自分なりの劇上のセリフを補完する意味も含みます。
一つの部屋の中から複数の男女が現れ、腕の中には誰かの私物が入っている。
小箱等に分けられ、運ばれていくそれは主のいない部屋の中から出されると、廊下に並べられていった。
「これとコレは、私が持ってく。良いよね?」
「あぁ、でコレは俺と。そんなに物も多くないしな……。」
彼等のやっている作業は、所謂形見分けというものだ。死んだ人間の忘れ物をそれぞれに分け与え、大事にして行く。
生前慣れ親しんだ者達が、そうやっている事に一人一人は心が痛んだ。
キラのMIA認定から1日と置かずに、その作業が始められると次に使う人間にその部屋を空けなければならなかった。
その為急いでやっているのだが、やはりあまり気が進まないのだ。
だが、その中にフレイの姿は無かった。
「結局フレイは来なかったわね…、あの子一番キラと親しくしてたみたいじゃない?やっぱり辛かったのかしら…。」
「ミリィは一応聞いたんでしょ?ならさ、それで良いんだよ…。もしやっぱり欲しいとか言われれば、変わりに持っておいたくらいでさ。」
彼等がそんな話をしている間、件のフレイは1人コソコソと自室の方で何かをしていた。
「よいしょっと、コレはいらなくてコレは向こうで買えるから…、まぁ手荷物はこれくらいかしら。」
「どうしてこんなにコソコソと、やましい事でもあるのですか?」
その後ろからカタリナが現れると、フレイにそう質問するとフレイはそれに対して悪びれる様子もなく言った。
「見つかったら何か言われるでしょ、別れなんて悲しいだけだから、分からない内にっ。出ていったほうが良いのよ。それに、私死んじゃうかもしれないじゃない?だからよ。」
「そういうものですか?普通がわからないもので。」
彼女が荷造りしているのは、アラスカにて出頭した時言われた事からだった。
〘遅滞なく、貴官の移動を完了させる〙
その文言から1日の猶予を与えられた彼女は、必要最低限の物を持ってAAを出立しようとしているのだ。
「艦長とナタルさんには言ってあるから、皆に見つからないように今夜出て行くわよ、貴女もね。それから、私は今日から中尉だからで、アンタは少尉よ、よろしい?」
「はい、了解しました。」
翌日、フレイの姿が無いと知った時ヘリオポリス組は戸惑った。彼女がいったい何処へと行ったのか、ラミアスとナタルに問い詰めた。
「ごめんなさい、彼女に口止めされていたの。こんな命令書を突きつけられて…。」
ラミアスが出したものは、本部からの直接指令書。
しかも、それはラミアスの拒否権が無いものであり、彼女がそれを拒否する事は、軍務に反する事である。
故に彼女は、その指令を受け入れる他無かった。
「でも、じゃあどうして俺達に相談なく!」
「フレイ・アルスターは、お前達に心配をかけさせたくなかったのだ。
彼奴はお前たちと違って大西洋連邦の人間だ。だから、お前達がこれから戦場を離れると言うことを知っていて、敢えて伝えなかった。分かるだろう?彼女にも拒否権は無いということが。」
ラミアスよりも親しかったナタルに、その本心を打ち明けていた事に、一同は驚いていたがその言葉に反論しようとも、本人がいない以上それは意味の無いものであった。
「じゃあ…、フレイは…。フレイはどこに行ったのか、わかりますか?」
「一度家に戻るそうだ…。その後は、私にもわからない、すまないな。」
申し訳無さそうにするナタルの姿に違和感を覚えながらも、ナタルが謝るという、異例の対応にそれ以上追及するような事はなかった。
ただ一つ、フレイの言った通り彼等はその月に除隊するという事実だけが、空虚にそこに残り続けていた。
だが、そんな望みですら今のAAには良い方向へは進むことはなかった。
「彼女の事もそうですけれど、未だにJOSH-Aからの私たちへの命令はない以上、貴方がたが追うことは許されていないわ。
もし、命令を無視すればどうなる事か…、分かって頂戴。」
「は、はい…。」
アラスカ本部は、未だにAAへの処遇を決めかねている。そう言う演技を続けると、そう言う意思を見せていた。
……
コックピットの切り傷から、外の世界が見える。煌々と光る炎と、目の前に相対する赤いMSイージス…アスラン。
それが変形をして、ストライクを鷲掴みにするとそれは大爆発を起こして、自分の肉体を爆炎が覆っていく。
