながら、それでも私はそれを見てしまう。同じ時に、この事をずっと見てしまっていたから……。

 

『そんなにも辛いのならば、もう戦わない方が君にとっては良いんではないか?』

 

繰り返される時の中で、そんな声が響く…。

声の聞こえる方を眺めると見たこともない服を着た、一人の男が立っていた。

茶色がかった天然パーマを頭に着けて、青い瞳が私を貫くように見ている。

 

「貴方は……誰?」

 

勝手に口に出る。でも、その質問の答えを私はあらかじめ知っている。いや、知っていなければおかしい何故なら、この人はずっと私を守っていた人だからだ。

 

『俺か?俺はしがない木霊だよ、この広くも美しく残酷な世界の中で響き続ける、残響の1つに過ぎない。』

 

そんな物に自分を例えるような奴が、真艫な存在ではない事は判っている。けど、それでも私を守ってきてくれた人なのだから、多少は信頼しなければならないのではないか?

唯一、心を許せる相手なのだろうから。

 

『だが、同時に今は君を守る存在でもある。君自身の身体を借りてね。』

 

「だったらわかるでしょ……、私は辞めるわけにはいかないの。絶対に……、絶対にパパの仇を!!」

 

そんな言葉を言う私を冷やかな瞳で見つめながらも、何処か何かを懐かしむように私を見ている。

 

『だったら尚更さ、俺はそうやって復讐に身を窶した者の末路を知っている。だが、君は奴じゃない。

奴のように独りではない。周囲には多くの友人がいる、数少ない理解者に成ろうとしているものがいる。

それを見ずに、君は勝手に死にゆこうと言うのかい?』

 

「………。」

 

私はその言葉に押し黙る。理性では分かっている筈なのに、本能は生きたがるこの自己矛盾。

このまま続けても、私は先に死ぬかもしれない。

もし、それで死んでしまったら?私は、死ぬ事が恐ろしくもある。なぜだか分からないけれど、怖いのだ。

 

『怖いのならそれで良い、それこそ人の持つ生存本能さ。だからこそ恐怖し、互いに傷つけ合うがそれ故に儚くも、次に何かを残そうと必死に足掻く。

 

死ぬ為に力を貸すなんて事はしたくない、だから生きたいと

それでも前に進みたいと思ってくれれば、こちらも力を貸す意味があるんだが……?』

 

「死にたくなんて無い……、けど死ぬ覚悟が無いと…、戦えない…。」

 

『死ぬ覚悟なんていらないさ、そんなものよりも生きて業を背負う方がよっぽど大変だからね。』

 

私は、生きていても1人。けど独りじゃないと言われれば、そうなのだろうか?

結局、サイは私にとっては親の決めた婚約者だし、それだけの関係で、他の人達も同じクラブだったり学部だったりするだけだ。

じゃあ、何を目標にすれば良いんだろう…。

 

『それは……、今見つける必要は無いよ。自ずと、自分の帰りたい場所が解ってくる筈さ。

だから今は、漠然とでも良い君は〘独り〙ではないんだ。』

 

男のその言葉を聞いた瞬間、私の意識は引っ張られた。

 

 

……

 

カンカンという音が響き渡る格納庫無重力の中でも、工具が飛び交う事なくそれが行われているが、どうやら荷受け後の工程にてんてこ舞いのようである。

 

それでも、ストライク然りガンダム然りコレを、動かせる人材はおらず、結局としてキラ、フレイの二人は格納庫で整備に勤しむ他なかった。

 

キラとしては、もっとフレイには休んで欲しかったのだが、彼女から

〘そんな心配しなくて良いから…。〙

何ていう一方的な言い方に気圧されて、結局彼女の行いを止めることは出来なかった。

 

こっそりと、キラはストライクからガンダムをハッキングする。意外にもセキュリティは、ストライクと同等しか無いために直ぐに突破し、フレイの映る内部カメラの映像をコックピットのコンソール越しに眺める。

 

フレイの顔は真剣そのものであるが、時折見せる悲しげな顔にキラはやはり彼女を放っておけないなと思いながら、それを見るしか無かった。

 

「おい、坊主。おめぇさん、この船を降りるんだってな?」

 

そうして、少し休憩しながらやっていると、マードックから声をかけられた。

そしてキラは、そのことに対して頭の上に?マークを作りながら聞き返す。

 

「え?誰から聞いたんですか?」

 

誰にも降りるとも、降りないとも言っていない。かと言って、残るとも決心していないのだから、否定する材料もない。

 

「いや…、オメェさんの友達がそう言ってたんだけどよ?」

 

それに対してキラはサイ達が言ったのだと、そう思った。そして同時に、なぜ彼等がそんな事を言うのかと、そう思いながらコンソールを閉じた。

 

「僕は……、」

 

