機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第4話

 

赤熱していく大地、強烈な重力加速度によってMSはユニウスセブン地表へと逆さまにへばりついているものもある。

それでもメテオブレイカーを必死に駆動させユニウスセブンはその質量の半数以上を小規模なものにまで減ずることとなった。

 

だが、完全な破壊とは言えずそれによって地上へは大小様々な悪影響を及ぶことは明らかだろうが、この戦闘の当事者には今はもうどうでもいい事なのだろう。

 

眼前に存在するエール装備のフレイのストライクを睨むように、片腕を破壊されたジンHM2(ハイマニューバ2以下ジン)が1機、更にそれに付き従うように無傷のジンがストライクの両翼を固めていた。

 

「貴様の手で散っていった者達の為に、今ここで堕ちろ!!

 

その言葉と共に3機は連携してストライクに攻撃を仕掛ける。

 

エール装備はその機動力と引き換えに、単純装備は非常に簡素なもので、

ビームライフル

ビームサーベル×2

実体盾

で構成されている。

と言うことはつまり、近接戦ではライフルの一発かビームサーベルでの対応しか出来ない。

この場合波状攻撃こそが、その真価を殺すにはうってつけであった。ただ、コレにはパイロットが普通であったならという、そう言う注釈が付くだろう。

 

ストライクのライフルが迸ると、ジン一機が見事に花開く。その間にも間合いを詰めていくもう一機が、ビームカービンを一気呵成に猛射するが、それをまるで来るのが分かっていたかのように、ヌルヌルと最小限の動きで躱していく。

その間に片腕をもがれたジンが、その斬機刀をストライク目掛けて兜割りの要領で下へと振り下ろす。

 

通常PS装甲でそれを防御する事が出来るだろうが、衝撃までは殺せない。そして、この大気圏への突入前という段階において、電力消費を最小限にしなければならないという、制約もあるりながら決死隊となった彼等の攻撃は死に物狂いである。

 

であるから、ストライクはそれを半身ずらす事で逸らし、振り下ろし後の僅かな硬直をもって、半身をずらした反動を利用して盾を猛烈に叩きつけた。

対弾性を極める為に創られた盾と言うものは、その衝撃耐性は単純にその簡素な造りから得られる。

 

ジンは予想外の横方向からの衝撃に、あっけなく横転しようとするのを良いことに、カービンからの猛射をそれを盾にすることで完全に遮断したところで、ユニウスセブンの帰還限界点を突破した。

最後に生き残ったジンを如何にして料理するのか?

 

本来ならば捕縛してしまいたいが、残念な事にジンに大気圏を突破する機能は備わっていない。

と言うことは、完全に殺し合うしか無いのだ。

 

「ナチュラル風情が……、何故だ。何故それ程までに戦える、何故ナチュラルの癖に貴様それ程強い!」

 

敵からそんな言葉が投げかけられるが、フレイはコックピットの中でそんな言葉に答えることは無かった。

彼女は怒りと哀しみを見いだしていた。

こんな事して何になるのか、どうしてそこまでして復讐を果たそうとするのか……、嘗ての自分も最悪こうなっていたかもしれない。と。

 

だからこそ、猛然と突進してくるジン目掛けて引き金を引いた。

見事なまでにコックピットに直撃したあと、残っていたのはただ虚しい気持ちだけであった。

ユニウスセブンで少しの間、彼女は立ち尽くすどうしようもない、この現状を変える術を持たない現実を受け入れて。

 

 

……

 

タンホイザーによってある程度の破砕を試みたミネルバは、大気圏を突破したインパルスとザクを着艦させ、後は重力に従い何処かに着水するだけとなっていた。

その為、オペレーターとしての仕事を全うし艦橋内で数少ない空き要員となった、赤髪ツインテールの緑服の女の子メイリン・ホークは、手持ち無沙汰となっていた。

 

その時、通信主が声を上げた。

 

「これは…、地球連合所属ストライクが本艦への着艦許可を求めています。現在降下中このまま行けば海面への落下コースです。」

 

「収容を受け入れなさい。オペレーター、誘導お願い。」

 

「は、はい!……こちら、ミネルバMSオペレーターのメイリン・ホークです。今から誘導を開始します。」

 

『ありがとう、このままだと海での圧壊コースだったから正直助かったわ。』

 

