絆の力で鬼千切・極ってな感じなお話。
久しぶりに帰ってきたマデューラ。
コンちゃんは今頃、順番から行って『聖人墓所』から『クズ底』、『黒渓谷』に行っているだろう。
だから『冬の祠』を開けるための最後のエリアをコンちゃんが攻略するのを待ち、みんな一緒にドラングレイグ王城に向かおうと思っていたのが、我の当初の予定だったのだ。
一人旅で己の実力を試すという目的も、途中からはリーシュさんが仲間に加わったことでどうでも良くなってしまったが、それでもラストエリアはコンちゃんと攻略したい。
日本にいた時からの友人だからな。不思議発見!
そのため、マデューラに着いた我とリーシュさんは、コンちゃんを待つつもりで色々とボードゲームで遊ぶ予定を立てていたんだがなぁ~……。
◆ ◆ ◆
「焼っこう♪ 肉を焼っこう♪ あれれ? もしか~し~て~作っちゃった~黒焦げ肉~♪ ウルトラ上手に焼けました~♪」
我の親友は篝火で肉を焼いていた。
「流石ですコンちゃん♪ その歌詞で肉焼きを成功させてしまえるとは、もしや料理人なのですか!?」
「ん~、前に居た『skyrim』って所では、料理はスキルとして存在し無かったんだけどねん。
まぁ、一通り作り方を覚えているから、これも一重に才能? とでも呼ぶのかな?
ほら、わたちって天才だし♪」
「コンちゃんの魅力をまた一つ見つけてしまったことに感激です♪」
マデューラの篝火にて何やらイチャイチャする二人組。
勿論、我はこの二人をよく知っている。
一人はコンちゃん。我の日本に住んでいた時からの友人だ。
そしてもうひとりは……、見間違いでなければ“ミラの”ルカティエルだと思うのだが。
コンちゃんの旅の仲間って彼女なのかな?
旅の途中でリーシュさんが言っていた女の勘って本当に当たってたのだな~。
おっと、向こうもこっちに気づいたようだ。
「あ、トゥルじゃん。
久しぶり~♪ 元気してたぁ~?」
そして変わらぬ気安い挨拶。うむ、コンちゃんで間違いないな。
「うむ、久しぶりだな。コンちゃん。
それと、見たところ君の隣にいるのは、かの有名なルカティエルさんですか?」
ずっとコンちゃんを見ていたルカティエルさんが、我の発言でようやくこちらに顔を向ける。
なんだか怒っているような、というかれず特有の男嫌いの目力!
もしや、先ほどの我の発言の「有名な」の部分で、「水没」を連想したのが脳内から伝わったのだろうか。
「あなたがコンちゃんの友人というトゥルさんですね。ドーモ」
「ドーモ、ルカ=サン。トゥルです。
出会って早々になんだが、初対面でいきなり、そのような態度を取るのは控えた方がいい。
我が仏教徒でなければ、その視線だけで我の怒りが有頂天になっていたぞ?」
「む、私の愛しいコンちゃんの友人に男がいるというだけでも虫酸が走るというのに、敵意を向けることを禁じるというのですか?
その理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「その答えは我の後ろに視線を向ければ分かるはずだ」
ゴゴゴゴゴゴ……。
迸る殺意。黒い蒸気が立ち上り、腕に絡むのは黒光する雷。殲滅系聖職者のリーシュさんだ。
「ドーモ、ルカ=サン。リーシュです。
あなたを殺します。慈悲はありません」
「ドーモ。殺すと言われて殺されてあげるわけにはいきませんね」
ルカさんが仏教徒らしく、二礼、二拍、一礼のアイサツを終えると同時に雷の連続投擲。
よく見ればリーシュさんの腕には多次元世界から召喚したのだろう別世界のリーシュさんの腕が生えている。
その数は千を越えるだろう。背中からも幽霊じみたファントムの腕が生え、その全てが雷を撃ち出す。
「その程度ッ!」
しかしルカさんは飛来する雷を全て剣でパリィしている。
これだけの数の、それも奇跡をパリィするだなんてなんというワザマエ!
