機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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時代の化石

ポツン

 

ポツン

 

ポツン

 

ポツン

 

暗い暗い地の底に、一つ一つの音が響き渡るとそこに

 

ザクザク

 

と言う、誰かの何者かの足音が響く。

次第に暗闇を照らす光が輝くと、その光から逃げるように地を這う蟲達がワラワラと壁を這いずる。

 

「ひぃ……、やっぱ嫌ですね…アマゾンの洞窟なんて依頼じゃなきゃこんなところ来ませんぜ…」

 

「我慢しろ、大口の契約なのだからな。我々ゲリラとて、戦争が終わったら用なしも良いところだ。今や俺達の肩身は狭い、一部例外を除いてな。その例外になれなかったのを後悔するしかないのだよ。」

 

ヒョロヒョロとした痩せ型の男と、それよりも先行する髭を蓄えた初老の小男。

それの後ろに付き従うように、幾人かの学者のような連中がその場を歩いていく。

 

「しかし、探検家紛いな事をして貴様等は何を探しているのか?こんな、南アメリカ合衆国の無人地帯にいったい何があるのか?」

 

「黙って先導していなさい、コレは命令です。金は前払いしているのですから。」

 

男なのか女なのか、良くわからない中性的な声が二人に掛けられると、初老の男は渋々と言ったところで洞窟の中を歩き続けた。

少しずつ前へ前へと進んで行くも、その行先に何があるとも知れない。

次第に出口から遠く離れていくと同時に、そこに道標が現れた。

 

「ここから先は未踏領域だ。俺達現地の人間だって、これ以上奥には行ったことはない。なんせ、呪だなんだって言われててな、帰ってきた奴はいない。」

 

「そんな事は分かっている、貴様らはここまでで充分役目を果たした。」

 

集団の長たる人物のその声と同時に、道案内の男達を数名が取り押さえられると男達を数m先へと、叩き進める。

人二人が入る程の深さの窪地に降りるするとどうであろうか、男達の意識は刈り取られ膝から崩れ落ちると、直ぐに痙攣して動かなくなった。

 

「こいつらが生きていると面倒だからな、お嬢様の為に生かしておく必要すらない。我々の罪は我々が背負わなければならない、この事は内密に頼む。

二人には名誉の死を、遺族にはそれに見合った物を与えなければ。」

 

その言葉とともに、彼等は酸素マスクを着用しだす。

 

それとともに、ザクッ、ザクッ、と言う音と共に何やらビチャビチャ。グチャグチャと言う音が響く…。

いったい何をやっているのだろうか、先程まであった男達は綺麗さっぱり無くなっていた。

 

「さて、急ぐぞ。あまり長居していると、我々もガスにやられかねないからな。」

 

一際明るい投光器を点け始める集団、それによって現れたのは幾つものミイラ。そして、その手前には未だに腐敗が始まっていない、幾つかの未だ乾ききっていない死体が横たわっていた。

 

そう、この場所には有毒な二酸化炭素が充満していたのだ。何故、その場所より奥が立ち入り禁止なのか、それは単に人が死ぬからだ。

そして、有酸素と無酸素の境界線は動物の有無だろうか?

小さな蟲達ばかりがいるために、洞窟内の空気は循環すること無く、下へ下へと比重によって其れ等は溜まっていく…。

 

「これ程までの無酸素状態か、やはりカナリアは必要なものだな。」

 

ゆっくりと洞窟内を進み続け窪みを抜ける、30分程歩いた頃だろうか?突然開けた場所に到着する。途轍もなく広い空間、強力な岩盤がその広大な天井を支えているも、時折光が差し込む場所がある。どうやら、苔らしきものも生えていた。

 

「酸素濃度規定レベルです、有害なものも検知されません。」

 

「そうか、一応ボンベの点検をしておけ目的地は近いぞ。」

 

マスクを取り外してその集団は進んでいく、その大空洞は幾つもの苔が生えているものの、不自然なほどに整えられた足場。

何やら車輌が入れそうな程の道、そして……屑と成り果てた巨人達の亡骸がそこにはあった。

 

「ザフトの何て言いましたか?ゾノとか言う物に似ていますな。」

 

その中で非常に状態の良いものがあった。

薄っぺらい機体装甲は、元々は水色をしていたのだろうか?太陽光に直接触れないが故に、分解されることの無かった塗装が未だにその機体を護っていたのだろう。

 

