機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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明けましておめでとうございます。今年もよろしお願いします。


第19話

 

その日、ザフトが駐留するイベリア半島南端に位置するジブラルタル基地において、重大事項が発生していた。

突如として汎ゆる電子機器による応答が停止し、発電設備等がダウンした事によって機能障害が起きていた。

 

深夜にもなる時間に叩き起こされた兵士達は其れ等に対応しようと、右往左往するものの電気系統での弱電設備の電圧値が軒並み0を示す事によって、其れ等が抱えていた電子機器がダウンしていたのだ。

電位差を用いるコンピューターは勿論の事、其れ等から電源を引っ張っている量子コンピュータもまた完全に停止している。

 

もしこの時連合による大規模な攻勢が起きれば、この基地は瞬く間に陥落していた事だろうが、実際この事項は単なる事故的な物が要因となっていた。

丁度その時間帯において、ドミニオンはベルファストに向けて高高度航行を行っていた。

 

彼女から吐き出される高濃度のミノフスキー粒子は、彼女の足場となって彼女を10000メートルを超える高度を維持するに足る性能を有していた。

400メートルを超える巨艦が、ロケットのような莫大な推力もなくそんな高度を飛んでいることなど、誰が予想できようか?

 

しかし、それは偶然にもジブラルタル基地の真上と言うとんでもない場所を飛行していたのだ。

この時、ドミニオンは天文航法によって位置を把握していたのだが、それが少しズレを生じていた。

 

勿論それに気が付くのだが、何とも幸運な事にこの時ジブラルタルはそんな彼女を捕捉することなく、彼女の素通りを許してしまったのだ。だが、逆に言えばどちらも、知らぬが仏と言ったところで戦闘もなく伸び伸びとした航海をするドミニオンと、対応に焦るジブラルタル基地くらいの違いしかこの時はなかったのだ。

 

確かに奇襲すればある程度の戦果は認められるだろうが、流石にドミニオン一隻で地上を降伏させられるかといえば、無理だろう。何よりここにはザフトの最大戦力があるのだから。

ミネルバとの戦闘により戦力の低下したそれでは、余りにも荷が重すぎた。

 

そう、あの戦闘から未だ8時間しか時は経過していない。それだけに、互いに戦闘など起きようが無かったのだ。

 

ドミニオンはその身に着けられたミノフスキー技術によって、雲海の上を飛び越え、ザフトの防空網を素通りし無傷のままベルファストへと到着したのは、あの戦闘より12時間後の出来事である。

 

比較的迅速に行われた移動は、ザフトは元より地球連合も驚きの速度である。

そもそも、カタログスペック上ドミニオンには高高度航行能力は無いのだから、それがこの様なものになるのはあまりにも強烈なものである。

 

だからこそ、この事案によって連合内部の中立派は此等を実現したアズラエル派へと歩みを寄らせる事となるのは、必然の事であるがそれは後の事だ。

 

ともかく、ミラージュコロイドを使用する事なくそれが映像に映ることはない。光学レンズであればきっと映った事であるが、残念な事に現在使用されているその殆どはデジタル処理を施されている。

対策されていないコンピューター程、ミノフスキー粒子の影響は非常に大きかった。

 

……

 

 

 

ベルファストへと入港したドミニオンに待っていたのは、乾ドックと言う一種の休暇であった。

そもそも、極温暖地から極寒地へと移動を果たし更にそこから地中海へとなんかする為に山脈を越え、最後には高高度を航行するという、汎ゆる環境下を無整備で渡り歩くというのは如何に多用途艦と言えども無謀この上ない。

 

ザフトの最前線と言っても過言ではない、大西洋連邦主要国となったグレートブリテンのすぐ横にあるアイルランドは、防空戦闘という観点に置いては唯一の整備可能な拠点であり。

この時、この場所こそ整備には持って来いであった。

 

ただ、その整備…いや改装と言った方が適切だろうものは、時として艦艇の運用能力すら変化するものである。

この時のそれは、ドミニオンの戦術単位を多用途戦艦から強襲揚陸艦へと変換するものであったのだ。

それは偏にローエングリンの所要に関するものだった。

 

「ローエングリンを…撤去する……ですか?」

 

