機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第4話

AAの艦橋にアラートが鳴り響いた。

 

「大型の熱源!戦艦のエンジンと思われます。距離ニ○○、イエロー三三一七マーク○ニチャーリー、進路ゼロシフトゼロ!

ナスカ級と思われます!」

 

「横か?同方向へ向かっている!?」

 

一同ゾッとした気分である。

要するに気が付かれて、同航戦でも仕掛けられるのではないか?と言うことであるが、ナスカ級はそもそもその構造的欠点によって、同航戦は不向き。

 

ならば、その行動はそういう戦闘の意思表示ではなく、もっと初歩的な敵よりも多くの人員を割くことが出来るときに使う戦法、至ってシンプルなものである。

 

「我々に先回りしようって事!?」

 

「どうするよ、このまま行っても袋の鼠よ?」

 

そうなった場合、袋叩きにあうのは目に見えている。

ならば包囲を崩すならば、その戦い方は決まっているのだ。

前進し、1点に戦力を集中して敵の包囲網に穴を開ける。

今回の場合、進行方向の敵を如何に上手く処理するのか、それによって全てがかかっている。

 

 

「何か手立てはあるんですか?」

 

「それを、これから考えるってことよ。」

 

戦いは、所詮騙し合いで、いろいろの謀りごとを凝らして、敵の目を欺き、状況いかんでは当初の作戦を変えることによって勝利を収めることができるものだ。

そして、この時フラガと言う男にはその為の奇策が頭に浮かんでいた。

 

 

一方その頃、居住区画にいたキラとフレイであったが、その二人の中は驚くほどに冷たい空気が流れていた。

一方は激昂を覚える程に、冷静になったフレイは復讐という炎によって、戦闘が始まればたちまち殺し合いを始めるだろう。

他方、友人であるアスラン・ザラとの戦闘を毛嫌いし、元々温厚であったキラは、それとは違い彼女のその行動を嫌々ながら付き合う覚悟をしていた。

 

そんな時だ

 

「敵艦影発見! 敵艦影発見! 第一戦闘配備! 軍籍にある者は直ちに持ち場につけ!」

 

と言うアナウンスが艦内に流れ、一同AAが戦闘行動へと入った事を悟った。

そして、その切迫した艦内アナウンスに、トール達ははっと頭を上げる。収客された避難民達の間にざわめきが走った。

 

 

「キラ・ヤマト、フレイ・アルスターは艦橋へ。キラ・ヤマト、フレイ・アルスターは艦橋へ」

 

次に流れたのは二人を呼ぶ声、そしてそれはフレイにとっては好機と、キラにとっては最悪の事態として顕現した。

 

それを聞いて、ミリアリアがそっとトールに話しかける。

 

「二人共どうするのかな…。」

 

「戦ってくれないと、かなり困った事になるんだろうな……」

 

と、友人達が口々に小さく言い出すのを、キラは聞きその揺らいだ心はその言葉に更に動揺した。

それに対して、フレイは待ってましたとばかりに立ち上がった。

 

「私は行くわ、キラはどうするの?」

 

「え…?あ、いや。僕も行くよ…。」

 

どう見ても乗り気で無いキラと、満更でもないフレイという対象的な姿がそこにはあった。

 

 

二人が立ち去り、少しした後ミリアリアは1つでしか口に出した。

 

「ねえ、トール、私達だけこんなところで、いっつもキラに守ってもらうだけなんて……」

 

ミリアリアに言われるまでもなく、トールも同じ事を考えていたのだ。

 

 「――『できる事をやれ』、か」

 

キラがフラガに言われた言葉、トールの頭にはずっとそれが引っ掛かっていた。

確かにキラはコーディネイターで自分達よりも優秀なのかもしれない、でも彼は戦争が嫌でオーブにいるのだ。

そんな人間が戦って良い訳がない、それなのに今の自分達はいうなれば彼を、盾としている。

トールはその現状に嫌気がさしていた。

 

それに、フレイは復讐のために戦うという、だが古今東西復讐に走った人間の末路というのは悲惨なものだ。

だが本人は満足しているのだろうが、そうならない様に誰かが支えてやらねばならない。

 

帰れる場所があれば、また違う様相になるかもしれないのだ。

彼は決然と立ち上がり、それを見るサイ、ミリアリア、カズイが、わかったというようにうなずく。

 

「皆、行こう。」

 

四人はその足取りを、揃えて戦場へと足を進めた。

 

 

……

 

 

「何故、僕なんだろうか。」

 

ポツリと呟く彼の言葉は、虚空にかき消されること無く。もう一人の人間に聞かれていた。

 

「力があるからよ。」

 

「フレイは、怖くないの?」

 

キラは明らかに疑問に思っていた。カレッジでは自由奔放、成績優秀で通っていた彼女が、こんなにも何かに対して復讐心を燃やし、剰え戦争を積極的にしようとしている現実に。

 

「私だって少しは怖いわよ、でも」

 

彼女は大きく深呼吸して、一拍間を取った。

 

