機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第39話

 

 

ジブラルタル、西暦紀元前から続く内海と外界の要衝たる地域には、今ザフトが幅を利かせていた。

CE70年5月に起きた、カサブランカ沖海戦において勝利したザフトは、この地域に基地を建設。ヨーロッパ・アフリカ戦線における最重要基地へと変貌を遂げていた。

 

東西ヨーロッパの大凡半数の貿易を妨げるこの障壁は、地球連合にとっては目の上のたん瘤のようなものである。

そんな基地に、1隻の陸上戦艦レセップスがその姿を下していた。

 

外部へと突き出した砲も、MS用戦闘デッキも何もかもが損傷している。ここに帰ってこられただけでも、奇跡のような状態であった。

それを護衛するように、甲板に置かれていたMSブリッツ、バスターが、その任務を終えて今度はMS格納ドッグへと移動をし、そこから2名のパイロットが降り立った。

 

「まったく…、酷い目に遭いましたね。」

 

「俺も、死ぬかと思ったぜ?ジンの癖にちょこまかと動くし、それに対応してたら今度は、センサー範囲外から撃たれたんだぜ?堪らねぇよ。」

 

愚痴の1つも言いたい気持ちも判る。彼等は撤退してきたのだ。拠点であったバナディーヤを捨て、現状の戦力の立て直しをするべく、ジブラルタルへと帰還したのだ。

 

そして、彼等が去ったバナディーヤでは、今当に解放者の存在しない街となっていてそこにはアル・ジャイリー率いる、新たな武装勢力が幅を利かせようとしている。

だが、そんな事今の彼等には関係の無い事だった。

2人は機体から離れると、アスランとイザークが待つ基地司令部内へと帰っていった。

 

「アスラン、そちらの具合はどうですか?」

 

「良いも悪いも、負け戦に大損害だ。これは色々と言われるだろうな。」

 

「いや、そうじゃなくてイザークの方だ。」

 

イザークは、顔面の負傷から緊急的に措置を受けた。

幸いな事に眼球の損傷は無いが、彼は顔の傷を完全に治さなかった事を、ニコルとディアッカに話すと2人は眉を顰めた。

 

「よっぽど、根に持ってるんですね。確かに一方的でしたから…。もし、ディアッカが前に行っていなければ、たぶん僕達は死んでいましたよ。」

 

臆することなく言い放つニコルの言葉に、アスランは首を横に振ることもせず、ただ淡々と語られた言葉を聞いていた。

 

「それで、僕自身敵のパイロットがどういうものなのか、考えてみました。少し、荒唐無稽な話になってしまいますが…。」

 

「荒唐無稽だと?どういう事だ?」

 

アスランは聞き返した。CEも既に半世紀を過ぎているが、眉唾なものなのか?

 

「はい…、笑わないでくださいよ?

実はですね、交戦記録を洗ってみたんですけど、あのガンダムのパイロットの動きには、あるパターンがあったんです。」

 

「パターン?じゃあアレは、プログラミングの一種だとでも言う気か?」

 

ディアッカは茶化すようにニコルに言う、それをあまり良く受け取らなかったようで、ニコルは少し眉を顰めた。

 

「話は最後まで聞いてください。良いですか、パターンと言っても攻撃や回避時の反応の事を言っているんです。

映像を見てもらった方が早いかもしれません、とりあえず僕の部屋に来てください。」

 

基地内の、割り当てられた場所へと向かう3人。そして、ニコルは映像を見せながらそれをを言った。

 

「例えば、この回避行動。」

 

それは宇宙空間での初戦、化け物のような機動を見せて彼等を翻弄していたものだ。

そして、比較するように先日の砂漠戦でのそれを重ねた。

 

「パイロットの練度が不安定なのかもしれませんが、この全く違う2つにも、それがあるんです。わかります?」

 

ニコルはあからさまに、戦闘ラップを表示しながら二人に聞き返す。なんとはなしにそれを見ながら、何も違和感を感じなかったのか首を横に振った。

 

「そうですか…、良いですか?この回避パターンです。」

 

そう言うと、コマ送りにしながらビームライフルを発射するタイミングで避ける動作をするガンダムが映る。

そして、二人はその動作に驚愕した。

 

「まさかと思うが、ニコル…奴はこちらが射撃をする前に動き出していると言いたいのか?」

 

「はい、その通りですアスラン。」

 

「すると?相手は俺達の思考を読んでるって、そう言いたいのか?」

 

確かに荒唐無稽だなと、ディアッカは付け加えるがその顔は笑っていなかった。

辻褄があってしまうのだ。どれ程の攻撃をしようとも、紙一重で逸らされる。それどころか、回避先にビームを置かれているような場面もあった。これでは勝てる戦いも勝てない。

