機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第24話

たった一人……、たった一人家の庭の手入れをしつつ待ちわびる日々。

あの娘はどこへと行ったのだろうか…、どこへ行ってしまったのだろうか?生きているのだろうか?それとも……。

 

無限に続く永遠の螺旋、メビウスの輪をも思わせる事実的な物言い。

ラクス・クラインの父、シーゲル・クラインは一人寂しく庭弄りをしていた。

 

何かをしていなければ気をやってしまいそうだった。たった一人の娘を、その手で手ずから育てた娘が今や目の届かぬところへと行ってしまったのではないか?

不安な日々が続いて行く…。

 

そんな日々に、光明が射すのに時間はかからなかった。

 

最高評議会の臨時召集、それを誰かが要請し急ぎそれへと向かう。公私混同を行ってみずからの仕事を辞めるなどという事を、決して行ってはならない。

決して折れるわけには行かない、クライン派という穏健派を纒める元締として、心変わりする訳にはいかないと…もしもの可能性を否定しきれずに、目の前の事実に…それを受け入れようとした。

 

議会へと到着すると、自らが最も遅い到着となったのだろう。全員が着席し彼を待っていた。

 

「まずは、誰がこれを招集したのか聞こうではないか?」

 

議場に集まった者たちはそれが気になっていた。静寂の中静かにその人物が手を挙げ、そしてそれを行った人物は誰もが見知った人物であった。

 

「議長、私が招集した。軍務上の特殊な事例と、議会の了承を得た物事のほうが、より良い結果を出せると思ったのだ。」

 

パトリックがそう言うと、彼等の目の前にあった画面へとそれが映し出された。

粗い画像は、NJの影響を受けているが早期にそれを送信するにはこれしか方法が無かっただけに、その画像を補正していったものを共に記載された。

 

「つい先刻程、北アフリカ方面軍ジブラルタルから情報が、入った。不確定ではあるものの、クルーゼ隊隷下の部隊が低軌道上で地球軍第八艦隊との戦闘へと発展。

多大なる犠牲を敵へと与えたものの、こちらもローラシア級一隻と多くのジンとパイロットを喪ったと言う。」

 

また戦争、1個艦隊を相手取りその程度の犠牲で済んで良かったのだろうと言う反面、その程度の事今更改まって言うことでもないのだ。

 

「本題を言おう。この戦闘時偶発的に敵新造艦であるAAの艦橋内部を撮影した映像が、先程から映っているが…、そこからラクス・クラインの安否が判明したのだ。

彼女は……、ナチュラルの軍艦AAと共にいる。」

 

その事実を聞いた途端に、シーゲルは肩の荷が降りたようなそんな錯覚を覚えた。

良かったと、生きていてくれてと。その後に続く言葉がなんだろうと、どうでも良いとすら。

 

「これを受け、私はラクス・クライン救出部隊の創設を提案したい。」

 

これを聞いた時、シーゲルはパトリックにしてやられたと、内心思った。

専属部隊、聞こえは良いがこれはラクス救出の為に様々な制約を突破する為の部隊を創設しようという魂胆だろう。

 

しかし、ラクスの親であるシーゲルにはそれを否定する術はない。ラクス救出と言う謳い文句を使って、もしかの艦艇を受け入れるとならば、それはプラントへの敵対として映ってしまう。

そうなれば、中立国も関係なく攻撃する口実を創り出せるのだ。

 

〘それ程までに、ナチュラルが憎いのか?〙

 

内心、シーゲルはパトリックに対してそう評した。

 

そして、それはシーゲルを除く賛成多数で裁決される事となる。親という立場上、私情を挟む為にそれ以外の人選でと言う事だ

もし、これを否定するならば議員は勿論のこと、プラント住民全てを敵に回す事になりかねず、自ずとそうなってしまうのだった。

 

 

……

 

砂丘がほんのりの紅く成り始める頃、AAは先程の戦闘の余波から逃げるかのように多少の移動をしながらも、砂丘を利用しながらその巨体を砂に沈み込ませ、隠蔽しつつも着底した。

 

突然現れた、出自もいとも不明な相手は、バギーを乗りこなし艦から少し距離を空けて停止した。

ストライクとガンダムはそれを受けて、両者の間に壁となるように立つと、リアクティブモードへと移行し、その機体色をメタリックなそれへと変化させた。

 

バギーから降り立ったのは、アラブ系の顔立ちをした者たち。

その顔はどこか一筋縄では行かないような、そんな風体の気味の悪い者達が多い。

決して気質では無さそうな見た目だ。

 

さらに言えば、その衣装も風体も果ては年齢まで見事なまでにばらついており、その集団が何かに所属しているようなそんな雰囲気も無い。まさしく、〘ゲリラ〙という言葉が望ましい。

 

だが、そんな正規軍にも満たない者達が、伊達にザフトを相手に戦うような愚かな行為をするわけもなく、彼等には彼等なりの事情があるのだろう。

 

