機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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う〜んう〜ん


第14話

 

英雄(ヒーロー)とはなんだろうか?

何の見返りもなく、ただ争い事を解決していく者か?はたまた、周囲の人間に力を分け与え共に生きていくものだろうか?

 

だが、現実問題。何の見返りもなくそんな事をする人間がいるのだとすれば、非常に不気味だろう。

自らの死を恐れず、汎ゆる行為に対して超法規的に事態を収拾していく…、そんな存在がいて治安が持つのか?と言えばNOと言える。

 

アイツはあんな事をやっているから、自分達もやって良いのだ。そう思う者達が出ないということはあり得ない。

それによって、さらなる悲劇を生み出す事だってあり得る。

だからこそ、漫画等にあるようなそんな存在いては困るのだ。

 

シン・アスカはインド洋における戦闘の折、敵基地に存在する民間人に対して、連合兵士の発砲を見るやそれに対して怒りのまま攻撃した。

それは周囲の人間たちにとってどう映っただろうか?

 

帰還後、アスランに言われた言葉は

 

「戦争はヒーローごっこではない。」

 

というものであった。

その言葉に対して、あの状況下においてあの判断が正しいことだと自己正当化し、アスランとの溝が深まる要員となっていた。

 

だが、彼の行った英雄的虐殺後解放された住民が行った行為を、彼は知る由もなかった。

 

ミネルバとザフトが、連合基地を占拠した後周辺住民は各個の判断の下、嘗て自らを弾圧していた連合兵士達を捕らえようと躍起になっていた。

 

ザフトには治安維持に割くほどの戦力は無し、結局は基地周辺を制圧下に置くことしか出来ず、治安維持は現地住民に任せられることが多い。

今回の事案もそうだ、だが管理者を失った住民というものは得てして暴走しやすい。誓約の失った彼等は、抑圧されていた物を一挙に解放するだろう。

 

そして、ミネルバがヨーロッパ方面へと歩みを進めるべく港を経った後、事態は発生した。

住民による、連合兵士達の虐殺が行われたのだ。

自分達をどれ程痛めつけていたのか、それを被害者は被害者意識のまま膨らませ、際限なく意識を尖らせる。

 

投降した兵士は本来であれば、キチンとした処置の下拘留されていなければならない。

だが、そんな事を住民が知るはずも無く見つけられ捕らえられた者たちは次々と吊られていった。

 

そう、彼等の脳裏にはあったのだ。シンの英雄的虐殺を正当化の材料とする事が出来る判断力が。

そして、これこそがアスランがシンを叱りつけた意味であり、アスランは言葉足らずにシンを叱りつけるだけとなったが、この事実をシンは知らぬままヨーロッパへと赴いていた。

 

彼は実際に関係しているわけではないが、彼のせいで物事が悪い方向へと進んでいる事に気が付くことはない。

人の目と耳はそれぞれ2つずつしか無いのだから、目の前に存在しない物事など知るよ方法もない。

だからこそ彼はこの様な事を続けていくだろう、そしてそれを擁護する周囲もまた同罪であることを覚悟しているのだろうか?

 

この件に関して言えば、アスランの判断が如何にまともであったか。

彼の叱咤は決して良い方法ではないにせよ、彼個人としてはシンにもっと自覚を持って戦って欲しいという一心のつもりだ。

それが、本人に届いているかは兎も角、彼の仕事としてはそれ以上は要求出来ない。

 

ルナマリア等のようにシンに同情的であるだけでは、シンは自らの功績に飲み込まれ、暗闇の中に闘争の中で生きる他無くなる。

アスランはそれを案じたからこそ、自ら汚れ役を買って出た。だが、そのアスランの説明は余りにも解り辛かった。やはり、彼には上役や指導員は向いていないのだろう。

 

頭は良いが、頭数はなし。占領してもそれを継続するだけの戦力もなく、ただ個人の力は絶大である。それこそがザフトという組織の強みであり、弱みでもあった。

 

そんな事構うことなく、ミネルバ隊はスエズの攻略を果たす。

破竹の勢いのまま、ザフトの士気は有頂天に達していた。

シンは、その波に飲まれ今の状況を受け入れていく、それが良い事なのか悪いことなのか、そんな判断を下すのに彼はまだ未熟であった。

 

スエズを攻略し、ディオキアの町に到達するとそこでハイネというFaithを迎え入れ、ミネルバ隊は更にその戦力を充足させていく。

シンはそこで、ステラと言う少女に出会うことになるが、それは本編であるから割愛させていただく。

 

