機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第65話

広大な宇宙空間、アステロイドベルトという場所すら映像等とは程遠く、その空間一つ一つはスカスカであり何も無い…。

そして、それを過ぎた先にあるものは何かと言われれば、巨大なガス惑星。木星がある。

 

嘗て人々が最高神の名を与えた惑星であるそれは、人々にとってある種の到達点のような場所であった。

巨大故に、近づけば最後その引力圏に捕まり引きずられ、最後は分厚い大気に墜落する。

 

それ程までに危険な場所に行くということは一種の賭けのようなものであり、同時に地球外生命体の可能性を最も大きく作り出す可能性を秘めた場所であった。

 

木星の引力圏によってその軌道上に存在する小惑星は、太陽系外から飛来した物もあり、それを確認するには最も近い場所であったが故に、宇宙探査という物の中で一際目標となっていた場所であった。

 

それは建前であるとも知らずに…。

 

そして、ジョージ・グレン率いる調査隊がEvidence01を発見した事で有名であろうその場所に、ある一つの目標があった。

 

「ジョージ…、コレはなんだと思う?」

 

巨大な木星を目の前にしながら、その近傍の小惑星を探索する彼等は偶然か必然か其れを見つけた。

 

「なんだろうな…、探査機…かな?ここ等一帯は旧世紀に数多くの探査機が送られた場所だ、こんな奴もあってもおかしくはないだろうな…、持って帰るか…。」

 

「持って帰るのか!だが、アレでもう重量はいっぱいいっぱいだぞ?」

 

探査船での船外作業をしながら、二人は話し合う。目の前のコレを持って帰るとして、どうやるのだろうかと。

 

「それじゃあ、一部でも切り出してだな里帰りさせてみたいじゃないか。」

 

小惑星と一体化したそれは、さながら蕩けていた。

激突の衝撃によって生じた熱によるものか、それの原型は留めていなかったが部品だけならばと何処かしらの善意での発言であった。

その部品が僅かに発光している事など、この時の彼等が気が付く事など無かったのだ。

 

 

……

 

地球周回軌道上、L4宙域にポツンと小さく浮かぶ施設があった。近付けばその巨大さがわかるであろうが、宇宙空間という広い空間の中ではそんなもの矮小に過ぎない。

そこには2隻の軍艦が停泊しており、身を寄せ合うようにしながら時期を見ていた。

 

「地球連合のプロパガンダ見ました?」

 

AAのレクリエーションルームにおいて、ラミアスは隣りに同じくコーヒーを飲んでいたフラガにそう聞いた。

彼女達が逃げ延びている間に、地球上では事態が急変していたからだ。

 

「見たよ、アレは確実にプラントに喧嘩を売ってるんだろうな。ま、どっちにしろ事実だろうから使い方としては上手いだろうぜ?」

 

「彼女も上手く利用されていたと思います…。」

 

2人が目にしたそれには、エンブレムが描かれた1機のMSが大々的に映し出された、陸上戦の一幕。

ザフトのMSをいとも簡単に屠って行く姿は当に鬼神の如き活躍。周囲のそれとは一線を画すその戦闘技量は、連合兵士を勇気付けるだろう。

 

「正直、あそこまで化けるとは思ってもいなかったさ、それにこの様子だとあの娘は、本気で殺りに来るだろうさ。」

 

「交渉をしても無駄だと、そう言うの?」

 

ラミアスは信じられないと、そういう風にフラガに聞き返した。ムウ・ラ・フラガの勘は、この場にいる誰よりも優れている。そして、その彼が言うのだから間違いは無いと、そう思う自分もいた。

 

「覚悟が決まっちまってるのさ、だから戦場でこんなに動けて尚且つ、殺しに躊躇が無い。ま、顔を知らなからって事もあるだろうけどな。

まあ、最初に投降を呼びかけては来るとは思うぜ?けど、その後は…。」

 

確実に戦闘が起こるということだ。

そして、フラガが一番に危惧している事とすれば、キラの戦闘意欲と言ったところだろうか。

フレイは確実に殺しに来る、対してキラは殺しを嫌がり精確に武装のみを攻撃しようとするだろう。

その場合、果たしてキラに勝ち目が有るのかと。

 