そんな外の光景を、ブリッジから眺めていたラミアスは何かを思い立ったのか、スクと艦長席から立ち上がり何処かへと向かおうとした。

 

「味方―と、判断されますか?」

 

ナタルのそんな言い回しに、ラミアスは自らの意志を突き通す。

 

「少なくとも…銃口は向けられていないわ。それに、もし敵なら私達は既に沈められているわ。

だから、少なくとも敵ではないと判断するわ。」

 

ラミアスのそんな言い草に、異論は無いと口元を若干歪ませるナタルは、段々とラミアスの事を理解してきていた。

 

「兎も角…、話をしてみるわ。もしものことがあれば…、頼めるわね?」

 

「――はっ!!お気を付けて!」

 

それを見たラミアスは、僅かに微笑み掛ける。信頼間が出来てきていたのだろう。

 

ラミアスが下へと降りる頃には、既にライフルを持ったクルーが何名かハッチの側へと集結し、何かが起こった際への備えとして、白兵戦装備を身に着けていた。

 

「俺、銃はあんま得意じゃないんだけどねえ……」

 

と言う割には、拳銃を構える姿は様になっているフラガもそこに集結し、いよいよ御対面というところになる。

 

「開けるぞ?」

 

というフラガの言葉と共にハッチが開く。まだまだ薄暗い中、その集団の顔がはっきりと見え始めていた。

その集団への警戒を怠らず、互いに牽制し合うものの、年長の部類に入る恰幅のいい男が、ラミアスたちが進み出るとずいと前に出る。

彼がこの集団のリーダーということは明らかな光景だった。

 

「まずは、ありがとう――と、お礼を言うべきなのでしょうね?」

 

値踏みするように見合いながら、ラミアスが言うと。

男は黙って彼女の顔を覗き見るかのように、ただじっと観察している。かなり慎重な相手なのだろう、この場合名乗り出たほうがいい場合もある。

 

「……、地球連合軍第八艦隊所属、マリュー・ラミアス大尉です。」

 

親睦を深める為に、まずはと言う自己紹介。しかし、彼女のそんな礼節はある一言で崩れ去った。

 

「あれ?第八艦隊っていやぁ、確か壊滅状態何じゃなかったか?」

 

何処からかそんな声が聞こえてくる。少年の声だという事から、礼節を知らなくても仕方が無いのだが、そんな者をどうしてこういう場に連れてくるのだろうか?

 

そんな態度を示した声の主に、

 

「アフメド!」

 

と、重低音な声で叱り付けるよう男は言う。

それに反応した少年を見るに、彼がアフメドと言う名なのだろう。

 

「俺たちは『明けの砂漠』だ。俺の名はサイーブ・アシュマン。……礼なんざいらんさ、わかってんだろ? 別にアンタ方を助けたわけじゃない。」

 

ここら一帯の地域は、昔から宗教戦争が耐えない場所とあって、様々な武装勢力が存在していた。

彼等もそのうちの1つだったのだろうと、容易に想像が付く。

それでも、特に目の前の男は頭目であるが聡明そうな印象を受ける話し方をする。

 

「〘砂漠の虎〙相手にずっとこんなことを?」

 

フラガが軽薄そうにそう言うと、少しも不快感を表に出そうともしない。

こういう手合に慣れているのだろう。

 

「……アンタの顔はどっかで見たことあるな」

 

「ムウ・ラ・フラガだ。―このへんに知り合いはいないよ」

 

知り合いはいないはずなのに、フラガの顔をよく知っている。確かに宣伝として使われた事がある彼は、その顔を知っていたとしても無理はないが、それは数ヶ月以上前の話だ。

 

「へえ、〘エンディミオンの鷹〙と、こんなとこで会えるとはよ」

 

サイーブと言う男は、それ程までの人脈を持っているのだろう。だからこそ、こうやって意表を付くように話すのだ。

 

「情報もいろいろとお持ちのようね。では、私たちのことも?」

 

隠す素振りもしない態度に、大方のことを知っているのだろう彼等に、隠し事は無意味なのだろう。

そう考えて話し出すラミアス。

 

「地球軍の新型特装艦AAだろ? クルーゼ隊を壊滅させかけたとかいう。そんであれが――」

 

と傍らに立つ2体のMSに目をやると、さもそれを知ったように言い出す。

 

「X105……ストライク。その横のがX101ガンダム。地球軍の新型機動兵器――そのプロトタイプだ。」

 

相手ばかりがこちらの素性を知っているだけに、ラミアスにはそれらをどうするかという手立てがない。

なにより、そういう行為は彼女の仕事の範疇ではないのだから、どうすれば良いかなど判るものでもない。

 

「さてと、お互い何者だかわかってめでたし――といきたいとこだがな、アンタたち、これからどうするつもりなのかね?」

 

無害そうに振る舞いつつも、情報を持っているとそう言いたげな彼にラミアスは直接聞くことにした。

 

