バカ VS シリアス   作:ポチ&タマ

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バカ vs シリアス
Round1 ファイッ!


バカが散る

「クハハハハハハっ! 殺してやった、殺してやったぞ!」

 

「お願い、しっかりして兄さん……!」

 

「志岐、ちゃん?」

 

「ボーっとしないで翡翠ちゃん! このままだと志岐くんが……ッ!」

 

 何故か、秋葉ちゃんたちが騒いでる。

 真っ赤に染まったメイド服を着た翡翠ちゃんは、呆然とした顔で立ち尽くしていて、琥珀ちゃんは今まで見たことない顔をしながら、俺の胸に手を当てている。

 秋葉ちゃんも、血で濡れるのも構わず俺の手を取り、目に涙を浮かべながら必死に何かを訴えていた。

 その後ろでは、血濡れた姿の四季が狂ったように笑っている。

 

 ──あれ? 何があったんだっけ? 

 

 体が動かない。

 それどころか、熱という熱が、体から抜け落ちていくような感覚がある。

 丁度、胸にポッカリ穴が開いて、そこから熱が放出されるような……。

 

 ──あー、いや。開いてるなこれ。

 

 段々思い出して来た。

 虫の知らせで翡翠ちゃんの元に向かったんだが、中々見つからなくて。

 秋葉ちゃんから四季のご飯を運んでるって聞いたから、急いで座敷牢のある地下へと向かって。

 そしたら、四季が翡翠ちゃんに襲い掛かっていたから慌てて止めに入って。

 暴走状態だったから力尽くで抑えようとしたんだけど、翡翠ちゃんを狙って攻撃してきて。 

 

 ──あぁ、そうだ。思い出した……。

 

 何とか割って入ったはいいけど、異様に伸びた爪の手刀で胸をぶち抜かれたんだっけ。

 躱したりガードするなり、いくらでも方法はあったのに。いつもならあり得ない凡ミスだ。

 

 ──四季、泣いてたんだよな。

 

 暴走状態の四季は支離滅裂な発言が多く、到底正気とは思えない精神状態だったんだけど、狂ったように笑いつつも、その頬を涙が伝っていたんだ。

 まるで助けてと言ってるように見えて、思わず固まってしまい。その隙を突かれたんだな。

 

 ──なんだ、何から何まで、俺のミスじゃん……。

 

 血を流し過ぎた。段々頭がぼやけてくる。

 心臓をぶち抜かれたのは致命的だ。全集中の呼吸で止血を試みてるけど、流石に無理がある。

 焦点の定まらない目でなんとか、愛しの妹分たちを見る。

 

 ──ははっ、全員酷い顔だな……。でも、ここまで想ってくれて、兄貴冥利に尽きるぜ……。

 

「──秋葉ちゃん……翡翠ちゃん……琥珀、ちゃん……」

 

「兄さんっ!」

 

「志岐ちゃんっ!」

 

「志岐くん……っ!」

 

 力を振り絞り秋葉ちゃん、翡翠ちゃん、琥珀ちゃんの頭を順番に撫でた俺は、こんなところでくたばるような男じゃないという思いを乗せながら──。

 

「──あばよっ!(柳沢〇吾風)」

 

 満面の笑みで挨拶を交し、気を失うのだった。

 

 

 

 1

 

 

 

 兄さんが、意識不明の重体となった。

 反転衝動に耐えきれず暴走した兄様──いえ、四季から翡翠を庇って、心臓を一突き。

 致命傷なのは誰が見ても明らかで。

 徐々に冷たくなっていく兄さんを見るのは忍びなく。死を迎えようとする彼を目の前にしながら、ただ見ているだけしか出来ない自分なんて許せるはずがなく。

 兄さんの命を現世に止める術があるなら、使わない手はない。

 

 ──還ってきて、兄さん……っ! 