ただ、ここに至ってシンに一つの疑問が浮かび上がった。

ドミニオンでであったクルーの事だ。

彼等は地球軍である、であるのだが自分達と同じ様に物事を考えて生きていた。

そんな彼等が果たして、今迄戦ってきた地球軍の敵と同じ様に目の前に現れるのだろうか?と言うことだ。

 

彼の見てきた中で、地球軍の動きは余りにも横暴なものが目立っていた。

それこそ住民を奴隷のように使う者達を、さも当然にシンは受け入れそれを屠っていた。

だが、逆に言えばそれしか見ていない。極端な部分しか見ていないことに、今更ながらに気がついた。

 

もしかすると、そんな中にも命令されるだけされて本当はドミニオンの彼等の様な人もいたのかもしれないと。

戦争だから仕方がない、そう言ってしまえば簡単な事だろうがシンは意識してしまった。

そして、ある結論に辿り着いた。

今迄戦闘をしてきた場所にも街というものがあり、人々が暮らしていた。

 

駐留軍というものは、家族とともに動くことも多い、そうなった場合もしかするとその家族を戦争に巻き込んだ可能性もあるということだ。つまり何を言いたいかと言えば、シンは自分の家族を殺した連中と同じ様に、人を殺した可能性だってあるという事だ。

 

それを思い立った瞬間、シンは吐き気に見舞われた。それは彼の内に巣食っていた恐怖、彼の歴史今の彼という存在を作り上げたものが、音を立てているのだ。

 

誰かに相談するべきか?誰に?

プラントの人間から言わせれば、連合は敵である。それが意味することは割り切りを持って戦えと言われるだろうということは、勿論シンにだって分かっている。

なら、誰だ?

 

答えはシンプルに一人の人間に到った。アスランである。

 

アスラン・ザラ、ザフトレッド、第一次連合・プラント大戦を終結に導いたものの一人。所謂英雄と言われる部類の人間であるが、本人にその自覚はない。あるのは、大罪を犯そうとしたパトリック・ザラ、その息子であるというくらいだろう。

 

そんな人物であれば、何かしら答えを知っているのではないか?シンはそう思ったのだ。

勿論、その考えや姿勢に対して思うところはあったが、こういった部類の物事を一番分かっていそう。そんな気がした。

実際、シンを叱りつけた時にもそれなりの考えを持っていたのだから。

 

勿論、最近赴任したハイネにもと思ったが、身近な上司はやはりアスランなのである。

 

レクリエーションルームにて休憩中のアスランを見つけると、シンは自分から声をかけた。

 

「隊ち…、アスラン!」

 

「…?なんだ?シン、そんな神妙な顔をして?」

 

珍しく察しのいいアスランは、シンの顔を見てそうは判断した。それ程までにシンは考え込んでいたと言うことだろう、いや考えてしまうのだ。

 

相談事がある事を告げ、アスランに胸中を語った。

割り切って戦うと言うことの辛さ、そして戦わなければならないという、ある種の孤独感を。

 

それを聞いたアスランに的確な指導が出来るかどうか、それはさておきアスランはシンにとある物を話した。

 

「俺の経験が生きるかどうかそれはわからないが、俺もお前と同じ様に悩んだ事があるよ…。

シン、連合のストライク。それも最初のストライクの戦績を知ってるだろう?」

 

連合、アークエンジェルのストライク。それはザフトにとっては非常に重い存在、前大戦連合が開発した機体。

それだけではなく、様々な戦場で数々の痛手をザフトに負わせた物…。それが、一体何の意味があるのか?

 

「アレを落としたのは俺だが、一つ誰も知らないことがある。それは、あの機体を操縦していたのは俺の幼少時の友人だったと言うことだ。俺はそれを知って、奴を落とさなければならなかった。」

 

幼馴染を殺す、その行為がどれだけ辛いことなのだろうか?家族を全て失ったシンとはまた違う経験ではある。

 

「あの時、俺は非常に後悔した。説得出来ないものか、何度も何度も戦いながら、だが奴は俺の仲間を撃った。だから、殺さなければならなかった。

シン…、もし俺のようになりたくないのなら、軍を辞めろ。今続けても、辛くなるだけだろうからな。」

 

「俺は……、俺は誰かを守れるようにザフトに入隊したんだ、今更そんな事は言わない!」

 

それを聞いたアスランは何か口元を歪めた。

 

「まあ、なんだ。この話には続きがあるんだが…、聞くか?」

 

そして明かされる、アスランの言葉とそれを何処かで聞いたことがあるシン。

そう、フリーダムのパイロットであったと言うキラの語ったそれと、余りにも似ていた。そして、一つの結論に至る。

 