「正確に言えばローエングリンを核融合炉とクラフト装置に置き換えると言ったところだよ。戦力価値として、既に貴艦のそれはもはや陳腐化していると言っても過言ではない。」

 

艦を預かるナタルに対して基地司令の言った言葉はそれであった。確かに、ローエングリンを使用する場合はかなり限られてくる。何より、要塞戦に対しては単艦での攻撃というものは限られるし、荷電粒子砲で傷つけ辛い目標に対して使用されるものであるからだ。

では、それがどうして外されるのかと言えば、偏にミノフスキー技術関連のそれであった。

 

「貴艦の主砲であるゴッドフリートを、メガ粒子砲(・・・・・)へと置き換えることで、それで充分にローエングリンの役割を果たせるというのが、技術部の判断だ。」

 

「未知の武装を搭載し、剰えそれを実戦使用しろと…これでは自殺しろと言っているものではないでしょうか!」

 

メガ粒子砲、それはナタルは元より各国軍人は聞いたことすら無いものである。

それの効果を知っている人間はごく僅かであり、教本すら未だに無い。

だが、知っている人間から言わせればこれほど悍ましい兵器も存在しないのだ。

 

メガ粒子……、それはミノフスキー粒子をIフィールドという特殊なミノフスキー力場によって縮退寸前にまで圧縮する事により形作られる、ミノフスキー粒子の一形態の事である。

コレはミノフスキー粒子を熱エネルギーに変換する現象であり、言わば物質のエネルギー変換である。

 

つまりメガ粒子砲という代物は、反物質を用いず正物質であるミノフスキー粒子をエネルギーに変換している高エネルギー兵器であり、1グラムのミノフスキー粒子か保有するエネルギーは通常物質の保有するエネルギーと同様である。

 

つまり1グラムの物質がエネルギーに変換されるものとすれば、そのエネルギーはおおよそ90兆J(ジュール)

TNT炸薬に表せば21.5kt相当、広島型原爆の大凡1.5倍のエネルギーを秘めている事となる。

 

メガ粒子砲と言うのは要するにその熱量を保持した物を、熱エネルギーと運動エネルギーに分割することにより、射程と威力を分割する。

運動エネルギーに半数を割けば、熱エネルギーは半分となるがより長射程かつ高速度で飛翔する。

速度が遅ければ遅いほど威力は上がる。

 

純粋な熱エネルギーを防ぐ手立ては、次元を挟んだそれすら阻むことは困難であり、光波は熱エネルギーの振動を停める事は出来ない。コレを防ぐ場合は同様の原理であるIフィールドを使用する他には無いのだ。

 

そんな代物が艦艇に、そして主砲に据え付けられればどうなるか?汎ゆる装甲、例えばラミネート装甲は確実に融解するし、通常物質はそれに耐えうる事は出来ない。

 

ローエングリンのような、対消滅によって生まれたエネルギー光束をただ破壊兵器に用いるというエネルギーロスがあまりにも多いそれとは比べ物にならないのだ。

 

更に、ミノフスキー粒子は単純生産が可能であり自給が出来る…。これほどコストパフォーマンスの良い戦略兵器か何処に存在するだろうか?

 

 

閑話休題

 

 

兎にも角にもそう言った理由から、ドミニオンからローエングリンは外される。もっとも、その理由が知らされるのは実戦で使う寸前になってからであろう。

その時にはきっと、現在の兵器として使うことだろうは想像に難しくない。

 

腑に落ちないままに、ナタルはそれを受け入れる他なくまた戦術の練り直しに彼女は頭を悩ませる事となる。

その兵器の威力、それを誤解したままに……。

それがどう言った悲劇を生むのかは本人達にもまだ分かったことではなかった。

 

 

……

 

ドック入りしたドミニオンから船外へと出た乗員達は、一同半舷休息と言う形となったが、一部例外があった。それは、フレイに関係している人物が、このドミニオンに配属されるからである。

 

「お久しぶりです、アルスター少佐。」

 

「久しぶりね、そんな硬くなくて良いわよ?カタリナ?」

 

襟首に着けられた階級章は中尉を表し、その整った顔立ちからその人物がコーディネイターである事など、直ぐに分かった。

それでも親しげに話すフレイの姿に、周囲は彼女を訝しむことは無かった。

 

