トゥル・トゥル・ダクソ   作:ヨイヤサ・リングマスター

19 / 22
 前書き:今回のテーマ曲は『ロミオとシンデレラ』といったところでしょうか。




第19話:拳において頂点

「ユルト」

 

太陽(とぅぁいよう)の光の恵み」

 

「み……ミラルダ」

 

「だ、だ、大好きなトゥルさん♪♪」

 

「うむ、リーシュさん『ん』が付いたから負けだな」

 

「な、なんという痛恨のミスッ!

 だけど勝敗よりも心からの本音を口にすることを優先したので後悔はありません♪」

 

「うむうむ、リーシュさんは本当に可愛いな。

 あまり間がで言われるとこちらまで照れてしまうぞ」

 

 

 現在、我らがいるのは『溶鉄城』の中間地点。“溶鉄デーモン”を倒した場所にある篝火である。

 

 そこで少しばかりの休憩と昼食を「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!!」と食べながら、しりとりをしていたのだ。

 

 リーシュさんが「しりとりしましょー、最初は『り』だから『リーシュ』ですよー♪」とまぁ、ノリノリで始めたのでつい乗ってしまってな。つい可愛らしい彼女の笑顔に乗せられたわけだ。仕方がないな♪

 

 やはり、リーシュさんは本能的に殺人鬼タイプなのだろうが、こうした可愛らしい様子を見せてくれると心がほっこりするものだ。

 

 

「ん? どうかしたのですかトゥルさん」

 

「いやなに、リーシュさんは心の中には血と暴力を好む凶悪な二面性を持っているのに、それを見事に御して我と恋人同士となってくれているのが嬉しくてな」

 

「……あまり、わたくしの内面については触れないでもらえると助かります。

 自分でも異端なのは分かっていますし」

 

 

 む? これは彼女を傷つけてしまっただろうか?

 

「勘違いするなよ、リーシュさん。

 我は君を心から愛し、尊敬しているからこそ言っているのだ」

 

「あ、愛……!?

 あ、あの突然にそんな小っ恥ずかしいこと言われたら照れちゃいますよぉ~♪♪」

 

「なに、人間というものは遊びながら働くものだ。

 善事を行いつつ、知らずうちに悪事を行ってしまうこともある。

 その逆もまた然りだ。

 君のもう一面である凶暴性を忌避して目を背けてはいかんよ」

 

 

 ちょっと説教臭いが、我もまた仏教徒。救いを求め、愛を求める女性――それも自分の恋人のためなら優しい言葉をかけるのも当然のことだろう。

 

 

「だからな、リーシュさん。

 我はここまでの旅で多くの敵を屠ってきたが、その中で君が側にいてくれたことが何よりもありがたいと思っている。

 その凶暴性に起因する戦闘本能からの行動だとしてもね」

 

「トゥルさん……」

 

 

 さて、あまり長いこと篝火で温まっていても仕方がない。

 

 旅の終着点はまだまだ先なのだから、さっさと出発するとしよう。

 

 

「アイテム整理は終わったかい?

 我はここまでの戦闘では“セスタスキック”などを多様していたから武器の消耗はさほどではないが、リーシュさんは雷パンチを使いまくって腕装備が損耗しているのではないか?」

 

「あ、大丈夫です。

 封壊の指甲を装備していたので袖が少しチリチリなっただけですから」

 

 

 そのチリチリにしても手持ちの裁縫セットですぐに修理したそうな。

 

 乙女スキルがなにげに高いところもリーシュさんの魅力だな。

 

 それならば、と思い、我ら二人は攻略を再開し、『溶鉄城』の後半ステージへと足を踏み入れた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ふむ……、暑いな」

 

 ゲームと同じく溶岩やら火を吹く像があるエリアだ。当然暑い。

 

 上半身を露出している我には無縁だが、汗が絶え間なく出続けるので服を着ている者には辛いだろう。

 

 現にリーシュさんは大汗で濡れ湿った聖女装備がぴったりと肌に張り付き、その聖女らしからぬ極めて扇情的なボディラインを余すとこなく晒している。

 

 全裸よりも着エロの方が好みの我にとって、このシチュエーションは最高のものであったと言っておこう。

 

