機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第59話

 

フリーダム強奪によって追われる立場となったシーゲル・クライン率いるクライン派は、逮捕されるか射殺と言う運命が待っていた。

そんな事になる前にと、其々がプラント内部で潜伏活動をする中で、食料生産のために取り壊されるのを待つばかりとなっていた劇場に、シーゲル、ラクス、アスランの姿があった。

 

「まさかな、ラクスの言う通り君がここに訪ねてくるとは思いもしなかったな。」

 

「父から聞き映像でも見ました。本当に、スパイを手引したのですか!」

 

アスランは二人に銃を向けそう問いた。

目の前にいるシーゲルと言う男に、アスランは尊敬心を抱いていた。父とは違う道を行くが、それでも父を抑えることの出来る唯一の人であるということを、自分では力不足であることを理解していたからこそ、それを求めた。

 

「スパイではないよ、アスラン君。彼は…」

 

「キラです。キラ・ヤマト、貴方が撃った人物です。」

 

シーゲルの言葉を遮るようにラクスはアスランにそう言い放つ。それを聞いて、アスランに動揺が広がる。不可解な事実、受け入れ難い内容にアスランの脳は軽くパニック状態であった。

 

「嘘だ……、嘘だ!キラは、アイツは!」

 

自分が撃った筈だった。多くの仲間を殺した親友を、この手で殺した筈だったなのに何故彼等はそんな嘘を付くのか。

 

「親友というものは大切にしなければならない。それは、仲間というものよりも重く、たとえ袂を分かつともそれを見守らなければならない。

パトリックの暴走を止めるには、私はこれしか思いつく事が出来なかった。

職を辞し、力の無くなった私の取れる最後の方法だ。」

 

父であるパトリックが言う勝利という、漠然とした目標を前にしてアスランは疑念を抱いていた。

このまま戦っていて、果たして本当に戦争は終わるのかと。

 

「私では話辛かろう、君が何故ここに来たのか。娘と二人で話すが良いさ。」

 

そう言うとシーゲルは舞台袖へと姿を消す。

 

残されたのは、ラクスとアスランだけだった。

それを横目にシーゲルは袖にいる同胞達とともに、アスランをつけてきた者達を警戒する。

伊達に黄道同盟を率いていたわけではない、潜伏という行為には彼は非常に慣れている。

 

「歳は取りたくないものだな、こんな事すら重荷に感じるとは…。」

 

そう言うと、ゆっくりと差し出された拳銃を手に取り、左脇のホルスターに収納する。

 

「数名はここに残れ、残りは私と共に移動を開始する。私が動けば追っ手も分散するだろう。そうすれば少しでもラクスの逃げる時間を稼ぐことが出来る。」

 

彼は後戻り出来ない、綱渡りを始めた。

 

 

……

 

 

大地が耕され、その色は重金属の為にどす黒く燻っている。島を取り囲むように連合軍太平洋艦隊が展開し、そこからは雨霰の如きミサイルやロケットが降り注ぐ。

そんな砲火の援護を受けて、連合のMSの大部隊はオーブへと侵攻を行っていた。

 

それを懸命に押し込めようと、フリーダムはフルバーストでもって数を減らすが、如何せん数が桁違いである。

戦術的に対多数戦用の機体であるフリーダムの全力で対応しているが、その処理能力を上回る攻撃には為す術ない。

フリーダムが待ち構える空域以外では、その弾幕に押されるように次々と迎撃の火が消えていた。

 

「あっちには皆が…、でも…!」

 

フリーダムのパイロットであるキラは、焦りを覚えていた。

そしてそんな彼を、連合の未確認機が狙いを定めた事をこの時の彼は知る由もなかった。

 

同じ頃、別の島でもまた同様の光景が広がっていた。

地球軍の物量は、オーブの数十倍と言えるほどの量でありオーブ海軍は既に制海権を失っている。

初戦の迎撃戦闘で、その戦闘能力を失った艦艇達はその船体を使った防波堤のように、少しでも施設への被弾を少なくしようと岸壁に接岸されていた。

 

その周囲では、連合のMSでもなければストライクでもない。緋色の装甲色をした軽快なMS、M1アストレイが着弾を避けながらも、迎撃戦闘を行っていた。

 

その近くでは、全てのストライカーパックを身に着けた、パーフェクトストライクがその鈍重な肉体を動かしながら、ランチャーのアグニを構え、降り注ぐミサイルを一網打尽にする。

その横で、もう1機M1がその撃ちもらしを撃ち落としながら周囲の状況をつぶさに把握していた。

 

「おい!トール無理すんじゃねぇぞ、ストライクみたいに装甲が厚い訳じゃねぇんだからな。」

 

