異常事態確認から数十分後
指令庁舎 会議室
堀本「これより異常事態に関する緊急会議を始める」
国分駐屯地司令兼、第12普通科連隊の連隊長を務める堀本 洋輔一等陸佐による言葉で各中隊の中隊長や西部方面部隊国分派遣隊の代表らによる異常事態に関する緊急会議が始まる。
堀本「本日、一四◯五に震源地不明、詳細不明の地震が発生したのは皆が周知のことだろう。そして問題が起こったのは一四◯七。複数の隊員達の報告によって、本駐屯地が砂漠の中に建っていることが確認された。現時点で確認できる情報としては―」
・地震や謎の閃光現象による死者・重傷者なし。建物被害は軽微、転倒等により第4普通科中隊に軽傷者5名
・水道、電気、ガス等のインフラ設備の途絶
・インターネットの利用が不可能、他駐屯地との通信途絶
・基地の四方には広大な砂漠が広がっており、人や建物らしき姿は無し
堀本「…以上が確認できる全ての情報だ」
ざわざわ
「おいおい…地震の後に気が付けば一面砂だらけの砂漠のど真ん中に居るって、どこの異世界転移漫画だよ…」
「先程の謎の閃光現象といい、現在の駐屯地周りの状況といい…一体全体どうなっているんだ…?」
次々と起こる不可解な現象に幹部達でも動揺を隠せないでいた。
すると一人の男が手を挙げる。
金本「堀本一佐、僭越ながら申し上げます。結論から言いますと、我々は地球とは違う異世界に来てしまったのではないでしょうか?」
第2普通科中隊の中隊長を務める金本 浩司一尉。
彼は数々の現実離れした出来事から、最近漫画やアニメで話題になっている異世界への転移を我々はしてしまったのではと意見する。
「何を言っているんだ!いくら異常事態といえどそんな馬鹿げた話があるか!」
「金本一尉、今ここで自分の趣味を語るのは…」
周りの者達は当然、金本一尉の言葉に強く反発した。
金本「しかし、駐屯地周辺がたった一瞬で砂漠に変わりますでしょうか?中国地方の鳥取になら砂丘がありますが、そんな遠いところまで駐屯地だけが移転するのはおかしいと思いませんか?」
的を得た回答に反発していた幹部らは口を紡ぎ、室内が静かになる。
バタンッ!!
「調査隊から緊急報告!!調査に出ていた隊員2名が不明勢力からの銃撃を受けて負傷!!現在、警備隊が負傷者の救護にあたろうとしていますが、相手側の銃撃が激しく手出しできない状況です!!」
「なっ!?銃撃だと…?!隊員が撃たれたのか!?」
「不明勢力の規模は!?」
「装甲車2両を含む1個小隊規模です!調査隊は増援の派遣を要請しています!!」
突然の緊急事態に幹部達はしばらく話し合った後、連隊長の堀本一佐に視線を向けて彼の指示を待つ。
堀本「…これより第九十五条に基づき、負傷隊員の救出行動を行う」
自衛隊法 第九十五条
『自衛隊の武器等の保護のための武器の使用』
"自衛官は、自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料を職務上警護するに当たり、人又は武器等を防護するために必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ、合理的に必要と判断される限度で武装を使用することができる"
上層部の西部方面隊や防衛大臣管轄の陸上総隊と連絡が取れない今、九十五条を適用し銃撃を受けている隊員達を救うのが現状の最善策であった。
堀本「第2普通科中隊は装備を整え、調査隊の救出及び敵不明勢力の鎮圧。第1普通科中隊は万が一に備え、基地内で待機。これより基地全体に第三種警戒態勢を発令する」
ここに、自衛隊が創設されて以来の初の実戦が始まったのであった。
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その頃、駐屯地から少しした場所では不明勢力による調査隊への一方的な銃撃が行われていた。
「くそったれ野郎ども!!いきなりぶっ放しやがって!!」
砂丘の稜線に隠れている調査隊隊長の一等陸曹が、こちらへ銃を撃ち続ける不明勢力へ向けて暴言を吐きまくる。
「おい!駐屯地からの返事は?!」
「現在、第2普通科中隊がこちらへ急行している模様!!部隊現着時刻は一四一五!!」
「5分後だと!?クソッ!悠長過ぎる!!」
たったの5分でも、彼らには部隊到着まで待てない理由があった。自分達の隠れている砂丘の前の窪地には、撃たれた隊員二人が少なくない量の血を流しながら倒れていたからだ。幸い、彼らには銃口は向いていないが一刻も早く治療処置を施さなければならない。
だが相手側は小高い砂丘上から自分達を撃ち下ろしており、一瞬でも身体を出せば瞬くに蜂の巣だろう。