 視線を上手く誤魔化しつつ凝視し、そのまま何食わぬ顔で進む。

 

 道中の重鉄兵も我の敵ではなく、セスタスキックで仰向けに転ばすと起き上がれなくなり、その隙に顔面を踏みつけ、その重装備の鉄くずと肉片の混じった物体へとなり下がり死亡。

 

 亡者である以上はすでに死んでいたのだろうが、仏教徒らしく成仏させてやったのだ。

 

 

「さぁ、もうすぐボスだな。

 途中にもう一箇所、篝火があるけど寄っていくか?」

 

「いえ、このまま先に進みましょう。

 このハシゴを見る限り、意外と高いところにその篝火はあるみたいですし、いちいち上がるのは面倒です」

 

「そうか……」

 

 ちょっと残念だな。

 

「あ、トゥルさん今、ハシゴを上がっていくわたくしのスカートの中が見れなくて残念と思ったでしょう?」

 

「そんなバカな!!

 我は敬虔なる仏教徒である! そのような考えはちょびっとしか持っておらず、残念に思った理由の大半は別にある!」

 

 

 そう! 我が残念に思った理由、それはぁぁー!

 このハシゴはかなり長いので上まで行く途中でリーシュさんが疲れて手を離してしまった時に空中でキャッチし、「親方、空から女の子が!」という発言をしてラピュタの捜索に乗り出したかったという理由であるッ!

 

 ふふっ、自分でも笑ってしまうが、この年になってもラピュタの捜索は夢があって良いと思うのだよ。

 

 ラピュタがドラングレイグの地に飛んできていないとは言い切れないからな。

 

 

「トゥルさん。わたくしはラピュタなる物がナンなのかはわかりませんが、それでも空中キャッチしたいと願ったトゥルさんの熱い愛を感じ、嬉しく思います」

 

「そう言ってもらえるとこちらも嬉しいな。

 まぁ、どのみちハシゴが面倒なのは変わらないし、さっさとボスを倒して帰ろうか」

 

「そうですね」

 

 

 そしてボス戦に突入。

 

 この『溶鉄城』の後半ボスにしてドラングレイグの四大ボスの一角、“鉄の古王”だ。

 

 溶岩の中からグラビモスめいて登場したボスは、一礼と共に口上を述べる。

 

 

「カッカッカッ! ドーモ、よくぞ来たな巡礼者!

 ワシの名は“鉄の古王”! 見たところ貴殿は拳による戦士のようだな。

 いざ尋常に漢同士の拳での勝負をしようではないか♪」

 

「ドーモ、我はトゥルだ。

 拳を極めようとするその心意気、ボスとしての風格も相まって我が闘うに不足無し。

 当方に迎撃の用意あり、覚悟せよ!」

 

 

 ガツン!

 開口一番の口上をお互いに言い終えると、ぶつかるは拳。競うは信念!

 

 振るわれた“鉄の古王”の拳を、我は己の拳をぶつけて受け止めた。

 

 拳打! そして拳打! 続けて拳打!!

 ぶつかるたびに火花が散り、お互いの腕に浮かぶ縄のような筋肉が歓喜に震える!

 

 

「カーッ! たまらん拳じゃわい!

 この拳の一撃で多くの巡礼者を葬ってきたワシの自信を微塵に砕いて天地に還すほどじゃ!」

 

「それはこちらとて同じだ。

 生半ならぬ修練を積んだ我の必殺の拳でお主の拳を破壊できないのは自信喪失しかねないな」

 

 

 ガキンガキン、とぶつかり合う拳。背後に控えるリーシュさんは何もせずにただ見守っている。

 

 我の勝利を信じているからこそ、彼女は見守っているのだ。

 

 この状況で我が倒れたとて、奇跡の力を自在に使いこなす彼女は“鉄の古王”に勝てるだろうが、そんなことにならないように我が戦うのだ。

 

 守るために。彼女を守るということで我が拳はさらなる力を得る!

