バカ VS シリアス   作:ポチ&タマ

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 エルデンリングの新作が出たのでこっちを更新です。


第二章
バカの帰宅


 柔らかな日差しが眠りを払っていく。

 沈下していた意識が急激に浮上し、同時に五感が周囲の情報を集め、脳が高速で処理をしていく。

 澄んだ空気には雨上がり特有の臭いが含まれている。程よい冷たさの風が窓から入り込み、肌を優しく撫でた。

 どうやら今日は晴天みたいだ。気分良くスタート出来るな。

 ようやく学校に入学したと思ったら、この二日で散々な目に遭ったのだ。折角、一段落したのだから清々しい朝を送りたい。

 

 ──って、そうだ……! 確か、氷柱の弾幕をまともに受けちゃったんだよな……! 

 

 今でも思い出せる、ヴローヴが放つ氷柱の冷たさを。まるで「これが弾幕というものだ」と昨今のシューティングゲームに物申すように容赦なく氷の弾丸を放ってきたのだ。

 わき腹や横っ腹、肩にふくらはぎなど、かなりの個所を被弾した記憶がある。これがシューティングゲームだったら今頃ティウンティウンしていることだろう。

 

 布団を捲ってみると、寝間着として使っている襦袢姿が目に入った。えっ、もしかしなくても、誰かが着替えさせてくれた? 

 誰におパンツを見られたのか分からない恐怖を味わいながらも、傷を負った場所に触れてみる。

 鈍い痛みはあるものの出血はしていない。どうやら傷は塞がっているようだが、明らかに手術を要する深手だったのにどうやって治したのだろうか? 

 

 ──まさか、勝手に吸血鬼にしたりしてないよな? 

 

 救命手段として眷属化させるなど漫画とかではよく目にするネタだけど。どこか天然なアルクならやりそうだ。

 取りあえず犬歯を触ってみたところ、人間サイズのそれだから大丈夫だとは思うけど──。

 

「──おはよう、志岐」

 

「アルク?」

 

 聞き慣れた声に思わず振り向くと、そこには金髪の吸血姫が立っていた。

 いや、なんでいるの? 

 

「わたしがここにいちゃいけないの?」

 

「いやアカンでしょ」

 

 秋葉たちに見つかりでもしたら、どう弁明すれば良いのやら。考えるだけでも恐ろしい。

 それはそうと、昨夜は家まで送ってくれたようでありがとうございます。

 

「いいのよ。わたしと志岐の仲じゃない」

 

「そうっすか。ていうか体の治療もしてくれたみたいで⋯⋯って、あの、アルクさん?」

 

 目を細めたアルクがゆっくりと近づいてくる。何だか様子がおかしい。

 

「ん? な、なんだ?」

 

 布団から出ようとするが、何故か体が動かない。

 まるで金縛りにあったかのようだ。

 

「あら⋯⋯どうしたの志岐?」

 

 ベッドの脇までやって来たアルクは、起き上がれないでいる俺を見下ろしながら意味深な笑みを浮かべる。

 ただならぬ気配。俺の知るアルクではないぞ。

 な、何が起きているんだ。

 

「ど、どうしたんだアルク。なんか怖いぞお前」

 

「怖いだなんて酷い。ただ、わたしは──」

 

 ベッドの上に乗り出してくる。

 起き上がれないでいる俺を跨ぎ、どこか妖艶な微笑みを浮かべるアルク。

 き、騎乗位⋯⋯。

 

「志岐にしてあげたいことがあるだけなの⋯⋯」

 

 覆いかぶさるように上体を倒してくる。

 恐ろしいほど整った美貌が、目と鼻の距離まで近づく。まさにキスの距離。

 そ、そんな、まさか本当に⋯⋯? 

 

「志岐⋯⋯」

 

 艷やかな微笑みを浮かべながら顔を近づけてくるアルク。

 ついに、桜色の唇が俺のソレと重なって──。

 

「おはようございます、志岐様」

 

「うぉおおおおお!? ひ、翡翠ちゃん……!」

 

 いつの間にか、ベッドの脇に翡翠ちゃんが立っていた! 

