機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第51話

 

戦争と言うものは悲劇だ!!

そう声高に宣言するものがいるだろう。

戦争と言うものは残忍だ!!

そう叫ぶものもいるだろう。

 

確かに上記の2つの文言は戦争というものの見方に於いて、忘れてはならないものなのかもしれない。

しかし、その2つを除けばどうなってしまうだろうか?

この映像化社会において、戦争というものはどういうものに映るだろうか?

 

戦争とは、エンターテイメントだ。

 

戦争を戦っていない者達にとって、それは他人事であり系外の事である。

それ故に戦争というものに現実味というものはなく、只々野次馬のように其れ等を観に行く者達がいるだろう。

危ないから近づく者等いやしないと、そんな事をする人などいないとそういう者もいる。

 

しかし、歴史上には戦場に弁当を持っていく弁当屋のような者達がいたように、他者同士の殺し合いというものは非常に面白いものであろう。

現に、ボクシングやレスリング、柔道等のオリンピック競技とは本来殺し合いの延長線上にあったものをスポーツに落とし込んだものであるから、否定のしようは無いのだ。

 

で、あるならば本当の戦争というものを観た時、一般民衆と言うものはそれをゲームのようなものを観る感覚に陥るだろう…。

 

「ご覧ください!今、我々の目の前に広がっている光景は、映画でもゲームでもありません!

戦争、戦争なのです!」

 

空を飛び交うミサイルを、白亜の戦艦がより小さいものを射出して撃ち落としていく。

更にそれを掻い潜るものを、バラバラと対空砲弾を撃つことで迎撃すると、その巨体を見事に動かし直撃を避けていく。

 

その周囲には、ザフトのMSディンやその他航空機が取り囲む様に飛び交い、その間を2機の戦闘機が飛び交うと、バラバラと2,3機

撃ち落とすと一気に高空へと上昇していく。

 

其れ等とはまた違うところでは、MSストライクが空を駆け敵の足やスタビライザー等を破壊して落としていく。

実に効果的だ。殺さずとも、機体バランスを奪われれば撤退しない理由にも行かず、それを護衛する為に僚機を連れて引いていく。

 

そことは別に、機体の上をジャンプするように戦うガンダムが八艘飛びの様に次々と其れ等を蹴落とす。

AAの甲板上では、他のどれとも違うゴーグルタイプの顔をした機体が、ビームライフルで対空戦闘を手伝っていた。

 

そんな光景を、遥か遠く。と言っても、10キロ程度であろうか高解像度カメラを構え、ホバリングする機体に身を隠しその様子を盗撮する。

軍のそれとはまた違い、識別信号を持っていないながらも非戦闘空域からそれを撮影するのは、所謂報道機関マスコミと言われる者達であった。

 

そんな彼等は、堂々と自分達は知らぬ存ぜぬと言わんばかりにし、危険空域を飛行する。

 

「あ!また1機落ちました!連合のMS強い、強い!」

 

まるで、ボクシング等の格闘技の中継の如くだ。

 

そんな映像を観るものたちなどいるのか?

いや、いる。

 

例えばそう、家にある数少ないテレビに齧りついてテレビを真剣な眼差しをしながら見つめている少年と、それをつまらなさそうにしている妹であったり…、だろうか?

 

「お兄ちゃん!リモコン貸して!つまんない!」

 

「つまんないって…しょうがないだろ!他の番組も同じみたいだしさ。」

 

兄と言われた少年は、その赤い瞳を輝かせながらその中継を見ていた。

まるでヒーローショーであるかのように、それを見つめる少年の瞳にはストライクと呼ばれる機体が、次々と攻撃を捌いていく姿が映っていた。

 

「すっげぇー!どうやったらこんなに動かせんだろ!」

 

「む〜!そんなの見てても面白くないもん。」

 

兄妹でその意見の食い違い、性別の違いとはこうも趣味趣向の違いに表れるのだろうか?

だが、その瞳の色はまさしく兄妹の証であり、互いにコーディネイターである事が判る。

 

「パパもママも遅いなぁ…、今日はお昼には帰ってくるって言ってたのに…。」

 

「しょうが無いだろ、父さんも母さんも会社の仕事が忙しいんだからさ。」

 

少年は興味無さそうにそう言うと、まだまだテレビに齧りついていた。

 

「お兄ちゃん、宿題終わった?」

 

「はっ!?あいや、お、終わったよ。」

 

ギクリという音が聞こえてくるような、そんな姿を下しながら渋々とテレビから離れていくと、妹にリモコンを与えてそそくさと自室に入っていく。

一方の妹は満足気にすると、テレビのニュースを辞めさせて興味のあるネット番組を見始めた。

 