「私決心したの、ザフトもプラントもゆるさないって。だってそうでしょ?何の罪もない人間を巻き込んでおいて、のうのうと生きていこうだなんて、そんなのおかしいわよ。

キラは、そう思わないの?」

 

「それは、確かにそうだけど。でも、僕は……」

 

少し事情があるんだと言い出したかった。

それを見たフレイは、思ったのだ。

 

〘同族殺しをしたくないのではないか?〙

と、

 

「アンタ自分がコーディネイターだからって、戦いたくないって、そう思ってるんじゃないでしょうね?」

 

「違う!!違うけど。」

 

言ってしまえばきっと楽になる、そうして彼は小さく口に出した。

 

ザフトに、幼馴染が友達がいたんだ。

 

フレイはその言葉に一瞬、あっ、と思った。

そう、彼を誘導しようとする自分が、彼等ザフトと同じような事をさせているのだと。

そして同時に、キラのその言葉に少しの苛立と憐れみを感じた。

 

「なら良いわ、でも。私は、戦うから。だからせめて、私が勝てる事を祈ってて。」

 

「そんな……、僕も戦うよ。だから、もしも赤いイージスっていう機体が来たら、説得の機会が欲しい。」

 

説得などしてなんの意味があるのか、だが格式張ったものを行うことで、線引きをする事も出来ることもある。

それが彼なりのそれならば、それを否定する事は愚かな行為だ。

それを彼女が知っているかは兎も角。

 

「解ったわ。でも、もしそれで皆が死んじゃったら……。

赦さないから…。」

 

そう言われたキラは、顔が青褪めるような錯覚を覚えた。

 

「キラ、フレイ。」

 

それはそうと、更衣室に向かう二人を友人たちが出迎えた。

 

「トール…みんな…どうしたの、その格好?」

 

軍服に身を包んだ姿で。

 

「ブリッジに入るなら軍服を着ろってさ」

 

「僕らも艦の仕事、手伝おうかと思ってさ。人手不足だろ? 普通の人よりは機械やコンピュータの扱いには慣れてるし」

 

彼らの行為は地球連合加盟国の人間であるならば、別に問題にならないような事だが、彼等はオーブ国民。

強制的に行うならいざ知らず、もしも本国に知られれば背信行為と見られても仕方が無い。

 

しかし、非常事態という事もありそれは情状酌量の余地があるだろう。彼等は、友人を守りたいだけだということもある。

何より、キラ・ヤマトは強制徴用されているのだから、悪いのは連合の方なのだ。

 

そこから、やれ軍服がだとか下らない話をしながらも、二人と共に戦う事を決心した。

キラは、そのことに対して感動を覚えた。と、同時に更に護らなければならないと、自らを追い詰めていった。

 

 

……

 

格納庫に、二人がパイロットスーツを着て現れると、ムウがからかうような口調で言った。

 

「よお、キラは決心ついたんだな。

それにしても、まるでペアルックみたいだな。」

 

二人のパイロットスーツは色味のある部分が、青と赤色という違い以外は、まるで瓜二つなものであり、体格も相まってまさにペアルックだ。

 

「これしか無かったんだからしょうがないじゃない。」

 

フレイのその良いように、内心嬉しがったキラは少し傷ついた。

 

「アハハ、冗談だよ冗談。さて、そんじゃま作戦の概要を教えてやるとするか?」

 

と、おちゃらけた様に言う彼はその一言を言ったあと、非常に真剣な眼差しになる。

 

「まず、俺達は目的地に向かって航行してたんだが、追い抜かされて、今やはさみ撃ちの状況だ。

ま、ここまでは二人共頭に入ってるだろう?」

 

「はい、状況として最悪だと。艦橋で言われました。」

 

「なんとなくだけど、理解しているわ。」

 

二人の顔を伺いながら、フラガは話を続行する。

このときの彼の心境として言うのなら、多少なりとも戦力があるのだから、焦らずに行こうというものだ。

 

「知っての通り、俺達の兵器は連中に盗られたわけだが、今回俺はそれを連中が投入してくると踏んでいる。

根拠は……、まあなんだ?勘てものなんだが、バカには出来ない。」

 

勘と言う単語に、二人共若干口をへの字に曲げる。あまり良い印象ではない、だが戦闘経験豊富な人間の指示は従っておいたほうが良いのはそうだろう。

 

「それでだ、俺は先行して俺達の進路上にいる敵のナスカ級に対して、奇襲を仕掛ける。

まあ、でっかいAAが囮を買って出るんだ、そうそう見つからないさ。

 

それでだ、問題はお前たち二人の役回りなんだが。

AAに向かってくる敵機をAAを護衛しつつ、生き残るって事だな。

良いか?間違っても、敵を落とそうなんて考えるな。

とにかく、目を自分達に向けさせろ、そうすりゃAAよりも先にお前等を狙ってくるだろうさ。」

 

「アドバイスとか、他にないわけ?」

 

苦笑いしながら、フラガはフレイの言葉を聞き手を少し動かしながら戯けたようにすると。

 

