機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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遅れてしまって、本当に申し訳ない。(メタルマン博士風)
仕事と風邪に悩まされていました!


第12話

 

「ほんっと、何やってるのよ。」

 

フレイはドミニオンの自室にて、ディスプレイを覗き込みながらそう呟くと、その映像を戻して再度その情景を眺めた。

何を観ていたのかといえば、それはカガリの結婚式と言うことで世界的に報道されていた、オーブでの一幕だった。

 

ユウナ・ロマ・セイランとカガリの結婚式を納めるために、カメラがそれを撮影していたのだが、結婚式を締め括る誓約を唱えていたところに、突如としてフリーダムが舞い降りてカガリを何処へとも連れ去ってしまった。

と言うものだ。

 

勿論、そう到った経緯をフレイは知る由もないが、キラやラクスがオーブ国外に逃亡すると言う意味なら理解出来る。

現在、ブレイク・ザ・ワールド以後世界中至る所でテロが起きていた。ブルーコスモスに所属するコーディネイターは、これに対して毅然とした態度で立ち向かう姿勢を見せたところで、同胞がどういった経緯で犯行に及んだのかを訝しんだ者達もいた。

 

結果として、プラントと地球との溝は以前よりもより深いと言って良いだろう。

在地球のコーディネイター達は、プラントに大なり小なり不信感を抱きブルーコスモス特に擁護派に属するものが増えていた。

 

そんな中で大西洋連邦が提唱した世界安全保障条約とか言う、緩い統一国家連合体への参加をオーブに呼び掛けるのは、強ち無理筋な話ではないが…、問題はその裏にあった。

 

現在、大西洋連邦の上に君臨するのは大統領と言う傀儡を介してロゴスが行っている。

即ち、大西洋連邦と太いパイプを持っているセイラン家は、実質的にナチュラリスト達が多い組織に身を置いている事になる。

 

それをどういった経緯かはわからないが、確かな事は在地球コーディネイターの力を借りて、ラクス等は情報を掴んだ可能性がある。

そうなった場合、カガリは神輿として最終的にどうなるか?

最後まで操られたあげく、後に残るのは全てを剥き出しにされた小さな一人の少女となってしまうだろう。

そうなっては、正常な判断も出来ない。

 

そして、オーブ軍はそう言う事に対して明らかにアスハ家擁護に動く傾向があるから、そう言う方面からの要請もあったのだろう。真相は定かではないが、そんな事をフレイが知る由もない。

 

フレイが知る事は、大西洋連邦大統領の上にロゴスがいて、彼等にブルーコスモスの過激派がいる。

と言ったくらいでしか無い。

だが、それだけの情報だけでもフレイには何かしらの確信があった。無意味な行動をラクスが、その周囲の人間がする理由がないという根拠のない確信が。

 

「ま、今心配しても意味ないのよね…。それよりも、そろそろ来る頃かしら?」

 

彼女は何かを感じ取ったのか、映像を消すと士官服を着て更衣室へと向かった。

 

カツカツ

 

と、早足で進む彼女に行く人かの者達がすれ違うと、何かを察したのか周囲の人間も急いで自分の持場へと急ぐ。

ここ最近、ドミニオンのクルーは猛烈な練成によってその練度を急激に高めていた。

確かに実戦の経験は少ない新兵であったが、隕石の中を進むよりかは遥かに楽なものだろう。

 

一端の軍人としての意識の芽生えと、フレイという艦内でも若い者故の嘲りはどこかへと消え今では、畏敬の念を持っていた。

そして、フレイという一人の少女が様々な行動に対して、あたかもそれを知っていたかのように動く振る舞いに、時折こう言う者が現れていた。

 

〘彼女はエスパーなのではないか?〙

 

遺伝子組み換えという技術によって、その様な事も可能となっているのか?だが、残念な事に彼女はナチュラルであり更にはブルーコスモスの頭目の一人だ。

 

彼等は想像することを忘れてしまっていた、いやこの時代の人間は、人は遺伝子なんぞ弄くらずとも自ら環境に適応し、進化する道が閉ざされていないということを。

敢えて、そう思わせるように世界が動いていたのかもしれない、そのほうが手っ取り早く人を強化出来るから。

 

 

……

 

地球連合の大規模侵攻部隊が、秘密裏にアラスカに集結しつつある。

 

カーペンタリアへとその報告が入ったのは連合の侵攻を退け、ミネルバ及びその他戦力がインド洋方面へと展開した後であった。敵の第二波攻撃がまた始まるのか?と、カーペンタリアは警戒を強めていたが、日に日に膨らむ戦力に見るに見かねて攻撃を仕掛けることを決意した。

 