剣の振り方にコンちゃんの癖のようなものが混じっていることから、旅をする間にルカさんはゲームのNPCだった頃よりも格段に鍛え上げられたのだろう。
そして彼女が弾いた雷は地面にクレーターを作り草木を燃やして灰にする。
このままでは火事になりそうだな。面白そうだから少し見ていたが、そろそろ止めておこうか。
ルカさんとコンちゃんの会話から、彼女たちの関係を瞬時に把握した我はリーシュさんを。そしてコンちゃんにはルカさんを止めてもらう。
目を向けるとコンちゃんも同じことを考えていたらしく、一度頷くと奇跡と剣の戦場に足を踏み出した。
「はいはい、リーシュさん少し落ち着いて。
ちゅーしてあげるから。ね?」
「はい、やめます♪」
振り返って素早く両手を広げ、鍛え抜かれた大胸筋にリーシュさんを受け止め、頬ずりをしながら唇同士を徐々に近づけてのキスをする。
うむ、最初からするのも良いが、頬に残る感触が移動して唇が柔らかく湿っていくという感触は実に素晴らしい♪
我としては一度のつもりだったのだが、貪るように我を求め顎鬚にも唾液でマーキングするようにリーシュさんはキスを続けてくる。
「ほ~ら、ルカたんもこっち来てキスしよ?」
「コンちゃんのキス!!♪」
あちらもコンちゃんの説得により戦闘中断。
すっかりとコンちゃんに飼い慣らされているな。
とりあえず、二人が落ち着いたところで現状確認といくか。
……
…………
………………
「悪かったわねん、トゥル。
もうわかっていると思うけど、この子がわたちの旅の仲間であり、愛しの恋人のルカたんよ。
旅の仲間としても夜の相手も頼りになるけど、わたちに近づく男を毛嫌いしてるのよん。
あと、四大ボスの一匹であるフレイディアは可愛いからサイズを小さくしてペットにしたわ」
「ぴー♪(よろしくお願いしますトゥル殿)」
「ふん!」
うむ、コンちゃんが見慣れぬバレッタで髪をまとめていると思ったら小さなフレイディアを乗せていたのか。
というか、我がコンちゃんに対して恋愛感情がないことを説明してもルカさんのこの対応。ガーンだな。
出鼻をくじかれたファーストコンタクトからどう関係を組み立て直すものか。
「ふむ、だが我は仏教徒は寛大な心を持っているからな。
ルカさんが君と恋人関係にあるのなら、我に対する警戒も必然だろう。
そして、我はこちらのリーシュさんとお付き合いをさせてもらっている」
「妻です♪」
ピースサインと共に見事な笑顔のリーシュさん。
……そもそも、婚姻関係を正式に結んだ覚えは無いのだが、愛し合って一線を超えれば、それはもう夫婦なのだろうか? まぁ、我は別にどっちでもいいけど。
もしかして、もう子どもが出来たのだろうか?
「ところで、コンちゃん。我らはこうして『冬の祠』の前までやってきた訳だが、ナンか入口が開いてないのだが?
コンちゃんたちは『黒渓谷』は攻略してないのか?」
そう、我らは時間が勿体ないので、お互いに四大エリアを攻略済みで当然、封印も解けられたと思って『冬の祠』に来たというのに、『ドラングレイグ王城』へと繋がる入口は固く閉じられている。
どうもコンちゃん達も『黒渓谷』を攻略していないようなのだ。
「ん? トゥルがしないなら、わたち達は攻略するつもりないわよん。
あそこ面倒じゃん。
毒とかエリアの暗さとかさ」
「いや、そうだが、こっちは『土の塔』や『不死刑場』とかかなりのエリアを攻略したのだが?」
「でも四大エリアは『溶鉄城』しか攻略していないんでしょ?
それにさぁ~、『黒渓谷』って毒吐いてくる像が厄介なのもあるけど、白霊の“孤独な狩人”シュミットがしょぼいじゃん。
わたち、あいつ嫌い~」
「なっ!?」
自分本位な性格は元からなので、コンちゃんが何を言っても怒ることはないだろうと思っていた我だが、この言葉は聞き捨てならない。
シュミットさんがしょぼいだとぉ!?
「おいこら、コンちゃん!
お前、シュミットさんを舐めるな!!
攻略が終わってみれば、シュミットさんは見事な仕事だと関心するだろう!?」
「だってさぁ~、木の矢でぺちぺち攻撃しても役に立たないし。
ぶっちゃけ、ただ居るだけ? みたいな♪
そんなに攻略したければトゥルが行けばぁ~」
「……いやいやいや、この世界は我らがゲームとしてプレイしていた『ダークソウル2』の世界とは違うし、流石にシュミットさんも“二代目鷹の目”を名乗るほどに強くなってるかもしれないだろ……多分……きっと……」
自分で言っておいてナンだが、シュミットさんがいかに強化されていてもコンちゃんが言うように元が元だけに大した強化は望めない気がしてきた。
そうなんだよ。ゲームでのNPC達はちょこちょこ強化されているが、シュミットさんの魅力は弱さにあると思うのだ。
「……まぁ、そうだよな。コンちゃんってばそういう奴だったよな。
現実世界の頃から、我が幾らシュミットさんの魅力を力説してもそうだったもんな。
悪いコンちゃん。ちょっと熱くなっていたようだ」
「いいよん♪ わたちはトゥルのそういう熱さって嫌いじゃないし♪」
「(ガタッ!)」
「(ガタッ!)」
「ピー♪(まぁ、座ってろよ。ルカたん、リーシュさん)」
むむ、コンちゃんの発言に武器を抜こうとしたリーシュさんとルカさんがフレイディアの鳴き声一つで止まったな。
もしやこのフレイディア、体の大きさとソウルの大きさが反比例したのかもな。
割と戦闘狂のコンちゃんの頭に乗っていたのだから。
そもそも、思い返してみれば、コンちゃんも我も白霊をあまり使わないのだ。
それでもネタとして、たまに使うことはあるし、その中でも最もネタとして好きなNPCが我にとってはシュミットさんであった。ただそれだけのことだ。
隣を見れば我の腕に両手で絡みついたリーシュさんと目が合う。
彼女はシュミットさんを知らないようだが、我が彼の魅力を力説すると「わかっていますとも、トゥルさんこそ世界一です」という、分かっていないけどわかったような笑顔を見せてくる。
いやまぁ、可愛いからいいんだけどね。そもそも我もシュミットさんについて熱くなりすぎた。
コンちゃんの隣では、リーシュさんと同じようにルカさんが腕を絡ませている。
これもまた彼女たちの愛なのだろう。コンちゃんの現実での性別をスルーするのならば。
「とりあえず、『黒渓谷』を後回しにすると決まったところで戻るのも面倒だ。
折角だから、我はこの『冬の祠』を進むぞ!
