ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯011 『この試験には攻略法が存在する』

 勉強会の初日を終えた次の日、雪を堀北の勉強会の監視につけていると、予想通りに失敗したという連絡が来た。

 

 ちなみに堀北からは何の連絡も来ていない。まぁ、まだ連絡先を交換していないから当然だが、仮に交換していても失敗したと自分から連絡することはなかっただろう。

 

 櫛田が図書館を飛び出していったという報告を受け、校舎で待ち伏せをしていく。同時に、ペン型ビデオカメラとICレコーダーのスイッチを入れて、いつでも櫛田の本性を録画できるようにした。

 

 ようやくだ。ようやく櫛田を食える。

 

 ダンダンダンダンと、イラつきを隠さないまま、櫛田が屋上の方へ階段を上っていくのが見えたので後をつけていく。

 予定通り過ぎて、思わず笑みが浮かんでしまう。さぁ、後は本性が出るのを待つだけだ。早くキレて、オレに証拠を掴ませてくれ――

 

「あ――ウザい」

 

 しばらく待っていると、屋上前でとても櫛田が発したとは思えない低い声が聞こえてきた。遂に原作通り、櫛田の本性が出てきたらしい。

 

「マジでウザい、ムカつく。死ねば良いのに……自分が可愛いと思ってお高く止まりやがって。あんたみたいな性格の女が、勉強なんて教えられるわけないっつーの」

 

 堀北の恨みを全力で吐き出している。当然だが、しっかり録画、録音は出来ていた。

 

「あー最悪。ほんっと、堀北ウザい、ほんっとにウザいっ!!」

 

 ガンと、勢いに任せて鍵がかかっている屋上の扉を蹴る音が辺りに響き渡る。

 

 流石の櫛田もやり過ぎたと思ったのか、誰か来るかと思って後ろへ振り返った。当然、オレは逃げも隠れもしていないので、バッチリと視線が合致する。

 

「……綾小路くん、ここで何しているの?」

「いや、たまたま学校に残っていたら櫛田を見つけてな。声をかけようと付いて行ったら、なかなか面白い見世物が始まったので見物させて貰ったんだよ」

「聞いたってこと?」

「あーウザい――の辺りからバッチリ」

「最初からってことじゃん……今聞いたこと、誰かに話したら容赦しないから」

 

 そう言って、櫛田が距離を詰めて来た。おそらく、原作通りにオレの手を胸に付けて脅しをかけるつもりなのだろう。

 

「もし話したら?」

「今ここで、あんたにレイプされたって言いふらす」

「見事な冤罪だな」

「大丈夫、冤罪じゃなくなるから」

 

 そうだな。確かに、今から冤罪ではなくなる――が、主導権を渡すつもりはない。

 

「――ッ! 動かない!?」

「成程、自分から相手の手を自身の胸に触らせることで、指紋という証拠と冤罪に信憑性を持たせようということだったか」

 

 原作のオレはしてやられたが、残念ながら最初からわかって引っかかるほど間抜けではない。櫛田の力程度では、オレの腕を動かすことなど不可能だ。

 

「なかなか面白い発想だが、衣類は指紋が付きにくい。証拠としてはあまり強くないぞ。すぐに使用するならまだしも時間が経てば採取は難しくなるしな。抑止力としては弱い部類だ。まぁ、そもそもそんなことはさせるつもりもないけどな」

「っ、クソ!」

「さて、櫛田桔梗。イニシアチブの取り方を教えてやろう」

 

 そう言って、胸ポケットからスイッチが入ったペン型ビデオカメラとICレコーダーを取り出した。

 

「これはビデオカメラとICレコーダーだ。この学校は何があるかわからないからな。いざという時のために、オレはこれをいつも付けて歩いている。当然、ここに来てからの映像やお前との会話は全て録画、録音している」

 

 櫛田はすぐにビデオカメラとICレコーダーを奪おうとして来たが、櫛田の能力でオレに勝てるはずもなく、腕は虚しく空を切る。

 

「っ! 早くそれ消しなさいよ!」

「オレの方に、その要求を呑むメリットがないな」

「いいから消せって!」

 

 執拗にビデオカメラとICレコーダーを狙う櫛田を避けながら鬼ごっこを開始した。

 

