機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第44話

 

例えどれほど精強な軍隊であろうとも、どれほど頑強な要塞であろうとも、人間というものは疲弊し弾薬も何れ枯渇する。

AA隊との戦闘により、ザフトの潜水艦部隊はそのMS戦力の大凡半数を消耗した。

 

しかし、コレは同時にAAもまた疲弊したという、何よりの証であった。

 

AAの兵装、その殆どのものは実体弾を使用したものであり、使えば使う分だけその残数は減少していく。

当たり前の事だが、無から有を生み出すにはそれ相応のエネルギーが必要でありそもそも、そんな事はビッグバンのようなものである。

つまりは、戦闘を続行すればする程にAAが弱体化していくのである。

 

さて、そもそもの疑問として何故ザフトカーペンタリア基地は、AAに対して積極的な攻勢をするのだろうか?

もしも、これが連合の何れかの軍が事に当たる場合、きっとこのような行動に出るだろう。

 

消極的な攻勢によって、消耗を強いる

 

どれほど優秀な武器兵器の官制能力があろうとも、やっている事は消耗戦なのだから、物量がない方が先にバテる。

 

バルトフェルドのとった行動が、この典型例だろうか?

彼は、兵力を1当てしてAAの戦力を見ると嫌がらせのような攻撃を行って、精神的な揺さぶりを行った。

それは、レジスタンスに対しても似たような行動を取っていたが、同時に戦力差を良く理解していたと言うことだ。

 

対してカーペンタリアの部隊はどうか?

残存する水中部隊を集め、AAへの強硬なまでの飽和攻撃を行おうとしてしまった。

敵の戦力に水中戦闘可能なものが少ないと言う事と、空中戦闘が出来る敵は3機しか存在しないと言う安心感からの行動だろうが、バルトフェルドが敗北した要因を理解しようとしていないのだ。

 

まず、既存の機体ではどうしようもないMS。それを、一応4機ザフトが保持しているとはいえ、海上戦闘のノウハウが無いものが扱うのだからリソースの無駄。

 

一方宇宙軍出身とは言え、士官学校というものは1年目はどこも同じ場所から始まるものである。

少なからずノウハウを知っている、AAの部隊にとって持久戦に出られる事の不味さは理解出来ていた。

 

だからこそ、砂漠を強行突破したのだ。

それと同じ事を海上で演じてしまったが故に、ザフトに多大な損害が出たのだ。

 

ではどうすれば良いのか、簡単な話だ。バルトフェルドを真似れば良いだけなのだ。

 

 

……

 

少なくない数のミサイルがAAへと空を切り向かって来ると、それを迎撃しようとヘルダートやイーゲルシュテルンが起動する。

自立式迎撃システムは、見事に其れ等に対応するが対して艦橋内部での雰囲気は良いものではなかった。

 

「全機撃墜を確認……、右舷イーゲルシュテルン残弾30%…。ヘルダート残弾無し……。」

 

「まずいわね…。バジルール中尉、その他の武装はどうなってるの?」

 

「右舷の武装は総じて疲労が蓄積しています。バリアントは、砲の出力の低下が見られていますし、保って後十数発かと…。」

 

AAは、オーブに向けてカーペンタリアと目と鼻の先の位置を航行している。

勿論オーブも近海であり、もうすぐと言ったところではあるもののそれはそれとして、到着まで敵の攻撃を凌ぎ続けなければならなかった。

 

敵の動きは、衝動的な飽和攻撃から緻密な片舷への集中攻撃へと変化し、AAの弱点であった船員数の少なさがそれに拍車をかけていた。

 

「左舷から右舷への、弾薬運搬はどれくらい進んでいるの?」

 

「整備班の人間が頑張っていますが、人の絶対数が少ないため5%にも満たないかと…。」

 

AAは、少人数化を進め殆どの機能をオートメーション化した、次世代艦の雛形的存在である。

その為、巨艦でありながらその殆どの人員はMS格納庫や、機関室等へと向けられており、兵装人員はCIC要員含め少ない割合となっている。

 

だが、同時にそれはあまり良いものではない。

ダメージコントロール能力の高い船と言うものは、総じて人員の数が多い。

特に有事の際には隔壁の閉鎖を第一にすべきであるが、応急修復をしなければならない時に、何十メートルも離れた場所から駆け付けるには、船内は広すぎる。

 

「官制システム、一部区画からの信号がありません。」

 

「目視で確認させなさい、MSの整備状況は?」

 

「ストライク、整備完了しました。ですが…、ガンダムは…。」

 

その言葉を紡ぐミリアリアの顔には影があった。

ガンダム、その駆動系の疲弊は既に幾度もピークを迎えている。本来、MSの官制システムはレーダーやセンサーによる干渉が挟まることで、確実な動作を行う為のものだ。

 

