機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第66話

 

 

L4中域、そこにポツンと浮かぶ1基の小型コロニーが存在する。昔からある、シリンダー型に少し特徴的な起動区画があるところから、昨今の設計ではなく寧ろ古いものだろう。

 

既に放棄されていたのだろうか、民間船の影も形もなく寧ろその周囲には岩塊が飛び交いその宙域が人の行き来の無さを物語っていた。

それだけに、そこにあるコロニーという人工物は異様な程に、目立っていた。

 

「コロニーメンデル港内に宇宙艦艇と思しき熱源確認、1基は熱紋からAAと推定されます。」

 

その周囲の岩塊の中には一隻の軍艦、ドミニオンが潜んでいた。

 

「本当にいるとはな…。」

 

ナタルは苦虫を噛み潰したような顔をすると、横に座るオブザーバーのアズラエルの方へと顔を向けた。

 

「どうやら、僕達の方が先に到着したみたいですね。しかし、本当に情報通りになって良かったですね。」

 

アズラエルが嬉しそうにそう言うと、ナタルは先刻聞いた言葉を思い出していた。

アズラエルがプラント側の所謂協力者から得た情報、それによればAAと共に合流した艦艇には、所謂〘フリーダム〙〘ジャスティス〙なるMSが存在している。

 

そして、それには核分裂反応を抑制するNJを無効化する装置によって核動力が使用されているということだった。

もし、それが本当であれば地球軍としては一大事であり、コレを逃すという手は無いと言う判断であった。

 

「これより作戦を開始します。アズラエル理事、私の判断によって先行させますがよろしいですね?」

 

ナタルはアズラエルに強めに言うと、彼が首を縦に振るのを確認した後にコンソールに手を伸ばした。

 

「アルスター中尉、聞いた通りだがこれより作戦を開始する。」

 

コンソール内では何かを確認するかのように、機体内部を弄るフレイが映し出されナタルの話を聞いているのか、ピタリと手を止めた。

 

「わかりました、先行して敵を炙り出せば良いんですよね?」

 

「そうだ、だがくれぐれも無理はするなよ。」

 

ナタルは珍しくも笑ってみせ、フレイを安心させようとする。

それに対して、アズラエルは横目で彼女等をみると、アズラエルの傍らによって来た白衣を着た者に一言二言言った後、艦橋を退室させた。

 

「ガンダム、カタパルトより発艦します!」

 

ドミニオンのカタパルトからMK2は勢い良く飛び出すと、目の前にある岩塊の目の前で最小限のスラスターを吹かすと、それをスレスレに避けていく。

岩礁内へと飛び込むように進んでいくと、そのままドミニオンのレーダーからその姿を消した。

 

「本当に、上手くいくんですかねぇ?そのまま正攻法で、顔面を殴りに行ったほうが僕はいいと思うんですけどね?」

 

「……、くれぐれも機体を奪取したいのであれば、最小限の被害を相手に与えて、それを奪うのが良いのですよね?

なら、この方法が最も適切だと本官は判断しました。」

 

ナタルとアズラエルの意見は対立していた、

 

「そうですか、ま良いでしょう。僕の方は僕の方で動きますから、ああ僕の方は君には指揮権はありませんのでね。」

 

ナタルはその言葉に苛立ちを覚えた、軍の奥深くまでこの男の食指は伸びている。

もはや、軍の私物化と言うレベルであるのだ。軍の内部で彼に対立出来る者達は、いるにはいるが閑職に追いやられているのではないか?と、ナタルは勘繰った。

 

「…、ですがもし邪魔をしましたら容赦はしません。」

 

「ええ、ええ、大丈夫ですよ。時間まで待機させておきますからねぇ。」

 

その言い方に、ナタルは苛立ちが積もる。

ブルーコスモスの盟主というものが何れ程の権力があろうとも、決して屈したりはしない。

軍人として、毅然とした態度で対応する事こそ今自分に求められているものであり、フレイの後ろ盾になろうとするナタルなりの自由意志の表明であった。

 

 

……

 

メンデル内部で、これからの事を話し合っているAA、エターナル、クサナギの所謂三隻同盟と呼ばれる事となる者達は、その話題が止まる程に現状を憂いていた。

 

