トゥル・トゥル・ダクソ   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 前書き: 今日の話のテーマ曲は「BATTLE3」ですね。高橋邦子さんのよく使う「邦子のテーマ」と言ったほうが分かりやすいかもですが。

 ベイブレードってシンプルな玩具なのに、漫画だと何故か必殺技がありましたねぇ~。
 ビーダマンやミニ四駆もそうですが、漫画的表現とはいえ、あれは流石にやりすぎだったのではと大人になると思えますが、当時はそれが面白かったんですよね。





第17話:炎の城の溶けたデーモン

 『土の塔』を攻略し、順調に進んでいる筋力99のインド系仏教徒系フロム信者の我と、筋力99を超える筋力で我を押さえつけて肉体関係から恋人関係にまでなったリーシュさん。

 

 我らの仲はより一層深まり、現在やって来たのは『溶鉄城』。

 ふむ、ここは暑いから汗だくになって服が肌に張り付いてボディラインが強調されるという、筋肉戦士にとって格好のボディアピールが出来る場所だな。

 

 

「それを言うなら薄着になった恋人の露出を堪能出来るといってほしいですね」

 

 今のリーシュさんの服装は薄着(囚人シリーズ)に着替えている。

 

 聖職者っぽさを消して油断してきた相手を奇跡で吹き飛ばすのに適した装備だな、うん。

 

 実に素晴らしい! まるでベイブレードのような爆発的人気がある装備!

 

 例えが古いだろうか? 

 

 

「うむ、別に我はリーシュさんのことを蔑ろにしているわけではない。

 その露出は素晴らしい。

 だがな、我の筋肉も汗で上気しているとより美しくなるとは思わないかな?」

 

「た、確かにトゥルさんの筋肉が普段の三割増しくらいにカッコイイ♪

 きゃぁぁぁぁぁ~♪ 抱いて~~~♪」

 

「ハッハッハ! まだ攻略を始めて間もいないではないか。

 そういうのはボス攻略後だぞ♪」

 

 

 そう、それこそがお約束。攻略そっちのけで篝火の周りで子作りに励むのも良いが、我の一番の目的はこのドラングレイグの地の攻略なのだ。

 

 そう遊んでばかりはおれん。

 

 竜の戦士たちがバトルサインを書き込みまくっているが、我ら二人は特に気にするでもなくサインを素通りし、城門を潜って城の中へと入っていく。

 

 当然、連中が出迎えてくれるよ。アーロン騎士たちが。

 

 

「出迎えご苦労ォォォー! アーロン騎士ども。

 愉快に素敵にこの筋肉戦士トゥルのインド的ダンス格闘術に沈むがいい!

 セスタスを極めた我の新たな技によってな!

 

 秘技:セスタスキック!」

 

 

 ここであえて説明する必要はないだろうが、我はダンサーだ。

 

 インド人はみんなダンスが好きなのだ。だからダンサーであり、仏教徒は皆いつでも破戒僧や僧兵になれるように武道も嗜む。

 

 ダンスと武道は別物だが、ダンサーが武道を習得すれば常人より三倍は早く強くなる。

 

 ダンスに武道をかけて百倍! 亡者となってもこの程度の算数ならわかるだろう、アーロン騎士どもよ。

 

 古代インドダンスによって鍛えられた常人の三倍の脚力から放たれる、勝利を掴むべく真っ赤に燃えるセスタスが轟き叫ぶ!

 

 セスタスを装備したことで得られる驚異的なバランス感覚によって繰り出す我のキック。それが秘技である「セスタスキック」だ!

 

 セスタスを使った技ではあるが、あえてセスタスで直接殴ることはしないという、実に奥ゆかしい技である。

 

 

「続けていくぞ! セスタス百烈脚! セスタスクラッシュ! セスタス何もしない! セスタスわき見!」

 

「グワー」

 

 ドゴォと、痛そうな音とともにアーロン騎士達は(ことごと)く吹き飛ばされる。

 

 鎧は大きく凹み、内蔵をやられているのは確定的に明らかだ。我hパンチングマシンで100とか普通に出すしな。

 

 ふむ、ゲーム時代は大槌を多様していたが、セスタスというのも面白いものだ。

 

 これほどまでに可能性を秘めているのだからな。

 

 勿論、我は自分の強さをわざわざ口で説明したりはしない。

 

 

「ハァハァ、トゥルさんの筋肉♪ ハァハァ♪」

 

 

 頬を上気させて背後から我の胸筋と腹筋を撫でまくるリーシュさん。

 

 今回、このエリアでは我の筋肉を愛でるのに忙しいリーシュさんはあまり戦ってくれていない。

 

 それというのも、敵をすべて我のセスタス技で倒しているからだろうが、まぁこのまま我の活躍の場とさせてもらおうか。

 

 何故なら、ここの前半ボス“溶鉄デーモン”は奇跡による遠距離戦法よりも拳で戦う方が熱いからだ!