だが、昨今のフレイとその内側の男の操縦は、そのセンサーの反応速度よりも速く最適解に到達し、機体事態がその動作許容限界を超えてしまっていた。

そして、遂に破綻の時がやって来たのだ。

 

脚部駆動系は、度重なる反射的な動作に耐えられず焼き切れ、内部コイルは断絶したのだ。

 

「わかったわ…、フレイさ…アルスター准尉に連絡して頂戴。CICの火器官制の方へ回ってと。バリアントを上手く使ってもらうわ。」

 

「は…はい!」

 

この状況でのMS戦力が無くなると言うことは、戦力の3割を喪うことに等しい。

先の大規模戦を凌いだ後、ザフト潜水艦隊の残存戦力がどれほど存在するのか、ラミアスは頭を抱えながらも現状を受け入れるほか無い。

 

「キラく……ヤマト准尉の方はどうなってるの?」

 

「小休憩のあと、直ぐに出撃準備に入ってます。」

 

ストライクとジンという戦力があるだけ、彼等にはまだ救いようはあったのだろう。

だが、敵がそれを待ってくれるという保障はないのだ。

 

「……!レーダーに感!敵Xナンバー確認数4!他ディン多数!」

 

「待っては…くれないわけね……。

皆、もう少しの辛抱よ。目的地は目の前、何としてでもこの状況を切り抜けましょう!」

 

ラミアスのその言葉に異論を挟むものは誰一人存在しなかった。

 

 

……

 

AAに対する第二次大規模包囲攻撃、コレは戦術的に見れば然程珍しくもない方法であったが、効果的な反復攻撃によってAAの防空火器並びにMSの消耗はザフトにとっては絶好の攻撃ポイントであった。

 

必死の抵抗によって形成される弾幕と、ミサイル群を潜り抜けAA へと次第に近づいていく包囲網。

そこには、あいも変わらずザラ隊の姿があった。

 

「弾幕が薄いですね、暫時の攻勢が利いたんですね。どうして…最初からやらなかったんでしょうか…。」

 

「驕り…、そういうのがあったのかもな。」

 

巡航していく機体の中で、ニコルが独り言のように話すと、それに対してアスランが答えた。

実際、こんな戦闘を行うのはザフトとしては初めてなのだろう。搦手を見下し、蔑んだナチュラル相手に使う事に対する、プライドが邪魔をしていたのかも知れないと。

 

「ま、何にせよコレで落とせるんだから良いことだろ?なぁ?イザーク。」

 

「ふんっ!俺はこんな手で相手をしたくなど…。」

 

正々堂々とした戦闘で勝って初めて、ナチュラルに対する自らの存在意義を示すことが出来る、そんな古臭い考えを持っているザフトのパイロットは多くいるだろう。彼も、そんな者の一人に過ぎない。

 

「ガンダムもいないようですし、危険なのはストライクくらいですね…。

アスラン、今なら一騎討ち出来ますよ?」

 

「……、俺は別にそんな事を望んでいるわけでは!!」

 

否定したかったアスランだが、まだまだ未練がある。千載一遇の好機、今こそキラの機体を戦闘不能にして今度こそプラントに……等という欲が頭を擡げた。

 

「…良いのか?」

 

彼のその問いに、周囲は沈黙を返した。

それを受け取ると、アスランの駆るイージスはストライクへと一目散に進んでいった。

 

そして、件のキラはと言えば敵の数に終始圧倒されながらも、なんとか持ち堪えていた。

彼はフラガからのアドバイスを思い出す。

 

「別に敵を落とさなくてもいいんだ、寧ろ攻撃続行不可能だって思わせればお前の勝ちさ。」

 

という言葉を胸に、敢えて敵のメインカメラやバーニアを終始攻撃していた。

彼自身の人を殺したくないという、その思いとその戦い方は合致していた為に、より積極的に戦闘をこなしていた。

 

そんな中、乱入者が現れた。

 

「イージス!アスラン!!」

 

それに気が付くと、キラは気を引締める。

 

どの敵よりも彼は手強い、だからこそ目の前の相手をAAに近づかせない。

抜かされたら最後、AAは殺られてしまう。

フレイの機体はもう動けない、自分と自由に飛べないジンがAAを守らなければ、フラガの機体もトールの機体もディン相手に息を吐いている。

 

そして2人は幾度目の激突を果たした。

 

……

 

ズズ、ズズ

 

と言う音を立てて艦内が揺さぶられる。

時を同じくして、艦橋から側面に巨大な閃光が確認出来ると、側面上空でミサイルが撃墜された事がわかった。

 

次々と飛来するそれを、今度は甲板上にいたジンがそれと同時にジャンプし、別方向からの攻撃をその突撃銃で狙撃している。

そして見事に迎撃した。

 

しかし、直撃を回避したのは良いものの、その炸裂したものは最も至近にあったイーゲルシュテルンを巻き込んだ。

 