 俺の上に伸し掛かっていたアルクの姿は消えており、室内を見回しても彼女の痕跡は確認できない。

 ま、まさか、今の夢? 

 

「申し訳ありません。志岐様が中々お気づきになられませんので、こちらから声をお掛けしたのですが……」

 

「いやいやいや、全然申し訳なくないよ!? ちょっと驚いただけだから!」

 

 少しだけ申し訳なさそうに眉を落とす翡翠ちゃんに慌ててフォローを入れる。

 翡翠ちゃんの気配に気付かずエロい夢を見続けるとは、それほど疲れていたんだろうな俺。それにしてはやけにリアルな夢だったけど。

 大きく深呼吸して火照った体を落ち着かせる。

 気分を切り替えろ俺。

 

「──ん、あれ? まだ六時半前だけど……」

 

「はい。志岐様のお目覚めには少しばかり早い時間です」

 

「だよね」

 

 朝の鍛錬をしてから学校に行くため普段は六時半に起床しているのだが、サイドテーブルに置かれている時計は三十分早く表示されていた。

 翡翠ちゃんが時間を間違えるとは考え難いんだけど。

 

「志岐様を起こしに参りました。秋葉様から、ここ二日間の事情を説明してもらいますので、テコを使ってでも連れてくるように、と言付かっております」

 

「oh……」

 

 思い返せば、連絡の一つも入れずに二日も外泊していたんだよな。そりゃ怒るに決まってるわ。

 ていうか、翡翠ちゃんも怒ってるよね? いつもの澄まし顔だけど、どこか突き放したような色が見えるぞ。

 

 さて、どう言い訳したものか。馬鹿正直に言ったところで信じて貰えないだろうし、仮に信じてくれたとしても余計な心配を掛けてしまう。

 ここは無難に、梓姉のところに泊まっていたことにしよう。

 そう決めた俺は「ところで」と話題を変える。

 

「昨夜、どうやって帰ってきたの俺?」

 

「玄関口で眠っていたのに気付いた姉さんが、お部屋にお連れしたとのことです。昨夜の午前二時過ぎにお帰りになられました」

 

 気を利かせてくれたアルクが、わざわざ屋敷まで運んでくれたようだ。

 ただ傍目から見ると、完全に酔い潰れたサラリーマンのそれにしか見えないと思う。

 

「──ぁ痛あああああああッ!」

 

 ベッドから立ち上がった瞬間、裂くような痛みが両脚に走る! 

 

「志岐様っ?」

 

 思わず膝を着いてベッドに顔を埋めてしまう俺。翡翠ちゃんのあたふたした声が耳に入るがそれどころではなかった。

 こ、この痛み、間違いなく折れてる奴だわ……! 最悪の場合ズレてるかも……! 

 

「いかがなさいましたか志岐様? その、汗がすごく……お体の調子が優れないのでしたら、もうしばらくお休みになられた方がよろしいのではないでしょうか? 先ほどはああ申しましたが、秋葉様からは私が……」

 

「い、いや、大丈夫ばないけど大丈夫。すぐに着替えるから、一旦出て下さい」

 

「……かしこまりました。どうかご無理はなさいませんよう、お願いします」

 

 心配そうな目を向けてくる翡翠ちゃんだが、立場上こう言えば何も言えなくなる。

 深々とお辞儀をして退室する翡翠ちゃん。

 出来るだけ体を動かさないように、寝間着の襦袢から普段着の小袖に着替えた俺は、刀が入った竹刀袋を杖代わりにして、なんとか廊下に出る。

 

「志岐様、こちらをお使い下さい」

 

 廊下で待ってくれていた翡翠ちゃんが、おずおずと細長い棒を差し出してきた。

 一見杖のように見えるが、歩行器か。

 

「ありがとう、メッチャ助かる」

 

「はい。お役に立てたのなら幸いです」

 

