機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第3話

 

ドミニオンとミネルバ、連合とプラントと言う全く違う立場の艦はユニウスセブン落下阻止に向け、中間合流地点へと急行していた。

だが、事態はそれよりも早く推移していく事となる。

 

「コレは…、まさか…。艦長!!ユニウスセブンの加速度が我々の想定よりも速いです!このままだと、合流している暇は有りません!」

 

「落着予想時刻の計算急げ、阻止限界点の割り出しは済んでいるのだろ!」

 

ユニウスセブンは地球の重力に引き摺られ、地表に落ちようとしているが、それとは全く違う第二の力によって徐々に、地球へと加速していっている。

重力加速度を無視したその速度は、明らかに人為的な代物であった。

 

「ミネルバより緊急入電、本艦はこれより単艦での移動に専念する!です!」

 

「やはりか、合流する余裕もなくなってきている。船足は向こうの方が速いからな、置いていくほうがまだリスクが少ない。」

 

ドミニオンの船足は、決して遅いという程のものではない。寧ろ、連合の艦艇で言えばドレイク級に劣るものの、火力では勝りザフトのナスカ級とタメを張る程ではある。

だが、艦歴は2年。技術革新目覚ましい昨今であるが、その2年という帰還で、既にドミニオンはミネルバよりも総合性能では劣っている。

 

その為、ミネルバ艦長であるタリアの判断は正しいものであるのだ。不確定要素を切り捨て、目の前のことに全力を注ぐというのは決して間違いではないのだから。

 

「艦長、アルスター少佐から意見具申。MAメビウスを使用した、多段ロケット推進によるMSのみの戦力投入を行いたい、だそうです。」

 

「無茶な強硬策だな、多段式ロケットの真似事とは。だが…、悪くはないか…。よし、MS隊並びにMA隊に繋げろ。」

 

ナタルはそう言うと格納庫に直ぐ様に司令を飛ばし、簡易的に創り出した作戦概要を通達する。

その間にも、パイロット達へのブリーフィング対応の為の資料を創り出した。

 

「艦長、パイロット総員到着しました。」

 

モニター越しに、全パイロットがナタルを見つめている。

 

「これより貴官等には危険な任務に就いてもらう。既に、そちらのアルスター少佐、並びにラウ大尉から詳細は聞いているだろうが、MAを足場に使用した強攻策に出る。

人選は…」

 

「それはコチラから既に説明と共に言い渡したよ艦長。」

 

金髪のレイヴァンのサングラスを掛けた男、ラウ・ラ・フラガがそう言うと、並んでいるものの中からフレイとライラが前に出る。

現在格納庫に存在するMA、メビウス練習機は3機。それをブースターとするのならば、3機しか戦場へは送れない。

 

「済まない、これより作戦を開始する。3機以外は本艦の直掩とし、MSに搭乗して待機せよ。以上!」

 

短い言葉の後、パイロット達は持場へと向かう。

そしてその中の一人、ライラ候補生は険しい顔をしてMSへと向かって動き始めた。

 

コックピットに辿り着くと、更に溜息を吐いている。緊張と恐怖それが胸の中いっぱいになって、彼女は今にも物を吐き出してしまいそうな、そんな感覚であった。

訓練生になってからの、初めての実戦。それがどれほど恐ろしいのか、話では聞いたことがある。

 

戦場では、新兵の死亡率は極めて重要なものである。これが高いか、低いかによってその国の練度というものがわかるとも言える。

前の戦争では、前線に送られた新兵の凡そ30%が何らかの理由で戦死している。それは高いとも低いとも言えない数字だが、それだけ消耗激しいものだったと言うことだろう。

 

ピーピー

 

とコックピットで音が鳴り響く、それは無線を取れという合図でもある。

マイクのスイッチをいれると聞こえてきた声は、意外なものだった。

 

「ライラ、アンタは大尉と一緒に行動すれば良いわ。」

 

「な、何故ですか?」

 

今回の作戦は一見すれば3マンセルでの行動と、そう彼女は考えていた、そして短いブリーフィング内でもそう言う風に説明された。だが、その言葉とは裏腹に現実は違ったもののようだった。

 

「新兵は死にやすい、それは当たり前だから僚機と共に行動しなくちゃはならない。だから、大尉にアンタを任せる。

それにね、私はアンタを使えるほど部隊運用得意じゃないのよ。」

 

「それは……!?」

 