「フラガ少佐こそ、そんな動き辛そうな機体で直ぐにバッテリーでも消耗しないようにしてくださいよ!」

 

軽口を叩きあう二人は、恐らくオーブの中で尤も実戦経験のあるパイロットだろう。

確かにMSの経験は少ないかもしれないが、戦闘にかかるその恐怖というものを克服する事には一日の長があった。

 

それでも、トールにとってこの光景はあまりにも嫌なものだった。いつだかの、明けの砂漠の人間もきっとこんな気持ちであったのだろうか?自分の心に響くこの景色をこの目に焼き付ける。

それが、彼にとって護るべき人を護るためのその心を強くするだろう。

 

「凄い、まるで火山の…噴火みたいだ。」

 

「見たことないのに、そんなものをわかるのか?」

 

またも軽口である。

だが、そうでもしていないとやっていられないような、そんな環境だ。少しの被弾も命取りに為りかねない。

そんな環境だからこそ、張り詰めた糸を程々に緩めるのが大切なのだろう。

 

「砲撃が止んだらMSが来る、その前に補給とかしておけよ!」

 

「了解しました!一時補給に後退します!」

 

トールのM1はライフルを撃ちまくりながらバーニアを吹かすと、相手に背を向けないように後退を始める。

それをみた他のM1はその穴を埋めるように動くと、迎撃を継続していく。

 

数時間に渡る攻撃によって、M1やストライクのバッテリーが長時間の戦闘に耐えられない故に、ローテーションを組んでの後退と前進を繰り返す姿は一つの生き物のようであった。

それがオーブ軍、開戦からこっち一度たりとも正規の実戦を経験せず、正規軍を保ち続けてきた軍の練度。

だが、どんなに個人が優れていようとも郡はそれを凌駕することは歴史が証明している。

 

撃ち漏らした其れ等は、次々と市街地に着弾し逃げ遅れた人々を焼いていく。

オーブには敵を攻撃する手段が乏しい為に、次第にジリ貧になって行く事考えるに難くなく。

戦闘は1日にして佳境に差し掛かっていた。

 

そして、最悪の事態というものは訪れる。

キラの駆るフリーダムを執拗に攻撃する者達が現れるのだ。

その機体は、所謂第二期gat-xのもの。

カラミティ、フォビドゥン、レイダーだ。

空を自由自在に駆けるレイダーがフリーダムを翻弄し、カラミティがその隙を突いて砲撃を、フォビドゥンが盾として攻撃を受ける。

 

それはまさにパーティーと言える編成。

息がピッタリに噛み合っているという訳では無いが、それでもキラは焦りに焦っていた。

フリーダムですらこれ程までに押されるのだ、いったいコレが他のところに向かえばどうなってしまうのだろうか?

 

そんな窮地に陥っている己を護る者は誰一人としていない、この場には嘗て背中を預けた者、フレイはいないのだ。

一人で戦うしかない、そんな状況に苛立つがそこへ現れたるは、赤い機体。

それも、キラの身に覚えのあるイージスの色を纏ったその機体が、現れる。

 

それはキラと息を通わせ、押されていた戦況を覆す。

3対2数の上では負けているが、それでも先ほどとは比べものにならないほどに安定していた。

そして、その機体に誰が乗っているのかキラには察せられた。

そう、アスランであった。

 

 

……

 

 

ジブラルタルは曇りだった。

6月も半ばとなり、珍しくも雨雲が周囲一帯を覆っていると、その光景を見ていた者達はこの場の天候の違和感に気が付くこともなかった。

 

統計学上、ジブラルタルの6月は乾季の部類になるものだ。降水確率も曇り率も、この時期は殆ど存在しない程に快晴となる気候なのだが、この地に住まう人々の中でも先祖代々に住まう者達だけがこの日の空に違和感を持った。

 

どうしてこんな日よりなのに、曇っているのだろうか?大西洋と地中海に挟まれて、あまりに雲が出来やすい気候ではないのにと。

 

そして、ザフトの兵士はのんびりとしていた。

彼等はオペレーションスピットブレイクによって、過半の戦力をアラスカですり潰し、パナマにもその戦力を供給した。攻めに移るには、現行の戦力ではままならない程に消耗し防御線を構築中であった。

 

諜報と言う部門でも、地球軍の動きが活発化し現在進行系でオーブは連合の毒牙にかかり戦闘中という話を聞きながらも、その連合の潜在的な能力の高さに下を巻いているのは、上だけである。

だが、1兵士にとって地球軍は未だに過小されるものであり、ひ弱な相手であるという、そんな感覚があった。

 

地球軍は、オーブに対して大規模な戦闘を行っていて、自分達に対する攻勢を行えるほどの余力は無い。

その間に防備を固めてしまおうという算段を建てているが、如何せん物資も現地調達に頼らざる終えない。

 

