機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第58話

 

戦争というものは非情なものである。

敵を欺く為ならば、味方すら欺いて見せるのが戦争という非日常における重要な戦術の一つであろう。

 

そしてそれは、捨て石とされる基地等にも当て嵌められるものであり、重要拠点を囮に敵を葬ろうとする事など、ありふれた戦術でもある。

 

さて、アラスカには連合軍本部であるJOSH-Aが置かれているが、何故アラスカにその様な場所が置かれているのか?

防空能力を強化しやすいからか?冬季の艦艇による攻撃が非常に行い辛いからか?

 

だが、最も重要な場所はそこが僻地であるからと言うのが、一番の理由だろう。

アラスカと言う場所は、山岳とツンドラ平原、氷原に覆われた大地である。

農業に適さず、工業にも適さない。

 

石油製造と言う点において、埋蔵石油における量のみがこの地を潤す為の財源であろう。

だが、再構築戦争より石油類の需要は低迷する一方であった。

それを補う為に、大西洋連邦が前線司令部としてアラスカの景気対策の意味合いを着けて作られた。

 

さて、そんな基地が必要だろうか?

補給線が途切れてしまえば、陸の孤島になってしまうようなそんな基地が必要だろうか?

宇宙に行けるようなマスドライバーの的地でもなければ、農業を行えるような土地でもない、工業を行う事すら難度が高く動物すら住むのが難しいそこが。

 

答えは、否だ。

 

オペレーションスピットブレイク、それをザフトが発動する時、当初予定されていた攻撃目標はマスドライバーを擁するパナマであった。

しかし、蓋を開けてみればその攻撃目標はアラスカであったのだ。

 

ザフトは戦略重要目標としてアラスカを攻撃するのだが、それは連合。ひいては大西洋連邦にとってさほど重要ではない、所詮は戦術拠点であるなどと、地球に住んでいない彼等にとってはそれが分かるほど、地球上の気候というものは理解が容易いものではない。

 

彼等はまんまと罠に嵌まったのだ。

自爆をするアラスカに、地上戦力の過半を投入したその攻略部隊は自爆に巻き込まれ、其れ等は文字通り消滅した。

 

更に付け加えるならば、この時連合はと言うよりかは大西洋連邦は、不穏分子や用済みになった人材をこの時に乗じて処分しようとした。 

 

アラスカ防衛司令部付きの、艦隊司令官に任命されたのは宇宙で艦隊に大打撃を受けたハルバートン准将であり、基地司令部からその指揮をしていた。所謂栄転に見せかけた左遷である。

勿論、そんな人物に基地が自爆することなど知らせる者など、誰もいない。

 

防衛にあたっていた者達は、その地上軍の尽くが消滅する。

そして、それを知る者たちは綺麗さっぱり死ぬ筈だった、だったのだ。

 

マリュー・ラミアス率いるAAはその防衛についていた中で、キラ・ヤマト駆るフリーダムの援護と、基地が自爆するという事を受けて辛くもそこから脱出し、見事にオーブへの道を進んでいた。

 

 

一方でアラスカがそんな事になっていることなど知らずに、フレイはベルファスト周辺の射爆場にて、とある任務に着くためにMSの運用データを取っていた。

 

「アラスカがザフトの攻撃を受けた?」

 

フレイがアラスカの事を知るのはそんなときだった。

対外的にはザフトの使用した新兵器によって、基地が消滅した事になっているのだが、事実が彼女のもとに流れてくる事は無かった。

 

フレイにしてみれば、また心配事が増えている事だろう。

何せ、AAには彼女の友人達が未だに乗っていたはずであり、それが彼女なりの気掛かりとなっていた。

そしてもし、彼女の友人が死んでいたならばその事態を引き起こした奴等を、皆殺しにしてやると固く決意した。

 

彼女の存在は、連合の中でもトップシークレットのようなものである。本人の承認によって、プロパガンダにおいて彼女のその素顔を見せることは公然のものとなり、今や彼女は連合内でもかなりの有名人である。