 

 だが、その前にあっておかなければいけないNPCがいる。

 

 

「誰? あんた? オレ? マグヘラルドっていう名前だけど」

 

 

 そう、『溶鉄城』といえばこの人。珍品コレクターのマグヘラルド。

 

 ロードランやボーれたリアと違って、このドラングレイグの商人連中はそこまで酷いのは居ないが、その中でも特に毒気のない商人だろう。

 

「我が名はトゥル。そしてこっちが恋人のリーシュさん。

 我らはお主のコレクションとやらを見に来たのだ」

 

「何? 俺のコレクション、見てくの?」

 

 

 ゲームだった頃とはだいぶ様相を変えたこの世界だ。きっと何かしら珍しいアイテムもあるだろう。

 

 しかし珍品コレクターと言うと、「ちわーっす、珍品くれっスー!」などと、プリニー口調になりそうだな。

 

 フロム作品に引けを取らない難易度のアクションゲーム『プリニー』もよろしく!

 

 

「その通りだ。珍品を見に来た。……一番いい珍品を頼む」

 

「……ほう、俺の持つ一番の珍品を欲するか。

 いいだろう」

 

 

 俺の言葉にニヤリと笑みを浮かべて立ち上がったマグヘラルド。

 

 立ち上がったことでより分かるが、こいつの身長は我よりも頭一つ低いが体重は同じくらいだろう。

 

 体中に張り巡らされた気が、脈動する龍脈のように強い。

 

 マグヘラルド……、こいつはただの珍品コレクターではなく武に生きる一匹の獣だ。

 

 マグヘラルドは上半身裸になって筋肉を見せつけてきた。

 

 

「俺の一番の珍品といえばこの肉体だ。

 そのことを分かって一番いいものを聞いたんだろうが、あんたも相当な脳筋だな?」

 

「見て分かるだろ?

 我の防具は下半身を墓守装備で覆うだけ。

 両拳にセスタスを装備した脳筋長身筋骨隆々のスキンヘッド野郎だ。

 そしてこの世界では通じないだろうが、故郷では我のような者は皆インド人の仏教徒なのだ」

 

「ふーん、その仏教って誓約は知らないが、どうやらインドという場所の出身者はみんな強いんだな。

 じゃあ、やろうじゃないか」

 

 

 マグヘラルドの闘気が全身からオーラのように放たれ、奴の拳に青く輝く。

 

 さながら見る者す全てを死地に贈る死沼へ誘う鬼火(ウィル・オーウィスプ)のようだ。

 

 奴の拳が振るわれる。

 

 

「俺は物の値打ちには無頓着だ。

 だってそうだろう、結局自分が価値があると思いさえすれば、それがどんなに世間的に価値の無い物だとしても同量の金よりも尊く思えるのだから。

 だからな、俺は自分の美学とも言える戦い方を確立したんだ」

 

「自分の美学?」

 

 

 言いながらも振るわれたマグヘラルドの青く輝く拳を受け流しながら反撃の隙を探す。

 

 拳での戦闘に慣れているだけあり、元々はグレートクラブやラージクラブを愛用していた大槌使いの我よりも拳闘術は上のようだ。

 

 だが、奴の拳は少しでも触れるとその部分が熱く赤熱し、まるで溶岩に突っ込んだかのような軽い火傷を負っていた。

 

 

「俺は魔術も商品として取り扱っているが、昔色々とあってね。

 保身無きゼロ距離射撃というコンセプトを実現するために、本来外へと撃ち出す魔術を体内――それこそ拳や足に留める実験台にされていたのさ」

 

「なるほど、同じ脳筋の雰囲気を感じていたが、その内包する血中カラテの量(記憶力や理力のステ)はそうした実験の産物か」

 

「そうだ。中でも俺は、魔術を拳に纏わせる適正があってね。

 こうしてガードした相手にもダメージを通せる拳技ってのを手に入れたんだ」

 

 

 見れば我の腕には青い炎が纏わりついて軽い火傷のような状態だ。

 

 どうやら奴の拳には「ソウルの矢」などの魔術が付与されているんだろうな。触媒も持たずに魔術を使えるとは大した奴だ。

 

 

「トゥルさん! ここはわたくしが!」

 

「狼狽えるな、リーシュさん!

