ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯022 『生徒会室での仕込み』

 同級生の状況も問題ではあるが、今回の無人島サバイバル試験は他学年との競い合いということもあって、1年や3年にも仕込みをしておく必要があった。

 

 まずは先んじて、雪を通じて生徒会室に3年の桐山となずなを呼び出している。当然のように生徒会室はもうオレの私室であり、雪、鈴音、帆波といった訳知りメンバー以外は退出させていた。

 

「集まって貰ってありがとうございます。桐山先輩、朝比奈先輩」

「それで、俺に用とはなんだ椿――いや、綾小路。朝比奈まで呼び出しているようだが……」

 

 当然だが、桐山には呼び出しをくらう理由などないと思っているので、突然の出来事に困惑した様子を見せている。

 しかし、去年の混合合宿で起きた南雲失墜の一幕で、雪の後ろにいるのがオレだというのは理解しているらしく、すぐに今回の呼び出しがオレによるものだと理解したようだった。

 

 まぁ、それ以前にかつて生徒会のメンバーだった桐山は当然ながら、堀北兄がオレの能力を買っていたことも知っている。

 生徒会の人間でないオレがここにいて、それが雪と関係が深い人物である以上、何も知らなかったとしても雪の後ろにいるのがオレだと推測できても特に不思議はない。

 

「オレが先輩を呼び出す内容なんて南雲関係しかないに決まっているでしょう。次の試験から南雲が復活します。これまでと違って、リーダー不在のクラスを相手にするのとは訳が違うのはわかりますよね?」

 

 そう言うと、桐山が何とも言えない表情を見せた。そう、去年の混合合宿で南雲を半年の停学に追い込んでから、3年Aクラスに猛追しているBクラスではあるが、結局は逆転できていない。

 

 勿論、元のCP差が大きいというのもあるが、それ以上に思った以上に桐山は役に立たない男だった。このままでは復活した南雲がまた3年の支配権を奪うのは時間の問題である以上、テコ入れをしようと思うのは当然のことだろう。

 

「……お前に何か提案があるということか?」

「ええ。桐山先輩には、次の特別試験で南雲を抑えて1位から3位までのどこかに入賞して貰うつもりです」

「お前に言われなくても元々そのつもりでいる。だが、口では簡単に言えても、南雲のいるAクラスを抑えて俺たちが上位入賞するのは至難の業だ」

 

 あまりにもオレが簡単に理想を口にするので、桐山もイラつく様子を見せる。しかし、別に理想論を語るために接触した訳ではない。今話したことが、作戦概要なのだ。

 

「だからこそ、先輩を呼び出したんですよ」

「なんだと?」

「先輩には3年のCクラスとDクラスを纏めて連合軍を作って貰います。その上で、最悪下位5グループに入っても大丈夫な部隊を作って徹底的に南雲を妨害してください」

「連合軍だと!?」

「去年の終わりから夏にかけて、Bクラスも特別試験の勝利でPPも大分潤ってますよね? クラスで上手くPPを用意して買収してください。南雲の停学が空けるのが7月の中頃とすると、放置した場合またBクラス以外のクラスは掌握される危険があります。その前に、こちらが取り込んで兵にしてしまうんです。勝率も上がって、南雲の脅威も減る一石二鳥の策でしょう?」

 

 つまり、3年全体でAクラスを包囲してしまう――南雲包囲網を作ろうということだ。

 

 この半年、帆波の努力の甲斐もあって、南雲の構築した3年生の繋がりはボロボロになっている。しかし、PPがあれば一時的にでも買収される危険があった。

 だからこそ、先にこちらが他の3年を利用してAクラスを抑える。ここ半年で、BクラスもかなりPPを稼いでいるはずだし、ここいらが盛大な使い時だろう。

 

「そんなことが……いや、確かにそれが出来れば……」

 

 桐山も南雲は放置しておけないと思っていたようだが、まさかオレが3年全体を巻き込む策を考えているとは思っていなかったようで驚きの表情を見せている。

 基本的に桐山は、能力的には凡人の域を出ない。

 原作のように、既に出来ている集団の指揮を執ることは出来ても、そもそもの集団自体を作るという発想が出てこなかったとしても別に仕方のないことだった。

 

「それと、朝比奈先輩を呼び出したのはAクラスの情報を流す諜報員になって貰うためです」

「スパイ……と、いうことか。しかし、朝比奈は南雲の……」

「大丈夫だよ、桐山くん。今の私は、清隆くんの命令に従う契約をしてるから」

「契約……だと?」

 

