機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第54話

 

暗がりのある営倉のベッドで、一人ぼーっと天井を眺めている。彼はそんなやる気もないような空気を作り出しながら、先日の戦いを思い出しては、身を震わせ瞳に涙を浮かばせていた。

 

少し前に来た少女、カガリに罵倒され慰められ、自分はいったい何のために戦ってきたのだろうかと、散々に自らを攻めた。

親友と殺し合うということが、どれほど苦しいことなのかを知るものは、果たしてこの世にどれほどいるのだろうかと。

 

そんな彼は、今オーブ艦内にいる。

もちろん、正式な手続きがあってのものではないが、特殊救難者という体での入国など難しいものでもない。

きっと直ぐにでも、カーペンタリアに送られるだろうとそう思いながら、ここにいる。

 

持ち出した戦力の過半を無力化され、オペレーション・スピットブレイクまで日がないというのにそれだけの被害を出した。

果たしてそんな自分が帰ったのなら、どれ程の罰が待っているのだろうか?

 

一人自問自答するも、そんな事よりもキラの事で直ぐに思考がかき乱された。

だが、それだけではない。

自分が知る限りニコルのブリッツもまた、信号が途絶していたのだと言う事を思い出した。

 

あぁ、自分はどうしてこうもどうしようもない奴なのだろうかと、頭を抱える。

まるで死神だと。

自分が関係を持った人間は、その尽くが良くない終わり方をしている。

 

ニコルの搭乗していたブリッツもまた、残骸が発見されたのだという。

その件の機体は、コックピットが完全に融解し搭乗者の安否すらわからない。〘MIA〙そう言う言葉が頭をよぎる。

 

いったいどれだけの人間が、自分と関係を持ったのか。母に始まり、学友となりそして親友を殺しいったい次は何がやられるのか…と。

 

絶望する中で、自分自身がやらねばならないことが良く分からなくなってしまった。

ただ思考の内に沈むように、彼は瞳を閉じた。

 

……暫くすると、扉が開き声が聞こえた。

 

「出ろ。」

 

そう言う言葉と共に、何処へと連れて行かれるのかとそう思っていれば、そのまま艦の外へと連れて行かれる。待っていたのはカーペンタリア基地からの迎えであった。

 

基地までの道中、誰からも声をかけられることは無かったが、罵倒の視線が己に突き刺さった。

たった1隻の戦艦、それとその部隊を破壊するためにどれ程の損害を出したのか、改めて自分のやった事を認識する。

 

基地に到着すれば、待っていたのは本国への帰還という現実味の無い話であった。

勿論、傷の具合によるのだが幸いな事に軽傷であった彼は、回復後宇宙へと昇ることになる。

 

「遅れて済まなかったな。」

 

その間にマスクを付けた男クルーゼが現れると、開口一番に謝罪を言い渡された。

 

「どうして謝るのですか、自分達は…。」

 

続く言葉を発せようとすると、クルーゼはそれを手で制すと徐ろに窓辺を見ながら彼に近づいて言った。

 

「親しかった友人を殺すというものがどれ程辛いことであったのか、私には理解出来ない。

だが、君はそれをやり遂げた。辛かっただろうが、それを見事に成し遂げたんだ。そんなに悔しがる事でもない、良く頑張ったな。」

 

等と言ってくる、更に本来は自分がすべき事だった等と言うと、アスランはその言葉に耳を傾けるのであった。

 

 

……

 

傷つきながらも進み続けるAAは、追手を警戒しながらも北進していた。

空を旋回するのはスカイグラスパー、かなり手慣れたような飛び方をするが、そんな物に搭乗しているのは数週間前までは空も飛んだことがなかった少年だ。

 

「周囲に敵影ありません、追手の方も来てないみたいです。」

 

「了解しました。引き続き周囲の警戒にあたって頂戴、それと…適度に交代するように。無理をすれば、身体に祟るわよ。」

 

キラの事から数日しか経っていないにも関わらず、前を向くようにそう言う話をしていた。

別に忘れた訳では無い、ただそれ程の余裕が無いというのが現実であった。

 

艦橋内も暗い雰囲気を感じさせず、テキパキと作業を続けていく。会話が少し少なくなっているが、それでも割り切る他ないのが事実だ。

 

「アラスカの防空識別圏に入ります。」

 

その言葉と共に、艦橋内には安堵の声が流れ始める。

防空識別圏、それはその国家の安全保障上必要な領空以外の設定された空域であり、また防空監視体制が敷かれている場所を記す場所である。

 