「戦争は終わらせる事が出来るのです。人が始めたのなら、人の手で終わらせる事が。ですから、」

 

話の輪の中心となっているのはラクス・クライン。

つい数週間前に父親を亡くしたばかりの少女は、力強く見えるよう堂々とその姿を振る舞っている。

痛々しい姿を見せないように、この小さな手段を纏め上げるためにも、その姿をしなければならない。

 

輪の中で、一見すると不真面目そうにしながらも真剣に物事を捉えていたフラガは、そんな会話の中でふと違和感を覚えた。

背筋がゾクゾクとし、何も緊張も無い筈にも関わらず冷や汗が流れ出る。

そして、誰しもが見ていない方向を見上げるように突然と睨み始めると、苦々しい笑みを浮かべた。

 

「……、ムウどうかしたの?」

 

フラガの異変に気が付いたラミアスは、それを問い質す。その言葉に、フラガは焦ったように言い放った。

 

「…、おい第一種戦闘配備だ。いや、今直ぐに出撃するぞ!」

 

フラガは見るからに焦っていた、何を感じたのかこの場にいた面々には誰一人それを知るものはいなかったが、フラガのただならぬ雰囲気に異常事態が起こっている事を察した。

 

「話してる時間は無いんだ!!」

 

フラガのその言いように、ラミアスはそれを直ぐに了承するとこの場にいる面々にそれを頼み込んだ。

そして、件のフラガは誰よりも早くパイロットスーツに着替えると一目散にストライクへと身体を滑り込ませ、機体を立ち上げた。

 

「おい!装備はエール!急いでくれ!」

 

機体をカタパルトへと接続すると直ぐに機体にアームが伸び、エールパックが接続されると、メンデルの宇宙港のゲートが開いている事を確認し直ぐに出撃出来るかを確認する。

 

「ムウ・ラ・フラガ、ストライク出るぞ!」

 

苛立ちと焦りと、それが入り混じった様な言いようにAAのCICでは、生唾を呑む者もいた。

そして、フラガの言っていたことが現実になるには少し時間を要した。

 

「キラ君、ムウが先に行ったわ。まだ、こちらの索敵には掛かっていないけれど、用心して。」

 

「わかりました、でもどうして…。」

 

フラガの勘はよく当たる。ただ、今回は特に鋭く反応していたように、周囲は感じていた。

それがどういう事なのか、正直な話科学的な証明は難しいものであった。

 

「……?!微弱ですが熱源を確認!MSと思われます!」

 

「追跡を開始して!各艦へのデータリンク、対MS戦闘用意!」

 

それぞれが何か(・・)を確認しようとするも、その熱源はあまりにも小さく断片的でそんな動きをする敵は今まで遭遇したことが無かった。

 

時を同じくして、フレイはある種の直感じみた感覚を得た。

MSを操縦し、最低限のバーニアとAMBACを駆使しながら岩礁の隙間を縫うように飛行する。

時折、足場に利用しながら徐々に速度を上げていくと、その違和感の正体が何となくわかってきた。

 

『これって相手も私の事わかってるのかな?』

 

『わかっていると考えた方が良いだろうな、それと相手はたぶんムウ・ラ・フラガだろうな。

あの艦の中で、君の同類とも言える相手は彼しかいない。』

 

『良い動きだ、私の指示通りに動けるとは感心するよ。敵に気が付かれたのなら、もう偽装する必要は無いな。私としてはこのまま敵機に接近して、一気に倒す事を進言するが…君はそれを取ることはないだろうな。』

 

脳裏で会話をしながらも、フレイは機体のその動きをより洗練させていく。

そして、遂に機体がMSを捉えた時既にその方向へと意識を向けていた。

 

ストライク、キラの搭乗機は既にフラガの手足となって動いている。だが、その動きは未だにぎこちない。MAパイロットとしての経験が、彼の足を引っ張っている。だが、彼は果敢にも意識の向く方向へと近付いていた。

 

「機影捉えまし…、嘘だろ。」

 

「どうしたの?」

 

AA内では、近接する機体を光学センサーでやっと捉えていた。だが、その光景にCICは絶句する事となる。

 

「MSデブリ帯を、直角に機動しています。岩塊を蹴っている、こんな事有りえない。」

 