「―力になっていただけるのかしら?」

 

「話そうってんなら、まずは銃を降ろしてもらわねえとな。」

 

MSが連合側の恫喝に使用されているように映るのだから、この場面を見た他人はきっと、そう思うだろう。

 

「……で?」

 

「アレのパイロットもだ」

 

顎を使っていう彼に、渋々と言った様にラミアスは2機に合図を送った。

 

その合図とともに、コックピットハッチが開きラダーを使って二人のパイロットが降りてくる。

一人は男、もう一人は女だと判る。

そして二人にヘルメットを取るように言うと、その2人を見たとき彼等の反応は当然のものだった。

 

「――ああ? あれがパイロットかあ?」

 

「まだガキじゃねえかよ」

 

少年兵を使う連合軍。それは連合に対しての違和感の現れであり、不信の姿であった。

 

そして、その中で一人。大きく息を呑んだ者があった。

短い金髪を靡かせて、一人の少女がキラの前へと躍り出た。

 

「おまえ……っ!」

 

キラはその少女の事を知っていた。いや、今更思い出しだと言った方が良い、それは最近そんな事に構っていられないほどに忙しかったからでもある。

 

「おまえがなぜ、あんなものに乗っているっ!?――っなんだよ!!」

 

突飛な行動に出た彼女は、急ぎキラの下へと辿り着こうと歩き詰め寄っていくと、その間に挟まるようにフレイが立っていた。

 

「なんだよとは何よ。アンタに突っかかられる筋合いはこっちには無いのよ!!だいたい、アンタ誰よ!

そもそも名乗ってから近づくのが礼儀じゃないの?」

 

捲し立てるようにそう言う彼女に、金髪の少女はたじろいだ。

この時、フレイは冷静な判断の元この目の前の少女を見ていた。何処かで見覚えがある……、それこそ最近、直近2年間ではない何処かのタイミングで、似たような人物を見たことがあると…。

 

『その判断は良いところだな、たぶん君はあった事があるんだろう。だが、思い出すまでは俺は口を出さないよ。』

 

知ってるんなら教えてよと、そう思うフレイであった。

 

「私はフレイ・アルスター、このガンダムのパイロットよ?因みに、私はナチュラルだから。それで?アンタの名前は?」

 

「そ、それよりも…。」

 

な・ま・え!

 

気圧される金髪の少女は、少し考えると言葉を紡ぐ。

 

「カ…カガリ・ユラだ!」

 

「そう…、じゃあこれからよろしくね?カガリ?」

 

フレイは臆することなく呼び捨てにした、互いに思った。

 

あ、なんかコイツきらいじゃないかも…と。

 

「――きみ……あのとき、モルゲンレーテにいた……?!」

 

キラは、遅ればせならそう言う。

ザフトのヘリオポリス襲撃からずっと、どうなっていただろうかと心配していたのだが、今となってこんな状況に現れた。

ある意味で運命的だなぁ、なんて思いつつ声を出した。

 

 

……

 

〜〜♪〜〜♪

 

鼻歌を歌いながら厨房で料理を作る。

基本的にはトレーにそのまま栄養剤が入ったものがあるが、一品でも温かいものがあるとそれが士気へと直結する。

それこそが戦場というものであり、暇であるからやりたいと志願した彼女は、もしも連合本部に付いたらこういう行為をしていたと、良い宣伝材料になるだろう。

〘プラントの歌姫は連合側にいる〙

という感じの謳い文句で。

 

勿論、そんな事をした場合プラント、ザフトの彼女の奪還は愚か戦闘はより苛烈になるだろうが、そんな使い方をする可能性があるのだ。

それを露とも知らずに、彼女はこんな事をしている。

 

彼女に政治は判らぬ。判らぬが、戦争というものがいけない事であると、漠然と感じており、死者というものに国は関係ないという高潔な精神を持っている。

それでもなお、彼女は少しずつ世界を見ようとしている。

 

籠の中の鳥であるプラントだけでなく、巨大な一個の生命である地球を、その大地を海を宇宙を見る為に…。

彼女にとってこれは良い経験となるだろう、それがどのような結果に繋がるか、それは彼女に判らなくとも。

 

「あら?あら?お客様ですか?」

 

ばったりと出会ったのは顔も知らない金髪の少女、それは彼女を見た瞬間にフリーズした。

 

「お……、お前…。ラ、ラクス……」

 

「私、ラクス・クラインです。貴女のお名前は何と言うのですか?」

 

それは数奇な出会いであった。

 

「カガリ・ユラだ!!」

 

あらあらまあまあと言いつつも、ラクスは何処か納得いかない。本名じゃないような、そんな気がしたのだ。

 

「これからよろしくお願いしますね、カガリ様。」

 

カガリを見た瞬間に、ラクスはカガリを気に入った。何故かと聞かれれば、彼女はこう言うだろう。

 

〘まるで運命のようだ〙

 

と。

 




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