大規模な空洞、地中をくり抜きそこをコンクリートで固めたそこに、多くの研究者がいた。
その場所にはMSと言われるものが多数存在しているのだが、それにしてもザフトのそれとは似ても似つかない。
何より、それらは既存のそれよりも大きかったり小さかったりするのだ。
「設計図通りに作ってはいるのですが、未だに動きませんな。」
「パズルのピースが足りていないんだろう。」
大空洞の下から大柄な腕が手を出し、そこから突き出している事もある。
「何が足りないのか…、それともこれが本当にブラフなのか…。
核融合というものを実現するには、あまりにも小さ過ぎる。」
エンジンとして、核融合を使う事は出来ても発電機としてそれを創り出すことが出来ていない現状、それを欲するのは当たり前の事であった。
その空間には別の何か、人が入れるほどのカプセルもあったがそこにはミイラしかない。
だが、そんな技術この時代には無い筈だった。
古く寂れたそこから、様々なものが目に入る。
その空洞に続く道を戻っていくと、一つの書斎があるだろう。そこには絵画があった。
古い旧い、そんなものがあった。
―――
巨大な橋と見間違う程に立派な橋脚が立ち並び、それが十数キロと言う長大な距離を続いている。
その最低高度には、人を宇宙へと放り上げる為の宇宙往還機の姿があった。
ピンク色の髪をした少女、ラクスクラインはその船におずおずと進むと、徐ろに後ろを振り返り名残惜しそうに景色を眺めた。
目の前には見知った顔がおらず、ただ一人ぼっちになってしまったかのように、そんな雰囲気があるのだが、彼女はそれを振り切って船へと乗り込む。
そんな映像を画面越しに眺めているAAクルー達であったが、その心境はどういうものなのだろうか?
未だに艦の修繕が終わらず、既に入渠してから1週間が流れているが、艦船の修繕は一朝一夕にならず。
そうやって映像を覗くことしか出来ない。
「ラクス…、悲しそうにしてるわね。」
「そうね、あなた達とはそれなりの期間いましたからね、それよりもフレイさん?
貴女もう艦から降りなくても良いの?」
ラクスと共に街に繰り出してから、彼女はAAより出る事が無くなった。
それもその筈で、彼女には身内となる人間がこのオーブには、元婚約者であるサイの親しかいない。
だが、元婚約者等という曖昧なものに対して甘えようなどと、この時の彼女は考える事も無かった。
「私よりもキラの方に言ってください、彼の方がよっぽど降りなくちゃならないもの。それに、私が降りたところでここは私の住む場所じゃないから…。」
ラミアスにとってその姿は悲哀に満ちていたが、掛けるべき声が無かった。
どう取り繕うとも、彼女の言っている事は正しくそしてそれは的を射ていたからだ。
「それに、私の機体新しい部品入れたんでしょ?なら、それを見ないと…、どうせ出た瞬間戦闘になるでしょうから。」
「そう……、でも無理しないでね。何かあったら必ず私達の内の誰かに言う事、わかった?」
それを聞くと、フレイは敬礼をしてそれを肯定すると格納庫の方へと歩いていった。
「………、ナタルどうかした?」
「いえ…、少し。」
この時、ナタルはこの余裕が出来たことからAAの陥った状況を整理するのに充分なところがあった。
成人にも達していない子供が戦争をするという事、それ自体本来ならば許容してはならないのにも関わらず、それを許容してしまっている自分を見つめ直すには充分な時間だった。
「我々大人は…、ずるい生き物だとつくづく思い知らされました。
ここに来るまでに、彼等学生達にどれだけ助けられたのか。どれだけ無理をさせたのか、本来ならば我々は軍法会議に掛けられてもおかしくはないのだと。」
「そうね…、生き残る為とは言え私達は軍法違反、中立国の民間人の強制徴兵を行った。それは、覆しようがない事実よ。
でも、だからこそ私達は終わらせなければならない。アラスカに着けば、彼等を除隊させる事だって出来るわ。」
だからこそ、そこまで生き延びなければならい。全員がそろってアラスカに、到達し自分達が裁かれることを容認し彼等を、再び戦火のないこの国に返還するためにも、と心に決めているラミアスと
それでも踏ん切りを就けることにナタルは内心難色を示していた。
それもそうだろう。ここまでこの艦が生き延びてこられたのは、オーブの民間人である彼らの協力のおかげであり、このAAに関して言えば彼ら以上の練度を持つ者など、地球連合を見渡してもいないのだ。
最低でも、パイロットだけでもと、そういう邪な考えがあるのは否めない。ただ、一人だけ確実に残るであろう人物、フレイ・アルスターだけは確実に連合兵になるだろう事は、ナタルの内には確定していた。
彼女に関して言えば、元々大西洋連邦国籍であることから、強制とは言え自国内の法の下それを義務付ける事ができるし、何より彼女自身が復讐を望んだと言う、音声記録が残っているのだ。
だが、理性ではそれを悪と断じる心がある。それもそうだろう。戦争とは、本来ならば大人がやらねばならない。それを、子供がやるなどとそれこそ末期戦も良いところで、プラントと同じ事をしている事になってしまう。
正直なところ、この戦争においてプラントに対する戦争時の印象はそれ程良い物ではない。
平気に少年達を教育し、少年兵へと仕立て上げ前線に送る等普通ならば、非道もいいところだ。それを許容してはならないと。
効率を考える機械的な組織人として許容するのか、それとも軍人として一人の人としての規律を重んじるか、ナタルはその狭間にいた。
……
格納庫では、ストライクの整備確認を終えたキラとフレイ、そしてお付きのカタリナが、今度はガンダムの方へと歩いている。
フレイがどれほど、ガンダムの操作に慣れているとしてもOS関連にはキラの方が対処しやすいのも事実だったからだ。
フレイがコックピットコンソールを開くと、外部ケーブルに端末を接続しそれをキラが開く。
カタリナが、その姿を横から観察しつつ雑用をして行く。
パイロットの仕事としては、その程度の事態だがフレイはここにキラがいることに不満があった。
「どうしてキラはMSの確認作業なんてやってるのかしら?」
先程からずっと、心に秘めいた事を口に出すとそれに対してキラは、少し眉を顰めるも無言を貫いた。
どうして返そうか、悩むところでもあったからだ。
「ご両親…、心配してるんじゃないかしら。」
「フレイ、本当に機体の駆動系の摩擦抵抗を0として書き換えても良いんだよね?」
フレイの言葉を無視するようにそう言うと、フレイはそれに対して不快感を顔に露にする。
それでも、口に出さないのは人してあまり触れてほしくない事が分かっているからだろうか?