 

「で…?対策は考えたのか?」

 

「いいえ、思いつく限り試してみたいですが、そんな存在今まで聞いたこともないので、なんとも…。」

 

「だからこそ、俺達に相談したということだろ?なら、話は早いじゃないか。」

 

「ま、一緒に考えようぜ?」

 

3人はそこから日が沈むまで、様々な意見を言い合うが結局のところ、それが通用するかどうかは運次第だった。

 

 

……

 

「まぁ!これが海というものなのですねぇ!私、始めて見ましたわぁ!」

 

パンッ!と、胸の前で大きく手を叩くラクスは感激を覚えていた。彼女は、宇宙生まれ宇宙育ちであり、彼女にとっての全ては宇宙から眺めるものだった。

だが、地球に降りてからというもの全てが新鮮な物に溢れていて、彼女はとても楽しかった。

 

確かに、戦争によって色々な人が死んでしまうのは悲しいけれど、そんなものが無くなって皆でこんな素敵な物を享受出来ればと、そんなことさえ考えているくらいには感動していた。

 

さて、彼女が海を眺める事が出来ているのは何故か、それは少し時を戻す。

AAは紅海に進出していた。着水して、両舷で水面を割って進む姿は、まるで最初からそうあれと設計されたかのようなものであったが、実際汎用艦として造られたのだからこの程度で驚いてはいけない。

 

レセップスを突破し、アフリカ大陸を離れるべく彼女等は南下していた。

北上との二者択一の選択であったが、地中海を抜けるにはジブラルタルは危険すぎる。

 

では、ヨーロッパはどうかと言われれば、クレタ島においてザフトの勢力が拡大していないともわからない状況である。ならばと、南下を決意したのだ。

 

海上に出て暫くすると、ラミアスはクルーが交代で甲板に出ることを許可した。

それに対してナタルはあまり良い顔をしていなかったが、乗員のストレス解消に繋がると、その意見を一蹴した。

 

「ラクス、そんなにはしゃぐと落ちるよ?」

 

「そうよ、貴女そそっかしいんだからちゃんとしてないと。」

 

「……。」

 

「アンタもなんか言いなさいよ。」

 

MSのメインパイロットである3人と、1人の捕虜という言われなければわからない人選がそこにはあった。

 

「そういえば、プラントの中にも一応海みたいな奴があるのよね?どんな感じなの?」

 

「う〜ん、似てはいますけど…ここまで広大な物は見たことがありません。やっぱり地球とは素晴らしいのですね。」

 

感激のあまり、顔が赤くなっている。それとも日焼けのせいなのだろうか?だが、そんな事お構いなしに彼女ははしゃぎ続ける。クルクルと回り始めたと思った矢先。

 

「おい!お前。マスターが困っている。今すぐその無駄な行いを辞めろ!」

 

カタリナは、フレイより言われた何か言いなさいよという命令を実行した。

彼女に空気を読むという感性は持ち合わされていない。そして、コーディネイターであるからこそ、遠慮せずに言うのだ。

 

「はぁ、そこまでは言わなくていいのよ。たしなめる程度、融通効かないわね貴女。」

 

「マスター…、失礼しました。非礼を詫びます。」

 

堅苦しい彼女は、キラに対しても同じように接するのだろう。厄介なものだ、服従遺伝子というものがどういうものか分からないが、それにしてもあからさますぎる。

 

「まったく……、はあ…。じゃあ、後は3人で楽しんで頂戴なんか疲れちゃったから。」

 

「え…?あ、うん。体調大丈夫?」

 

大丈夫という意思表示にフレイは、手を後ろに翳しながら艦内へと戻っていった。

ついて行こうとするカタリナであったが、〘3人で〙という言葉を真に受け、その場で固まってしまう。

 

それを見たキラは、どうするれば良いんだろうと言う感想を、覚えた。

 

 

自室へと辿り着くと、フレイはいつものようにシャワーを浴びに行くのではなく。ベッドへと制服のまま横になった。

気分が悪そうに頭を抱え、1人呻いていた。

 

『大丈夫……じゃなさそうだな。最悪な気分だろ?』

 

「ええ、最悪よ。これも貴方の仕業?」

 

フレイは頭に響く声にそう応えた。バルトフェルド隊との戦闘後、彼女の頭はいやに痛いものが増えていた。

実際のところ、彼女が何を感じ取っていたのか結論を言えば、死んだ人間の木霊が永遠と頭に響いていたのだ。

そんな物に充てられれば、気が狂ってもおかしくは無い。

 

『いいや、俺の仕業じゃあない。どちらかと言えば、君の力の代償みたいなものさ。もっとも、それ本来の使い道でもあるんだが…。』

 

「なによ…。私はネクロマンサーにでもなればいいの?」

 

『いいや?単に君は死者に充てられたにすぎないからな。本当なら、会話やジェスチャーなんて無くても心を通わせる事が出来る。そんな力なんだ。』

 

フレイはそれを聞いて目を大きくした。

ではなぜ、この声の主は全くと言っていいほどに、正反対な使い道をしているのか?

