機動戦士ガンダム Red Fractal   作:丸亀導師

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第20話

月面には巨大な人工物が埋め込まれている…、それは建物と言うにはあまりにも凹んでおり、どちらかと言えば砲口と言った方が、実情に合致するものだろう。

その物の名はレクイエム、その名が表す鎮魂歌とは程遠くただ敵を殲滅するために創り出されようとしてる兵器である。

 

それは元来エンデュミオン・クレーターという場所に存在していた資源採掘用基地であるエンデュミオン基地の残骸付近に作り出され、そこから出た廃棄物は多くはコロニーの建造等に利用されている。と言うのは建前で、実際には兵器に利用されているという。

 

さて、そんなレクイエムの建築現場で不可解な物が見つかっていた。

いや、どちらかと言えばレクイエムが建造されるよりも以前。エンデュミオン基地が建設され、そこにサイクロプスが設置される時に、偶然にも発掘されたものであった。

 

本来であればそれは、サイクロプスの始動によって基地もろとも破壊されていなければならなかったが、どういう事であろうか?それは基地施設が吹き飛んだ後も、五体満足であり決して深い傷を受けてはいなかった。

 

彼等は戦後それを回収し、レクイエムの建造と同時にその場にそれの研究施設を作り上げ、日夜研究を行っている。だが、未だにそれの起動に成功したものはいない。だが、そのコアとも言えるものに関して言えば、有効利用されていると言えるだろう。

 

 

……

 

ドミニオンのローエングリンが撤去され、そこに新たなジェネレータとクラフト装置が取り付けられていく。

威容を誇ったその砲口も完全に封じ込められ、変形する事すら出来なくなっていた。

 

更にそんなドミニオンに対して、1機のMSとそれに関連する武装が送りつけられ、更にはMS用バッテリーパックと同様の大きさの見たこともないジェネレータが搬入された。

それと同時に、それに付いてくる技術者達が指示を飛ばした。

 

「これよりこのダガーの改修作業を開始する。整備員は速やかに指示に従い、バッテリーパックの交換を行うように!」

 

基地からの指示には従わざる終えず、彼等は作業を開始するとともにこれが何であるか説明を求めた。

返ってくる答えは、それを聞けば2度と普通の生活が送れられなくなるという脅迫を受けることとなった。

 

ダガーはその機体に使用されている機材、その一切を最新のものへとアップデートをされ、元来のストライクの量産型と言う性能を取り戻しつつ新たに付け加えられたそのブラックボックスによって、性能を強化された事を何となく感じさせる事になっていた。もはや、オリジナルストライクを超えているとすら言える。

 

そんな事になって行っているのだが、ナタルには知らされていなかった。

 

「おいっ!フレイ!貴様、コレはいったい何の真似だ!」

 

「何の真似って、見てわかんない?戦力の増強。」

 

MS格納庫を見下ろす最上段の通路で、アイスを片手にフレイはそう言い切った。

ナタルとしては嬉しくないと言うこともなく、どちらかと言えば腕を振り上げたい気分ではあるのだが、事前の通知が無いその状況に頭が痛かったのだ。

 

「それは分かっている、何故そうも急ぐのかとそう聞いているんだ。」

 

ナタルは状況としてドミニオンの戦術的価値に関して言えば、大勢に対して影響は無いと判断していた。

何故ならば、アズラエル閥の中心となっているのは、ここベルファストを中心に、大西洋連邦の五大湖周辺の産業地帯や、テキサス等の所謂産業地帯が中心であった。

 

産業帯に対しての影響力はかなり強く、そうそう他の閥に負けないと言う確信はあった。確かに彼女に政治的な部分はあまり詳しくはないが、現在の戦況から見るにアズラエルがブルーコスモスの盟主へと返り咲くのは時間の問題でもあった。

 

「向こうも時間が無いってことは良くわかってるって話よ、何より……嫌な情報があったの。軍部と言うよりかは、ブルーコスモスを通してね。」

 

それを耳にしてナタルは眉を顰めた。フレイと言う少女があまりにも世界の暗い部分に浸かりすぎていると言う心配もあるし、自分よりもより多くの情報を仕入れているというところに、一人の大人として申し訳ない思いもあった。

 

「最悪の場合は……ってね。」

 

「連合内部での内戦をする可能性があると、そうお前は考えているのか…。だが、確かに無くは無いのかもな。だとしても、あまり無理はするなよ?」

 