「右舷イーゲルシュテルン2号機被弾!機能停止!2号機の残弾を3号機に振り分けます!」

 

「お願い!オーブ領海まで後何海里!」

 

「残り20海里!このまま直進すれば15分!」

 

もはや階級等どうでも良いとでも言うかのように、簡易的な話をしながら現状のダメージコントロールをしているが、如何せん敵の数が多すぎた。

 

と、その直後に後方から強烈な振動が襲い、それにラミアスはツンのめるように体勢を崩した。

 

「…っ!状況!」

 

「右舷エンジン2基停止!船体右に傾きます!」

 

「ノイマン少尉!右舷エンジン急速閉鎖!左舷エンジン出力落として!」

 

「もうやってます!」

 

それぞれが役割を担っていたとして、現状それくらいしか出来ないのだから、歯痒いものだった。

そんな中、火器官制の内手動狙撃を行っているものがいた。

フレイ・アルスターだ。

 

レーダーが照準をつけるよりも速く、コンソールを使って正確に敵機に向けてバリアントを撃っていく。

砲身寿命も後僅か、そんな中を一人坦々とこなしていく姿は少女のそれとは思えない。

 

「後5発ね…」

 

何が5発なのか、ナタルの頭にそれが過るが直ぐに考えを切り替えた。ミサイルの残弾を確認すると、そこには最悪な現実が待ち構えていた。

 

「ヘルダート残弾4!コリントス、ウォンバット共に1割を切りました!」

 

ラミアスはその事実を聞いて目眩を覚えたが、直ぐに別の報告を受けて持ち直した。

 

「オーブ領海内に艦影確認!」

 

その言葉に希望を見出すのは直ぐだった。

 

「チャンネル開いて!このまま領海に突っ込みます!」

 

連合からのオーブへ行けという命令から幾ばくか、遂に目的地に辿り着けると言ったところでこのような光明など、願ったりかなったりだ。

そんな中でも振動が艦を襲う、被害は確実に蓄積していた。

 

同じ頃、AAの艦橋に向かう3人の影がいた。

 

「カガリ様!今あそこにまいられてましても!」

 

「煩い!今いかなければ、手遅れになるかもしれないんだ!」

 

「……。」

 

カガリが早足で艦橋へと向かうのを、その後ろからラクスが付いていき、更にそれをキサカが追う。

カガリだけが焦っていたが、ラクスは自分には何もできないことを良く理解していたがために、カガリを止めようとしているのだが、それは不発に終わった。

 

「艦長!私に話をさせてほしい!」

 

扉が開くと早々にカガリはそう言った。

通信を行っていたラミアスと、その相手になっていたオーブ軍の艦長である男には寝耳に水であった。

 

「カガリさん!今は大事な話を…」

 

「アークエンジェルは今からオーブの領海に入る!だが攻撃はするな!」

 

カガリはまるで命令するかのように、その艦長に言い放った。

 

「君に命令権は無い!いったい誰だと言うのか!」

 

「お前では判断できん!行政府へつなげ!父を…。」

 

一瞬何かを迷ったのか、言葉に詰まる彼女だがその決意は非常に固く、その目には決意があった。

 

「ウズミ・ナラ・アスハを呼べ!私は…私は、カガリ・ユラ・アスハだ!」

 

その言葉に艦長一同は、戦闘中にも関わらずカガリを見た。

 

そして、それと時を同じくして戦闘にも変化が現れた。

 

 

……

 

キラは、4機のXナンバーの猛攻を凌ぎながらも、なんとかAAへといけないかと藻掻いていた。

それを見て、アスランは彼に声を掛けた。

 

「キラ!!もうあの船は保たない!今なら投降を!」

 

「アスラン、僕にそんな決断できるわけ無いだろ!」

 

キラが何時もよりも強い言い方でそれを言うと、機体の動きは益々鋭敏となりアスランの攻撃を軽々といなすと、後方から接近していたイザークのデュエルの攻撃を防ぐ。

決定打の無いままに、一進一退の攻防が続いていくが、その中で最も周囲を見ていたニコルは通信を拾った。

 

「なんで……、ですが。…皆さん!攻撃中止です!停戦命令がでています!」

 

「ニコル!ふざけるな!今ここで!」

 

「それでも駄目なんです!直ちに引き返せと!」

 

いったい何なのだろうかと、そう考える暇もなく命令を無視することは死に直結する海上でニコルは説得しようとした。

 

「ニコル!だが!」

 

「アスラン、今は引いてください!何か、何かがあるんです!」

 

混乱と停滞の中の、アスランが攻撃を中断するとそれを受けてキラのストライクは機体を翻し、AAへと戻って行く。

 

「キラ!!」

 

アスランの声だけが、その海原へと消えていった。

 

 




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