そのまま二人はドックを後にし、向かった先はアルスター邸である。

この時、ラウは念のための備えとしてドミニオンに留め置かれていた。

 

絢爛豪華な屋敷の中の隠された部屋、そこのエレベーターに入りながら、フレイは話をした。

 

「機体の調整はどうなの?」

 

「残念ながら、貴女の反応速度を引き出すところまでいけませんでした。ですが、最後のフィッティングまでには間に合ったと自負しております。」

 

ゴウンゴウンと動くエレベーターが止まるとそこに、立っていたのは装甲を施された、1機のMSであった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「紹介します。RGX002-ガンダムMk3です。説明は省きますが、後ほど確認していただければ。反応速度に関して言えば、従来機のそれを遥かに凌駕するものです。もっとも、じゃじゃ馬と形容するのが適切だとは思いますが。」

 

「ふ〜ん、実戦配備には直ぐに行ける?」

 

その言葉に答えたのは周囲の技術者たちだ。

 

「従来のストライカーパックは、排熱の関係上使用は叶いませんが専用バックパックを装着可能です。もっとも、着けなくともバーニアの出力だけで、空中戦は可能だと思いますが…。

実戦は直ぐにでも可能です。」

 

「じゃあ決まりね…明日にでもドミニオンに持っていくわよ。」

 

「運搬には…2日ほどかかります。」

 

「駄目よ?それなら今から始めなさい?」

 

彼女は我儘であった。

 

「それと…、カタリナ明日からまたよろしくね?」

 

「はい…、マスター。」

 

そう言うと、フレイとカタリナはそこにあるそれと同時に、近くに鎮座している試験用のダガー達を目に収め。

 

「ふぅん、直ぐにでも改良も出来るのね?」

 

「勿論です。」

 

それは、この戦争において最も恐ろしい事の1つであった。

このMSに搭載されているものは、MS戦術を根底から覆すものである。ましてや、此等を境に世界的にその技術が中心に発展していくだろう事は容易に想像できる。

 

ただ、今はその場にしか無いものであったのは確かなことであった。

 

 

……

 

先の戦闘において手負いとなりつつも、結果的に辛勝を果たしたミネルバはその戦力の大凡を失い。

現状で戦闘可能な者は、シンのインパルスを残して他は無かった。だが、この日それは最悪の形で起きた。

 

ミネルバからのインパルスの無断出撃が行われたのである。首謀者は勿論シン・アスカであり、その協力者にはレイ・ザ・バレルがいた。

そもそも彼等がなぜそのようなことを行ったのかといえば、シンが心配していた少女、連合のエクステンデッドであるステラ・ルーシェを助けんが為に行った凶行であった。

 

勿論軍規違反であり銃殺刑も免れない事であるが、この時の彼にはそんな事どうでも良かった。

助けられる命、助けたいと思う命が目の前で死んでいくのを、彼は目を瞑っていられるほど大人でもなければ、非情でもなかった。

 

彼は、インパルスを駆り連合の司令官であるネオ・ロアノークに対して、ガイアの識別信号を用いて応答を呼びかけた。

その思惑が何であれ、ネオの手駒はこの時は自分自身しか存在せず、致し方なく二人はであった。

互いにMSから降りるとシンは言う。

 

ステラを助けろと、再び戦闘に参加させるなと。

だが、この時のネオの思惑は違っていた。所詮は口約束であり、今必要な手駒が手に入るのだから、この様な少年との契約などどうとでもなるというもので、非常に都合が良かった。

 

約束しようという彼はステラを受け取ると内心ほくそ笑む、所詮は遺伝子を弄ったヒトモドキであり、約束を護る価値もない。何より、こんなにも扱いやすいものがある事に感謝すらした。

上辺だけのシンへの敬礼、それを真実と受け取るその情無い姿。シンは人を信じすぎていた。

 

あるいはステラの言葉を信じすぎていた。ステラに良くするのは偏に道具として扱う為であり、それが一番効率が良いだけなのだ。そんな事に頭が回らないシンである。

正直な話、そのまま死なせてやったほうがステラには幸せな方だったろう。

 

ともかく、ネオはステラのことを言い具合の人形が手に入ったとしか考えていない。コレを潰すのも生かすのも、彼の選択次第だが、シンの望むような事にならないの必然であった。

 

 

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