戦争をエンターテイメントにするのは一部の客層に受けるだろうが少女にとってはどうでも良いものだった。

 

 

……

 

AA艦内は、早急な戦闘を行いつつも冷静に各個の判断に動いていた。

元より軍隊という体裁よりも、寄せ集めという形の方がより正確であった彼等は、階級という繋がりが弱くそれぞれの判断によって最善を尽くすことが多かっただけに、人の潜在能力というものが引き出されやすい環境であった。

 

「敵第1波引いていきます。続いて第2波確認できません。」

 

「わかりました。ノイマン少尉、進路修正アラスカJOSH-Aへの最短コースに戻ります。トノムラ軍曹、索敵を厳となし何かあれば逐次報告を。」

 

ラミアスは淡々と指示を出す。もはや慣れたものだ、アラスカ迄もう地球半周も無い距離である。

それが彼女の心に余裕を与えていた、そしてそれと同時に役割分担というものの意味を理解して来ていた。

 

「パイロット各員、状況を確認しつつ臨機応変に着艦。補給を行え、特にアルスター准尉。貴官の機体はバッテリー消費が激しい。ヤマト准尉とカタリナ准尉に任せ、一時帰投せよ。」

 

ナタルが機体それぞれの状態と、戦術的なザフトの消耗度合いを勘案し、命令を下す。

ザフトはオーブ寄港以前と同様に波状攻撃を仕掛けるつもりでいるようだが、今度はそれを逆手に取ろうと厳格に機体を統制するつもりであった。

 

AAの格納庫へとゆっくりと機体が進入し、立ち止まると直ぐにエレベーターへと機体を動かしそれに乗る。

 

「よーし、スラスターの調子見とけよ。バッテリーパック大丈夫か!」

 

整備に取り替かるのはあまりにも早い。

テキパキと動いていく、その間にコックピットからパイロットであるフレイが降りる。

 

「マードックさん、関節の摩耗短時間でいいから調べてくれないかしら。」

 

「ええ?あ、おう。しかしなんだ?交換したばかりじゃないのか?」

 

確かに、ガンダムのそれはオーブで交換したばかりであるが、それとこれとは話が別だ。

細かな、フレイの操縦は細かな挙動を行うことによって、機体の追従性をカバーしていた。

 

通常関節部は大雑把な挙動を是としており、精密なそれを行う場合は逆に負荷が掛かる。彼女のそれはまさに、その事であった。

 

パイロットである彼女は整備よりも休憩を優先され、休憩室にて1人ドリンクを口にしている。

 

『休憩は10分か、まあそれなりだな。機体の挙動は及第点だ。駄目なところを言ってやろうか?』

 

『言わなくたって良いわよ。どうせ、短時間で修正なんて出来やしないんだから。』

 

ゆっくりと休憩は出来ない。だが、最低でもこのくらいはと定められた時間の中でギリギリを攻めていた。

 

「ガンダム整備完了、パイロットは所定の位置についてください。」

 

艦内アナウンスが入ると、彼女は飲みかけのそれを一気に胃に流し込み、ヘルメットを手に取ると。またMSに搭乗し、AAの外へと発艦していく。

 

それと入れ替わるように、今度はスカイグラスパー1号機が着艦する。フラガの番であった。

 

その様に順繰りとローテーションさせていく中で、ストライクの番となるのだが、キラは整備士に信頼を寄せており最低限の整備だけを行って直ぐに出撃するようした。

 

「おい、坊主。休める時に休んどけよ!」

 

「わかってます!でも、ストライクがいなきゃ近距離の敵は落とし辛いでしょ!」

 

キラの言う事は尤もで、確かにガンダムはストライクの様に滑空出来ず、バーニアを酷使することによって強制的に空を跳んでいるだけだ。

ストライクならば、それよりも長く空を飛べる。何より、フレイの負担を減らしたかった。

 

 

……

 

AAを追うように展開している潜水艦隊は、その損耗の数に絶句をしつつも一つの疑問に思い当たった。

MSの損傷としての損耗は多いのだが、撃墜という完全損失の数はピークのそれと比べても少なくなっていたのだ。

これはどういうことかと訝しんでいる。

 

「ディンは損害が多いですが、殆ど共食い整備でなんとか成りそうです。」

 

「そうか…、だがおかしなものだな。どうして態々こんな事をするのか…。」

 

「良く言うあれじゃねぇの?兵士は殺すよりも、負傷させるべきだってやつさ。」

 

だとしてもあからさま過ぎるとは思いながら、その損害に当たっていた敵機の集計を進んでいくと、一機のMSに辿り着いた。

 

「ストライクと接敵している者達が殆どですね。」

 

「おいおい、パイロットが変わったのかよ。いや、オーブに入る前からか?」

 

「アスラン、これはチャンスだ。」

 

「…、そうだな。確かに利用しないわけには行かない。」

 

彼等は周囲の地形図を開くと、次の襲撃ポイントを指し示す。

 

「この島嶼部は殆ど無人です。地球連合の管轄地ですが、今は部隊の展開もされていないので、仕掛けるならここ以外ありえません。」

 

彼等がたどり着いた結論とはなんだろうか?