チラリとガンダムの方を見る。フレイはまだコックピットから出てきていない、きっと彼女はAAに残ると言うのだろう。

彼女は正直言って強い、今のキラよりも遥かに強い力を持っていると、キラは思っていた。

けれど、それと同時に親を失った悲しみから自殺なんてしてしまうんじゃと、そう考えてもいた。

だから、彼の答えは決まっている。

 

「僕はこの船を降りません…、だって今ここで僕が離れたら…、ストライクを満足に動かせる人なんていないじゃないですか。」

 

「ハハハ……、そう言われちゃあ俺たちもなんも言えないわな…。だけど、お前さんが残ってくれるってんなら、百人力だわな。」

 

本当は残りたくなんてないし、戦いたくなんてない。だけど、彼女を独りにするなんて、それ以上に嫌な事は今のキラには出来なかった。

彼女の親を助けられなかったのは、自分にも責任があった筈だから。

正直言って、口だけ信頼している人たちの事よりも彼女の事を優先したかったのだろう。

この中の誰よりも傷ついている彼女を。

 

そうしていると、何処からか大勢の声が聞こえてくると整備兵達がそちらの方へと向き直り、次々と敬礼していく。

そして、先程あったばかりの老将校がその姿を現した。

 

「おやおや、キラ・ヤマト君かね先程ぶりだな。」

 

「はい!……、あの。」

 

キラは意を決して言葉を紡いだ。

 

「僕は……、僕キラ・ヤマトは地球軍に志願したいです!」

 

その言葉に後ろを着いてきていた、ラミアスもナタルも顔を驚愕で歪ませ、ハルバートンはそれに対して満足そうに口元を歪ませた。

 

それを、反対側から見ていたフレイは、何事が起きたのかあまり良く判ってはいなかったが、キラが何かをしたと言うことだけハッキリとしていた。

 

「アレが……、ハルバートンって人…。」

 

何処かで見たことがありそうな顔をしていると、そう彼女は思っていた。

彼女は一般的な家庭の出身ではなく、どちらかといえば上流階級の人間である。

そう言った点で、何処かで見覚えがあったとしても別段不思議ではないが…、この時の彼女のその反応はそう言ったそれでは無いのだろう。

 

彼女が見つめていた集団が、今度は彼女の方へと移動してくる。それを認めた彼女は少しだけ覚悟を決めた。

 

『軍のお偉いさんいつもの何処かに裏を持っている。今は悪意は感じないが、そう言う匂いはする覚えておいた方が良い。』

 

「忠告ありがとう。」

 

小さくそう語らい合うと、彼女の目の前にその集団が辿り着いた。

 

「君が…、フレイ・アルスター君か。うん、確かに彼の面影があるな。」

 

『違う派閥の人間を覚えているということは、それ程嫌悪な仲ではなかったのだろうな。』

 

「はい……、フレイ・アルスターです。始めまして。」

 

軽くお辞儀をする彼女を品定めするように、頭から足の先まで眺める姿は彼女をどう利用しようかと企んでいる。

 

「今までご苦労だったな……、君は…この艦を降りたいかね?」

 

「私は残ります。だって……帰ったところで……、誰もいませんので…。」

 

ハルバートンの後ろに並ぶ士官達は、それを不憫な者を見る目で目を伏せる。

それに対してハルバートンは真っ直ぐに彼女を見つめ、まだまだ値踏みを終えそうもない。

 

「そうか……、だがこれからもっと辛くなるかもしれないぞ?それでも戦うのかね?

言って悪いが、今降りなければ次降りられるのは戦後だろう。」

 

「それでも……、です。」

 

それを聞いて満足したのか、ハルバートンは後ろについてきた士官に声を掛け、何やら紙を貰う。

 

「これは君の入隊許可証だ。今現時点を以て、君を正式にこのAAのMS〘ガンダム〙のパイロットとして扱う事となる。

良いな准尉。」

 

「はい……!」

 

慣れない手つきで行う敬礼に、彼女は震えながら応えた。

 

 

……

 

 

「キラもフレイも残るんだってさ。」

 

ブリッジでそう話すのは、トール達ヘリオポリス組だ。

彼等は誰からの説得もなく、今どうしようか悩んでいる最中であった。

 

「俺は残るよ…、フレイを置いて降りるなんて婚約者として見過ごせないからな。皆んなはどうなんだよ。」

 

それぞれ思うところがある。守られてばかりでいたのに、これからも二人が戦って行くと言うのに、自分達だけが逃げるように離れても良いのだろうかと。

 

「私は、残る。だって、今のフレイ見たでしょ?あんな消耗しきってて、キラだって無理してるの判るし。」

 

「そうだよな、俺達が逃げ出したんじゃ二人に顔向け出来ないよな!」

 

そう口々に言う中で、カズィだけが何処となく嫌な顔をしていた。彼は能動的に動くタイプの人間であり、周囲に流されてここまで来たという。

それなのに、まだ戦わなければならないのかと内心では本当に嫌でしょうがなかった。

彼は此時も彼等に倣って、AAに残った。

 