 なずなが素直にオレに従う素振りを見せて、桐山も驚いた様子を見せる。確かに、何も事情を知らなければ、なずなが南雲を裏切るとはとても思えないだろう。

 

「去年、少し賭けをする機会がありまして、彼女は卒業まで南雲ではなくオレに協力することになっています。命令を破れば退学である以上、逆らうことは出来ません」

 

 まぁ、それ以前にもうなずなは、南雲ではなくオレを選んでいる。オレが命じれば喜んでクラスの情報を売ってくれるはずだ。

 

「とはいえ、無償という訳には行きません。桐山先輩には、もしBクラスがAクラス卒業を決めた際に、彼女をAクラスに移動させて貰います」

「清隆くん、私は別に……」

「人間、無償の協力ほど怖いと思うものはないという。桐山先輩にしても、理由なくなずなが裏切るよりも、見返りがあった方が安心できるし良心が痛まない」

「……そうだな。朝比奈、お前が本当に南雲を裏切ると言うなら、むしろ最終的にうちのクラスに来ると言ってくれ。そうじゃないと信用できない」

 

 桐山にしてみれば、元は南雲と一番距離が近かったなずながスパイになりますと言っても、すぐに受け入れられるものではない。

 なずな自身にAクラスへの興味がなくても、何もないということ自体が、そこに何か裏があるのでないかと勘ぐらせてしまう。故に、敢えて条件を吹っ掛ける。なずなにも打算があれば協力しても不思議はないと桐山自身が納得するためにこれは必要な行為だった。

 

「わかった。それで桐山くんが納得してくれるなら受け入れるよ」

 

 これで下準備はある程度終了したと言って良いだろう。桐山となずなが繋がったことで、この先もAクラスの情報は全て筒抜けになる。

 南雲も、まさかなずなが自分たちの情報を流しているとは思うまい。この長い付き合いが迷彩となり、なずなをスパイだと認識するのが難しくする。

 

 後は、南雲を決闘の舞台に上げるだけだ。

 

 なずなに捨てられ、勝負にも負け、Aクラスからも落ちて、これから南雲は惨めな月日を過ごしていくことになる。

 だが、心配しなくてもいい。別に退学させようという訳ではなかった。ただ、二度とオレに挑もうと思えなくなるくらいに、心も体も状況もズタズタに引き裂こうと思っているだけだ。

 

「わかった。後はこちらで動く。何かあればまた連絡をくれ」

 

 桐山も、これだけ舞台をお膳立てされれば、もうこちらの提案を受け入れないとは言えないだろう。ただでさえ、桐山は生徒会選挙で南雲に屈してこちらを一度裏切っている。

 

 だからこそ、もう後には引けなかった。ずっと目の敵にしていた南雲がどんな目に合わされたのかを考えれば、こちらの提案を蹴ればどうなるかなど火を見るよりも明らかだ。

 

「ああ。後、試験が始まったらなずな用のトランシーバーを買っておくのを忘れないでください。機を見て、なずなに渡せば南雲がどう動くかが早い段階からわかりますから」

「じゃあ、私は雅と一緒のグループになればいいの?」

「出来れば、だ。南雲がなりふり構わず能力優先でグループを組むようなら無理に参加しなくていい。自分が退学しない程度のグループに入るか、最悪の場合は自分の身だけ守れ」

「うん、わかった」

「朝比奈のカードは確か半減だったな。足りないPPはこちらで用意する。後でいくら足りないか教えてくれ」

「そう? じゃあ、お言葉に甘えるね」

 

 これで南雲対策は万全だ。原作では3年全体で高円寺の包囲網を敷いていた南雲が、まさか自分に包囲網を敷かれることになるとはきっと夢にも思っていないだろう。

 

 原作では、妨害役の生徒はそのまま退学させられてしまっていたが、事前に救済の準備をするか、ある程度の成績を取った小グループで引き上げてやれば退学の危険もしなくて済むはずだ。その辺は放置していても桐山が勝手にやってくれるだろう。

 

 後は結果を出すだけでいい。

 

 ここで桐山を勝たせてオレの実力を認めさせれば、もう3年もオレの意のままに操れる烏合の衆に出来る。今後の3年生の貯蓄PP次第では、8億で帆波クラスを救済する作戦もかなり現実味が見えてくるかもしれなかった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 3年についてはもう放置しておいても大丈夫だろうと言うことで、今度は1年に接触していく。とはいえ、1年生はまだ綾小路清隆退学チャレンジ期間な上、Aクラス、Bクラスについてはほぼ接触がないに等しいので全体を操るのは不可能に近かった。