そのまま、炎に呑まれて自分自身が焼かれるように、全てが光に包まれる。
息苦しい、胸が焼けるようで肺が焼けるようで…、呻き藻掻きそして…。
「うっ……、くぅ…。」
目の前に広がるのは青い空、しかしその空は不自然なまでに青くそれが本物の空でない事に彼は直ぐに気が付いた。
自分が今どこで何をしているのか、全くわからないものの現状を把握しようと身体に力を入れると、激痛が走った。
「くっ…、ああぁ…。」
起き上がらない身体に対して、目は動くようだと周囲を少し見ると、すぐ近くに人が座っている事に彼は気が付いた。
ピンク色の髪に、特徴的な髪飾り。
つい2週間ほど前に、プラントに帰っていった筈の人物がうつらうつらとしながら、そこにいた。
「ラ…クス、うっ!…。」
「あ…、はっ!私としたことが、少し居眠りを……キラ…様…?!」
声に反応したのか、ゆっくりと瞼を開くと手で目をクシクシとしながら、自分が寝てしまったことを悔いながら、キラの方を見てビックリと驚愕した。
「キラ様!私がおわかりになられますか!ラクス…、ラクス・クラインですわ!」
「う…ん…。わかるよ。」
ゆっくりとだが、確実に返答するとそれに安堵したのかラクスは胸を撫で下ろしながら、ホッと一息つくと椅子に座り直した。
「ここは…?」
「ここは、プラントの私のお家ですわ…。どうしてここにいるのか気になられるかと思いますが、詳しくは」
「私が話しましょう。」
キラの目の前に現れたもう一人の人物、見知らぬ人物でありながら目を瞑りその男が盲目である事が、キラにはなんとなくわかった。
「はじめまして、私はマルキオというものです。所謂宗教家ではありますが、君をここまで運んできた張本人にでもあります。」
宗教家、そんな者自分に一体何のようであるのか?自分にいったい何の関係があるのか、キラにはあまりにもわからないことであったが、ただ一つだけわかったことは、彼が自分の生命の恩人であるという事であった。
「感謝はいりませんよ、直接君を助けたのは別の人物ですから。私はただ、便宜を図っただけです。」
「どうして……、僕を助けたんですか…。」
胸中に巣食う様々な疑問が現れるが、その中で最もわかりやすいものを、彼は無作為に拾い出すとそれを口にこぼした。
「私は、君のご両親と面識があってね…。」
「それ…だけですか…?」
勿論そんな事はないと、そういう顔をしているマルキオにキラは顔をしかめた。
それと共に、ラクスはこのマルキオというシーゲルに紹介された男に疑念を打ち明けた。
「貴方は…、私達二人がseedを持つ者であると、私にはそうおっしゃいました。」
「ええ、勿論その事も含めて助けた理由でもあります。ですが、私はそれを見込んで頼みたいことが貴方がたにあるのです。」
高々子供2人に大の大人が、一体何を頼もうというのか?果たしてそれは、シーゲルに対する言葉では足りないのか?
そんな疑問が頭に現れていく。
「この戦争の発端、あの血のバレンタインに何があったのかを…お話します。」
この戦争の火種、転がっていた導火線に火をつけた出来事。
それは一体何なのか、この戦争の原因は一体何なのかどうしてこの男が知っているのか。
「この戦争は、私の身内が仕組んだ事なのです。
私は、この戦争の始まりを止めることが出来ませんでした。懺悔する相手が違うと、そう言うでしょうが生憎私は目が見えないのです。ですから、seedを持つ者である貴方がたに力を借りたいとそう思った次第です。」
「どうして僕が、そんな尻拭いをしなくちゃならないんですか…!僕は殺し合いなんてしたくない!ただ、友達を護りたかっただけなのに、あなた達のせいで!!」
「多くの血が流れました、それを止められなかったのでしょう?連合プラント双方に大きなパイプを持っている貴方が止められなくて、何故私達がそれを止められると思うのですか!」
珍しくも、ラクスは声を荒げた。
身勝手な大人の言い分に、キラを巻き込みたくなかったのだ。
それをマルキオは知っていて敢えてそう言っている。悪気もあれば、それを悔やんでもいるだが彼にもそうそう余裕は無いのだ。
「私達大人は、もはや争いを止める手段を選ぶ事が出来ない段階となっています。
いま、私はプラントの評議会にオルバーニ氏の和平交渉文を送りましたが、互いに譲歩し合う事の出来ない彼等はそれを受け入れる事は無いでしょう。