 

 どうすればいいのかは、本能的に理解していた。

 ただ兄さんを想って、想って、想って。

 還ってきてと願って、願って、願って。

 一心に願いを込めながら、口づけを交わす。

 

 私の命を分け与え、共有する。

 兄さんを救えるのなら、私は喜んでこの命を捧げよう。

 

 もう一度、陽だまりのような笑顔で、私を呼んで。

 もう一度、暖かな手で、私を撫でて。

 もう一度、生きて──。

 

 

 

 2

 

 

 

 志岐ちゃんが入院した。

 秋葉様のお力でなんとか一命を取り留めたけれど、ずっと寝たままで目を覚まさない。

 ベッドの上で眠っている志岐ちゃんは、まるで死んでしまったかのようで。

 手を取って温もりを感じ、顔を近づけて呼吸をしているのを感じてようやく安心する。

 

 ──志岐ちゃんは此処にいる。生きてくれている、って。

 

 こうなったのは、すべて私のせいだ。

 座敷牢に入れられた前当主さまは時折苦しそうにする時がある。その時の前当主さまは酷く混乱していて、もう一人の自分と話しているような姿が見受けられる。

 性格も暴力的になり、牢屋で遮られていなければ何度も襲われていたことだろう。

 そんな日は志岐ちゃんに会わせてはいけないと、秋葉様に強く言いつけられていたのに。

 

 あの日、志岐ちゃんが来ていたことを知らなかった私は、志岐ちゃんが庇ってくれたお陰で助かったけど。

 代わりに志岐ちゃんが死ぬような目にあった。

 私のせいだ。

 

 前当主様は遠野邸を脱走してしまった。反転した者を──それも遠野の前当主を野放しにする訳にはいかず、すぐに追っ手を手配したが、全員帰らぬ者となった。

 もしかしたら、市井の人たちを手に掛けているのかもしれない。

 私のせいだ。

 

 遠野に預けたのが、俺たちの間違いだった。

 病院に見舞いに来た志岐ちゃんのお父さんからそう言われ、面会に行くことも出来ない。

 志岐ちゃんのベッドで涙を流す秋葉様。志岐ちゃんにプレゼントしてもらったリボンに触りながら、窓の外を見ることが多くなった琥珀ちゃん。

 私のせいだ。

 

 全部、全部、私のせいだ。

 

 ごめんなさい、志岐ちゃん──。

 

 

 

 3

 

 

 

 志岐くんが眠りについてから、もう三年が経とうとしています。

 志岐くんのお父さんにもう来るなと言われたけど、志岐くんに会いたい気持ちは日に日に大きくなって。

 同じ気持ちの秋葉様と翡翠ちゃんの三人で何度も頭を下げ、時には土下座をしてお願いしました。

 その甲斐あってか、面会に来ることを許されたわたしたちは、毎日のように志岐くんの病室に顔を出しています。

 

 眠り続ける志岐くんは、寝返りどころか微動だにしないので、本当に死んじゃったんじゃないかと心配になりました。

 胸に手を当てて、穏やかな鼓動を感じでようやく安心できます。

 阿良句先生がいれば志岐ちゃんの目を覚すことが出来るかもしれないのに、肝心の先生は行方を絡ませて連絡が取れません。

 

 ──志岐くん、今日の朝食は翡翠ちゃんが作ったんですよ。志岐くんの好きなスクランブルエッグです。まだ人に食べて頂くレベルではないですけど。

 

 ──今日は寒いですね。すっかり息が白くなってます。志岐くんも暖かくして寝ないと風邪ひいてしまいますよ。

 

 ──秋葉様が、ついに屋敷の使用人たちを全員解雇しました。あ、もちろんわたしと翡翠ちゃん以外です。以前から話は聞いていましたが、あの広大な屋敷の掃除を私たちだけで済ませないといけないんですよね……。

 

 ──お誕生日、おめでとうございます志岐くん。今年で十二歳ですね。すっかり髪も伸びちゃって、まるで女の子みたいですよ。散髪して差し上げますので、早く起きて下さいね。

 

 毎日通いました。雨の日も雪の日も嵐の日も。一日足りとも欠かさずに通いました。

 女の子はみんな女優だって、前に志岐くんが言ってましたよね。無口で無愛想なままじゃ志岐くんも楽しんで貰えないと思って、頑張って翡翠ちゃんのように明るい女の子を演じてるんです。

 翡翠ちゃんも、すっかり変わってしまったので、今のわたしたちを見たら志岐くんでも間違えちゃうと思います。

 相変わらず寝たきりの志岐くんですけど、時々お顔が緩むことがあって、それを見るのが嬉しくてついついお喋りになってしまいました。

 

 ──五月蝿くて寝辛いですよね。だから、早く起きてくれてもいいんですよ、志岐くん。




 ストック切れました。
 年内には投稿出来るように頑張ります。

 追記:24日に更新を再開します。

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  • 未プレイだけど設定・世界観は知ってる
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