ここでようやく、ライラはフレイ・アルスターと言う人物の戦争への向き合い方と言うものを知る事になる。

フレイ・アルスターは自分達よりも年齢は1つ下、である。

つまり何を言えるのかと言えば、彼女は適切な新兵訓練の無いままに戦場に行き、宣伝の為に階級を上げられたということである。

 

そんな人物が、まともな部隊運用が出来るものではない。

フレイは、それを自覚していてラウに彼女を託すのだ。

 

「まあ、それに。私、単独での戦闘のほうが得意だからね。だから、そんなに緊張しないで気楽に行きなさい。」

 

それが、どれだけの想いが込められているのか分かるものではない。ただ、目の前の事象だけは現実である。

 

3機のMSが3機のMAと共に、カタパルトで射出される。それは、流星のように尾を引きながらただ真っ直ぐに、落ちていく隕石の方へと進んで行く…。

 

 

時を同じくしてミネルバ艦橋では、後続として来ているドミニオンが遅れだした事を幸いと思い、ますます増速していた。

だが、そんな事とは打って変わってレーダー手が、ドミニオンから摩訶不思議な機影が発進したと言う報告を行った。

 

「後方ドミニオンから、飛翔体分離真っ直ぐユニウスセブンへと向かっています。」

 

「……、もっとハッキリと物事を言いなさい。何が分離したの?」

 

タリアはハッキリとしないレーダー手に呆れながらそう言った。だが、それに対してレーダー手は不服そうにしながらも、現在取得している情報が嘘偽り無いことを説明すると、タリアの顔は驚きと共に、難しい顔をする。

 

「執念の荒業かもしれないわね、通信手。ドミニオンから何か連絡はあったの?」

 

「いえ、特にはあれ行こう……ちょっと待ってください。通信映像はありませんが、〘MS隊を出撃させた。万が一の状況になった場合は貴艦への着艦願う〙…とのことです。」

 

それに対してタリアは何かを確信めいたのか、即決した。

 

「了解した。貴艦の急行を願う。とでも打っておきなさい。

アーサー、ちょっと良いかしら?」

 

「え?なんですか?艦長。」

 

何を考えているのかポケ〜っとしている副長に呆れながらも、タリアは今現状頼れる数少ない人間として、彼に命令した。

 

「準敵国の機体が着艦する可能性があるわ、早急に応対方法を捻出してちょうだい。」

 

「え…?!自分がですか!」

 

「当たり前でしょ、それともこの新鋭艦の機密を漏らされたいの?」

 

能天気な副長の答えに頭が痛くなる。だが、人道的見地に基づいて受け入れない理由には行かないのだから、骨の折れる事をする。それだけに、最悪の場合はデュランダル。彼に応対をお願いしなければならないだろうと言うことも。

 

「この中で1番儀礼を知ってるのはあなたでしょ、仮にも実戦は潜り抜けている筈よ?」

 

「り、了、了解しました。」

 

面倒事を副長に押し付けて、彼女は目の前の大事に今度こそ取り組もうと再び、椅子に深く座り込んだ。

 

 

……

 

MSで超長距離を移動すると言う行為はこのCEの時代では自殺行為に等しい所業である。それは偏に、MSの駆動がバッテリーに依存しているところから来ている。勿論最低限の生命維持にも使用されていることから、長時間戦闘などほぼ不可能に近く敵地に数日間孤立する様な空挺降下作戦等は、不可能に近い。

 

その為、長距離移動のノウハウが存在しておらずコックピット内

部は必要最低限、前方モニターの他に無線、及び生命維持機能以外を切っていた。

 

「メビウス残り推進剤3分の1切り離します。」

 

「了解、ここまでありがとう。片道分しか無いから頑張って道に迷わないように。」

 

眼前に広がる巨大なユニウスセブンは地球の重力に引かれる位置の違いから徐々に崩壊が始まっており、あちらこちらに岩塊が浮かんでいた。

 

「これより戦闘に入るけど、ラウ・ラ大尉はライラ候補生をお願い、周囲警戒をしつつ破砕作業のアシストをしてあげて。

私は推進剤をケチりつつ……、怪しいところを虱潰しにしていくから。」

 

「了解した、ライラ候補生。しっかりと付いてこい、ガイドに従っていれば大抵の岩塊は避けられるが、機器に頼り過ぎるなよ。」

 

フレイの目から見て、左舷の方向へと飛び去っていく2機の105ダガーが見える。フレイはそれを少しの間見守ると、一気にスラスターを吹かし岩塊へと近付くと、機体をそれに反転させ蹴りながら速度をあげて進んで行く。

 