敵基地施設は現在建設中であり、その様な位置へと大規模戦力を駐機することによって、カーペンタリアのアメリカ大陸への戦力眼を逆手に取った形であると、判断したのだ。

仕掛けるのであれば、敵の警戒網が手薄の今しかないとカーペンタリアは少なくない戦力を、そのアラスカまで展開する羽目になった。

 

知っての通り、太平洋は大西洋連邦をはじめとした連合諸戦力のバスタブである。そんな所を、南半球から北半球最北まで移動するのは危険極まる行為であるが、宇宙からの降下を待っていては敵は戦力を固めてしまう。

 

その為現有戦力で対処する他無く、この様な戦闘には機動と奇道を以てして挑むのが最優の判断だと結論を出した為だった。

 

参加可能なボスゴロフ級は3隻、それ以上の戦力はカーペンタリアの防衛上不可能である。

この様な予防的な戦闘の場合、奇襲を行いそのまま敵が立て直す前に撤退するのがセオリーであり、制圧を目的としない。

 

故に、この場合補給線と言うものを軽視して話を進める事が出来る。

尤も、プラントの人口は余りにも少なく、ザフトにとっての補給線とは即ち宇宙との孤絶であるから、地上戦力に余裕などある訳もなくどの様な戦闘であろうとも、現状長期の占領など場を選ばなければ不可能である。

 

そう言った意味でのアラスカは、補給線の延伸を表すから不可能である。

 

さて、では件の戦闘の経過がどの様に推移していったのか?

 

まず、戦闘は夜明け前。つまり午前3時に始まった。

NJの影響により、レーダーの能力を限定化されてしまっている事に加え、人間は元より昼行性の動物であるからこの時間帯、最も頭の判断が鈍るのである。

 

従って、この時間の奇襲は最適であり所謂教科書通りとも言える。だが、同時に暗闇というものは同士討ちを受ける事も多く、高等教育を受けた者が行えると言う、コーディネイターには最適な戦術であった。

更に豪雪である、これ以上無い最大の奇襲の機会だった。

 

海中から沿岸へとボズゴロフ級3隻から出撃した、ザフトの新旧合わせた水陸両用MS群は、直ぐ様早期警戒を行う発令所をターゲットに定め、コレを攻撃した。

 

突如として行われた攻撃によって、基地の判断が遅れているのか?全くと言っていい程反撃が無い、何よりMSが駆動していないのが余りにもおかしいのだが、そう勘ぐっている時間も惜しいため、雪崩のように次々に奥へと進んで行く。

 

そして、そのまま数分経つと足元で突如として爆発が起き、数機が倒れる。

それは対戦車地雷を使用した、地雷原に入った事を意味するのだが遠距離からの攻撃と勘違いしたのか、そのまま退避行動に入っていく。

 

勿論、砲撃など行われていない。

ここまで必死になって攻撃しているが、破壊されたものの全てがダミーである為、連合の戦力としての低下は0である。

確かにここまで造った資材は多いが、殆どがバルーン製の物に気化燃料を少量充填したものである。

 

豪雪吹き荒ぶ真夜中、しかも冬であり日の出は遅い。

カメラに映る映像は、正直言ってそれが施設かバルーンなのかと言う見分けもつかない。

NJによって自らに齎されていた恩恵を最大限利用されているとも知らずに、段々と奥地へと侵入していく。

 

次々と爆発炎上が広がると流石に違和感に気がつく者達もいるが、その判断を仰ごうとしてもNJの影響下だ。

艦に連絡を取る手段は限られている。

 

そして、運命の時が来た。

 

どこからとも無く、大量の砲弾が降り注ぎ一機のゾノが大破した。

効力射、1点の目標に対して全ての車輌が同時に砲撃を浴びせ、それを破壊する。

 

曳光弾を使用すること無く、的確に降り注ぐのは元々その場を指定した射撃である。

トラップの発動と同時に、その場に敵が釘付けとなり火炎を目印に砲撃が飛んでくる。

レーダーが使えずとも、通常の炎と違う物がでてくればそれを狙うは易い。

 

しかし、所詮は砲兵射撃である。

動目標に対して、特に弾幕を意識して突き進んで来る相手にはめっぽう弱い。

だが、砲兵を護るのが歩兵の仕事であるのだから、砲兵その前列にドミニオンのダガー3機が位置し、最終防御射撃を開始する。

 

たった3機の弾幕でその突撃を止めることは出来ないが…、3機である。ドミニオンは基本的に6機運用、では後は何処にいるのか?