フレイは、ナタルが何を心配しているのか分かっていた。そして、以前の自分であればそれを煩わしく思っていただろう事も。

 

「分かってるわよ、私はまだまだお子様だものね?」

 

「良くわかっているじゃないかフレイ・アルスター…、だから心配事が有れば私を頼れ。流石にお前の母親には慣れんがな。」

 

そう言うと二人は笑っていた、互いに肩を抱き合って…心を許せるような相手がいる事の尊さは何よりも代え難い。

 

「ゔ…ゔん、リラックスしているところ悪いがそろそろ変わってはくれまいかな?アルスター少佐。」

 

2人を生暖かい目でラウが見ていた。それでも、その目は何処か親が娘の状態を気にするような、そんな気まずい眼差しである。

 

「はいはい、じゃ私は行くわよ。ナタルもちゃんと休憩しなさおよぉ〜。」

 

「他人がいる場所では公私混同は慎め、アルスター少佐!」

 

ヒラヒラと手を振るフレイ。その場に残された2人は、その後ろ姿を眺めながら互いに小さく肩を竦めた。

その後ろ姿は何処となく昔の彼女のそれに似ている。変わっていない事に安堵する事になるとは、ナタルはその時目を柔らかに見届けた。

 

「あのくらいの子はアレが正常だ、気に病むことはあるまい。」

 

「一般家庭がどうなっているのか私にはわからない、それは貴官とて同じ事だろう?ラウ・ラ大尉…。」

 

そんな会話も、ガヤガヤと音の鳴る格納庫で響き渡ることもなく、ただその不協和音の中に混ざり溶け合うだけであった。

 

 

……

 

ダウン!ダンダウン!ダンダンダン!

 

閉ざされた施設の中に光が明滅し、音が鳴り響く。何人もの遺体が並ぶとも、その服装は軍隊のそれの中でもかなり上等なもので、彼等が一流の所謂特殊部隊であることが判る。

 

そんな彼等が何故倒れているのか、それは単純に戦闘に敗れたという他にない。

赤く点滅する廊下、幅2m奥行き10mその先はT字廊の中で、

 

ハァハァ

 

と、私は息を切らせる。私は彼等の生き残りである。私が何故この様なことをしているのか、それはその場所で分かるだろう。

 

この場所は、東欧のとある基地である。

私達は運び込まれるコンテナの中に紛れ、この基地を襲撃し内部を掌握しようとした。そんな私達だが、このざまである。

 

「獅子身中の虫とは、やはり驚異的なものは敵ではなく味方であるのだな。」

 

ダミ声が聞こえる…。

 

最後の一人である私は、明滅する通路から声のある方へと拳銃を向ける。だがそこには誰もいない。

 

「貴様等の親は誰だ?正直に話せば楽に死なせてやろう……」

 

くぐもった、まるで電子音か何かに変換された声が私の耳に響く、右手に銃を構え左手にカランビットを持ち銃を支える、私は前へと進む。ただ、任務を遂行するために……

非道な行い、子供達をまるでモルモットのように扱う彼等を、志願兵でも無い純粋無垢な子供達をその様な手に掛ける…、私達の主はそれを許さない。

だからこそ、その意思を私が曲げるわけには行かない…。

 

「それ程までに死に急ぐとは、見上げた者だな。」

 

カツ…カツ…カツ…カッ

 

前に進んでいた歩みが止まる、ジロリと視線を後ろに向ける。この時走っても良いと誰もが思うだろう、だが私はその様な判断をしなかった。

どうしてか?

私の仲間は私の後ろに立つ男……、鉄仮面を着けた男…、彼に殴殺されたのだ。

 

それだけで、その男の胆力が常人のそれを遥かに超えていると知っていた。それゆえに、走ったところで逃げ切れるものでもないと…。

 

私は、銃を後ろに向ける。先程まで隠れていたその男が、ただ仁王立ちしている。

銃を向けられている筈であるのに、その余裕は崩す事なくただ淡々と語りかけてくる。

 

「貴様を私は欲する、――故に貴様を殺すのだ!」

 

その言葉を言い放った瞬間、私は狙いを胴体に定め引き金を引く引く引く…、まるで軌道が目で見える。音が脳を揺さぶる

だが奴は驚異的な脚力と反応によって其れ等を回避し、突き進む……人間業ではない。

 

全弾撃ち尽くす前に懐へと迫るそれを、ナイフで迎撃する為に拳銃から左手を振り抜く用に下へと薙ぐ、手応えとして人間であれば例えそれが強化されていようとも、反応出来る速度ではない。だが、奴はそれを右手で固定し左手を槍のように着き伸ばす。