 当然だが、オレが捕まる可能性はほぼゼロな上、仮に捕まっても櫛田の力ではビデオカメラもICレコーダーも奪えない。

 

「さて、これでオレはお前の弱みを握ることになった訳だ。どうも反応を見る限り、お前はその本性とも言えるべき姿を他人に知られるのを恐れている。冤罪まで起こそうとした所からもそれは間違いない。そして、オレはその証拠を持っている」

「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ……っ」

「お前としてはこの証拠を暴露される訳にはいかない。だからこそこうしてオレを捕まえようとしている。だが、お前ではオレを捕まえられない。じゃあ、どうすれば秘密を守ることが出来る?」

 

 流石に体力が切れたのか、櫛田がその場に座り込んだ。荒くなった息を整えながら、こちらを殺さんばかりに睨んでくる。

 

「答えは簡単だ。オレに従え」

「はぁ、はぁ……股でも開けってこと? 最悪……」

 

 現状をしっかり理解しているようで何よりだ。もはや櫛田にオレの要求を拒否することは出来ない。原作知識に間違いがないのなら、こいつは秘密をばらされるのを何よりも恐れている。

 

「冤罪が冤罪じゃなくなるだけさ。嫌なら、別にいいぞ。オレはこの秘密を拡散しても別に困りはしないしな。何なら放送の権利をポイントで買って盛大に流してやろうか?」

「やめてっ! わかった。言う通りにするから!」

 

 オレが本気だとわかったのか、そう縋るように櫛田が迫ってくる。どさくさに紛れてビデオカメラとICレコーダーを取られないように、オレは一歩下がった。

 

「じゃあ、オレの部屋に行くか。これからよろしくな櫛田」

「………………」

「返事は?」

「……よろしくお願いします、綾小路くん」

「ん?」

「よろしくお願いします……ご主人様」

 

 櫛田と肩を並べて仲良く寮へと戻っていく。

 

 途中、雪が待っているのを見て、助けを求める視線を向ける櫛田だが、オレがビデオカメラとICレコーダーを渡して保管しておくように命令すると、その視線も絶望的なものに変わった。

 

 雪がオレと付き合っている可能性は考えていても、雪がオレに服従しているとは思っていなかったのだろう。

 

 櫛田からすれば隙を見て証拠を奪い返すことが出来なくなったことで、今度こそ顔色が真っ青になっている。もう逃げられないと悟ったようだ。

 

 櫛田をオレの部屋に連れ込み、もう一つのビデオカメラの前で同意だということを誓わせる。これで、オレは合意の元、櫛田を食べることが出来るようになった。神室と違って、櫛田はそう簡単に屈服しないだろうからな。保険は打っておくに越したことはない。

 

 そのまま、服を脱ぐのを映像に収めていく。

 

 雪の時は歓喜の表情、神室は無表情を装っていたが、櫛田の目はまだオレを殺さんとばかりに射貫いている。

 

 体は許しても、心は屈しないという意思だろう。これがもしひと月前なら、オレもその視線にビビっていたかもしれない。

 

 だが、ひと月だ。それだけ学習時間があれば、オレに出来ないことなどない。無から有を想像するのは苦手だが、技術の習得はオレの得意とするところだからな。

 

 下着姿で顔を赤らめている櫛田をベッドに押し倒す。さて、気丈なフリをしているようだが、どこまで耐えることが出来るかな? オレの向上したテクニックを試す絶好の機会だ。

 

 原作知識で、櫛田桔梗が処女であることはわかっている。まずは、軽く三回程絶頂させてやろう。意識を失うほどの苦しい快感で、逆に自分からオレを求めるように仕向けてやる――

 

 

 

◇◆

 

 

 

 こうして、櫛田はオレに屈した。未経験の女がひと月の経験を重ねたオレに勝てるはずもなく、快感に身を震わせながら、自分からオレのTレックスを求める声を上げている。

 

 そして、一度食べてしまえばこちらのものだ。

 

 食べる前に入念に解した甲斐もあり、ほぼ痛みはなかったようで、櫛田はすぐに快楽の虜となっていた。

 また、オレ自身もまた俺の無念を一つ晴らすことが出来た興奮でハッスルし過ぎたようで、櫛田が気を失うまで攻め立ててしまっている。

 