 君が惚れた男はこの程度で負けるほど弱い男ではないはずだ!」

 

 

 背後でリーシュさんが叫ぶが、その悲痛な声こそが我に力を与える。

 

 彼女にこんな声を出させたんだ。勝たせてもらうぞマグヘラルド!

 

 

「なぁ、マグヘラルド。

 我は強い者と戦ってみたいという欲望から、一人の戦士としてお前に声をかけたわけだがな、たった一つ許せんことがあるのだ」

 

「へー、そいつはなんだい?」

 

「それはな……、惚れた女に泣かれることだッ!」

 

 

 記憶力のステに一切振っていないパーフェクト脳筋の我に、マグヘラルドのような魔術付与は出来ない。

 

 拳での戦闘も、大槌使いだった我にしてみればそれほど得意というわけでもない。

 

 それでも拳で勝つ!

 

 何故なら、我はこの拳をリーシュさんを守るために振るっているのだから!!

 

 

「この世界でどれほど再現出来るか分からんが、我の必殺技というものを見せてやろう。

 拳を極め、己を高めるために幾度となく繰り返し放ってきた拳技……『魔拳ビッグバン』」

 

 

 拳に集まる血中カラテが爆発的に膨れがってマグヘラルド目指して飛び出した。

 

 着弾後に広がる爆発音と衝撃波は辺り一面を吹き飛ばす超火力!

 

 使えるかどうか半信半疑だった我的必殺問答無用の拳技は成功したようだ。

 

 別ゲームでのレベル上げのために、これでもかと繰り返し使い続けてきた大技。

 

 ずっと回避されていた我の拳が、この技によってついに、マグヘラルドに届いた。

 

 

「…………」

 

 

 マグヘラルドは声にならない声を上げながら吹き飛ばされて『溶鉄城』の壁を突き破って空高く飛んでいく。

 

 その時、何かを懐からなにかを投げ出しながら、笑みを浮かべて。

 

 

『せんきゅ~♪』

 

 どうやらマグヘラルドは人面「ありがとう」を投げたようだ。

 

 地面にぶつかると同時にそんな声があたりに広まり、我は無意識のうちに一礼のポーズをとった。

 

 マグヘラルドは風になったのだ。

 

 

「トゥルさん……」

 

「あぁ、奴は強かった。

 この戦いで、また一つ強くなった我は、この先のボスにも負けるわけにはいかないな」

 

 マグヘラルドとの戦いで、拳の戦いによる奥深さを知った我らはさらに先に進むのだった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「と、いうわけでリーシュさん。今回は観戦に徹していてくれ」

 

「はい、トゥルさんの応援を全力で頑張ります♪」

 

「HAHAHA♪ 我のセスタス技は実際強いからな。

 “溶鉄デーモン”は、回避を駆使して魔術や奇跡で倒すのが楽かもしれないが、接近戦こそ男の美学!

 我の筋肉にときめいていなさい」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ~~~♪

 トゥルさんのカッコよさは天井知らずぅぅぅぅ~~~♪♪」

 

 

 ふふふ、背中に守りたい女性がいるということがこれほどまでに強さを与えてくれるとは、これもまたセスタスの魅力だろうな。

 

 というわけで、我とリーシュさんのコンビは現在、ここ『溶鉄城』の前半ボス“溶鉄デーモン”のボス部屋前に来ている。

 

 正直に言うと、このエリアの前半ボスである“溶鉄デーモン”は強い。とにかく単純に強い!

 

 体力が減ると炎を撒き散らして武器に炎を纏い、攻撃力と防御力を大幅に増してくる。

 盾を構えて隙を探ろうなどと考えれば紙切れのように容易く吹き飛ばされるだろう。

 

 近づくだけでも炎のダメージ。これは炎耐性を上げれば良いのだが、我は小細工などなしにこの両拳に装備したセスタスの力を信じてクリアを目指す!