だが、ここにはコーディネイターに容赦ない奴がいた。
「おい!貴様、マスターが聴いているんだぞ!無視をするな!」
怒るように、まるで殴り掛かるような仕草をするのでキラはそれに驚き、タイピングを止めた。
「わ、わかったよ。だからその手を降ろして。」
どんなに無視しようとも、圧倒的な暴力の前ではそんなもの何の抵抗にもならない。特に、キラの様な内向的な性格の人間がそんな相手に対してどうにかしようというのは、不可能な事だろう。
「カタリナ…、そんな事しないでよ…。」
「しかし!」
フレイとしてはそういう事はして欲しくないのだが、カタリナはナチュラルに尽くす為に産まれたのだから仕方の無い事なのだろう。
「……、僕さ怖いんだよ。2人に自分をなんでコーディネイターにしたのかって、攻めちゃうかもしれないから…。」
「でも、たった二人の肉親でしょ?もしもの時があったら、後悔なんてしないなんて、言えるの?」
フレイにはもう失うものはない。だからこそキラに対してそう言う、まだ彼には帰れるところがあるのだから。
「私に帰れるところは無いの、でもキラは違う。だから…。」
「わかってる…、わかってるよだけど!!」
彼は優しい人間だからこそ、それを言ってしまうのが恐ろしい。だが、だからこそフレイはそんな彼が後悔して欲しくない。
「キラ・ヤマト…、私には貴様の心はわからない。私には親等いないが、失う怖さは知っている。
自分が失いたくないものを失う怖さだけは、わかっているつもりだ。
私は、私の存在意義が失われるのが恐ろしい…。」
「「誰しも失う事を恐れる。だが、失った後に悔いるよりも、失う前にきちんとそれを確認した方が後腐れは無いと思うが?」」
フレイの口からそんな言葉が零れたが、キラはその言葉がフレイのそれとは思えなかった。
まるで、自分よりも歳上の人間からそう言われているような、そんな錯覚があった。
「貴方は…、誰なんですか?フレイの身体を使って、何がしたいんですか!!なんで、僕たちにそんな気を使うんですか!」
キラはその人物がどういうものなのか気になっていた。フレイを、戦闘マシーンに仕立て上げあまつさえ、人と別の存在にしようとしているかのように、彼女をコーディネイターとはまた違った
彼にとって、この存在はホラー映画のようなものだった。いつの間にか、彼女の内側に入り彼女の中に人格を形成し、蝕むように彼女の内側から外側に出てくる。
乗っ取っているように
「俺はどこまで行っても木霊さ、それ以上でも以下でもない。だが、一つ言うのなら君達に害を及ぼすつもりはないという事くらいさ。信じられないだろうがな。」
それを横で聞いていたカタリナには、何が起こっているのかわからなかった。
……
プラントの宇宙往還機とは違い、オーブのそれはマスドライバーを使用して打ち上げられるが、宇宙空間を進むそれはあまり代わり映えがない。
寧ろ、オーブ船籍だからこそ戦争中は狙われることなど無いのだ。
その中で宇宙遊泳、ともとれるような行動をする事は意外なほどに難しくはない。
だが、今その中でラクス・クラインに許されている事は存外多くはなかった。
「何を為さるおつもりですか?」
「少し、お手間をおかけしますが拘束させて頂きます。」
宇宙に出て、まず最初に彼女が迎えられたのは手錠だった。どうしてこんな事をするのか、何故彼等がそんな事をするのか。
そう思わずにはいられない状況で、ラクスには思い当たるものがあった。
それは一月以上に渡る、長期の連合軍の艦艇への滞在。
それを彼等が危険視しているのだと、そう言う判断だったのだ。
「貴女にはスパイ容疑が掛けられているのです。暫くの間、尋問と設問書を書いて頂く事になります。
それが終わり次第、拘束を解かせて頂きます。」
「…、わかりました。それも貴女方のお仕事ですよね…?」
彼女はそれに理解を示すものの、この世界の不条理というものを知るのには、彼女は様々なものを見ていた。
必死に、命を厭わずに抵抗する人々。
プラント側に立ち、それを支援する人々とそれと対抗する人々。
平和を謳歌し、外に目を向けず殻に籠ろうとする人々。
例え、プラントにいたとしてそれを知る事が出来ただろうか?どれほど精巧にそれを知ろうとしても、プラントにいるのならば必ずノイズが入るのだから、貴重な体験といえるだろう。
「それでは早めに始めましょう。そうすれば、私の嫌疑が晴れるのでしょう?」
彼女は前向きにそう言った。
AAにいたからこそ、世界にはまだ希望があるのだとそう断言出来るのだから。
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