 まだ余裕があるが、少し喉が渇いた。

 

 櫛田は確実に意識を失ってはいるが、万が一寝たふりをしていて、オレの携帯やビデオカメラを確保しようとしているという可能性を考慮し、荷物を持って一階の自動販売機まで飲み物を買いに行く。

 

 すると、エレベーターのカメラに堀北が乗っているのが見えた。そういえば、櫛田のことばかり考えて忘れていたが、今日は堀北が堀北の兄と再会して暴力を振るわれる日だったっけか。

 

 ふと、面白いことを考えたので、自動販売機の裏に隠れて堀北をやり過ごすと、雪にICレコーダーを持ってくるようにチャットをする。

 

 どうやら起きていたようで、数分もしないうちにエレベーターに乗り込んできた。オレの呼び出しは絶対だとわかっていて何よりだ。そのまま、雪を連れて堀北を追い、兄との騒動を見物する。

 

 原作通りであるなら、堀北が兄を追ってここに来たことを吐露し、背中を追いかけると宣言するはずだ。

 しかし、堀北兄は、堀北に自分を追いかけるのではなく、もっと自分としての個を持ってほしいがために厳しく当たる。

 

 原作では、オレが堀北の危ない所を救出していたが、当然そんなことをするつもりはなく、雪と一緒に妹を散々に躾する堀北兄の行動を眺めていた。

 

 ある程度痛めつけると満足したのか、原作通りに「上のクラスに上がりたかったら、死に物狂いで足掻け」と、アドバイスのようなものを残して去っていく。

 

 さて、俺の記憶にあるゲームの選択肢なら、次にこういうものが出てくるだろう。

 

 1、堀北を助ける。

 

 2、堀北の兄を追う。

 

 当然、選ぶのは2だ。ここで堀北のメンタルを立て直すよりも、ボロボロにした方が食べやすくなるし、味方がオレしかいないという状況を作りやすい。

 

 つまり、倒れている堀北を助けるよりも、兄の方にちょっかいをかけた方がメリットも大きいという訳だ。

 

「ちょっといいですか、先輩」

 

 三年の寮に向かって、ある程度離れた場所まで歩いたのを確認すると、堀北兄に声をかける。

 

「……一年か? 俺に何か用か?」

「ええ。実はオレたち、さっき先輩が女子生徒に乱暴なことをしている所をみてしまいまして」

 

 と、ストレートに話を伝えていく。一瞬、動揺する様子を見せたが、すぐに自分を落ち着かせていた。

 

 こんな寮に近い場所で話すのもあれなので、「少し歩きましょうか」と提案する。櫛田の時同様、イニシアチブを取られている堀北兄に拒否権はなく、素直に後を付いてきた。

 

「それで、先輩に少し聞きたいことがあるんです」

 

 ある程度寮から距離を取ると、再びオレは口を開く。堀北兄は、無表情ながら睨むようにこちらを見ている。こうしてみると、よく似ているな。

 

「聞きたいことだと?」

「生徒会長がカメラのない所で、堂々と暴行をしていたくらいです。この学校は、バレなきゃ何をしてもいい――と、考えていいんですよね?」

 

 堀北兄も、自分が生徒会長で悪事をしていたという負い目があるため、「それは駄目なことだ」とは口が裂けても言えないだろう。いや、こいつならそもそも言わないか。

 

「じゃあ、そんな裏ルールにのっとって提案なんですけど……さっきの現場の一部始終を録画、録音したこれのデータを、先輩ならいくらで買い取ってくれます?」

 

 流石に証拠を押さえられているとは思わなかったようで、堀北兄も驚いた表情を浮かべた。

 

 しかし、今この場では監視カメラがあるので、堀北の時のように暴力には訴えられない。仮に訴えたとしても、今度は雪が悲鳴を上げて人を集める。そうなれば、堀北兄に勝ち目はない。

 現状、堀北兄は詰みの状況にある。向こうも、屈する以外にどうしようもないということを理解したようでため息をついた。

 