 

 相手が強いとわかった上で、あえてこの装備で、リーシュさんの助けを受けないソロで、接近戦で挑む。

 

 それが先ほどまで死闘を演じた朋友のマグヘラルドとの拳の誓いというものだ。

 

 

「ピガー! ドーモ、ヨーテツ・デーモンです。

 ヨーテツ・デーモンは賢く強い」

 

 ボス部屋への霧を潜った瞬間、溶鉄デーモンの方からまさかのアイサツをしてきたので、こちらも一礼を返そうとするのだが……。

 

「……ッ!?」

 

 

 瞬間的な殺気を感じて横にローリング。

 先程まで我が立っていた場所に溶鉄剣(ツーハンデット・ヨウテツブレードツルギ)が振り下ろされる。

 

 

「『愛と平和作戦』を決行します。

 目の前の敵に対して、死ををくれてやるという素晴らしい作戦です。ピガー」

 

 

 ナ、ナンたる失礼! ナンたる卑劣非道か!?

 

 アイサツ中の相手に対しての攻撃は基本的にはやってはいけないものだ。

 

 対人戦にて自分は挨拶をしておいて、相手が挨拶を返してきたところで尻を掘る戦法は実際有効なために稀によくあるが、それでもボスともあろうものが挨拶を誘って不意打ちしてくるのは凄い失礼である!

 

 まさかゲーム時代と違ってアイサツしてきたのが嬉しくて返そうと思った心の隙を突いてくるとはなんという高性能な頭脳を備えているのだろう。

 

 怒りに燃えた我の拳が“溶鉄デーモン”を殴ろうとしたその時、いつものごとく我以上に怒りに燃える女性が後ろから急接近するのだった。

 

 

「絶対に許しません!」

 

 

 ガチガチと両拳を叩きつけるリーシュさんの拳に雷がまとわりついている。

 

 バチバチと火花を散らしながら赤熱する彼女の拳。それはまさしく、先ほどのマグヘラルドが使っていた術式である。

 

 彼女自身、元々似たような技は使えていたが、マグヘラルドの技を見て昇華させたのだろう。

 

 迸る雷は激しさをどんどん増していき、それは振るわれた。

 

 

「主は雷と雹をくだされ、稲妻が大地に向かって走った……」

 

 リーシュさんの拳が迸る!!

 その姿はまさに荒ぶるグリコのポーズ!!

 

「ピガー!」

 

「おおっと、“溶鉄デーモン”くん、ふっとんだー!!

 ……ってかリーシュさん、我の出番は!?」

 

「わたくしに任せてください!」

 

 

 あまりの雷パンチの威力!

 

 そして繰り返し振り抜かれるリーシュさんの拳は、“溶鉄デーモン”にあたるたびに、拳が触れた部分を最初から無かったかのように抉りとっていく。

 

 さながら古代エジプトで猛威をふるったイナゴの如く、根こそぎ食い荒らしていく。

 

 

「サ・ヨ・ナ・ラ……ピガー!」

 

 

 “溶鉄デーモン”は爆発四散! リーシュさんの拳がボスの体の八割以上を削り抉ったことによって機能停止したのだろう。

 肉体の停止により行き場を失ったソウルは弾け飛び、我らの今後の糧として吸収することにした。

 

 

「それじゃトゥルさん、次へいきましょ♪」

 

 悪鬼羅刹のような表情で淡々とボスを殴っていた先程までとは打って変わった満面の笑顔のリーシュさん。

 

 そんな彼女に頼もしさを覚えながら、我らは次に進む。

 

 それにしてもこの調子なら奥に居る“鉄の古王”もリーシュさん一人で倒せそうだな、と内心で思う我なのであった。

 

 

 




 あとがき:マグヘラルドの一人称って「俺」と「オレ」の両方が混在してるんですが、使用回数で言えば「俺」の方が多いんですよね。
 まぁ、それでも最初のセリフでは「オレ」となっていたのでそのまま使用。

 それと最近、面白い古本でもないかと思って探していたら懐かしい名前を見つけました。
 『世にも奇怪な物語 Xゾーン』という青木たかおさんの漫画なのですが、全巻セットで購入してみたら思ったよりも大人が読んでも面白かったです♪

 ベイブレード同様に当時も持っていた「メタルウォーカー」を引っ張り出して電池買って装備してみましょうかねぇ~♪
 デジモンは持っている友人が多かったのですが、メタルウォーカーは私と弟しか買わなかったんですよね。学校に行っている間は時計を操作して寝かしておいて、帰ってくれば腰のベルト通しにくっつけて出かけてバトル! ……メダロットは私の学校ではデジモンよりも人気がなかったなぁ~。
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