ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯013 『いいビジネスパートナー』

 宝泉との上下関係を一時的に決めた金曜日から土日を挟んで月曜日――この日、1年Dクラスの協力の元、2年Bクラスは全員がパートナーを決定した。

 原作ではパートナー決めを拒絶する高円寺も、オレとの契約があるため、適当にOAAの生徒を指差して相棒を選んでいる。その相手が原作通りに七瀬なのだから運命というのは面白い。

 

 残る1年Dクラスのメンバーも、何とかペアを決めることが出来たようで、次の日の火曜日には全157組のペアが出来上がり、ここからは全員が筆記試験の勉強に集中する体制へ移行していた。

 

 原作ではナイフで貫かれたオレの左手は、代わりに小さなヒビが入っており、ギプスで固定された左腕を見て原作のように驚かれる一幕はあったが、とりあえず転んで腕にヒビが入ったということにして、宝泉との一件は秘密にしている。

 

 後は、試験当日までのんびり過ごすだけだった。

 

 怪我をしたことで雪が甲斐甲斐しくオレをサポートしに来たり、他にもセフレたちが代わる代わるお世話をしたりしに来たが、中には恵や佐藤のようにテストの点数がギリギリで逆に勉強のお世話をするという一幕もあり、なかなか騒がしく過ごしている。

 

 また、天沢が何度かTレックスを求めて乱入しに来るイベントもあったが、まだまだ信頼のおけない相手ということで、Tレックスの代わりにブラキオサウルスくんやプレシオサウルスくんを使ってあしらっておいた。

 アロサウルスくんの時と同じく、「これじゃないっ! 別のやつなのっ!」と叫んでいたが、嫌ならばオレを納得させられる結果を出す以外にない。まぁ、夏が終わってオレを退学させる試験が撤廃されれば、満を持して貫通式を行うことも吝かではなかった。

 

 そんなこんなで月末になると、遂に筆記試験の日がやってくる。問題文を軽く流し読みしたが、特に解けなさそうな問題はなかったのでサクッと全問正解していった。

 

 怪我をしたのが左腕で助かったな。右腕だったら、筆記をするのに苦労して全問解くのが間に合わなかったかもしれない。

 と、思いながらも、念のために解答欄を確認もして問題なしと判断すると、暇つぶしにセミの腹側のデッサンを書いて『セミヌード』といたずら書きをしてテストを提出――後は返却日を待つだけとになった。

 

 後から聞いた話によると、茶柱が答案回収の後、職員室でパラパラ内容を確認していると、無事にセミヌードを発見して吹き出し、横から見て居た星之宮が大爆笑する事態になったとのことが、答えが全て合っていたため文句も言えなかったらしい。

 

 そんなこんなでテストが終了すると、澪や朝比奈を始めとしたテスト期間で可愛がれなかった女たちを鳴かせつつ日々を楽しんでいく。帆波だけはスケジュールが合わずに呼び出せなかったので、その内どこかで労ってやる必要があるだろう。

 

 改めて、左腕が使えないのは地味に不便で、こんなことなら下手に動かずに原作通りにすればよかったか――と、若干後悔もしたが、結局ナイフで刺されても、骨にヒビが入っても一緒だということで、すぐに考えるのは止めにしている。

 

 ――そして、来るべき5月1日。この日、最後の6時間目に、今回の特別試験の結果発表の場が設けられた。

 

「これから特別試験のテスト結果を発表する。前のモニターにも表示するが、手元で見られるようにお前たちのタブレットにも一斉表示を行うので安心しろ」

 

 原作では鈴音がオレに勝負を挑む場面だが、この世界ではオレとの上下関係がしっかり決まっているので特に何か起きることはない。

 

 強いて言えば、オレの点数が全て100点で教室が騒ぎになったくらいか。ちなみに雪もほぼ全ての教科が100点だったが、英語だけケアレスミスで99点になっている。

 当の雪は「うわぁ、ミスったー!!」と、この世の終わりのように頭を抱えていた。これまでずっとオレと並んでトップだったのが、雪の中ではお揃いのカップルのような感覚だったのだろう。過去の自分を殺しかねない勢いで悔しがっている。

 