 

 

「そろそろ大技を決めさせてもらおう。

 我の恋人を安心させ、喜ばせるには圧倒的な勝利を見せる必要があるのでな」

 

 我の拳が真っ赤に燃える。勝利を掴むべく気合いが篭る。

 

「ワシも大技を使わせてもらおうかの。

 なに、貴殿のような強者との試合ならばどちらが死のうが最高の勝負になろうことよ」

 

 あちらも拳に全ての力を込めるようだ。

 

 血中カラテが拳に集まるのを感じる。

 

 だが……、

 

 

「拳で勝負すると言ったな。あれは嘘だ」

 

「なに!?」

 

 

 大一番の勝負の寸前。我がアイテムボックスより取り出したのは大斧である!

 

 多くの脳筋戦士を虜にしてきた、見た目と威力と攻撃範囲の全ての面でイカした“番兵の大斧”である。コンちゃん愛用していたな。

 

 

「す、凄いですトゥルさん!

 まるでその斧は輝いているように見えます!」

 

「ふふふのふっ、黄金の鉄の塊で出来た脳筋が使うのだから、この斧も黄金色に輝いて見えるのだろう。

 脳筋が使うと筋力と補正値が+されて最強に見える。純魔が使おうとすると装備重量をオーバーして死ぬ

 往くぞ、“鉄の古王”!」

 

「カッカッカッ! 拳だけでワシと拮抗する高レベルのカラテを見せつけといて、大斧までその練度か!

 ならばその大斧ごと潰してくれるわ!!」

 

 

 時間の流れが緩やかに感じる。

 

 当然、この輝く金の斧こと“番兵の大斧”を使っているからだ。

 

 我は慌てることもなく、金の輝きを見せる斧に相応しく、掛け声と共に振りかぶった一撃で迎え撃った。

 

 瞬間的に地面に浮かび上がる他世界の脳筋仲間たちからの弾幕「昨日のベジータ」コメントで我の脳筋力は有頂天となった! wasshoi!

 

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「 イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ !」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 振り抜かれた拳と大斧がぶつかり合い牽制しあい、それでも最後に打ち勝ったのは我であった。

 

 我の番兵の大斧の一撃は奴の右腕を見事に切断! 一連のぶつかり合いを制したのだ!!

 

 

「この勝負、我の勝ちだな。どうする?」

 

「カーッ! まだ腕が一本ちぎれただけじゃ! 四大ボスとしての矜持も未だ健在じゃ!

 さっさとかかって来んかい!!」

 

 

 ……これは、少し驚いた。

 

 これまでのボス達は会話が出来ない者もいたが、これほどまでに心の強い者はいなかった。

 

 確かに“鉄の古王”の拳は強い。これまでのぶつかり合いで幾度となく交わした拳と大斧でそのことはよく分かった。

 

「素晴らしい……、お前はとことんまで我を熱くさせてくれるのだな」

 

 だからこそ、我は己の力を試すためにも奴をこの手で屠るのだ。ソウルの全てを糧とするために。

 

 

「イヤーッ」

 “鉄の古王”が豪腕を振るう。

 

「イヤーッ!」

 相手の振り抜かれた拳に飛び乗って駆け上がり、そのまま首を横薙ぎで一閃!

「グワーッ!」

 

 奴はその巨体故に、拳での戦闘でもリーチがあったが、それでも我の“番兵の大斧”のリーチは大斧においてもトップクラス! 破壊力もトップクラス! 抜群の破壊力! “鉄の古王”が樹木よりも太く固い首を永遠にオサラバさせた。

 

 

「サ・ヨ・ナ・ラ」“鉄の古王”は爆発四散!

 

 

 こうして我は四大デーモンの一角を撃破し、先へと進むのだ。

 

 この戦いで我はまた一つ成長し、拳には奴の思いが宿った。

 

 勝ち続けて来た強者のみが持つ、拳に宿る敗者たちの勝利への渇望。それが我のこれからの戦いでも支えてくれることだろう。

 

 サラバだ、“鉄の古王”! 我はお前の思いを受けてさらに高みを目指す!!

 

 

 

 

 




 ソフト発売からあまり期間を置かずに出るDLCが卑怯に思えるので、ダクソ2のDLCは一つもやっていませんが鉄の古王の私のイメージはこんな感じですねぇ~。

 なんか強そうで実際強くて、武人!
 やっぱり発売後すぐにDLCが出るって、どうしても未完成品を売りに出したみたいに思えるので私がダクソ2のDLCをプレイすることはないでしょうねぇ~。ちょっと残念。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。