 

『本当は俺みたいにそれに慣れちゃダメなんだが、今現状そう言う未来に向かっているといったところだ。』

 

「別に人と話したい訳じゃないし、それならいっそ自分で聞きに行くから、その程度やれなきゃ駄目でしょ?」

 

彼女はこの力を便利なものとそう思った。つまりは、こうやって周囲の全てを聞くのではなく、それを絞る方法があるのだと。

教えてはくれなさそうだが、彼女にとっては死活問題だった。

 

『そんな事考えても仕方がないことさ、今はゆっくりと休めば良いさ。』

 

「お言葉に甘えさせて貰うわよ。」

 

そう言って彼女は夢の中へと姿を消した。

 

 

……

 

「良し!じゃあ次はな、これをやってみるか?」

 

そんな声が聞こえてくる中、1人がシートに座り操縦桿を動かしていく。すると、画像が動きまるで空を飛ぶようなそんな物を映し出していた。

 

突然のアラート

 

直ぐ様操縦桿を引き緊急回避して行く、フレアを発射し難を逃れる。

その仕草は中々にサマになっていて、一流とまでは行かなくともそれなりのものになっていた。

その着ているパイロットスーツも、相まって今までの彼とはまるで違うかのように見えた。階級はパイロットになるということもあり、准士官にするか協議もなされた。

 

「元々頭が良いんだろうが、お前等位の年齢は覚えるのが早くて良いよな。」

 

「ありがとうございます!ええっと、フラガ少佐。」

 

階級をつけて呼ばれることに、フラガは苦笑いしつつそれでいて若い雛鳥が、力をつけようとする事に多少の達成感を感じていた。

それを見ながら、トールも照れつつ自分が少しでも役に立てればと始めたこれに、期待を覚えていた。

 

「おいっ!次は私の番だろ!さっさと…。」

 

そういうのは、AAへと乗艦していたカガリであった。彼女もまた、連合のパイロットスーツに身を包んでいるが、そこには階級章のようなものはなかった。

 

「はぁ…、あのな?コレは連合の兵士だからトールにはやらせてるんだぜ?お前はレジスタンスなんだろ?だったら、軍規に触るのは余り良いとは思えないぜ?」

 

図々しくも、フラガに突っかかるカガリはトールのそれを見た後に、自分も自分もとシミュレーターに来たのだ。

彼女は、参加していたレジスタンスから一転連合の協力者として、AAに同乗した。

地球での地理的な部分に疎い部分があった、宇宙軍出身のラミアスやナタル、フラガに対して水先案内人として乗せろと脅した形だが。

 

正直な話し、彼女のその行動原理がどういうものなのか測りかねていた部分もあった。

インド洋を通り、太平洋上を航行後アラスカへと向かう。

 

如何にジブラルタルが怖くとも、実際の危険性は五分五分。距離としてはこちらのほうが遥かに遠い。

そんな危険な旅路に同行するなど、正気の沙汰では無かった。

にも関わらず、彼女とその同行者であるキサカと共に乗り込んだ。

実際にはもっと複雑な物事があるのではと、AA正規クルーは訝しんだ。

 

特に、単なるレジスタンスである筈のサイーブが無理強いする程に、この艦への同乗に賛成していた事からもそれが伺いしれた。

 

「ま、予備パイロットがいるのは良いことなんだが…、お国のご両親が知ったらどう思うんだろうな。」

 

「……っ!と……、今親の事はどうでも良いだろ!!」

 

はいはいと、手を力無く振られどうぞと前に出されたシートに、決められた順番でカガリはコンソールを叩くと、また模擬戦用データが始まる。

尤も、彼女の場合はランクが少し上になるからと、キツめのそれになっていたが。

 

「このぉ!!」

 

等と気合を入れるが勿論撃墜される。それに対して、フラガはまるで教官にでもなったかのように、注意点を言っていくが悪い気持ちでも無かった。

 

「本当、こんな日が続けばいいのに。」

 

トールはそう口に出した。

しかし、彼の願いとは裏腹に世界は無情にも、その牙を剥いた。

モラシム隊の襲撃が始まったのである。

 

 

 




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