そして、戦争はより深い場所に到達する。直接介入する力がなければ、もはや止められるものでもない。
ですから…。」
そう言って、マルキオは手にしていた杖を降ろし頭を深々と下げる。
「私に貴方がたのお力をお貸しいただきたい。言っている事が無茶なことであるのは承知の上です。」
それを見てキラは悩む、こんなにも良い服を着ている人がこんなにも頭を下げるのならばそれは、力を貸したほうがいいのではないかと…。
だが、ラクスはそれを聞いてなおキラが戦うことを認めたくはなかった。
「キラ様は傷ついているのです。それは、本当にできないものなのですか?」
マルキオは隠していることを全て、話すような事はしない。だが、その開かない双眼を無理矢理に開いてでも、この二人の力を借りなければならなかった。
マルキオは知っている。
この二人の生まれを、操作された運命の子供たちと、だからこそ力を貸してほしいのだと。
仕組まれた運命に抗おうとする彼等のことを哀れみながら、その仕組まれた運命に呪詛の念を抱きながら。
己の信じる道を、彼等に託そうとしながら。
……
北アイルランド・ベルファストの軍港に航空機が現れると、それを見守る群衆たちが我先にとそれへと向かっていく。
その姿は整然としつつも、貴賓に溢れていて何より精鋭と言っていいほどの動きをしていた。
航空機のエンジン音が下がると共に、そんな彼等が目標としている人物がそこに降り立つと、彼等は口々にこういった。
「お嬢様、ご無事で何よりです。」
と。
件のお嬢様の姿は、連合軍の女性用軍服に身を包み中尉の階級章をつけた赤髪の少女。
その名は、
フレイ・アルスター
アルスター伯爵家の令嬢であり、北アイルランド領を正式に統治するものの証。
アルスター伯爵家、最後の生き残りである。彼女の血族は、戦争が始まって直ぐに、前線へと赴きその尽くが死んだ。
「皆、ごめんなさい心配かけて。」
「いえいえ、そちらの方は?」
軍港であるくせに、そこに置かれているのは立派なベントレー・ステートリムジンである。
それだけで、彼女が只者でないことは明らかだ。
「私の付き人…、まあ護衛みたいなものよ。それよりも、私を待っている人がいるんじゃない?」
「はい…、商人の男がおります。
お嬢様の証書がなければ、あのような男を神聖な場に入れる等…。」
彼等は商人を毛嫌いしていた。金を稼ぐ行為は汚いことであり、それは商人や農民のやる事であって、領地を持つ貴族がやることでは無い。
そんな事をやっても、手が汚れるだけである。
最も、この時代何かしらの事業をやらなければ家系も血統もどうしようもないのだから、彼等も少しはそれをやらざるをえないのだが。
「案内して頂戴、私あんまり詳しくないから。」
「はい、喜んで。」
そう言って車に乗り込むと、護衛のカタリナ含め彼女達はアルスター邸へとその足を進めた。
「どう?緊張する?」
「はい、いいえ。緊張よりも、私をみる目が厳しい事に彼等の考えが分かります。」
アルスター家の者たちは、すべからくコーディネイターを哀れんでいる。その不完全な生命の不安定さを知ってなお、本来の先に進んだ人類という、御伽噺を信ずるが故に。
暫くすると、邸宅に着く。
そこは荘厳というほどではないものの、広く庭のある立派な邸宅である。
内部に行けば、玄関ホールには一段と大きな絵画である貴族の集合絵画。
アルスターの血族である者達、そこには一際金髪の男も描かれていた。
フレイは、そこに違和感を覚えたが少し考えるとそれを、先導する執事に聞いた。
「ねぇ、アレって誰かわかる?パパのすぐ近くに座っている、パパより少し歳をいっている人。」
「アレは、アル・ダ・フラガ様です。
アルスター分家の一つ、お父様の5つほど上の従兄弟に当たるお方です。ムウ・ラ・フラガ様の、お父上でもあらせられます。」
それを聞いてフレイは驚くこともなかったが、世間の狭さというものに何処か変な感じがした。
『凄いな、こんなにも色濃く…。だが、あからさまだな』
『何が?』
頭の中で声が響くも、その声が彼女の疑問に答えることはなかった。
何故ならば
「いや〜、お待ちしておりましたよ。フレイ・アルスターさん。」
目の前に、ムルタ・アズラエルがいたのだから。
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