機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第67話

 

人は人を超える事が出来るのだろうか?

それは、人類が文明というものを創り出した時からの長年の夢だ。

人は完全なものに憧れ、様々な物をして神という物を創り上げ至上の命題として辿り着く頂点として作り上げた。

 

そんな中、技術が進歩する事に其れ等を実現しようとする者達が度々現れては消えていった。

ある時、誰かがそれを見つけた。小さな小さな糸屑を、それを紐解くと、なんとも広大な神の設計図が現れた。

 

人はそれをDNAと名付けそれの解読に勤しんだ。

ある時、それを少し改変するものが現れた。最初は小さな実験動物だった。だが、物事というものはエスカレーションするものである。

アイツがアレをやっているのだから、自分はコレをやろう。もっと大々的にやろうと、その禁忌が当たり前になって行く。

 

そして、そんな過程であるものを創り出した者がいた。

デザインベイビー、所謂コーディネイターとなるべき存在である。興味のある学者であれば誰もが通る道、

 

人は設計図通りに創り出されることは出来るのだろうか?

 

という単純な思考。

それをやりたい者が0であるはずが無い。

そしてそれを創ってしまった、神の設計図を書き換えて新たなる生命を誕生させた。コーディネイター誕生の瞬間であった。

 

だが、その事実もまた単なる通過点に過ぎない。

コーディネイター、所謂遺伝子強化人間であるが所詮は人間の器の限界値にそれを注いだに過ぎない。

そしてそれは、汎ゆるパラメーターの内の何かを生け贄にしなければならないのだ。

 

リターンの裏にはリスクがつきものである。強い生命が陥る最悪のパターン、それは見えないところに潜んでいた。

そして、そんな物をものとせず汎ゆる物を完璧に備えた存在を創ろうとするのは自然な事で、その男もそんな普通の人間であった。

 

その男は自らの子供をそれの実験台とする。

そしてそれは一定の成功をした。

 

だが、そんな存在があったとしても人の器の外にははみ出していない。

 

人々は常にその先を目指していたのだから。

 

 

……

 

 

岩礁の浮かぶその宙域に、複数の光の柱が乱立すると粒子をバラバラと撒き散らしながらその姿は掻き消えていく。

その光を放つ尖端にはライフルを構えたMS.MK2が複数機を相手に一方的な光景を創り上げていた。

 

「――っつう!こんなに速いのかよ!」

 

それに追い縋ろうと、1機の緋色の機体。M1を駆るトールはMK2の挙動に舌を巻いていた。

彼と共にフラガ、ニコル、ディアッカが応戦をしているがコーディネイターですら避けるのは不可能である筈の連携攻撃を、いとも容易く逸らすその姿に一同驚愕している。

反応速度だけを見れば、アスランやキラのそれを優に上回る。

 

しかし、その軌道だけを見れば並のコーディネイターとさほど差は無いものであろうか?

それだけに彼等は助けられている。

もしも、目の前の存在がその反応速度から裏打ちされた軌道を取るのなら、きっと勝てるものはこの世にいないかも知れない。

 

それは、機体の限界よりもフレイ・アルスターと言う一人の人間の限界とも言えた。

所詮は人体の耐G性能は、耐Gスーツを着たとて10G前後。

機械の発達によってある程度の慣性制御が可能になっているにせよ、これだけは覆しようがない。

 

彼女が今、それだけの挙動に耐えられているのは特殊なパイロットスーツと、そのコックピットの異様な技術からである。

中空に浮かぶ様に設置されているそれは、どういう原理かGを軽減する。

それが無ければ、彼女は自殺するかのような殺人的なGが身体に諸に掛かっていたことだろう。

 

それでも、幾ら軽減されていようともGというものが掛かるとは自らの体力を消耗するに等しい。

幾ら、彼女の反応速度がコーディネイターに優れていようとも、その体力がコーディネイター程にある。というわけではない。

 

短期戦であれば、誰よりも強いと言わざる終えないが、長期戦ならば不利を曝け出す。

フラガはそれを狙っているのだ。

フレイは一見すれば迷いを断ち切っているだろうが、一方でトールに関して言えば迷いがある。

それは、トールに対してのそれではなくミリアリアに対してのそれだろう。

 

だからこそ、フラガに二段劣るトールはこの戦闘についてこれているとも言えるし、一段劣るニコルやディアッカはそれをカバー出来ているのだ。

 

そんな最中、ふとMK2はこれ迄とは違った反応を示す。左腰にマウントされていた、ビームショットガンを取り出すと即座に高収束モードであらぬ方向を狙い撃った。

 

「おいおい、何処狙って撃ってんだよ。」

 

その意図を理解できずに、ディアッカは減らず口を叩くもニコルはこれに疑問を抱き、フラガはその意図に気がついた。

 

「おいおい…、泣きっ面に蜂ってか!!」

 

フラガはそう言うと、彼等とは逆の方向で戦闘を続けているキラとアスランの方を見る。

3対2の状況下で、あの二人が抑えられている間にもう一つの勢力が近づいて来ていると言うことを、フレイは撃つ事で警告したのだ。

 