 

 しかし、前回の特別試験で宝泉とは関わりが持てている。あいつが原作のように、オレを倒すことに燃えているなら協力を取り付けるのは無理かもしれないが、少し前に会った七瀬の言い分では今はまだ戦おうとは思っていないらしい。

 

 それなら、今回の試験はこちら側の駒として動かしても問題ないだろう――と、いうことで、何だかんだ前回の試験の後に交換した宝泉の連絡先に呼び出しをかける。

 すると、意外にもすぐに反応があった。

 まだ学校に残っているということだったので、当然のように生徒会室に呼び出す。時間を守ることを意識しているだけあって、約束の時間になると宝泉はしっかり生徒会室に顔を出した。

 

 今、生徒会室にいるのは、桐山たちの時と同じく、オレ、雪、鈴音、帆波の訳知りメンバーのみだが、宝泉はまさか帆波がいるとは思わなかったようで、少し面食らったような様子を見せている。

 とはいえ、動揺したのもほんの一瞬であり、すぐにいつもの調子でドカッと椅子に座った。改めて、今回の特別試験で宝泉がどう動くつもりなのかを確認していく。

 

「悪いな。急に呼び出して」

「別に、たまたま時間があっただけだ」

 

 いつものように威勢よくしているが、呼び出しを無視しなかったのは、一応こいつもオレに負けたという意識があるからだろう。

 自分を負かした相手からの呼び出しを無視するのは、拗ねているようで格好悪く見える。仮にそれが自分に利のないことであってもプライドが無視を許さない。

 

「早速だが、お前の意思を確認したい」

「意思だぁ?」

「そうだ。今回の特別試験、お前はオレに挑むつもりはあるか?」

「あるって言ったらどうすんだ?」

「その時は好きにしろ。今回の要件はなかったことになる」

「チッ、そういうことかよ……」

 

 どうやらこの問答だけで、宝泉はオレが協力を求めていると理解したようで眉間の皺を深くする。

 前回の契約で、宝泉はオレが卒業するまでオレの命令に従うという契約をしたが、オレ自身がその契約を突っぱねて、宝泉を制限する気がないと言ったのが本気だったとわかったのだろう。

 

 実際、こいつが原作通りにオレを狙うつもりでいるなら、オレはこいつの動きを縛るつもりはなかった。

 

「とりあえず、普通に一位を目指すだけだ。あんたへのリベンジは、今はまだ考えてねぇよ」

 

 それを聞いて安心した――前回、宝泉とは次に学年を超えて協力できる試験には無条件で手を貸すという制約を付けている。もし、この試験でオレを狙うようならその制約を無視しても良かったのだが、そうでないのなら約束通りに協力を頼んでも良いだろう。

 

「グループは決めたのか?」

「まだ正式には決めてねぇが、組む相手は見繕ってある。そういえば、他のクラスの奴らからもあんたを倒すグループに入らないか誘われたっけか。まぁ、興味がなかったから適当にあしらっておいたが……」

 

 組む相手は見繕ってあるか――おそらくは原作通りに七瀬や天沢と組むつもりとみた。だからこそ、こいつの動きを操れればこちらもかなり楽に動くことが出来る。

 

「宝泉、オレと組むつもりはあるか?」

「あんたと?」

「そうだ。この前の契約を早速使わせて貰う。これを終えれば、オレとお前の契約も綺麗サッパリ終わりって訳だ」

 

 前にも言ったが、元々宝泉を長く縛るつもりはなかった。学年を越えた戦いだって、大きなものはこの無人島サバイバル試験くらいで後はお遊びの範疇で宝泉の力を借りるまでもない。

 

 というか、いつ飼い主に噛み付くかわからないような軍用犬をいつまでも飼っている趣味はなかった。

 

「待てよ。約束はあんたが卒業するか退学するまでだ。その約束を違えるつもりはねぇ」

 

 しかし、宝泉は約束を守ると言って聞かない。こういう時、龍園は結構ちゃっかりしているんだが、宝泉はかなり義理堅い性格をしている。

 

 時間に真面目な所といい同じ不良でも正反対だ。

 