その方向を聞いたラミアスは、その映像を見てその軌道に改めて驚愕する。

敢えてわかるようにしているのか、遂にノズルから発せられる陽光がわかるように、まるでそこに何が来るのかわかっているかのように、機体が高速で接近してきているのだ。

 

「フラガ機、交戦に入ります!」

 

エール装備のストライクがビームライフルを構えた瞬間に、実体弾である突撃銃が火を吹くとその反動を利用して機体を、上手くコントロールしてMK2がその動きを複雑にして行く。

 

それを見てストライクは、射線を敢えて反らし回避に専念すると、その直ぐ近くを弾が通り過ぎていく。

だが、実弾だからこそ避けられていたがもしビームであれば、どうなっていただろうか?

フラガは冷や汗を流しながら、自分が相手に対して無力であることを実感していた。

 

明らかに、自分のような相手に戦い慣れている。

目の前にいるのがフレイ・アルスターだろう事をフラガは薄々気がついていて、それを知りながらあまりにも実戦経験があり過ぎる彼女のその挙動を訝しんでいた。

 

「まるで、何年(・・)もMSに乗ってたみたいじゃねぇか!なぁ!フレイ・アルスターよ!」

 

フラガは無意識にそう口に出していた、そしてその言葉に答えるようにMK2はフラガへと突撃を敢行し、ストライクが放つビームライフルを掻い潜ってシールドのビームサーベルを展開し横に薙ぐように殴り付けた。

 

それをストライクの盾がガードするが、その瞬間声が走った。

 

「私だってやらなきゃならないの、だからどんな事だってやるわ!だから、投降してよフラガ少佐!」

 

接触回線かはたまた脳内に直接語りかけてきたのか、当事者であるフラガしかそれはわかるものではない。

だが、確かな事はフラガの脳内には確実に彼女の憂いを帯びた心が、感じ取れたと言うことだろう。

 

「だったらなぁ!俺達の事も良く分かるだろ!」

 

そう言い放つフラガから強い波動が放たれると、フレイはそこから彼等に何があったのか直ぐに理解した。

だが、理解した事と現状を変えることは違う事である。

 

「だから!私が私達がなんとかするから!」

 

連合の上層へと掛け合うと、そうフレイが口に出そうとした時MK2の機体を狙って、ビームの奔流が現れる。それを、ストライクを蹴飛ばす事で、バク転の要領でMK2が避けると目の前に現れた2機のMSを前に、実弾兵装である突撃銃を右腰部のビームライフルへと入れ替えた。

 

それに気を取られるようにしている間に、フラガが反撃するように機体を急制動させて、今度こそフレイにMK2にライフルの照準をし、引き金を引き絞る瞬間には既に回避行動を始めるその姿に、フラガはクルーゼを連想する。

 

それだけで、目の前にいる相手。フレイがどの様な相手だということを理解し、キラ達に警告を発する為に通信回線をオープンした。

 

「手練れだけで来い!生半可な相手じゃないからな!」

 

その言葉だけに全てが詰まっていた。

 

 

……

 

ドミニオンの艦橋で、アズラエルが不敵に笑っていた。

それは目の前にいるこの艦の主、ナタルに対する嫌味だろうか?それとも、ただ自分自身の所有する実験動物が、その真価を発揮するところを特等席で見ることが出来ると、それに満足しているのか?

 

「いやぁ、戦闘が始まってしまいましたねぇバジルール艦長。行動を開始しても、よろしいですか?」

 

「……、ええ戦闘が始まってしまった以上、仕方の無いことです。MSの発進を許可します。」

 

その言葉を待っていたかのように、アズラエルは直ぐ横にいる白衣の男に言うと、その男も嬉々としてアズラエルに笑顔を向けた。

その顔の悍ましいこと、アズラエルの連れてきたパイロットの事を人とすら思っていないのだろう。

 

ナタルは自分の判断が間違っていたのかと、静かに自問自答するも目の前の出来事に正面から向き合うと心に決めている。

深呼吸をすると、命令を発した。

 

「これより本艦は敵艦隊に対して肉薄攻撃を敢行する。MS隊は敵MSを引き付けるよう行動を行い、プランBに従って行動せよ!」

 

堕天せし大天使を捕縛する為に主天使は歩みを始めた。

 

 

 

 

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