ただし、プロパガンダを真に受ける人間等そうはいないという事実を除けば。

 

「あの人達は?」

 

「我々の部隊に配属される人達のようです。」

 

彼女の目の前に現れた面々は、正直に言えば人相が良いとは言い難い者達だった。

何処か一癖も二癖もあるような、そんな彼等はフレイを見てこう思った。

 

《こんなやつが俺達の上司かよ》

 

という感じだ。

彼等がいったいどういう連中であるのかと言えば、所謂戦争犯罪人達である。

その中でも所謂懲罰部隊と呼ばれる、嘗てはエリート等に慣れるはずだった者たち。

 

そんな連中を下に置くのだから、フレイにとってはあまり良い環境ではない。

彼等がいったいどんな経歴があるにせよ、捨て駒である事は確定しているのだ。

 

「貴様等座れ、彼女は貴様等のような豚以下の畜生とは違い、我等連合の反抗の象徴だ。

だが、貴様等に説明した通り彼女についてくることが出来るようなパイロットは、実際前線にいるのだ。

だからこそ、懲罰兵の中でも選りすぐりの諸君等が選ばれた。」

 

フレイ達の目の前でそう言うのは、所謂番犬と言われる彼等の統率者だ。

そんな連中であるが、腕は確かなものである。はみ出し物は、精神的な部分で健常者とはまるで違うのだが、フレイにとっては寧ろそう言うのは扱いやすい相手でもあった。

 

直ぐにパイロット訓練が開始された。

フレイとAA内に残されていたストライクの戦闘データから抽出された動作から、最適なOSが組み上げられ機体がパイロットの動きを補助する事により、その機体の動きはザフトのそれと遜色無いものであった。

 

そうこうしている内に月日は流れると、今度はパナマが襲撃される。

それこそ、連合はこの攻撃を予想していたがザフトの新兵器であるグングニールという電磁パルス兵器によって、迎撃システムを完全に破壊されると言う、衝撃的な攻撃によって為すすべ無く陥落する程に。

 

コレが、アラスカで起きた事態を信憑性を強くするに充分過ぎる効力を持たせた。

おかげか、大西洋連邦とユーラシア、東アジアの関係はある程度修復される程であった。

 

そして、そのパナマで起こったある出来事によって地球上に存在する国家内で、ある世論が過半をしめる事態が巻き起こった。

それは、降伏した部隊に対する無差別な虐殺である。

ザフトは投降した連合兵に対して、白旗を振り上げた者たちに対して虐殺を行ったのだ。

 

コレが中立国にどの様な結果をもたらすのか、考えるのも容易い。一気に連合側へと中立国は靡いた。

それも必然であるが。

 

それと同時に、パナマ陥落を受けて連合内ではとある作戦を前倒しするという物が採択される。

それはビクトリア宇宙港の奪還と、中立国でありながら唯一のマスドライバー保有国であるオーブを連合側へと据えること。

 

それは、勿論フレイの耳にも入ってきた。

そして彼女はそれに対して、大きく目を見開き驚愕した。

同時に、苦虫を噛み潰したような顔をしてアズラエルへとホットラインを繋いだ。

 

「ちょっとどういう事よ!どうして、なんでオーブを攻撃するのよ!中立国を攻撃するなんて、あまりにも横暴だわ!」

 

「しょうがないでしょ?僕達だってこんな非効率な事はやりたくないんですよ、ですが残念な事に今マスドライバーを稼働状態で運用出来る国はオーブと、敵の勢力圏にあるビクトリアくらいなんです。わかりますよね?」

 

そう言うアズラエルの声には、感情のような物は含まれていなかった。ただ淡々と言う彼のそれは、まさに商売人のそれであり利益を追求するのは当たり前の事だった。

 

「それくらいわかるわ、けれどいくら逼迫してるって言ったってオーブは抵抗するわよ!あの国がどういう教育してるか、アンタもわかってないわけ無いでしょ?!」

 

「そうは言ってもですね〜、僕達も形振り構っていられないんですよ。わかりますよね、現状を。」

 