「〘AMX-109〙…ザフトのものではないですな、こんな型式番号向こうのものでも有りませんからな。しかし、状態が良いですな。これで千年以上も経っていると?信じられませんな。」

 

「元々この区画も無酸素状態だったのだろうな、見ろあの穴。恐らくはNJが投下された時の穴だろう、証拠に突き刺さっているぞ?」

 

そこには円筒状の機械が突き刺さり、駆動を停止したものの仰々しい姿をそこに晒していた。

 

「それで酸素がある訳ですか…、奇跡的と言ったところでしょうな。もしアレが空いていなければ、我々も時間が無いと言う結論に…。」

 

「無駄口はそこまでだ、諸君ここに設営を開始する。ここは宝の山だからな、歴史を掘り当てるぞ!全てはアルスターの導きのままに。」

 

ここの名はジャブロー、嘗て行われた宇宙戦争時要塞として機能していたという放棄された施設。

その中の一画、数少ない核汚染が広がっていなかった場所。

そこに、アルスター財団。アルスター十字が掲げられた。

 

 

 

 

南アメリカでその様な事が行われている頃……

 

 

 

 

ある地下施設で、一機のMSが唸りを上げていた。

 

「出力安定……、安全出力80%上げます…、82,84,87,91……!出力臨海!100%……、冷却機能限界時間残り90秒!」

 

誰かが操作していると言うわけでもなく、ただ機体の中心部におけるエネルギーコアの調整をしているのだが……、あまり上手く行っているとは言い難かった。

 

「出力下げます、冷却機能が間に合っていない……。」

 

機体内部が剥き出しとなり、現れたるジェネレーターには

experimental thermonuclear reactor(熱核反応炉)

 

と言った文言が打たれている。

それを制御し、剰えMSに搭載しようとすらしていた。

この時代、CE(コズミック・イラ)においてこの技術は嘗て失敗した存在。

核分裂炉の代替品と言われながらも、軍民問わず実現出来なかった物。

 

唯一あるのは、宇宙軍艦に採用されている核融合プラズマ推進と言う、所謂推進剤としての機能だけであった。

それが今、あまりにも小さな姿で日の目を浴びている。

 

「艦艇搭載サイズには落とし込めるのですが、どうもMS程となりますと難しいですな。特にラジエーターが、バッテリー技術にばかりかまけていた代償ですか……?」

 

その機体はあまりにもお粗末な装備であった、骨格しか存在せず当に実験機。

それこそ、冷却機能というものに振っているというのが一目で分かる。だが、それでも今の技術では超えられない問題がそこにはあった。

 

「ねぇ、どうして冷却が上手くいかないのよ?」

 

そんな姿とは裏腹に、その実験に立ち会っていたこのプロジェクトの代表…、フレイ・アルスターは研究者にそう質問した。

 

「核融合とは核分裂よりも遥かに純粋なエネルギー変換です。簡単に言えば核分裂の4倍のエネルギー放射がありますから、それだけ熱に変換された場合、最低でも4倍の熱量を放射します。ですからそれを冷やす為にはそれだけ難しいのです。」

 

「そうじゃなくて、どうして冷却機能の方にばかり目に行くのって話。別にエネルギー変換効率を上げれば済む話じゃないの、熱エネルギーに変換される前に電気エネルギーに変換することが出来れば、それだけ冷却をしなくても済むんじゃなくて?」

 

人類の文明はいつも熱エネルギーから運動エネルギーにしてそこから電気エネルギーを、運動エネルギーから電気エネルギーを抽出してきた。

物質の核分裂も同様に、巨大な熱エネルギーを蒸気によって運動エネルギーに変換してきた。

 

直接にエネルギーを電気エネルギーに変換してきたというのは、一部の化学的な意味合いでの太陽光発電ばかりであり、その他は全て熱エネルギーと運動エネルギーへの変換にばかり傾倒していた。

 

そして、その直接のエネルギー変換を成功させたのは実のところ、あまり昔の話ではなく。つい最近、もっと言えば地球圏における覇権主義、軍艦等が宇宙を飛び回るようになってからという、非常に日の浅い技術である。

そして、それだけ未熟だとも言えた。

 

「我々は未だに旧い人達(古代人)の編み出した、ミノフスキー物理学というものに無知なのです。

彼等は、核融合を完全に制御下に置き必要な時に、必要な分だけ核融合をする事によって、小型機にある一定量だけのエネルギーを供給することができた。

それは、分かるのです。ですが、どうしても腑に落ちない。

何故、それだけの技術を持って尚滅んだのか…。

 