 

ゆっくりと、だが確実に世界は流れ…腹部が熱く熱くなる。瞬間激痛が走り…、意識が掻き消え…。

 

―――

 

ぼとりという音とともに、人であった何かからそれはズルズルと引きずり出されていく…、丸い物体にだらりと連なるようにそれらは伸びている。

 

「後のものは掃除を頼む、君等も直ぐに慣れるさ…」

 

鉄仮面がそういうと直ぐ側に、若い連合の銀髪の兵士が側に立つ。渋い顔をしながら、その凄惨な現場を目の辺りにする。彼等が荷物を厳重に管理していれば、この様なことにはならなかったろうにと、そう言った自己の誤りと、この兵士達への憐れみのみを露わにして…。

 

 

そんなものどうでも良いと言うように、鉄仮面(ネオ)は手にしたそれを丁重に持ち上げ、何処かへと歩いて行く。それの有用性は確実にあるのだから…。

 

 

……

 

大きなテーブルに豪華なソファ…、それに腰を掛け一人珍しくアズラエルはその時を待つ。

カツカツ

と言う足音と共に、その時は現れた。

 

ガチャリと開いた扉を過ぎると、この屋敷の関係者であろうスーツの男が、アズラエルへと手に持った便箋を手渡す…。

アズラエルはそれを受け取ると、徐ろに開き始めペラペラと幾枚かを捲ると

ふぅ

と、溜息を漏らしながら更に深く腰を沈める。

 

トントンと指で膝を鳴らし、声を上げた。

 

「失敗…ですか、まあ仕方ないんじゃないですか?相手はファントムペインです、一筋縄では行かないでしょう?。」

 

「申し訳ありません、再度部隊を編成して…!」

 

その言葉にアズラエルは手をヒラヒラと横に仰ぎ、言葉を遮るとキッと睨みを効かせるように男を見上げた。

 

「無駄ですよ…、精鋭と言われた部隊を完膚無きまでに叩いた相手です。搦手が通じないと来れば、我々は正面から叩けば良いだけのことですよ?

連合の半分は僕の手中にある訳ですから、寝首を掻かずとも振り下ろした手で虫を叩き潰せば良いだけの話です。

それに……」

 

パンッと、掌を叩き合わせ立ち上がると男の肩に両の手を乗せながら、肩を揉むようにすると首を横に振る。

 

「有能な人間が次々と死んでいくのは見たくありません。良いですか?人間とは工業部品の中で最も高価な代物なんですよ?それを磨り潰すように使うなど……、もったいないじゃないですか?」

 

もったいない、それは打算的な物事から捻り出されたアズラエルなりの優しさである。

元よりこの男は、有能な人物であればナチュラル、コーディネイター問わず積極的に投資する根っからの投資家である。

単なる主義者であるジブリールとはまったく別のベクトルでのカリスマというものだ。

 

「それに……、彼等の努力は決して無駄ではないみたいじゃないですか?ほら、この内容を見て下さい。彼等が目を引いてくれたおかげで、ジブリール周辺が緩んでいる…。月で奴等が隠している物が何なのか…解りましたから。」

 

肩から手を離すと、今度は便箋の中から1枚の紙を取り出すと徐ろにテーブルの上に広げる。

そこにあったのは薄暗い写真、もっともそれが何であるのか見る人が見ればすぐに分かる。

それは人の形をしていて、自立することが出来るだろうもの。足は大破しているようだが、それ以外は原型を留めていた。

 

「彼等は手に入れたんですよ、技術の答えを…。これからは競争になります、向こうがコレをどれ程速く復旧出来るのか?こちらが奴等の息の根を停めるのにどれだけかかるのか…。

分かったのならすぐに作戦の立案に取り掛かって下さい、戦争が速く終結すればするほど株価への影響は少なく済みます。」

 

そう言うと今度は窓の方へと歩いて行くと、外を見る。そこは決して外ではない、洞窟の内部鍾乳石の滴るはずのそこは大空洞が広がり、そこには何機何十機ものMSが並び立ち、今もなお巨大なドックが稼働している…。

 

マスドライバーのような物が確認出来るものの、どちらかと言えば打ち上げ台に近いそれは様々な艦艇が立て掛けられる用に、並んでいる。

 

ジャブロー…、南米の地下空洞に封じられていたその施設は、長い時を経て今ここに再びその威容を曝け出していた。

 

 




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