「俺だって出来る限りは援護するさ、けどな場数が違うからなぁ。」

 

率直な話、MS戦と言うものに対してフラガはフレイやキラよりも経験が少ない。それだけに、戦闘においてそれが足枷になる事は彼は承知していた。

 

「戦い方だけを見れば、まんまクルーゼの奴と同じ様なもんだしな。」

 

その言葉にどれだけの思いがあったのだろうか、彼にとっての彼女は最悪の敵と同じであった。

 

……

 

「敵艦を発見した?」

 

ドミニオンの艦橋にて、ナタルはそう報告を受け取った。

それと同時にオブザーバーとしてドミニオンに乗船していたアズラエルは、その貪欲な目を薄っすら開き不敵に微笑んでいた。

 

「はい、L4宙域方面ですが輸送艦らしき物を発見したと、それの追跡後連絡機からの通信が途絶しました。」

 

連絡機というものは、所謂斥候の役割を果たす機体である。

と言うことは、それが消息を絶つという事は敵がその周囲に存在しているということであり、いなくなってもその役割を果たすことができるのだ。

 

「L4か…、だがあそこにはまともに機能するコロニー等、早々…」

 

「ありますよ?」

 

その話を聞いていたアズラエルが口火を切ると、その宙域に何があるのかと言う説明始めた。

 

「あそこには、放棄されたメンデルというコロニーが存在します。まあ、その昔バイオテロによって放棄され今は放射線によって滅菌されていますが、内部は生きているはずです。

潜伏するのなら、持って来いだと思いますよ?」

 

「……、何故その様な情報を知っているのですか?アズラエル理事、軍部ですらその様な情報は…。」

 

軍部、それに装備を割り当てるのは国の仕事。

しかし、その国に兵器を売りつけているのは誰であろう、この男の会社に他ならない。

民生品から軍需品まで、ありとあらゆる品目を取り揃えるアズラエルの息のかかる企業は多岐に渡る。

 

そして、その情報網は軍よりも手広いと言えた。

そんな事実に対して、ナタルという人物は苦虫を噛み潰した思いであった。

軍というものの私物化というものをこの目で見ると言う、なんとも皮肉な結末に嫌悪感は非常に強い。

 

「第3種戦闘配置、これより本艦は敵艦種AAに対する作戦行動を開始する。

各員、初の戦闘となるだろう今までの訓練を思い出し臨機応変に行動してもらいたい。」

 

ナタルはその思いを表に出さず矢継ぎ早に命令を下す。

それを自室で聞いていたフレイは、ナタルの焦りを敏感に感じ取ると同時に何が起こったのかと言うことを、いち早く知った。

 

「始まるのね…。」

 

その言葉とともに近くに置かれた写真立てには、AAクルーで撮影されたものが置かれている。

彼女は覚悟を決めようとしている。

 

『あまり気負いすぎるなよ、迷えば自分がやられる。』

 

『わかってる、けど…』

 

『君は優柔不断だな、まあ仕方のないものだが。私とて、親友をこの手に掛けた後は動揺したものだ。

君はどういう選択をするのかな?』

 

後押しをするのかそれとも、足を引っ張るのか彼女の脳裏にいる2人は同時に選択肢を彼女に提示していく。

それによって彼女は悩み苦しみ、即決を阻害する。

 

それでも、彼女は殺らねばならぬ。

彼女の後ろには、待っている人々がいる。

彼女がいなければ路頭に迷う者達がいる。

故に、その選択肢は自ずと一つに集約されて誤った選択すら突き通す強い意志を必要とした。

 

『良いんだな?』

 

『私は、フレイ。フレイ・アルスター、私が護らなくちゃならない人達はいっぱいいる、だから大きい方を取らなきゃならないの!』

 

そうした彼女の瞳には、迷いというものはなく只々覚悟を完了した一人のパイロットがそこにはいた。

だが、彼女は戦士ではない。言うなれば、気高きプライドを持った騎士だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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