「じゃあ、俺達はずっとAA勤務って訳だ。」

 

その言葉に、ブリッジ内の他の元からのクルーは眉を顰ませた。確かに、慣熟訓練すら行っていない現地徴用兵。そんな者たちが、ほとんど機械化されているこの艦ならばいざ知らず、他の艦に移動したところでお荷物も良いところだろうと。

そして、確信する。

自分達は体の良い生贄で、彼等のお守りを続けなければならない事を。

 

「皆、大丈夫かしら?」

 

そんな事を各々考えている間に、艦長であるラミアスがブリッジへと帰還する。

どうやら、ハルバートンとの帯同は終わったらしかった。

 

「これからの私達の航路なのだけれど、良いかしら?」

 

ラミアスは、説明を始める。

まず、このまま地球へと降下しアラスカ本部に入港する事を最終目標とする事。

その後、戦力の受領を行った後各地を転戦すると言うのだ。

 

「私達のこの艦は、本来単艦運用を前提として作られました。試作艦であることから、同型艦が無い以上そうなる事は致し方ありません。」

 

「そこで我々は、敵地の強襲任務を請け負う事となった。」

 

そのまで聞いてブリッジクルーの反応は2つに別れた。

地球に降りられると言うヘリオポリス組。

そして、完全に左遷であると認識していた正規兵組

互いに反応を隠しながらも、2つの意見がそれぞれの頭を過る。

 

しかし、本当の理由はラクス・クラインを連合本部が欲したからだった。ラクスを手に入れられれば、AAは用済みであったからでもある。そして、効率の良い経験値ボックスにする計画なのだ。

 

「一応だけれど、各員階級がそれぞれ一つずつ上がりました。私は少佐に、少尉は中尉に。

そして、パイロットであるキラくんフレイさんの二人は、正式なパイロットとなった為准尉となりました。」

 

これが何を意味しているかと言うと、ブリッジのヘリオポリス組はキラとフレイに頭が上がらない立場になった事だ。

 

「士官した子達も、これからは階級で判断します。堅苦しところもあると思うけれど、我慢してちょうだいね?」

 

これからが地獄の始まりだと、此時知るものは誰もいなかった。

 

 

 

 

ブリッジメンバーが、そんな会話をしている頃キラとフレイは休憩をしていた。

流石にパイロットが整備ばかりしているなと、そう言われれば出ていくほか無かったと言う事もある。

 

しかし、二人して何をするでもなく艦内をただぶらぶらとする訳にもいかない為に、二人は困っていた。

別にカップルでもないにも関わらず、二人して移動する羽目になったからだ。

 

「………、ねえ本当に行くの?」

 

「だって……、〘挨拶したい〙なんて言われて行かなかったら、また遅れちゃうから。」

 

二人が話しているのは、避難民をシャトルでメネラオスへと移動する事が決定したからだった。

そこで、避難民から2人へお礼の言葉を送りたいと、頑としているのだと言う。

 

元々彼等はオーブの人間であるから、大西洋連邦の軍人が何を言おうと知ったことでは無い。

従って、軍の統制も知らぬ存ぜぬで押し切ったのだ。

 

「……、キラは本当に良かったの?」

 

フレイはそう言うと、キラの顔を下から覗く。

背丈はそれ程離れている訳では無いが、それでもフレイよりもキラの方が少しだけ身長は高いからだった。

 

「僕が守らなくちゃ、誰が守れると思う?それに、フレイだって戦うんでしょ?なら、僕だって……戦わなくちゃ。」

 

フレイとしては、キラも来てくれればと内心思っていたが、まさか本当に来るなんて思いもしなかった。

 

「そう……。」

 

そうして話していると、シャトルはもうすぐ出発と言ったところで待機していた。

 

「遅かったな…、ほら早くしてくれ!」

 

警備兵が焦るように言う。

それそのはず、この事がバレれば懲戒ものだ。

民間人に押されましたなどという事など、通じない。

 

そうして行ってみれば、避難民代表として一人の幼女とその家族が共に前に出てきた。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん。今までまもってくれてありがとう!!」

 

無邪気に言う姿に、キラは救われた気がした。

フレイは、それを受け取るや悲しそうな顔をした。守ろうなどど思って守っていたわけではないからだ。

 

「ありがとう。」

 

「………、ありがとうね。大切にするわ。」

 

仮面の上手いフレイは、にこやかに返すと幼女と家族はシャトルへと搭乗していく。

 

そして、フレイのその姿に避難民達は自己満足する。

目の前にいる少女が、この場所にいる誰よりも戦争の被害者であるなどと考える事もなく、能のうと自分達だけで逃げるのだ。

だが、それも仕方がないことなのかもしれない。

だって人は、どこまで行っても自己中心的な生き物なのだから。

 

 

 

 

 




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