この時、メイリンはこの通信相手がどういう相手であるか分からずにいた。そして、別にそのパイロットへの興味などこれっぽっちも無かったのである。 

ただ、綺麗な声の人だなぁというそんな感想を抱いた。

ユニウスセブン破砕前に渡されていた機体データを参照し、ストライクガンダムである事を確認すると、ミネルバの着艦区域まで効率良く誘導していく。

 

既に武装はパージしていると言う主張を取り入れ、素直に指示をしていくと、だんだんとコンソール内で機体状況を確認できるようになる。

だが、あるものを眼にしてしまった。

黒焦げているもののその盾に施された紋章、それを眼にすると嫌な感じがした。

アルスター十字にFの紋章

フレイ・アルスターの乗機であるその証、どう見ても一級の厄ネタである。

特に、そのパイロットに問題があるのだ、何故なら相手はブルーコスモスである。

 

平然と着艦するのを確認すると、思わず汗が出てきている事を実感し、何やらヤバい人を乗せてしまったのかもしれないと、内心戦々恐々としながらも、艦長命令だったから仕方がないと自分に言い聞かせた。

そう、その仕事が終われば後は他人事に出来る、面白い事だが少し面倒くさいからそれから逃れようとした時、声がかかった。

 

「ホークオペレーター、ちょっと良いかな?」

 

声をかけてきたのは、なんとアーサー・トライン副長である。ザフトでの階級で黒なのだから上から2番目、つまりは偉いのであるからその言葉を無視するわけには行かなかった。

 

「えっと…、なんでしょうか?」

 

「僕と一緒に格納庫の方に来てもらっても良いかな、ちょうど連合のパイロットが降りてくるだろうから、一緒に出迎えて貰いたいんだけど。」

 

えっ?としながら、どうして自分が選ばれたのかあまり良く分からなかった。相手との接点なんて何も無い(・・・・)筈なのだが。

 

「それはちょっと行きながら説明するよ。」

 

初戦から頼りなかった人物とは思えないほどに堂々としている副長の言葉に、メイリンはこの人のことを少し誤解していたのかもしれないと、そう思った。

格納庫への道すがら話し始めるアーサーは、メイリンの役割を言った。

 

曰く、パイロットの年齢と近いこと、同性であること。そして、オペレーターとして短時間ながら接した事の3つを上げ、パイロットが誰に1番心を許すだろうかとなった時、メイリンの名前が上がったというわけだ。

 

勿論、メイリンにそんな事は知らされていないし、アーサーも言っていない。

アーサーという男は、一見すると突然の出来事に弱いようであるが、常識というものをわきまえている。

つまりは、ある程度のマニュアルが有ればそれをそつなくこなす、そんな男だ。何より、人の観察が上手い。

 

アーサーにとって、この短期間でメイリンという人物の評価は社交性という点から見ても良好で、突発的な事に強い。そして何より、好奇心旺盛と来た。なら、相手から何か引き出せるかも…という、まあ欲があったがそれはオマケで、本音は連合のパイロットに暴れられたくないというものである。

なら、そういう相手に拝まないメイリンが適任とも言えた。

 

格納庫に付けば、もう保安隊が出迎えている。

そして、その直ぐ近くにはメイリンの姉であるルナマリアの駆るザクウォリアーやレイの駆るザクファントムが、それを出迎えるのように待っている。

コレは、妙な気を起こされないようにと言う、最大限の警戒故である。

 

そして、その例の相手であるストライクは今当に格納庫の最外部で、その機体を駐機している最中だ。

オペレーターであるメイリンの手を離れて、後は格納要員に誘導されているのだ。

 

アーサーからの説明を受けたのだからと、メイリンは気を強く張った。どんな人物が現れるのか、声の調子から女性というのは分かるし、連合のプロパガンダだって見たことがある。

その時のフレイ・アルスターと言う人物と全く同じであるか?と言うのがこの時分かるのだ。

 

周囲に見物人が増えていく、業務を遂行する手も停めてそれを見ようとすると、ストライクのコックピットが開き中からパイロットスーツを来た一人の女性が現れ、昇降機を使用して格納庫にその足を着けた。

 

そこにアーサーとメイリンは前に出て、自己紹介が始まる。がそんな面白みのない物どうでもいい、早くそのメットを外せと場の空気は固まった。

 

「フレイ・アルスター少佐です。受け入れ感謝します。」

 

メットを外すと、髪を振り汗で濡れたそれから僅かに艶が流れる。

 

「私は副長のアーサー・トライン、艦長の代理です。それと、」

 

「艦までのオペレーターをしておりました、メイリンホークです。」

 