 激痛が走るのは右脚の方だ。左脚も痛むが我慢出来ないほどではない。

 右脚に掛かる負荷を歩行器越しに右手で受け止める。これなら問題なく歩けそうだ。

 持ち出した刀を再び部屋に戻した俺は、翡翠ちゃんと一緒に居間へ移動するのだった。

 

 

 

 1

 

 

 

「おはようございます兄さん。不思議と、随分久しぶりな気がしますね」

 

 居間の扉を開けると、優雅にティーカップを傾けていた秋葉ちゃんの姿が目に入る。

 ティーカップをソーサラーの上に戻す秋葉ちゃん。

 瑞々しいピンク色の唇は、可愛らしいへの字を描いており大変なご不満を抱いているのが見て取れた。

 

「お、おはよう秋葉! いやぁ、今日も素敵だなぁ!」

 

「お世辞と挨拶は結構ですので、そこに座ってください。えぇ、色々と長くなる筈ですものねぇ?」

 

 取り付く島もないが、どことなく楽しそうなのは何ですかね。あれか、カエルを前にした蛇とかそういう感じ? いたぶるの好きだったりするん? 

 

「──兄さん?」

 

「あ、はい。座りますね。どっこいしょういち」

 

 杖に体重を預けながらゆっくりソファーに腰掛ける。あー、足首が慢性的に痛ぇ。

 琥珀ちゃんの姿がないのは朝食の準備に追われているからだろう。ススッと俺の右後ろに翡翠ちゃんが控えた。

 

「……妙な態度でこちらの気勢を殺がないでください。卑怯です」

 

「ん? なんで卑怯なの?」

 

「卑怯でしょう。そんな顔をされたら気が緩み──コホン」

 

 咳払いをして言葉を慎むと、いっそう鋭い目で俺を睨んできた。

 

「早速ですが、この二日間どこで何をされていたのか、お話を聞かせて頂きます」

 

 再びティーカップに唇を付けた秋葉ちゃん。

 静かに喉を潤した彼女は、虚言は許しませんと言わんばかりに鋭い眼光を向けてくる。

 だが、済まぬ。虚言で押し切ろうと思う。

 予め用意していた言い訳で乗り切ろうと口を開く俺に、被せる形で秋葉ちゃんが言った。

 

「ちなみに。七夜梓先生にはすでに確認済みですので、先生の家に宿泊していた事実はないことは承知しています」

 

「なん、だと……」

 

 それでは“梓姉の家に泊まって連日お酌をさせられていた”アリバイが使えないじゃないか! 

 ど、どうしよう。吸血鬼云々のことを伝えないでそのまま事実だけを述べると、一目惚れした外人女性と一緒に高級ホテルに泊まり、その後彼女の家で過ごしたことになるが。それでは俺がヤリモクのナンパ野郎じゃないか! 

 かと言って誰の家にも泊まらずに一人街中を彷徨っていたとなると、それはそれで徘徊癖のある老人のようだ。というか流石に現実味がないわな。

 ていうか、梓姉ぇえええええええ! フォローしてくれるんじゃなかったんかいッッ! 

 

「えっと、だな、その……」

 

「どうしたのです? 正直に話せば良いだけではありませんか」

 

 ジト目を向けてくる秋葉ちゃん。心なしか翡翠ちゃんの眼差しも強くなった気がする。

 仕方ない、ここは無難に友達の家に泊まったことにしよう。

 

「へぇ、ご友人のお宅にですか。では、そのご友人のお名前は?」

 

「えっ!? ゆ、弓塚さつきちゃん、とか?」

 

 まさか、そこまで追求されると思わなかった俺は、つい反射的に隣の席の女の子の名前を口にしていた。

 男友達もいるのに何故彼女の名前が出たのかは俺も分からない。いや、さっちんも友達だけどさ。

 俺の言葉にキュピーンと目を光らせた秋葉ちゃんは一言「翡翠」と呼ぶ。

 

「はい。こちらが志岐様のクラス名簿です」

 

「ありがとう。……弓塚さつき、確かにいますね」

 

 どこから入手したんだ、そのクラス名簿。

 翡翠ちゃんが手渡したプリントを一読した秋葉ちゃんは、優雅にティーカップを手に取り問いかけてくる。

 