それに自分達の装備は自衛隊制式拳銃の『9mm拳銃』がたった2丁で予備の弾倉は無い。対する相手側の不明勢力は全員がアサルトライフルで武装し、加えて2両の装輪装甲車を有している。
「(こうなれば致し方無しか…)おい!俺が奴らの狙いを引き付ける!その内に隊員を救出しろ!!」
「なっ!?無茶ですよ!?」
一等陸曹の無謀とも言える指示に、隊員らは当然反発の声を挙げる。
「だが、こうしている間にも奴らの銃口がいつ負傷した隊員に向くか分からん!」
隊員らの必死の静止を振り解き、砂丘から飛び出そうとするが―
「…!待って下さい!!味方部隊がこちらに向かってきています!!」
突然、2台の軽装甲機動車と高機動車が現れ、それを見つけた隊員が一等陸曹を呼び止める。車両隊は部隊の後方で停車すると数名の完全武装した隊員らが下車してきた。
河内「第2普通科中隊第3小隊の河内だ!!貴官らの救助に来た!!」
「ッ!救助感謝致します河内曹長!!敵は装輪装甲車を2両有し恐らく小隊規模!隊員2名が被弾し、敵中に取り残されています!!」
河内「よし分かった!!後は我々が引き受ける!!貴官らは後ろに下がっていてくれ!!」
「了解しました!!」
指示を受けた一等陸曹らは後方へと退避し、河内が指揮する小隊が前方に進出する。
河内「(ふむ…ざっと40人ぐらいか。そして装輪装甲車が2両と―……なっ?ロボット?)」
顔を少しだけ出して敵の規模を確認していると、不明勢力はどうやら人型ロボットで構成されているようだ。
ダダダダダダッ
河内「うおっ…!」
1両の敵装甲車上に装備されたRWSが掃討射撃をし、河内は咄嗟に身を隠して回避する。
河内「(…まずは脅威度の高い装甲車から排除だな)遠藤!!ハチヨンで装甲車を吹き飛ばせ!!」
遠藤「了解!!」
ATM手の遠藤は多目的榴弾が装填された84mm無反動砲(B)通称"ハチヨン"を1両目の装甲車に照準し引き金を引く。
遠藤「発射ぁ!!」
ドウォォォォン!!!!
ドゴォォォン!!!!
発射された多目的榴弾は真っ直ぐな軌道を描きながら装甲車に命中。装甲車は近くの人型ロボットを巻き込みながら爆発四散し、辺りに破片が降り注ぐ。
遠藤「目標に命中!!次弾装填!!」
閉鎖器を開放し装填手が二発目の多目的榴弾を装填すると、2両目に素早く照準し発射。こちらも命中・撃破し相手側は装甲戦力を喪失した。残りは装甲車を撃破されて動揺している様子の人型ロボットのみである。
河内「小銃手、機銃手!射撃開始!!」
この時、相手側が人間だったならば大半の隊員が撃つことを躊躇っただろうが、機械が相手なら問題ない。
パパパパパパッ
隊員達は89式小銃の引き金を引き、89式 5.56mm普通弾をロボットに正確に撃ち込んでいき、ロボットは次々と倒される。
一部のロボットは逃走を試みたが、射撃検定で特級を取得し射撃徽章を有する隊員の狙撃によって無慈悲にも撃ち倒された。
そして最後の人型ロボットが倒され、辺りを静寂が包み込む。
河内「井上!田中!遠藤!負傷した隊員の救助及び処置!残りの者は俺と共に不明勢力の確認を行う!」
三人の隊員に負傷者救護を指示し、自身の班は不明勢力側に生き残りが居ないか確認する。
小山「こいつら一体何なんでしょうか?」
河内「さぁな。しかし銃や車を扱える人型ロボットなんて聞いたことないな…」
小山「……なんか、ロボットが無傷じゃありませんか?」
河内「なに?」
改めてその辺りに倒れているロボットを観察すると、小山の言う通りだった。確実に弾丸をロボットに命中させたにも関わらず、貫通跡どころか凹み傷すら見当たらない。
河内「(確実に5.56mm弾を命中させたはず…チタンで出来ているのか…?)」
ロボットをじっくりと観察すると、背中にタコのようなロゴと英語が書かれているのを見つける。
河内「カイ…ザー…PMC?」
小山「なんですかそれ?PMCって確か民間軍事会社の略称ですよね?」
河内「ああ。だがカイザーなんて言う名前の民間軍事会社なんか聞いたことないしな…」
第12普通科連隊内で名の知れたミリタリーマニアの彼でもカイザーと言う民間軍事会社の名は聞いたこと無かった。
河内「…とりあえず負傷者を基地に搬送するぞ。あと何体かロボットを回収しておいてくれ。何かの役に立ちそうだ」
小山「了解しました」
適当な二体のロボットとそれが装備していた銃を回収していく。
その後、負傷者の収容と人型ロボットの回収を終えた部隊は早急にその場を立ち去っていった。
to be Continue
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