メイリンが、その顔を見た時思った事は綺麗な人だなぁという、簡単な感想だった。

勿論、コーディネイターは基本容姿が整って産まれてくる事が多いし、美男美女が多くいる。

だが、目の前の人物がブルーコスモスに所属していて、その出生

もナチュラル確定であるとするならば、それは明らかに生命の神秘だったのだろう。

 

自然体でコーディネイター並の美貌を誇るのだから、関心しないわけには行かなかった。どうやってお肌の手入れとかしているのだろうか?と言う、的外れな疑問が。

 

「少し窮屈な想いをすると思いますが、何分我々も状況が状況ですので、案内はコチラのメイリン・ホークが担当します。アルスター少佐。」

 

「わかったわ、それじゃあよろしくお願いします。メイリン・ホークさん?」

 

1つ年上とは思えないほどに、大人びているのだからメイリンはその姿に感服していた。

 

保安隊も随伴しつつ待機所へと案内するメイリンは、少し話がしたくなっていた。

姉と同じであるにも関わらず、とても落ち着いた雰囲気がするのだ人はこんなにも違うものなのだろうか?と。

 

「あの〜、」

 

声をかけ始めると、すぐにそれに気がついたのかフレイはメイリンに気を向けた。

 

「気安く、フレイとでも呼んでちょうだい。アルスターなんて呼んでほしくないの、別に嫌いじゃないけどちょっと他人行儀過ぎるじゃない?」

 

「えっ、あじゃあフレイさんと呼びますね?私のことはメイリンと呼んでください。この艦には姉もいますので、ホークだと被っちゃいますから。」

 

そう言うと当たり障りの無い話をしながら歩いていく、特に美容関係の話を。

途中、汗臭いからとシャワーを借りられるか聞かれたが、善処する旨を話し取りあえずは待機してほしいと伝える。

 

だが、タイミングが悪いという事が重なってしまった。

 

……

 

「なんでこんなところに連合のパイロットがいるんだよ!!」

 

それはパイロット待機所から、声が響いていた。

そして、当事者であるフレイと対峙するようにシン・アスカが正面からそう怒鳴ったのだ。

真っ直ぐで曲がったところのない、好青年ではあるもののこういった融通の利かなさもある彼は、この状況が気に入らなかった。

 

ちょうどパイロットスーツから、身を出したアスランを添えて。

 

「あら、じゃあ私が海に落ちて死ねばよかったとそう言うのね?」

 

「そうは言ってないだろ!!」

 

「でも、結果はそうなるのよ?」

 

シンが何かを言えば、フレイの言葉が帰ってくる。

その為、シンは売り言葉に買い言葉で何度も何度も嫌悪感を露わにしながら言い続ける。

そして、そんなシンに対してフレイは哀れみと謝意を込めて言葉を紡いだ。

 

「ごめんなさいね、大切なものを奪って。」

 

いきなりそう言われたのだからシンは戸惑う。何を言っているのかと、どうしてそんな事を言うのかと。

 

「貴方オーブの出なんでしょ?なら、連合兵の私に嫌悪感を持つのは仕方ない事ね、だってそうでしょ?私たちは貴方のご両親と妹さんを吹き飛ばした……、それに嘘偽りは無いのだから。」

 

勿論、あの時あの場所にフレイはいなかった。だが、連合がやった事は変わらない。

その言葉にシンは何を言えば良いのか分からなくなり、その間に緊張した面持ちのメイリンと共にその場を後にする。

そして、フレイはそんな場面に遭遇し後ろで固まっていたアスランとすれ違う瞬間一言だけ言った。

 

「幸せにしてあげなさいよ。」

 

それは俄に怒りを込めた言葉なのだった。

それにアスランは気がつくことも無く、只々カガリとの仲を心配しているのかと言う、誤解を生んでしまう。

 

そんなものを知らずに、シンはその場に立ち尽くし彼女が姿を消すのを只黙って見送った。

 

 

……

 

この日ユニウスセブンは、その過半を細分化され四分の一が地球へと落着した。

その、被害は計り知れないだろう。

太平洋岸の人々は逃げ惑い多くの死者行方不明者、そして被災者を作り出し世界は大混乱の中に落ちる。

 

それはあまりにも不条理で、戦争の終わりをきちんと行わなかったツケだろう。

だからこそ、その危機を乗り越える手段を人は考えなければならないが、その不満の捌け口を何処かに逸らしたい者達も確かに存在する。

 

それでも世界は回るだろう、大混乱を更に混沌の海に沈めながら。

 

 

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