「もちろん、弓塚さんは男性ですよね?」

 

「ん? いや、女の子だけど」

 

 カチャン、と。秋葉ちゃんのティーカップがテーブルに落ちた。

 いや、落としたといった方が正しいかもしれない。

 まるで机にファイルを叩きつけて部下を威圧するダメ上司のように、一種の牽制を仕掛けて来たのだ。

 

「秋葉様──」

 

「あぁ、ごめんなさい翡翠。片付けてもらえる?」

 

 ヴローヴの氷などものともしないほど冷たい声。ぶっちゃけ怖い。

 翡翠ちゃんは無言で零れた紅茶や欠けたティーカップを手際よく片付けると、そのまま居間から出ていく。

 えっ、この状況で秋葉ちゃんと二人きりになるんですか? 

 

「──つまり、兄さんは、女性の家に上がり込み、一晩をともにしたと。そういうことですか?」

 

「えっと、まあ、うん……そういうことになる、のかな。あ、でも健全なお付き合いだから秋葉ちゃんが心配してるようなことは何もないよ!」

 

 ただ席が隣で初めて出来た女子友達ってだけで、彼氏彼女じゃないから。一緒の布団でラストアークなんてしてないから! 

 そういう意味を込めて健全のお付き合いと表現したのだが、何故か秋葉ちゃんは顔面を蒼白にするとふらっと倒れてしまった。

 

「お付き合い!? あぁ……」

 

「秋葉様っ!」

 

 ……なんだか初めて出会った時のことを思い出しますね。

 

 

 

 2

 

 

 

 秋葉ちゃんも貧血持ちで、時々調子を悪くする時がある。普段は軽度のため多少具合が悪くても学校に通うのだが、今回はハズレの日のようだ。翡翠ちゃんに連れられて自室に戻った秋葉ちゃんは、そのまま眠りについたらしい。

 俺はというと、一度姉さんに診てもらった方が良いと言う専属メイドさんに従い、琥珀ちゃんの診療を受けることに。学校に通うまで時間があるため、簡単な処置くらいなら受ける余裕がある。

 

「お待たせしましたー!」

 

「ごめんね忙しいのに」

 

「いえいえ何を仰いますやら! 志岐さんのご指名ですもの。私などでよろしければ、いつでもご奉仕させていただきます!」

 

 弾むような笑顔で俺の部屋にやって来た琥珀ちゃん。その手には赤十字マークが目印の救急ボックス。

 ベッドに座る俺の足元に膝を着くと、ざっと全身に視線を這わせてきた。

 

「ではでは、診察を始めますね~。ふむふむ……お加減が悪いのは、右足だけでなく下半身全体ですね?」

 

「見ただけで判るの?」

 

「はい、これくらいは。免許こそ持っていませんが、薬剤師と整体師になれるよう、子供の頃から鍛えているんです」

 

 マジか、すげー。医学にも明るいメイドさんとか、レベル高すぎ高杉くんだよ。

 そのうち「外科にも興味が出てきまして」とか言って、整形外科や脳神経外科とかにも手を出すんじゃなかろうか。

 ていうか、琥珀さんの目標はそっち系の道なのかな? 

 

「いえ、あくまで私は秋葉様にお仕えする身ですので。ただ、もう二度と大事な人を失わないで済むように、私のワガママで覚えただけです。少し押しますね、痛かったら仰ってください」

 

 フローリングの床に正座した琥珀ちゃんは、自身の太ももの上に俺の左足を乗せて触診する。

 白魚のような繊手が脛をなぞると、痛みでつい声が漏れてしまう。

 ざっと脚の状態をチェックした琥珀さんは、困ったように眉をハの字にして言った。

 

「あのー、志岐さん? もしかして、骨に罅が入ってませんか?」

 

「え、ヒビ? 折れてるんじゃなくて?」

 

「私見ですので断言はできませんが、触った限り折れてはいないようです」

 

「よかった、それならこのまま放置で大丈夫だな」

 