何せ機体が大幅に減少したのだ。何処に来るかもわからない敵を相手に、防御をどう固めようかと言うのは思考の内であり、未だにその選択は振られていなかった。

 

ぼ〜っと空を見上げていた歩哨は、ふと何かが空から降ってきているようなそんな気がして、目を凝らす。

するとどうだろうか、その米粒は段々と大きくなりその姿が露わになると、歩哨は顔を強張らせ。

直ぐに連絡をしようとそう思ったところで、身体が宙に浮いている事を感じた。

 

視界が暗転する中見たものは、双眼の機体が実弾兵装を両手に持ち、辺り一面に撃ちまくっている光景であった。

 

 

時は少し遡り、これより2日程前の話。

フレイ率いる所謂懲罰部隊の面々は、珍しくもブリーフィングルームへと集合させられていた。

正式に戦闘を開始するという現れなのだが、如何せん面子が面子である。

これまでこの部隊が、いったい何のためにMSの操縦を基礎から叩き込まれていたのか、これではっきりするのだ。

 

「総員傾注、面だけは一端になったな。貴様等は一級の札付きであるが、今回の任務が成功した暁には貴様等の身分は正式に連合の下に管理される事となる。

フレイ・アルスター中尉、貴君はそれまでの間我慢してほしい。」

 

そう言うと、それぞれがその内容を理解しただろうと思うとすかさず、作戦内容を通達し始めた。

 

「これより2日後、諸君らはジブラルタル基地への奇襲作戦へと身を投じる事となる。

知っての通り、ジブラルタルはドサクサに紛れたアフリカ共同体の手引によって、現在北アフリカ及びヨーロッパ戦線においてのザフトの一大拠点となっている。」

 

地図を指し示し、その場所が提示される。

 

「今回諸君等に行ってもらうのは所謂、陽動を主とした作戦である。

現在連合はユーラシアを中心として速やかに連合は、南アフリカにあるマスドライバービクトリア港を急襲する。

 

その前段階として、敵の補給拠点であり最重要拠点でもあるジブラルタルを叩き、敵の戦力のジブラルタルへの誘引を行う。ここまで質問のあるものはいるか?」

 

そう聞いて手を挙げる者はいない、だいたいどんなものなのか理解しているのだろう。懲罰兵とてパイロットをやっていた連中である。頭はそれなりに良い。

 

「まず、弾道ミサイルによって敵地上空に雨雲を展開する。

これはコロイド粒子を使用した偽装の意味合いも有るが、空気中の水分を吸着すると言う役割もある。

そして、次段としてMSを搭載した大型輸送機により成層圏近傍より、空挺降下を行う。

着地の後、ジブラルタル内部の防衛戦を内側より突破し、大西洋上に存在する母艦まで帰投する。

 

また、戦闘は極力敵施設の破壊にとどめ適宜、MSを破壊せよ。

敵はアラスカでの失態により浮足立っている。攻めるのは今しかない。」

 

その言葉が終わると、質問を聞こうとした瞬間にフレイは手を挙げた。

 

「なんだ。」

 

「降下のタイミングは、私達に一任されるんですか?」

 

上官に対する言い回しは悪いが、その問は実際に必要なものであろう。

 

「戦闘開始前に、詳細説明されると思うが諸君らの方で良い方法があるというならば、その意見も反映しないでもない。」

 

「じゃあ、こう言うのはどうですか?」

 

素人の意見を軍人が聞くことはあまり無い、それは戦士としてではなくプロとしてそんなものを当てに出来ないからだ。

だが、目の前にいる少女は誰よりもMSに詳しい、それは誰よりも多くの敵を葬ってきたものであるからだ。

 

 

そして、時は戻りザフトの防衛司令部はガラガラと言う音を立て崩れ落ちる。頭上から降りしきる弾丸の雨。着弾と同時に爆発していく建物達。

羽を生やしたMS

【挿絵表示】

は、地に着く瞬間にスラスターを蒸し落下エネルギーを直進エネルギーへと転換し、火花を散らしながら路面へと着地する。

 

盾を保持した左腕と実弾を放つ3吋突撃銃(ダブルドラムマガジン式)を真横に伸ばし、それぞれを別々の目標へとバラ撒く。

肩に保持されていた16連ミサイルポッドから様々な目標へと発せられ、全てを出し切ると同時にパージされる。

 

 

防御戦闘を開始する前に、司令部中枢は瞬く間に瓦礫の山となっていた。

そして、その数刻後にはパラシュートによりふわりと合計8機のMSがそこに降り立つ。

 

その手に、腰に肩に実弾兵装がコレでもかと満載されて。

 

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

着地後の撃ち方は、ACfaのCMのホワイト・グリントのような感じ。
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