丁度中間に差し掛かると、射撃が止むそこを横合いから格闘戦が始まった。

 

元来連合の機体は格闘戦は不得意である。だが、このドミニオンに置いてはそれは当てはまらない。

フレイの戦闘データと、アズラエル派のみに許されている自己学習AIによって、その動きは最適化されている。

 

それはパイロット一人一人のバイタルデータと、模擬戦時の癖。其れ等を猛烈な量で模擬戦を繰り返したこの数日間で培われたものだった。

新兵ではあるものの、その動きはコーディネイターのベテランに通じる。

 

そして、遅れていた敵と前進し過ぎた集団の間には、ストライクが布陣し壁となって2つを分断していた。

汎ゆる攻撃を回避し、その威容を存分に振り撒きつつ一機また一機と、数え歌が始まる。

 

さて、ここで敵を全滅させても良いがそれは殺ってはならない。何故ならば、それだけこの基地が狙われやすくなるということでもあるのだ。

 

本当はあの基地は狙う価値なんて無いんだ。

 

と、最終的に報告する者が必要になってくるのなら、1割は生かして置かなければならない。

 

そして、ザフトの最後の一兵が脱出した時この基地の損害はダミーと、ありったけの地雷。

そして、消耗した弾薬だけであった。

値段にしてみれば、MS4機分。そんなもので敵MS20機近くを撃退出来ているのだから、大金星だった。

 

 

……

 

地球連合本部は、アラスカでの戦闘報告を聞くと溜息を吐きながら、ドミニオンの処遇を判断しかねていた。

下より作戦指示を出していた訳ではなく、勝手な判断で基地の改造をしていたそれをNJの影響下である事を理由に、感知していない体でいた司令部にも、その責任はあるのだがそれは置いておいて。

 

現在太平洋上でのザフトの戦力は低下し、これによって積極的攻勢を太平洋上で取ることが出来なくなる。

海中部隊の手痛い損失のおかげというが、一度ならず2度までもアラスカでやられた欺瞞作戦に、流石に戦力回復に努めることを決意したようだった。

 

だが、カーペンタリア攻勢で大敗したダメージを連合も負っており、太平洋上での戦線は完全に膠着状態へと陥ったのである。

そこでドミニオンにカーペンタリアを落とせと言ったところで、一隊だけでは無理は分かるし適当な理由もない。

頭を抱えた彼等は、致し方なくドミニオンのヨーロッパ方面への移動を発令する。

 

コレは基地司令とドミニオン隊の思惑通りという結果である。

が、移動経路に関しても指定できないでいた。

あからさまに適地を通って行けとも言えず、ユーラシア連邦領内を通すのも本来ならば憚られる。

そこで、やんわりと北海航路を通る様に通告した。

 

だが、問題として現在北海は氷に閉ざされつつある。

そんな所を通るのだからリスクが伴うとし、一部その命令は曲げられる。

大西洋連邦の良識派の意向もあったのだろう、沿岸部の通航を許可しないとは言われなかった。

 

……

 

未だ熱を持った大地に座するドミニオンの艦内で、再び幹部会が開かれる。

今回の戦闘での互いの功績を称え合っていた。が、話も終盤に差し掛かった頃ナタルは基地司令に問いた。

 

「基地司令はこの後どうするおつもりで?言ってはなんですが、現状この基地にいたところで、何か出来る訳ではありませんよ?」

 

「私としては貴官等に着いていきたいところではあるが、如何せん我々はそれなりの大所帯。全数の収容は無理であろう。

そこでだ、我々は貴官らの言葉を頼りに一路南アメリカを目指そうと思う。」

 

アラスカから南アメリカまで、直線距離でざっと2万キロは有るだろう。だが、その瞳に映る決意に濁りは無かった。

 

「どの様な手で…、と言ったところですが何故だか分かりませんが貴方ならやれそうな気はします。」

 

「そうか、お世辞として受け取っておこう。

 

さて、諸君が向かう先ヨーロッパは現在連合と反連合の2つの勢力に分断されている。所謂分離独立派が強い地域だ、それ故に油断はしてはならない。どの様な事態になったとしても不思議ではないからだ。

 

常に士気を意識し獅子奮迅の活躍を期待する。

私からは以上だ。」

 

基地司令がその言葉で締め括ろうとした時、フレイが口を開いた。

 

「叔父様も気を付けてね、何があっても前に進んでよ?」

 

その言葉にいったいどういう意味があるのか、それは心配故かはたまた何か確信があるのか?

だが、一つ言えることは…

 

「有難うお嬢さん、こんな老骨の心配をするとはまだ世界も捨てたものではないのだな。」

 

一人の老人が、自らの使命を意識していたと言ったところだろう。

 

この後、ドミニオンは休む間もなくアラスカを出港し一路ヨーロッパ方面へと転進する。

その道中驚くべきものを発見する事になるが、この時は誰もその事を知るものはいなかった。

 

 




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