「い、いやいや、雪ちゃん……99点も100点も変わらないから」

「変わるー! 清隆と一緒じゃないから駄目なのー!」

 

 雪の斜め後ろの席にいる千秋が声をかけるも、当の雪はイヤイヤと首を横に振るだけだった。

 

 とはいえ、普段からオレや雪が満点を取っているのでこのクラスも慣れたかと思ったが、鈴音や啓誠といった上位陣ですら90点も取れていないテストで満点というのは驚くことのようで、全教科満点のオレにはクラス中の視線が集まってくる。

 

「清隆……お前は、ここまで」

 

 啓誠も流石に動揺を隠しきれないようで何とも言えない表情を浮かべていた。だが、原作のように実力を隠していた訳ではないので、これで信用を失うということはないはずだ。

 ちなみに授業が終わった後、真顔の啓誠がオレの所まで来て、答案用紙を見せて欲しいと言ってきたので素直に見せたのだが、セミヌードを見て噴き出す珍しい啓誠を見ることが出来ている。

 

 後、問題となってくるのは、この試験による各クラスの結果とポイントの変動についてだが、これも概ね予想通りの結果となっていた。目の前のタブレットに視線を落とす。

 

 

【特別試験・総合順位】

 1位・2年Aクラス 平均704点

 2位・2年Cクラス 平均671点

 3位・2年Bクラス 平均669点

 4位・2年Dクラス 平均645点

 

 

 思いの外、龍園が退学者を出さずに頑張って猛追していたが、うちと帆波のクラスで学力の高い生徒を奪った影響は大きくでているようだった。

 確か原作では坂柳クラスが平均725点で1位、龍園クラスが平均673点で2位、うちが平均640点で3位、帆波クラスが平均621点で4位だったはずだ。

 

 この世界では帆波が弱者を救済しつつ、学力の高い生徒も引き抜いたことで、坂柳と龍園のクラスに大きなダメージを与えた上で浮上している。

 正直、オレや雪がいるし、2位はうちのクラスが取るかと思ったが、後から聞いた話によると、帆波は原作と違って1年生たちを集めた大きな勉強会をこまめに開いて、自クラスだけでなく下級生の学力も底上げしていたらしい。

 

 おまけに、うちは原作と違って、天沢が1年Aクラスの学力の高い生徒を早い段階で引っ張ってきてくれたおかげもあって、池たち学力低い組が一安心してしまったようで、そこもテストの結果に反映した可能性がある。

 

 結果、ほんの僅か差ではあるが、帆波のクラスに出し抜かれてしまった。が、それはそれで、帆波が神崎たちの信頼を得られるので悪いことではない。帆波クラスには1000万PPの借金もあるし、ある程度CPを稼いでくれた方が返済の目途も経つからな。

 

 それに、この試験はそう大きなポイントが貰える訳でもないので、退学者が誰も居なかったなら何よりだ。

 これで、Aクラスは981CP、Bクラスは718CP、Cクラスが355CP、Dクラスが312CPと、クラス変動は起きずにCクラスが若干Dクラスを引き離して上との差を詰めている。

 

 後は、今回満点だったことで茶柱からボーナスのPPをぶんどるだけだ。今回の試験の難易度を考えれば、10万PPは貰っても罰は当たらないと思っている。

 普段は大体、中間だと2万~3万、期末が3万~5万の間くらいで、難易度によって報酬額が前後するが、過去一と言って良い今回はそれだけ貰ってもいいだろう。

 

 と、いう訳で、授業が終わると早速茶柱を捕まえにいく――と、向こうもオレに用事があったようで、「月城理事長代理がお呼びだ」と声をかけられた。

 

 これは流石に無視する訳にはいかないので、茶柱と一緒に月城の待つ応接室に向かう。

 原作と違って、茶柱は月城が敵サイドの人間であることを知らないので、「全教科満点を取った生徒ということで、名前でも覚えられたか?」と、的外れな推察を口にしている。

 

 そういえば、月城と手を組んだことでまだ茶柱には何の事情も説明していなかったな。

ここで保険の意味を込めて、月城は表向き父親がこの学園に送った刺客であり、オレの退学を狙っていることを説明してやる。

 流石に信じられないという様子を見せていたが、オレが嘘をつく理由もないとわかると、「私はどうすればいい?」と、動き方を確認してきた。

 