 良くて単純骨折、悪くて粉砕骨折や転移していると思ったからな。罅だけなら掠り傷っすよ。

 そう言うと腰に手を当てた琥珀ちゃんはぷりぷり怒り出した。

 

「もう、このまま放置するなんて駄目ですよ! ちゃんと適切な処置をしないと悪化して今度こそ折れちゃいます! ちゃんとご自身の体を労わって差し上げてください! 秘蔵の軟膏を持ってきますので、しばらくお待ちください。ベッドから勝手に動いてはダメですからね」

 

 パタパタと足音を立てて部屋から出ていく琥珀ちゃん。

 一人残された俺は、言われた通りベッドに座ったままポリポリと頬を搔くのであった。

 

 

 

 琥珀ちゃんの治療は思いの他、本格的だった。

 軟膏を塗った後に踵を固定するテーピングを施し、その後にギプスで脛まで固定。ギプスなんて病院に行かないと作れないと思ってたけど、材料さえあれば作れるんですね。

 ちょっと大袈裟だと流石に思ったのだが、それを聞いた琥珀ちゃんに「大袈裟じゃありません。ご自分の体をなんだと思ってるんですか」とまた怒られてしまった。

 

「まったく……それで、こんな怪我どこで拵えたんです? 志岐さんの健康を預かる身として看過できません」

 

 琥珀ちゃんのジト目。笑顔が絶えない彼女が浮かべる表情の中では珍しい部類に入る。

 ジト目の琥珀ちゃんも可愛いなぁと思いながら、この短時間で用意した回答を口にした。

 

「友達の家に泊まりに行った日の帰りに、ちょっとこけちゃって」

 

「もう気を付けてください。私はもちろん秋葉様や翡翠ちゃんも、志岐さんが思っている以上に志岐さんのことを心配してるんですから」

 

 そう言うと、この二日間どれほど心配したのか懇切丁寧に教えてくれる琥珀ちゃん。

 時計をチラチラ見ては忙しなく動き回ったり挙動不審になったりの秋葉ちゃん。執務も集中出来ず、就寝時間が過ぎても俺の帰りを待ち続けていたらしい。

 翡翠ちゃんは業務が終わり次第、玄関でずっと待機していて。琥珀ちゃんや秋葉ちゃんが声を掛けなければ俺が帰ってくるまで延々と待ち続けていただろうとのこと。

 琥珀ちゃんも警察や病院にそれとなく俺が保護されていないか確認してくれていたようで、随分と心配を掛けてしまったと反省する。

 一報、入れておくべきだったな。

 

「秋葉様も、連絡の一つも取れないのは問題だとお考えのようです。既に志岐さんのお姉さまからお渡しされたスマホがございますが、こちらもお返ししますね」

 

 そう言って差し出してきてのは、没収された俺のスマホだった。どうやら秋葉ちゃんから返すように頼まれたらしい。

 ていうか、なんで梓姉からスマホ渡されたこと知ってんの? 誰にも言ってないし、人前では見せていないのに……。

 そこはかとない寒気を覚えながらも、あって損はないかと受け取ったのだが──。

 

「……なんか初期化されてんだけど」

 

 電源を入れると見慣れた待ち受け画面ではなく、初期設定画面が表示された。

 まさか、勝手に初期化したんじゃ……。

 

「いくら秋葉様でもそのようなことしません!」

 

「じゃあ、なんで初期化されてんだ……あ」

 

 琥珀ちゃんがスマホに触れた途端、プツンと電源が落ちた。

 そういえば琥珀ちゃん、重度の機械オンチでしたね……。

 

 ……。

 

「琥珀ちゃあああああああん──っ!」

 

「申し訳ありません志岐さん! この琥珀、一生の不覚……!」

 

 俺の絶叫を聞きつけた翡翠ちゃんがやって来るまでの間、擽りの刑を執行するのであった。

どの程度、月姫について知っていますか?

  • 無印、リメイクともにプレイ済み
  • 無印のみプレイ済
  • リメイクのみプレイ済
  • 未プレイだけど設定・世界観は知ってる
  • まったく知らない
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