「……一つ100万PPで買い取ろう。だが、わかっているとは思うが、この場でデータは消去しろ。その上で、もし同じネタで脅しを続けるのであれば、こちらも報復行為に移る」

「わかってます。流石に生徒会長を何度も敵に回すほど馬鹿じゃないですよ」

「どうだか……お前は俺がここで拒否すれば簡単にその映像を拡散しただろう?」

「まぁ、そうですね。あんたに遠慮をする義理はないですし」

「撮られたのは俺の油断だ。だから、戒めとして代金は支払う――が、何度も言うが一度きりだ」

 

 そう言って、堀北兄はオレに100万ずつ、計200万を振り込んだ。代わりに、録画、録音のデータは消去する。

 

 ちなみに、櫛田のデータは雪の手で既に別の所に移してあるので問題はない。オレがわざわざこれらの機材を渡した理由を推察できないほど、雪は馬鹿じゃないからな。

 

「確かに。こちらもデータは消去しました」

「……お前たち、名前は?」

「1年Dクラス、綾小路清隆です」

「同じく、椿雪です」

「綾小路に椿か、生徒会に入る気はあるか? 今なら書記の席を用意する」

 

 場所は違うが、今回のオレの一件で見所があると判断したのか、そう誘いをかけて来た。

 雪も勧誘してきたのは意外だったが、これは逆に良いタイミングでの誘いかもしれない。が、とりあえず拒否する。

 

「生徒会ですか……興味はないです。今名乗った通り、オレはDクラスなんで、上のクラスを目指すのに必死なんすよ」

「お前ほどの男がDクラスとは信じられないが……椿はどうだ?」

「私は……」

 

 と、断りそうな雰囲気を見せたので、「参加すると言え」と耳打ちした。

 

「……堀北会長がそうお望みであれば、微力ながら力をお貸ししようと思います」

 

 雪がオレの指示で参加を決意したことは、堀北兄も理解したようで、少し主体性がないのを危惧する様子を見せる。安心しろ、雪の能力は折り紙付きだ。

 

「問題ありません。雪は優秀ですよ、勉強、運動能力、共にAクラスでもおかしくない力を持っています。少なくとも南雲副会長に靡くことはないのでご安心を」

 

 ――そう告げると、流石の堀北兄も驚いた様子を見せた。こちらが生徒会の内情を理解しているとは思わなかったのだろう。

 

「お前、どこまで知って……」

「あなたの誘いが来る前から、雪はそのうち生徒会に参加させようと思っていたんですよ。なので、生徒会に関する情報は先んじて仕入れることにしたんです」

「き、清隆? 私、生徒会の話なんて何も聞いてないけど……?」

「今話しただろう」

「もっと早く言ってよー!」

 

 雪がそう叫ぶと同時に、堀北の兄が改めて全身を舐めるようにオレに視線を向けてくる。今の流れで、オレが優秀だということがわかったのだろう。

 

 そして、小さな声で、「お前たちがいるなら、少しは面白くなるかもしれんな」と呟いた。

 

「では、椿は中間試験が終わったら生徒会に参加しろ。後、無理にとは言わんが、お前も気が向いたらいつでも生徒会に来い」

「わかりました」

「まぁ、気が向けば……」

「他にも何かあれば連絡しろ、生徒会長である前に、オレはこの学校の先輩だ。お前にも何か教えてやれることもあるかもしれん」

 

 そう言って、堀北兄が自分の連絡先を教えてくる。丁度いい、わざわざ上級生の教室に行くのも面倒だし、ここで過去問を貰ってしまおう。

 

「なら、一つお願いしても良いですか?」

「なんだ?」

「先輩が一年の時、四月末に行った小テストと、五月の中間テストの問題を貰えませんか? もし、可能であれば、二年生が去年行ったものもあると嬉しいんですけど……」

 

 そう頼むと、再び堀北の兄は驚いた表情を見せた。オレが攻略法に気付いているとわかったのだろう。

 

「……今の段階で、もう過去問の存在に気付いているとはな」

「ヒントはいろいろありましたからね」

 

 そう言うと、興味が出たようで「聞かせて見ろ」と言われる。どうやら雪も過去問については気付いていないようだったので説明してやることにした。

 