 とはいえ、現段階で茶柱に求めることは何もない。下手に警戒されても動き難くなるだけだし、今の所は知らなかったフリをして自然にしておくように話す。

 この段階で話したのは、万が一無人島試験で原作のように月城が武力行使に出てきた時の保険だ。今の段階のオレと月城の仲なら、わざわざ武力行使に出ることはないと思うが、親父殿の命令が下ってどうしても動かざるを得ないという可能性は十分にある。

 

 特に、今この学校には司馬のようにホワイトルームを知るエージェントがいる以上、月城も表立ってオレと仲良くは出来ないからな――と、考えていると、程なくして月城の待つ応接室前に辿り着いた。そのまま、茶柱を残し、一人で応接室内へと入っていく。

 

「わざわざご足労頂きましてありがとうございます、綾小路くん」

「いいんですか? 迂闊にオレと接触して、親父殿のエージェントに勘繰られますよ?」

「その言い方……どうやらホワイトルーム生以外にも、あなたの事情を知る人間がいることはお見通しみたいですね。本当、まるで未来でも見ているかのような推察力だ」

 

 原作知識を悪用して司馬の存在を匂わせると、月城がまたオレへの評価を一段深くしたようで、にっこりと嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

 どうぞ座ってくださいと促されたので、遠慮なく席に座らせて貰った。それを確認すると、月城が今回の試験の感想について話し始める。

 

「今回の試験は見事でしたね。一之瀬や天沢を使って学力の高い生徒を引き抜き、他クラスの平均点を下げつつ、宝泉を力でねじ伏せて自クラスの退学者が出るのを防いだ。君の高い学力や戦闘力、他者を利用して場を操る支配力をこの目でしっかり見させて頂きました……まぁ、その怪我はマイナスポイントですけどね」

 

 確かに、ホワイトルームにいた頃のオレなら無傷で宝泉を制圧できた。その点では、オレも少し体が鈍ってきているのは自覚している。

 

「ホワイトルーム生は天沢しか接触して来ませんでしたよ。八神は様子見ですか?」

「一応、それっぽい指示は出したんですけどね。無視されてしまいました」

「おいおい、一応あんたが指揮を執ってるんだろ? いいのか、それで」

「相手は子供ですからね。単純な反抗期であればまだ可愛いものですが、そうでない場合は少々笑えないことになるかもしれません」

 

 原作通り、ホワイトルーム生を送り込むことを決めたのは月城ではないようで、八神は月城に反抗しているらしい。

 

「気を付けて下さい、綾小路くん。私の指示に従わずに、独断で動き始めている所を見るに、どうにも上はきな臭いことを考えている恐れがあります」

「見限られないでくださいよ? こちらとしては、あんたはいいビジネスパートナーなんで」

「私もそう思っていますよ。あなたの御父上からの命は、適度にあなたを退学に追い込むことであなたがどう動くか、どう状態が変化するかを確認することですからね。その対象であるあなたが、こちらの事情を酌んで動いてくれるんです。これ以上、仕事のしやすいことはありません」

 

 勿論、それは今回のように、オレが結果を出すこと有り気ではある。それでも、仕事が楽に済む分、月城としてもオレはいい仕事相手のはずだ。

 

「まぁ、例え駒として使われようとも、最後まで指示通り動くだけですし、失敗して切り捨てられたのなら、それはそれでしょう。次の場所に赴くまで」

 

 月城は表向き、オレの親父殿の遣いをしているが、原作通りなら親父殿以外の派閥にも顔を利かせていると見て良い。

 前にもどこかで言ったが、オレの月城のイメージは橋本の上位互換――どこにでも良い顔をして利益を得るのが、このおっさんの本質だ。

 

 ちなみにうちの親父殿は、昔はかなり権力を持った市民党の政治家だったが、今では失脚してカムバックを狙っているただのおっさんである。

 ホワイトルームが一時的に稼働を停止したのも、この時の失脚によるものが大きい。上からの圧力で施設を凍結させられたのだ。まぁ、一年で再稼働して、今も元気に稼働中のようだが。

 