私は、禁忌の技術だとかそういった類のものには数多く触れてきた自負があります。だが、コレはあまりにも重いのですよ?嘗て手に入れ、手放した技術いったいどれ程の危険性があるのかそれは未知数です。ですから慎重にならざるを得ない。

 

確かに、彼等の技術を100%使用すれば制御も容易く、冷却も簡単に行える。

ですが我々にはその原理がわからない、それがどれ程まで恐ろしい事か……、貴女には分からないでしょうが…。」

 

学者はそう言って言い淀んだ、目の前の少女。パトロンにいったいどれ程までにその理解が出来るのか、自分達ですらミノフスキー物理学と言うものの一端を目にしたばかりだと言うのに、それを大衆の内の一人である少女が理解出来るとは、到底思えなかった。

 

「でも、出来ないこともない…でしょ?」

 

「……、そうですけどね…。」

 

『小娘が…。知ったような口を。』

 

「施設維持費は家が出すんだから、アンタ等は余計な心配しなくてもいいの。それに、安全には配慮している、でしょ?」

 

その言葉に学者は眉間にしわを寄せただけで、なんとも言えない表情になりながら何の返答も無く作業を続けた。

それを見つめるフレイはなんとも、満足げな顔でその場を後にした。

 

 

……

 

顔色の悪い男が、趣味の悪い服装をしながらソファに座り猫を撫でている。

その場所は古くは、西部開拓時代以前に創り出された物であり様々な財界人がそこに集っていた。

そこに、白いスーツを着た金髪の軽薄そうな男が一人其れ等に対峙するようにソファに座り足を組みながら、ワインの薫りを楽しんでいる。

 

「しかし、歴史ある(古臭い)場所に良くお集まりになられますね。Mr.」

 

「ふん!貴様もようやくここに来る事になるとはな、お父上とは仲良くさせてもらっていたが、最近のお前の動きを見させてもらった。」

 

威圧する態度に対し、冗談交じりにこの場所を貶す男アズラエルは目の前にいる男、ロード・ジブリールの姿に何の気も置きなかった。

そもそも、彼がここにいるのは自らの財閥の管理の名目上、父親のそれを乗っ取った身体というところだ。

つまりは、父親を隠居に追いやった。

 

それに対して周囲から反発が無かったと言えば嘘になるだろうが、これからの世の中ビジネスとして如何にコーディネイターから多くを搾り取り、暴利を貪るかというのが昨今の課題であった。

そこで、新しい風を入れたいというのは組織としては当然であり、アルスター家特にフレイと面識のあるアズラエルが財閥を抱え込んだのだ。

 

「それで、どういったご感想を?尤も、僕としてはまだまだ序ノ口だとそう思っていますが。」

 

「ふざけた真似をしてくれているな、協調性と言うものを貴様は知らないのか?我々は!」

 

財界として、国を経済を回す義務が彼等にはある。

その為に、歩調を合わせていこうという時に身勝手に動いているアズラエルに対して、周囲の者達も冷やかだ。

だが、知っての通りアズラエル程の男にはここに属していない味方も多い。古い人間の集まりしかやらない彼等とは違うのだ。

 

「僕はね…、こういう集まりあまり好きじゃないんですよ。それに…、僕は他の方面に投資をさせていただいているのでね、末席の一人としては確かにここに来ましたけど…、深入りするつもりは無いですからね?」

 

「そうですか…、残念ですよ。」

 

静かな戦いだ、彼等は札束で殺し合う。

企業体と言うものは、その信頼関係と金の周り効率によって生きる大きな生き物だ。

そんな物を動かしているのだから、血の流れない戦争のようなものだろう。

 

使いの者と共にリムジンに乗り自宅への帰り道、アズラエルは戦時中に見た一人の少女の事を思い出している。

あの、宇宙の化け物共を屠る様な姿は彼の幼少期のコンプレックスを打ち砕くには充分すぎた。

と言っても、彼程金の稼ぎが多いコーディネイター等いようはずもない事を彼は知らない。

 

「そう言えば、今彼女は何処にいるのかな?」

 

「来月から宇宙に上がる予定となっています。曲がりなりにも軍人です、そういう事もありかと。いかがしましたか?」

 

「うん、少しね。依頼されていた事の進捗も程々に、報告でも送ろうと思ってね。しかし、ナチュラルの可能性なんて言う耳心地の良い事を言われちゃあ、動かざる終えないじゃない?」

 

車は走る、その先を見据えて。

 

 

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