「先週、一年生は初めて学校のシステムについての話があった。その最後に先生が中間テストに関する話をしたのを覚えているか? 曰く、赤点を取ったら退学とのことで、うちのクラスは大騒ぎだっただろう」

 

 雪もすぐに自分に向けて話しているとがわかったようで、「そうだね」と相槌を打ってくる。

 

「でも、先生は最後に言った。『お前らが赤点を取らずに乗り切れる方法があると確信している。出来ることなら実力者に相応しい振る舞いをもって挑んでくれ』ってな」

「あっ、それは私も変だと思ったよ。あの程度の問題で赤点が7人もいるんじゃ、中間テストだと軽く10人は超えるはずなのに、絶対回避できるって思うのは変だもん」

「そう、明らかにおかしい言い回しだ。裏技があると言っているに等しい」

 

 そして、この言葉以外にもヒントはあった。

 

「雪、四月末の小テスト、最後の三問だけ難易度が別次元だっただろう?」

「あ、うん。あれって高校一年で習う範囲じゃないから驚いちゃった」

「テストというのは、学習した内容を覚えているかを確認するためのものだ。にも拘らず、学んですらいない問題を出す意味など存在しない」

「……つまり、あれは学力以外で答えを探せっていう示唆だったの?」

「そうだ。それに、先生のあの言い回しを考えれば、自ずと答えは出てくる」

 

 小テスト、絶対回避の預言、ヒントとしては十分すぎるものだった。仮に、原作知識がなかったとしてもオレなら気付いただろう。

 

「オレは、すぐに確信した。この試験には――攻略法が存在すると」

「……それが過去問だとどうしてわかったの?」

「短い時間で成績を伸ばすのはどうやったって限界がある。赤点を取るような勉強が苦手な生徒は特にそうだ。だとすると、勉強以外に対応策があると推測できる。じゃあ、仮に赤点を回避するとして、真っ先に考え付くのは何だ? オレが思いついたのは予め問題を知るというものだった。問題がわかっていれば、子供でも高得点が取れる」

 

 つまりはカンニングだが、これは学校のルールと矛盾する。

 

「だが、この学校はやけにカンニングに厳しい。ポイントでテストの問題を買うことも考えたが、事前に問題を知るという行為が入学したばかりの新入生のポイントで買えるとは思えない。それに、先生の言葉のニュアンスも、そんな一か八かの策ではなく、誰でも出来ることだと推察できた」

 

 だとすれば――

 

「――答えは自ずと出てきた。事前に問題を知るには、問題が書いてある答案が必要。しかし、今回の試験の答案など犯罪行為でもしない限り入手不可能だ。では、答案に該当するものは何かと考えた時、それは過去問しか想像できなかった」

 

 と、原作知識をこすったこじつけ推理を披露すると、感心したように堀北兄が頷いた。雪も試験範囲の変更の知らせを聞けば、この推理に行きついただろう。

 

「一年生の最初の試験が例年同じもので、過去の問題がずっと使いまわされているのなら、先生の言葉にも納得できる部分がある。まだ推測の域を出ないが、確証を得るためにも堀北会長から過去問や小テストを譲って頂きたいと思ったんだ。まぁ、会長の反応でほぼ間違いないとわかったけどな」

「まさか、こんなに早く気づくとは思わなかったがな。だが、だからこそ、お前の優秀さが際立つ。生徒会に入るに相応しい人材だと思ったが――」

「とりあえず、雪で我慢してください」

「わかっている。椿の優秀さもよくわかった。お前ほどではないにしろ、今の段階で違和感を覚えているならば上出来だ」

 

 そう言うと、堀北の兄は満足そうな笑みを浮かべる。

 

「予想外にいい出会いがあった。その祝いに、生徒会の二年からも過去問を貰っておいてやる。揃い次第、メールをする」

「ありがとうございます」

 

 最初は脅す形になってしまったが、そのおかげで堀北兄はオレの実力に気付いたようだし悪い結果ではない。オレ自身が生徒会に入るつもりはないが、雪を送り込めたし、ここで連絡先を得ることが出来た。

 

 結果的には、堀北の兄が言っていた通り、いい出会いだったと言っていいだろう。

 

「……ねぇ、清隆」

 