 原作通りなら、今年の冬頃に圧力をかけていた相手が寿命で死に、それをキッカケに親父殿は共栄党の政治家として復活。現総理大臣である市民党の鬼島と相対する訳だが――あの無能な親父殿に勝ち目があるとはとても思えない。

 オレとしても勝ち馬に乗るなら、鬼島の派閥に回るか、高円寺の言葉を信じて高円寺グループに身を寄せるのが一番ではないかと考えている。まかり間違っても、ホワイトルームに戻るつもりはないし、政治家にも指導者にもなる気は欠片もなかった。

 

「最後に一つ……もしあの子が、あなたの父上の意向すら無視しているのだとしたら、場合によっては退学を選んだ方が幸せだった――と、いうことにもなりかねません。君がホワイトルームの最高傑作であることが揺るぎないものであればあるほど、それに対する嫉妬や憎悪は計り切れないですからねぇ。君がどうなればあの子は納得するのか、想像しただけで恐ろしいですよ」

「どちらにせよ、向かってくるなら排除するまでですよ」

「君には期待していますよ。私は君の御父上ほど、ホワイトルームというものを信じてはいませんが、君が高い能力を持っており、私の意を組んで動いてくれるだけの才能を持っていることだけは認めていますから」

 

 と、互いの近況報告や、今回の試験の評価を受けつつ、月城との面談は無事に終了した。

 

 月城は七瀬や司馬のことについて何も話さなかったが、軽く匂わせたしオレが既に気付いているということにも気付いているだろう。その上で、オレがどう対応するかを見たいのだ。

 

 まぁ、オレの将来がどうなるにしろ、月城との関係はキープしておいた方が良い。この学校の中だけに限らず、この男はいろいろと役に立つ――こういう人間は上手く使えば有益だからな。

 

 

 




 原作との変化点。

・七瀬からネタバレを受けていない。
 原作では宝泉を倒した後に、綾小路清隆退学2000万チャレンジの説明を受けるが、病院に行ったためカットになっている。とはいえ、清隆や雪はもうそれぞれの情報網から話を聞いているため気にしていない。

・満点についての周囲の反応が違う。
 原作だと、ずっと手を抜いていたせいで数学で満点を取って驚かれるが、このSSでは入学当初から手を抜いていないので大きな問題にはなっていない。しかし、啓誠を始め、一部の学力強者は、改めて清隆や雪の異常性を把握。とはいえ、当の雪はやらかしたことでショックのあまり口から魂が抜けかけていた。

・茶柱に月城の件を伝えた。
 卒業式の日に真嶋や坂柳を交えて面談していないので、ここで茶柱は初めて月城が刺客だということを知った。混乱しているが、ここで清隆を失う訳にはいかないと覚悟を決めたものの、今の所動いて貰う予定はない。

・月城との対談。
 ビジネスパートナー関係になっているので、原作ほどギスギスしていない。逆に月城から清隆の評価は上がり続けている。月城も清隆の将来を見越して付き合っている=清隆が親父殿の手に負える存在でないとわかっている。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 セミヌードは昔ツイッターで見たネタ。初めて見た時は天才だと思った。

・椿雪
 英語だけミスって昇天中。真澄や鈴音に死ぬほど慰められている。

・松下千秋
 清隆や雪が頭がいいのは知っていたが、想像以上で少しドン引きしている。

・茶柱佐枝
 クラスの順位は3位だったが、現在Bクラスであることや清隆の能力の高さを再認識できてご機嫌。だったが、月城という新しい刺客にかなり動揺している。セミヌード犠牲者第一号。

・星之宮知恵
 まだ原作ほど追い込まれていないが、少しずつ危機感を感じてはいる。セミヌード犠牲者第二号。

・幸村輝彦
 今までは点差がそこまででもなかったことで、実力差を感じにくかったが、想像以上に差があって驚いている。セミヌード犠牲者第三号。

・月城常成
 清隆が原作知識を擦りすぎて、ホワイトルーム生のレベルの低さに呆れている。本来であれば清隆が異常なのだが、月城の中の価値観が少しずつ狂ってきた形。現状、裏切りは考えていないが、親父殿の指示で後日無人島試験での強襲が決定した。


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