「案外…、あっけなかったですね。」

 

「そうは言うが、ここまで追ってくる程連中も馬鹿じゃないさ。」

 

「何を話している!まだ第二戦闘配備だぞ!」

 

緩み始めた空気を感じて、ナタルがそう言うと周囲はそれにバツの悪い顔をする。

 

「あ!ごめんなさいね、これより半舷休息とします。」

 

その言葉を聞いて、ラミアスがそう指示を出すとやっと全体の緊張の糸が緩む。

それを聞いてナタルは溜息を出すと、艦長に休息に入るよう下した。

 

ちょうどその時、格納庫のマードックから艦長へ緊急で連絡が入った。

 

「艦長!ちょっと来てもらえませんかね。」

 

「どうかしたの?マードック曹長。」

 

困ったようにマードックは顔を歪ませて、説明を始めた。

どうやら、フレイとフラガがキラの捜索をしようとしているらしいと。 

 

「嬢ちゃんの方は力付くでなんとかなりましたけど、少佐の方が…。」

 

急いで格納庫へと向かうと、そこにはスカイグラスパーを今にも飛ばして行ってしまいそうなフラガの姿があった。

そんなフラガを止めようと、ラミアスは向かう。

 

一方その頃、マードック等に拘束されているフレイであるが、拘束され送られた部屋の中で、屈強な大人である整備員のうち何人かを投げ飛ばして拘束から抜け出そうと暴れていた。

果たして、軍隊経験が無い人間が軍人に殴り勝つ事が出来るか?

普通は出来ない、だが彼女は普通ではなかった。

 

MSに搭乗し始めた頃とはまるで違い、彼女のフィジカルは言うなれば準軍人という程度には出来上がってきていた。

それもこれも、頭に響く声が効果的なトレーニングを提示してくる為であり、復讐の為ならばとそう言って努力してきた甲斐でもある。

 

更に、武術の達人のように次に相手がどのように動くのか、まるで未来を見ているように動く彼女に、一人二人ではまるで歯が立たない。勿論、海兵ならば取り押さえるのも容易だったろうが、所詮は整備員である。結局4〜5人で取り押さえなければならない程度には、彼女は強かった。

 

「離してください!今からキラを!」

 

「駄目だったら駄目だ、良いか!艦長も許可しないし、俺たちもあそこになんか行かせたくねぇんだよ。判るだろ?嬢ちゃんの機体はもう、かなりガタが来てるしスカイグラスパーだって、いつ落とされるか分かったものじゃない。

生きているか分からない味方より、今確実に救える生命を救うのが最良の選択、そうだろ!?」

 

マードックのその言葉に、フレイは唇を噛み悔しがる。

あの時、彼は確実に生きていたのだ。誰かが救助してくれていれば、確実に生きているんだと。

だから戻りたかったが、それも出来ないのなら仕方がないのかもしれないと。

抵抗するのを辞めた。

 

 

……

 

艦内で余裕が出来た頃、居住区画で余裕が出来た事から捕虜となっている2人の移動が始まった。

完全武装した兵に囲まれ、いつ撃ち殺しても良いように構えられていれば、どうしようとも逃れられない。

 

それを見守る周囲の景色と、まるで珍しい物を見るように集まった野次馬達。

その中を嫌嫌ながら歩くディアッカと、それを見ながら呆れているニコルは対象的に映ることだろう。

 

「ディアッカ、静かに歩けないんですか!」

 

「わかった、わかったよ。」

 

そうしていると、あの暗い部屋に来た二人組がその道端に現れる。それからディアッカは言われたことを少し思い出し、口を嗣んだ。

 

「やればできるじゃないですか。」

 

そう言われながら別の部屋へと送られる。

今度こそ一人部屋ではあるものの、やはり隣に置かれている。監視の目を光らせる為だろうが、人手不足もここまでくればあからさまだろう。

 

「おいニコル、聞こえるか?」

 

「聞こえてますよなんですか?」

 

2人の会話は筒抜けだが別に聞かれてもまずいものでなければ、話しても構わないだろうと、ディアッカはそう判断していた。

 

「彼奴等のこと、教えてくれよ。」

 

何に興味を持ったのかそんな事をニコルに聞いてくる、ただ話しているだけだからか、監視もそんな事を気にすることもない。

 

「良いですよ、どうせ暇ですしね。何から話しましょうか?」

 