「一つ聞いて良いですか?」

 

「なんだ?」

 

「その友人って、キラ。キラ・ヤマトって言う名前なんじゃ。」

 

アスランは目を丸くしてシンを見つめると、徐ろに

 

「キラを知ってるのか!」

 

「ええ、まあ。オーブで少し話を…、それに…色々と聞かせてもらった。」

 

シンのその言葉にアスランは、意を決した。

 

「シン、その事は誰かに話したのか?」

 

「いや、アンタだけだけど…。」

 

そしてアスランは、一言言葉を残してその場を発つ。

 

「シン……、お前の口を信じて言う。議長に注意しろ、アレはラクスじゃない。」

 

シンの耳元で囁いて

 

「ハァ?」

 

突然そう言われてシンは困惑するが、その場に一人取り残された。そして、シンは悩み事の答えを得ることは無かったが、余計な事を考えないようにしようと思った。

何があっても、あのアスランですら流れに身を任せるしかできなかったのだから、今考えても仕方がないとそう思ったからであった。

 

 

……

 

ミネルバを北海航路から抜き去り、追い付く算段でヨーロッパへと向かうドミニオンであったが、途中増えた子供達と言う存在に非常に苦慮していた。

 

「あ〜ベロベロバァ〜ー!」

 

 

普段は空いている会議室、その広い空間を活用して子供達を一箇所に留め置き、艦内の危険な場所へと行かないようにする。

当然、トイレやお風呂等にも入れなければならず、そんな育児などやってきたことのない彼等にとっては一番の問題だった。

 

「あの、僕達も何かお手伝い出来ないですか?」

 

そんな中でも、最年長である14歳の少年が声をかけるも、そんな子供に艦内をうろちょろされたらたまらない。

だからやんわりと断る事しか出来ないのだ。

 

「はぁ…、ここは託児所ではないのだがな。」

 

深々と艦長室に座り独り言を溢すナタルは、周囲に聞こえるようにそう言った。

それを、聞いた艦橋クルーがそれに反論するように

 

「でも、収容するように言ったのは艦長ですし、それに艦長。満更でも無さそうじゃないですか。」

 

クルーがその目に捉えるのは、少しだけ頬を緩ませたナタルの姿である。

戦争という物事に従事する傍ら、その肉体には疲労が蓄積するが精神にもまた同じ様にする。

 

子供という存在が現れてから艦内の空気は少し緩くなっていた。

良い気分転換になっていると言えよう、元々ナタルはそういう物に慣れてはいないが、タッシルでの出来事を思い出しつつもこういう子供達を無視できるほどの人間では無い。

だが同時に、そう言った子達を救う事が出来たという事は、艦内に良い影響を、与えていた。

 

だが、それは同時に問題とも言えた。

子供達の処遇についてだ。

 

「このまま行くとすれば、ユーラシアの北方艦隊司令部ルハンシクに寄港するのが妥当です。

ですが…その場合子供達の処遇を彼等に託すという事に…。」

 

自分達の手を離れ、それを誰かに託すと言うことは非常に難しい考えである。

何故かと言えば、地球連合と言うのは悪い噂も多く子供達がそう言った方面へと駆り出されないかと言った心配からだった。

 

そして、大西洋連邦とユーラシアの中は依然として良いものではないから、そこに拍車がかかる。

 

「我々に出来ることは限られている。最悪の場合はこのまま、アイルランド、ベルファストを目指す事になるだろうな。」

 

まだ、戦火は大きく広がりを見せていない。

だが、そう言った事例がユーラシア内部に日に日に広がりを始めている事を、段々と感じていた。

現にドミニオンの航行を単独で許している時点で、ユーラシアには余裕が無いのだから。

 

「数日前のスエズの情報から、ザフトからの総攻撃が予想されているそうです。そちらに向かわされる可能性もあります。その時は…」

 

「途中、どこかの街で降ろすのが吉か…。だが、降ろすとしてどこで降ろす?

それならまだ艦内のほうが安全と言えるだろう。

戦火が広がれば、近郊の街なんて直ぐに飲み込まれる。

 

それに、数日前に会ったのなら既に落とされているのかもしれない、現にそれ以降のスエズの情報は無いのだろう?」

 

八方塞がりだった。

 

そして、その言葉が現実のものになっていると言うことを、ドミニオンが知るには少し後になってからだろう。

杞憂とならない現実にその船足は重いものであったものの、陸上に影を落としながら、上空を滑るように飛行するドミニオンを停める障害など、有りはしなかった。

 

 

 

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