だからどうなんだと言う話でもあるが、アズラエルの言っている事も尤もだ。

寧ろこの時点で中立である時点で、攻めてくれと言っているように見えなくもない。勿論それは暴論ではあるが。

 

「それに、彼等は無断で我々の技術を盗用した疑いもあるんですよ、懲罰を与えないという訳にはいかないですよね?」

 

「それでも、賠償金でなんとかなるでしょ!」

 

フレイはオーブの攻撃には反対だ。頑なにその意見は曲げたくない、だが残念な事に彼女は家柄がどうあれ高々中尉である。

軍事的決定権は所持していない、もし彼女にその力があれば今回のこの事件は起こりようもないだろう。

寧ろ、彼女の父親が生きていればこの事態が起こる間もなく、対処出来る力があった。

いまは、その父親がいないのを悔いるばかりだ。

 

「わかったら邪魔をしないでくださいね、フレイ・アルスター中尉(・・)殿。」

 

そう言って通話が切れると、フレイは力なくその場に蹲った。自分のあまりの弱さに、膝を着けたのだ。

だからこそ、彼女はこの時決意する。

何があったとしても、自分は上の立場の人間にならなければならない。

 

自分のような人間を生み出さないために、誰かがその業を背負い導かなければ、この世界の人々は戦争を辞めないかも知れない。

ただ合理だけでなく、私利私欲だけでなく。憎しみですら殺し合うような、そんなこの世界を誰かが見なければならない。

 

ただ、自分はその力を持っていない。ならば、どうすれば良いか?まずは実績作りから始めるのがベストであり、この戦争の元凶の一つであるブルーコスモスの中での発言権を、そしてブルーコスモスの支持母体を見つけ出し、それの実権を掴まなければならない。  

 

地球側はそれで止められる。

 

『だが、一人の人間に出来ることなど限られている。全てを背負おう等という考えは、自らの破滅を意味する事を君は知らない。

慌てず性急に物事を見るのではなく、俯瞰的に見るんだ。まだ、慌てるような段階に来てはいない。』

 

焦る必要はないと、そう響き渡る声を彼女は聞くと改めて今自分に出来ることをまとめ始めた。

目下のところ、自分に与えられている任務を遂行するために、彼女は全力を尽くす事を決意する。

よって…

 

「ほらっ!次!何モタモタしてんのよ!!そんなんじゃ直ぐにでも撃墜されるわよ!!」

 

彼女の受け持つ部下たちを、手懐けるところから始めようとしていた。

 

 

……

 

AAがオーブに到着すると、直ぐにオーブは彼等を受け入れた。何よりも、元連合の技術が合法的に入手することが出来るだけに、それを歓迎するのは寧ろ当たり前だった。

 

また、キラはフリーダムを整備する者を信頼している者達に限定し、それ以外の者達には一層の警戒をしながら、自らもそれに参加した。

 

そんな中にある、少しの間の自由時間は心と身体を回復する為には必要な時間だった。

 

「フレイとナタルさんは、降りたんですね。」

 

「ええそうよ、二人共無事でいれば良いんですけれど。特に、ナタルは当日に移動だったから…。」

 

キラはラミアスとそのような会話をすると、今はこの場にいないの二人のことを心配していた。

この艦を護っていただけに、その人達がいないのが気がかりだったのはそうであるが、二人は利用されるのではないかという強い懸念があったからだ。

 

プラントでのラクスの立ち位置を、フレイが強要される可能性だってある。

現に連合のプロパガンダには、フレイの姿がチラホラあるのだ。心配しないわけがない。

 

ナタルに関しても、AAの有用性を示した者の内制御しやすい者を降ろした可能性だってあるのだと、この時のキラは思っていた。

要するに、やはり利用されるのだと。

 

「もし…二人が敵として現れたら…戦ってくれるかしら。」

 

「戦います、でも僕なりのやり方でやらせてください。二人共話せばわかる人たちだと思うので。」

 

そう言ってキラはその場を離れると、フリーダムの顔を見上げる。与えられた翼を、自分の思うように使えるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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