だが、どんな結論であるにせよかの艦艇を撃沈することが責務である。最低でも、MSをアラスカに到着させてはならないのだと。

 

 

 

……

 

暗がりの中を進んでいく船は、さながら幽霊船のように姿を消したがっていた。

だが、それも意味をなさない。

夜空に光り輝く光球がその姿を照らし、闇にその姿を浮き上がらせる。

 

波状攻撃、陸上に展開したバスターからの射撃は正確無比なものであり、対艦戦闘能力をフルに活用したそれを止める術はあまり多くはない。

ならばと、それを止めるためにAAのMSは大地へと足をつけてその本領を発揮しようとする。

 

空の戦いと、陸の戦い。

 

スタンダードな二足歩行型MSとMSの本格的な戦いが、その無人の大地にて始まった。

暗闇の中を突き進むブリッツを、ガンダムが迎え撃つ。

他の僚機を上手く使い、数という強みをその機体を圧迫するために使っていく。

 

ストライクはそれを援護すべく動こうとしたが、それをイージスとデュエル。キラを、アスランとイザークが釘付けにする。

そこには少なくとも、3機か4機のディンが展開していた。

 

バスターだけが、単独でいたのだがそれをデュエルの様な機体、ダガーと言われるそれが近接戦を挑むが、バスターは戦闘距離を弁えている為逃げ続けながら、AAへと砲撃を続けていく。

機体特性上近づかなくては、その力を発揮できないと言うのは適正な戦力分析をこの時のザラ隊はしていた。

 

AAは、それを援護しようとスカイグラスパーを展開するのだが、夜間飛行という高等技術が要求される中を、トール機が飛べるかと言うならばそれはかなり難しい。

ただ飛ぶだけでも、上下の感覚がわからなくなるのだ。それでも、それを飛ばすことが出来るのならそれは素質がある。

 

戦場の中心は、主に2つとなっていった。

ガンダムとストライクだ。

この2つはAAにおける最大戦力であったからというのも大きいのだが、MS同士の援護を行えないようにするという巧妙な業にこの時の、アスラン・ザラの戦術眼は冴えていたと言えるだろう。

 

どれほど強くても、疲労というものは蓄積していく。

戦いが長引く程に、其れ等は溜まっていく。

即ち、バスターは端から囮であって本来の狙いはストライクとガンダムの分断である。

 

それもこの戦いの時だけは、ディンの動きは今までのものとは違った。まさに死に物狂い。

死兵となって2機に挑んでいく。死を恐れない兵の恐ろしさを彼等は知らなかった。

特にキラはそれを知らなかった。

知る事が出来なかった。そんなもの、戦場にいるのはほんの一握りであるがゆえに。

 

たった3日の戦闘は、それだけでも休憩出来ない二人のパイロットに脆に直撃していた。

 

AA隊はその戦闘形態を徐々に分断されていく。

対してザフトは数をすり減らしながらも、確実にその戦力を圧迫していく。

マーシャル諸島のとある島で、遂にストライクはフェイズシフトを維持する事が困難になる。

 

敢えてそれを落として入るが、携行武装も底を突き今あるのはビームサーベルとアーマーシュナイダーだけであった。

 

「キラっ!今降伏すれば…、それ相応の処遇を約束するだから!!」

 

「ハァ、ハァ…。僕は…、捕まるわけには行かないんだ。だから、だからアスラン!そこを退いてくれ!」

 

デュエルもその戦闘能力を損失し、後退した。

今、その場にいたのはアスランとキラ。

ストライクとイージスの一騎討ちとなっていた。

 

そこから数キロ離れた場所の別の場所にいた、ガンダムはブリッツの武装の尽くを破壊し、ディンの正面装甲を上手くコックピットを潰すようにして退けた。

残骸が周囲を覆い、左手のマニピュレータは何かを貫いたのだろう、血潮がこびりついている。

 

「これだけの数を相手に、被弾すらしませんか…。」

 

ニコルの目の前には絶望が起立していた。

フェイズシフト装甲を無意味と断じ、全てを落として灰色に染まった機体が、その双眼を光らせる。

その姿はまるで…

 

「本当に悪魔のようですね。」

 

それでも、戦況は互角だろう。

どちらかが倒れるまで、それは終わらない。

 




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