みんなの心を一つにするのだ!!」
ナンか知らんが、ルカさんにこのまま嫌われたままというのは面白くない。
そのため我が出した答えは、四人(+一匹)で力を合わせて一つのことを成し遂げる達成感により絆深まり大作戦なのである。
「スーパーパワーを見せてやる! ウー! ハー!」
我の筋力はゲームだった時点で99のカンスト。
そしてこちらの世界に来てからはレベルアップ担当のシャナたんが無愛想なので篝火を使うというロードラン的なレベルアップでさらに筋力を上げまくっていたのだ。
ゲームではない。そのことが我の筋肉をより強く、より逞しく、より美しく鍛えた。
その我が! 渾身の! パンチを叩き込んだのだッッ!!
「ガッツ全開! セスタスキィィィーック!」
拳に力を溜め、セスタスに血中カラテを付与し、そうして放たれた我のセスタスキックは一撃で『冬の祠』を爆発四散させた。
「……ねぇ、トゥル。
協力プレイと言いつつ一人で扉破壊とか、わたち達の活躍の場を取って今どんな気持ち?」
「……計画通りだ!」
そうだ! これは計画通りなんだ! ついつい己の拳がこの堅固な門に通じるかどうか試してみたい気持ちを抑えられなかったが、当然の結果であり、完璧な作戦なのだ!
何も問題ない。
「トゥルさん、ただ壊すだけでなく爆発四散させるだなんてさすがです♪」
リーシュさんの尊敬と愛情の混じった視線。
「ほら、ほら! なっ? 計画通り、リーシュさんがますます我に惚れてくれだろう、コンちゃん!
これもある意味、フタエノキワミ、アッー! というやつだ!」
「いや、協力プレイの申し出はルカたんのあんたへの敵意を軽減するのと、わたち達四人のコンビネーションを磨く目的で協力しようっていったんじゃないのん?
あんたそれでいいの?」
「ぐはぁ!」
ぐっ……、確かにその通りだ。
コンバット・トゥルの
インド人は皆ダンサーであるため、カッコ良さにこだわるし、ダサいのは嫌いだ。
チラリと、ルカさんを見てみれば呆れたようで、侮蔑の視線が突き刺さってくる。
それを見たリーシュさんが怒りで奇跡がマッハな状態だ。
再びの恋人の暴走を止めるために抱きしめて落ち着かせたところで爆発四散で巻き起こった粉塵が晴れ、現れたるは“火防女”のシャナロットことシャナたん。
そういやこの人もドラングレイグのあちこちに現れるし、案外門を通らないルートもあったのかもしれんな。
「あ、あの、四大ボスの討伐か、周回数×100万ソウルの取得がこの先への通行条件なのですが」
我の「ダイナミックお邪魔します」が原因なのか、若干おびえているようなシャナたん。
ふむう、紳士たる仏教徒の我が、女性を不用意に驚かせてしまうとはうっかりだな。
「あー、シャナたん。我らは方法は違うが、こうして『冬の祠』を通ったわけだ。
通してもらえると嬉しいのだがな」
「ええ、それはその通りです。
もう、通っちゃってください。どうでも良くなってきました」
今回の巡礼者は豪快です、などと言いながらど何処かへと消え去るシャナたん。
う~む、でもここまで来たら引き返して『黒渓谷』の攻略を優先したり、ソウルを稼いでくるのも面倒だしな。
シャナたんには悪いが、せっかくだからこのまま先に進ませてもらおうか。
「よーっし、トゥル!
ここはいっちょ気合いの言葉を入れて♪」
「ようし、任せとくのだコンちゃん!」
我は腹の底から空気の全てを吐き出す大きな声でみんなを鼓舞する。
「みんにゃ!! ドラングレイグ王城攻略目指して、がんびだ~~!!
(訳:みんな!! ドラングレイグ王城攻略目指して頑張ろう~~!!)」
……冷めた視線が突き刺さる。
この時ばかりは熱烈な視線を向けてくるリーシュさんの顔も、恥ずかしくて見ることが出来ない我なのであった。
後書き:ダクソ2の世界に母子手帳があれば……。
子どもは日本で産むことになるでしょう♪
まぁ、冗談はさておき、明日で最終回です。
最終話は二話同時更新ですので、前書きにどちらが前か後かを付けますが読む順番をお間違えないようにお気をつけください。
さて、無事に毎日更新で完結出来るのか!?