彼は何かを知ろうとしていた。

彼は自分の知りたい事はとことん知ろうとする達だった、それはそうだろう。彼の趣味である事をしるときには、先生の方へと通う程にそれに打ち込む事が出来るのだから。

 

 

……

 

 

AAはアラスカに入港する。

非常に混迷な中を懸命に進んできた彼等は、やっとの思いで旅路を終えることができるのだ。

 

「長い船旅ご苦労であった、まあとりあえずは良く休んでくれ。」

 

映像の中で、担当官がそう言うとナタルとラミアスは若干の違和感を覚えたが、それは些細な事と気にも留めなかったがその後の言葉に驚いた。

 

「貴艦に、フレイ・アルスターが搭乗していると聞いている。直ぐに本部の方へと出頭させるようにして欲しい。」

 

「アルスター准尉を…、それはいったい。」

 

「基地司令達が話したがっている。良いかな?」

 

命令は絶対だ。ラミアスは直ぐにフレイにその事を伝えて、付き人にカタリナを選出して出頭するように仕向けた。

何故カタリナにしたかは、フレイとの仲を鑑みてというところもあるが、何より同年代で尚且つ軍隊経験のある者が言ったほうが良いのではないかというものからだった。

それに、正直な話艦の維持にその他の士官は割くことが出来なかった事も大きかった。

 

フレイが連れてこられた場所は、アラスカ最高司令部。

将官クラスが多数在籍する、地球連合の頭脳とでも言える場所であるが、そんな彼等の見る目はランランと不気味に輝いていた。

 

「あの…、なんで私だけこんなところに連れてこられたんですか?」

 

フレイ・アルスターは見知らぬ人々の前に連れてこられて一瞬戸惑うも、直ぐに冷静に周囲を見渡した。

彼女には階級章というものは分からない、わからないが彼女の頭の中に響く声はそれがだいたいどういうものなのか、わかっているようだった。

 

『随分と階級が上だね、今後君をどうするか話したいみたいだな。』

 

『だとしても、なんで私?ナチュラルでMSを動かせるから?』

 

『それもあるだろうが、君の戦果が問題なんだろうよ。』

 

怪訝な顔をしながら、人々を見ているとその中の一人が声を上げた。

 

「フレイ・アルスター准尉、だったね。君は、ジョージ・アルスターの娘というのは良く聞いているよ。

今後の君の行く末は、ある程度我々は保証しようと思っている。当然、善意からというものは期待しないでくれたまえ。質問はあるかな?」

 

「簡潔に言って、私をどうするつもりですか?」

 

怖気ずにそう言う彼女に何を見たのか、上の人々は満足気にするとその中の一人、階級を付けていない男が映像越しに答えた。

 

「お久しぶりですね、アルスターさん。

貴女はこれからヴィクトリアの方へと移動させられると思うんですが、そこはおいおい聞くでしょうから置いておきましょう。

貴女の要望道理、継戦能力の高い物をと言うことで組み上げたそれを是非に見てきてもらいたいのです。

数日後にはそこを発つ事になるでしょうから。」

 

捲し立てる様に言う男の発言一つ一つに軍関係者の顔は2つに別れた。

1つは嫌悪するような表情を。

もう一つは歓迎するかのようなそれを。

 

「それとですね、貴女の機体に付属しているサイコフレーム。それを持ってきてもらえると、僕としても嬉しい限りなんですよ。何せ、現物はそれしか無いので。」

 

サイコフレーム、フレイにとっても馴染み無いものだが聞いたことはあるものだ。

軍関係者も、そのものについてはあまり良く知らないのだろう首を傾げる者もいる。

つまりは、やはりあの機体の心臓部は機体そのものではなく、サイコフレームにあったのだ。

 

「それと、カタリナさんですか。本当に彼女で良いんですか?もっと良い護衛がいるんですがねぇ。」

 

「私は彼女が良いんです。顔馴染みで、尚且つ格闘戦が強い方が私は信頼しやすいので。」

 

軍のお偉いさんがいる中で、そんな発言が出来るほど彼女は図太い。いや、それ程までに画面の男アズラエルと言うものの存在が大きいのだ。

 

「そうですか、まあ良いでしょう。僕も使えれば誰だって使いますから。

では、お待ちしていますよ。ブルーコスモスのフレイ・アルスターさん。」

 

そう言うと画面が途切れる。次の仕事へと行ったのだろう。

 

「それでは、話を戻すとしよう。まず、君の階級だが…。」

 

フレイ・アルスターは正式に地球連合へと参加する。それは後戻り出来ない、人生の分岐路であった。

 

 




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