「兎に角逃げ惑う事だ。撃たなくたって、生きてりゃ次があるさ。」

 

アドバイスになっていないアドバイスに、二人共内心ガッカリとしたが、フラガとしてはそれしか言いようが無い。

なにせ、二人共数十時間前まで学生だったのだから、そんなに難しい事を言ったとして、それを実現出来るかなんてわかったものじゃない。

 

「それじゃ、詳しくはオペレーターに聞いてくれ。MSの兵装とか、そう言うのはあっちの方が得意だからな。」

 

と、そんな具合に簡易なブリーフィングは終了した。

それが終わると、各員急いで自分の機体へと向かいコックピットシートに腰をかけた。

 

 

……

 

フレイは、自分の機体ガンダムに乗り込むと自機のOSを起動する。

まず最初に、連合のマークが次にOSの名称がそこに映し出された。

 

「ガンダム…、ガンダムね。って事は、キラの機体もOSはガンダムなんだろうか?」

 

そんな今考えなくても良い事を考えてしまう。現実逃避、実際戦場に立つのは二度目、それも一度目は何かに導かれる様に戦ったのだから、次はあるのかという話だ。

 

完全にOSが立ち上がると、今度は艦内の無線のやり取りが聞こえてくる。

 

「ローラシア級、後方九○に接近!」

 

「艦長、そろそろタイムアウトだ。出るぞ!」

 

「はい。お願いします」

 

艦橋のやり取りだ、先程までの空気とは裏腹にフラガはこの時ばかりは真剣な声色で話をしている。

やはり、スイッチのようなもので切り替わっているのだろう。

 

「作戦は2人にも伝えた、後機体のこと。しっかりと教えてやってくれ、特に嬢ちゃんの方はマニュアル読んだだけだろうからな。」

 

ちゃんと大人として、彼女を気遣っている。だが、キラに対しては少し厳しいのだろう。

コーディネイターなら、このくらい出来るだろうという心が、彼の内の何処かにあるのかもしれない。

彼の経験上仕方の無いことだが。

 

「じゃあな、二人共。とにかく艦と自分を守ることをだけを考えろ。」

 

「「はい、わかりました。」」

 

ほぼ同時にそう言う二人の声を、聞いたのかフラガはニヤッと素敵に笑ったあと、直ぐ様真剣な面持ちに戻り

 

「ムウ・ラ・フラガ出る!戻ってくるまで沈むなよ!」

 

と言いながら、艦から飛び出していった。

それを見送りながらも、キラは何処か心中不安であった。

 

「上手くいくのかな…。」

 

「解んない、けど上手くやるしかないわよ。」

 

それしか言う言葉は無かった。

そんな二人の会話に割って入るように、通信が入った。

 

「キラ、それにフレイ。」

 

「ミリアリア!?」

 

キラが声を出して驚愕する、それとは対象的にフレイは押し黙り、困惑した顔をする。

二人のコンソールには、インカムを付けたミリアリアの姿があった。

 

「以後、私がモビルスーツ及びモビルアーマーの戦闘管制となります。……よろしくネ」

 

「宜しくお願いします、だよ!」

 

等とお叱りを受ける姿が、二人の緊張を少し和らげる。

 

「キラ・ヤマト。ストライクは装備は〝エールストライカー〟を。〝アークエンジェル〟が吹かしたら、あっという間に来るぞ、いいな!?」

 

「はい!」

 

と、ミリアリアを叱っていたトノムラが念を押すように言う。

すると、今度はフレイの方へも声をかけた。

 

「フレイ・アルスター。ガンダムは〘砲撃ユニット〙、〘3吋ビーム砲〙と、〘ミサイルポッド〙だ。

 

マニュアルは読んだと思うが、ストライクと違ってそっちの機体はビーム兵装は肩のそれしか無い。

近接兵装も、嵩張る腰のそれ(MK1レーザー斬刀)しか無いから注意してくれ、PS装甲に対するには心許ないだろうが、いいな?」

 

「判ってます。私の機体は実弾兵装がメインだから、反動にも気をつけなきゃならないんでしょ?」

 

その言葉にトノムラは満足したのだろう、以後口をはさまなかった。

 

左右のカタパルトへと接続し、それぞれの機体にガントリークレーンでユニットが接続されていく。

ストライクはジョイントにより素早く、それが接続され右手にビームライフルを左手に盾を装着し、いつでも出撃が可能な態勢へと移行する。

 

ガンダムは、それと比較して少し緩慢で、肩部に接続されると少しの間機械音が響き、数秒後接続が完了する。

右手に3吋突撃銃、左手に攻防盾を装備し、腰へ斬刀が装着されていく。

そして、2機が出撃態勢を整えたのを確認すると同時に、命令が発せられた。

 

「エンジン始動! 同時に主砲発射! 目標、前方ナスカ級!」

 

マリューの声と同時に、エンジンが低い唸りを上げた。両弦から、〘ゴッドフリートMK71〙が競り上がる。

 

「主砲、撃て!」

 

砲口から眩い光がほとばしり、それが海戦の合図となった。

 

 

 




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