その姿を遠目から観ている人間からすれば、異常な事だとわかるだろう。

例えば、隕石を蹴り推進を得ると言う動作1つとっても、機体とその物体の相対速度を計算しつつ、機体の脚部の許容限界以下にその衝撃を抑えなければならない。少しでもそれを超えれば、機体には深刻なダメージが、最悪の場合自滅もあり得る。

 

それが計算できたとしても、今度は踏み込む角度が少しでも違えば、あらぬ方向へと進んでしまう。

コレを、フレイは計算式を必要とせず感覚だけで行っているのだ。

 

そして、彼女の向かう先には何が有るか等まだ誰にも分からないはずなのに、彼女は何となくそこに誰が何者がいるのか分かっていた。そう、その航路は目隠しをしていながら耳栓をしてナビゲーション通りに動けるかということでもある。普通無理だ。

 

だが、彼女のその動きには迷い等何もなかった。

 

 

……

 

落下する物を必死に止めようとするものと、落とそうとするもの。2つの勢力がぶつかり合い、せめぎ合う。

中には戦闘に不慣れなものもいるところに、この時期のパイロットの練度は上から下まで様々であることを示している。

 

特に顕著なのは正規の部隊であるにも関わらず、敵に翻弄されている、ザフト正規軍だろう。

何処から流れて来たのか、コンペに落選したジンハイマニューバ2型を操るテロリスト達は、その腕は尋常ならざるや一筋縄ではない。

 

まだまだ連合との戦闘でMSが登場する以前から戦争をやっているやつもいるのだから、それなりの練度が担保されていた。

彼等の縁は、パトリック・ザラが掲げた反ナチュラル思想、それに染まりきった彼等は憎しみの墓標を地球へと落とそうとしている。

 

多くの者たちがそれを阻止しようとしているが、大質量物体であるために、一度動き出せば止めるのは至難の業である。

ジリジリと地球へと近付くと、それを破壊しようとメテオブレイカーを起動させる部隊に、そんな憎しみに呑まれた者達が殺到する。

 

それはライラ達のいる場所もそうであった。

 

ザフトのMSが攻防する中、異色な機体が2機そこに存在していた。ライラとラウの駆る機体である。

この2人はメテオブレイカーを破壊しに来た、敵機に対して以下の役回りを当てて対処した。

 

ライラは半固定砲台として、メテオブレイカー周辺に遅滞し連合MSの優れた火器管制システムによって裏打ちされた射撃精度で、牽制射を行い、そこから漏れた敵に対してラウが接近戦をもって仕留める。

と言った流れだ。

 

新兵の役回りを1つに限定することにより、リソースを割く量を減らしつつ目標を完遂する。それがラウの立てたプランであり、その目論見は半ば完遂された。

 

「ライラ候補生、慌てるな。連合のMSの火器管制システムは、ザフトのそれよりも優れている。慌てるな、遠距離戦ならば勝てる。」

 

連合のMSのそのシステムは、一人のパイロットの戦闘データの蓄積から、今の今まで学習を続けている。

元来コーディネイターよりもMSパイロット適性の低いナチュラルにとって、それは命綱とも言えたものだ。

それによって補助されながらも、一部をコンピューター制御とすることで、コーディネイターの反応よりもより速く反応する事が出来た。

 

勿論、プラント側にも似たようなものが作り出されていたが、連合に一日の長があったのだ。

 

「了解!」

 

それによって創り出された猶予でもってして、新兵の戦死リスクを極限にまで抑え込む。それが、連合の手法だ。

そして、それを熟知していようともそれを護るラウの腕があまりにも冴え渡り、この区画でのメテオブレイカー損耗率は極めて低いと言えた。

 

だが、それは局地的なものである。結局のところ、全体を通して見た場合ユニウスセブンは、その四分の一がそのまま地上へと降り注ごうとしていた。

 

ちょうどこの時、遅ればせながらドミニオンがその宙域へと到達しようとしている。だが、既に事態は最大限悪化した状態であり、艦橋の者達は勿論のことそれを知った者達は絶望的な状況に奇跡を願った…。

 

…だが、奇跡はそう都合よく置きたりしない。

 

ユニウスセブンは地球に引き摺られ落ちていく…。

 

「こちら、ラウ・ラ・フラガ、並びにライラ・ライラックス候補生。

フレイ・アルスター少佐は破砕作業を続行しつつ、地球へと降下するとのこと。我々は、大気圏突入に機体が追いつかない為帰還します。」

 

その状況は良いものではない、だが諦めきれない者がいるのもまた事実であった。

 

 

 

 

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