 PP200万をだまし取ったにも関わらず、満足そうに帰っていく堀北兄を見送ると、雪が恐る恐るこちらに声をかけてくる。

 

「あのさ。なんで、私を生徒会に入れようと思ったの?」

「生徒会には権力がある。お前にその権力が手に入るということは、実質生徒会をオレが支配するということだ」

「でも、そう上手く行くかな? 南雲副会長って人が敵なんでしょ?」

「問題ない。勝つための策はもう考えてある。生徒会長が退任する10月にはお前が生徒会長になっているはずだ」

「生徒会長になるの!? 聞いてないよ!」

「今言っただろう」

「もっと早く言ってよー!」

 

 文句を言ってくる雪の頭を優しく撫でる。プリプリしていた雪も、すぐに「えへへ」と笑みを浮かべた。雪の機嫌を取るにはなでなでに限る。

 

「お前には期待している。オレのためにも、生徒会で実力を示せ」

「うんっ」

「後は勉強会だな。堀北が失敗した以上、須藤たちはオレたちで助ける。お前にも苦労をかけるがよろしく頼む。」

 

 そう言うと、雪も「もっと、頑張る!」と気合を入れていた。

 

「んじゃ、そろそろオレたちも帰ろう」

 

 もうここに用はないので寮に戻っていく。ふと、まだ堀北がいるかどうかが気になったが、わざわざ裏手に回るのも面倒なので、とっとと部屋に戻ることにした。

 

 部屋に戻ると、どうやら櫛田はまだ気を失っているようだったので、再び体をまさぐっていく。いい具合に休憩を取ってしまったので、オレはまだまだ元気だ。櫛田も夢うつつで口から甘い声を洩らしており、Tレックスの一撃を叩き込むと完全に意識を取り戻した。

 

 すぐに素直になり、もっともっと――と、オレを求める櫛田に応えていく。

 

 太陽が出てくる頃には、もう完全にプライドも打ち砕かれてしまったようで、昨日オレの部屋に来た時の鋭い視線が嘘のような貌で、櫛田はオレにまたがり自ら腰を振っていた。

 

 

 




 原作との変化点。

・櫛田の秘密を盾に脅した。
 原作では胸を触ったことでよくわからない秘密を握るだけになったが、こんなわかりやすい弱点を突かないなんて有り得ない。この日を心待ちにしていたので、かなりハッスルしている。

・堀北と堀北兄の騒動を見送った。
 助ける/助けない ✚→〇

・堀北を殴っていた動画と音声を盾に堀北兄を脅した。
 流石の堀北兄も屈するしかなかった。この時、無防備な清隆とは違って、雪がギリギリで手が届かない範囲に構えているのを見て、只者ではないと判断した。

・雪を生徒会へ入れた。
 以前考えていた策を実行。南雲と争わせて生徒会長の座を奪う気でいる。

・過去問を堀北兄に要求した。
 PPなしで手に入れられそうだったので頼んだ。その際、「このゲームには攻略法が存在する(アキヤマサン)」を決めた。

・櫛田が肉体的に屈した。
 精神的にはまだだが、肉体的には白旗を上げている。



 今話登場人物一覧


・綾小路清隆
 ようやく櫛田を食べられて大満足。少し金に困っていたが臨時収入が手に入り、一気に余裕が出来た。夜のテクニックC→B

・椿雪
 清隆の命令で櫛田の秘密を撮ったビデオとレコーダーのデータをコピー。その際、櫛田の正体を知ったが、興味がないのでスルーしている。後に、清隆から生徒会へ入るように命じられてこれを受諾。清隆のために地盤を広げようと決意する。

・櫛田桔梗
 堀北のせいで清隆に食べられることになった哀れな子羊。しかし、ギリギリまで抵抗していたが、いざTレックスの一撃を受けると意外と悪くない気分だった。清隆の夜のテクニックCのおかげ。

・堀北鈴音
 兄のお仕置きを受けてボロボロになった。地味にお仕置きでも、兄に意識されて嬉しいと感じている精神的M。

・堀北学
 妹へのお仕置きによって清隆と雪に脅されたが、話している内に意外と能力があると判断して生徒会へ勧誘した。結果、雪をゲット。初の一年生生徒会員が決まる。


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