そして、その相手がどういうものなのかフラガには直ぐ理解できた。

そして、それに対応する為の戦力がこの三隻同盟には残っていない事も、彼は把握していた。

だが、同時にフレイが所属している連合ともその相手が敵対していると言うことは、正当的にターゲットを変更することが出来る大義名分でもあった。

 

その二人の意志が噛み合うと、戦闘を続けながらその方面へと機体を流していく。

それは無意識の為せる業なのだろうか、その行動が彼等にとって裏目になる事は無いだろう。

 

時を同じくして、一隻のナスカ級から2機のMSが飛び立っていた。一機は地球軍のデュエル、それを鹵獲したザフトのアサルトシュラウドという増加装甲を取り付けられた機体、それを駆るイザークの乗機。

そしてもう一機、見た目からはシグーやジンのようにも見えるが、一回り大きく見える。

そして、特徴的な白色の機体ゲイツ。クルーゼの乗機であった。

 

発艦から暫くして、メンデルへと向かっている2機に向けて1条の光が遠方から精確に届く。

それはゲイツを正確に狙っていたが、それを単に機体の腕を動かして避けるとそれを撃ってきた相手の事をクルーゼは察知した。

 

「精確な狙いだな、誰が撃った?」

 

無線を切断しているの中でクルーゼは一人言葉を発すると、徐ろに通信回線をイザークへと繋げた。

 

「敵の中に手練れがいるようだ。戦闘領域に突入するが乱戦が予想される。くれぐれも無茶はするなよ?」

 

そういうクルーゼは傍から見れば部下思いの良い男である。

この男が何をしようとしているのか、それさえわかっていれば別の見方が出来るだろうが。

そうしている内に接近警報が鳴り響くと、直ぐに臨戦態勢に移れるのはその練度の高さを表しているだろう。

 

何故か?戦闘を行いながらもストライクとMK2それにバスターが後を追うように、彼等の直ぐ側までやって来ている。

あたかも偶然を装った様に、大した器用さである。

そしてそれは、言葉を介さない無意識の所業だというのだから、より奇妙なものである。

 

だが、彼女等についてこられたのはディアッカだけであり、その他の者達はドミニオンの部隊にその進出を拘束されていた。

イザークの搭乗するデュエルとはまた別に、連合からデュエルを、配備されていたドミニオンのカタリナがブリッツを操縦するニコルと相対す。

 

トールはその彼女が連れていた他のパイロット達との戦闘によって、前進を止められており戦況は当に膠着状態と言っても差し障りない。

 

そして、AAは母艦対決となるドミニオンとの戦闘に明け暮れていた。

ナタルの巧みな戦術によって、ラミアスの操るAAは他の艦艇から引き離された。

一対一、正々堂々とした戦いではない。

 

ドミニオンはその姿を短時間下すだけに留め、AAを牽制し続ける。それは、自分たちの艦が乗員という面でAAに劣っているからだ。

練度が無い者が、あるものを捉えようとはそういう手立てをしなければならない。

如何にしてアドバンテージを得るのか、それは船での戦いでは紀元前から続く当たり前の産物であった。

 

 

……

 

クルーゼはフラガの駆るストライクと戦闘をしながらも、もう1機別のMSとの戦闘を行っていた。

三つ巴、そう形容するには些かストライクはその乗り手がまだ完全に適応出来ていない事を如実に表すかのように、もう1機に密かに庇われていた。

 

クルーゼにとり、問題があったのはそのもう1機のMSであった。

所謂ガンダムタイプと称されるそれは、連合の最新鋭機であるのは確かであったが、それ以外は凡庸な武装ばかりで量産機を高級にしたようなものであった。

 

問題はそこではない、そのMSのサーベルは鍔迫り合いが出来るテクノロジーを組み入れていたが、それが接触するときに僅かながら何かが脳裏を駆ける感覚を覚えていた。

それはフラガと相対する時のそれとは違い、あたかも自分がその人物の記憶を読んでいるかのように錯覚するものだ。

 

そして同時に、敵の事が非常によく分かるようなそんな気すらしてくる。それは心の壁というものを取り払うかのようなものであり、少しずつその機体に誰が乗り込んでいるのか分かっていた。

 

そして、四度目に鍔迫り合いが生じた時その声は形となって現れた。

 

『可哀想な人』

 

声は聞こえない、だが確実に聞こえていた。

通信の履歴は残っておらず幻聴のようであるが、それを無意識に彼は返答した。

 

『君の方こそ可哀想なものだな、父親を殺した相手とこの様に話をするなどと。』

 

相手の顔がハッキリと分かる。

そして、相手もクルーゼの顔をハッキリと見て装甲等という物がまるでなくなったかのように、その手が頬へと伸び触れた。

マジマジと見合うその素顔に彼女は悲しそうな顔をした。

 

『「私の中に入るな!!」』

 

心と声で拒絶し、クルーゼはその機体を一路敵のいないメンデルへと向かわせる。

一方でそれを追うようにストライクが降下するが、そこをフレイは見逃さずストライクの推進器を一部破壊する。

 

そして3機はコロニー構内へと入っていった。

 

 

 

 

 

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