「まぁ、その話はいずれな。今は無人島試験についてだ」

「あんたと組むって話か」

「ああ。と、言っても、四六時中オレと一緒に行動するというより、オレにちょっかいを出してくる相手を叩いて欲しいって感じだ。具体的には龍園とかだな」

 

 次の特別試験は無人島で行われるが故に、学校と違って監視の目がないのは容易に想像が付く。その上で、原作では宝泉を対処するために龍園を使ったが、この世界では逆に龍園の動きを阻止するために宝泉を動かしたかった。

 

 宝泉としてはもっと高圧的にこちらに都合のいいことを命令されると思っていたのか、オレの提案を聞いて少し拍子抜けした顔をしている。しかし、荷物持ちのような僕になるよりも自分向きな仕事を頼もうとしているとわかり、すぐに好戦的な笑みを浮かべていた。

 

「面白ぇじゃねぇか、あの野郎と戦えるならあんたと組んでもいい。基本的にはこっちで好き勝手動いていいんだろ?」

「ああ。制限をかけるつもりはない。こっちもこっちでやることがあって忙しいからな。お前が龍園を受け持ってくれるだけでも大分有難い」

「まぁ、他の一年連中からも狙われてるからな。ごしゅーそーさまってやつだ」

 

 こちらを鼻で笑ってはいるが、割と素直にこちらの要求を呑んでくれたな。今までの宝泉ならまず間違いなく協力の代わりにPPを寄こせと吠えていただろうが、契約通りほぼ無条件でこちらの頼みを聞いてくれている。こう見えて、約束はしっかり守るつもりらしい。

 

 結局は口約束なので無視することも出来たはずだが、喧嘩で負けた上での約束を破るというのは、この男のプライドが許さないのだろう。

 

 こういうタイプは信用できるので、ついでに今現在の2年の状況や3年の動き方についてもある程度の情報を渡してやることにした。

 勿論、全てではないのは宝泉もわかっていると思うが、情報があるのとないのでは動き方にも天地の差がある。宝泉としてもまだ入学して数か月では上のクラスへのパイプもそこまで出来ていないということもあって、オレからの情報を興味深そうに聞いていた。

 

「しかし、前はお前がこうして生徒会室にいるのは違和感が強かったが……こうしてみると、そこまでじゃないな」

「ケッ、見せもんじゃねぇぞ。ジロジロ見るんじゃねぇ」

 

 ふと、思ったことを口にすると、改めて宝泉に視線が集まる。当の本人は眉間に皺を寄せ、居心地悪そうな表情でガンを付けられるが、今更その程度でビビる奴はいないということで、雪なんかはさらに興味深そうな顔で宝泉をジロジロ眺めていた。

 

「そうかしら? 私はそうは思えないけれど……一之瀬さんはどう思う?」

「別に居ること自体は変とは言わないけど、生徒会役員って感じはしないかな」

「そうかな? こう見えて宝泉くんも見た目以上に理知的なタイプだし、清隆の言う通り違和感は別にないと思うけど。それに生徒会役員っぽくないっていうなら、逆に生徒会に入ってみても面白いかもよ」

「俺が生徒会に? 馬鹿言うんじゃねぇよ」

「いや、確かに面白い。むしろ、次の生徒会長に立候補して見たらどうだ?」

 

 半分冗談で宝泉にそう提案する。本人もオレたちが揶揄っていると思ったようで、「よせよ、俺がそんなキャラに見えるか?」と話を流そうとしてきたが、雪が「そう? 意外と悪くないかもよ」と、結構真面目に宝泉の生徒会入りについて思考しだした。

 

「あん?」

「宝泉くんが生徒会長になれば、学校のルールを弄りたい放題できるし、君の好きな暴力についてもある程度は容認できるようになるかもよ?」

 

 雪の提案を聞いて宝泉もまた、少し考える仕草を見せる。実際、原作では南雲が生徒会長になったことで暴力についてはある程度容認する形になっていた。もし宝泉が会長になれば、もっと尖った制度を作ることも出来るかもしれない。

 

「そうだな。それこそ、多少の暴力は問題に取り上げられなくなるかもしれないな」

「止めて。学校が一気に無法地帯になるわ」

「そうだね。流石にそれはどうかと思う……」

 

 鈴音と帆波は暴力反対派ということで微妙な表情を浮かべている。しかし、このままいけば、次の生徒会長も雪のままだが、本人は今回の任期で退任するつもりでいるので鈴音か帆波が生徒会長になるだろう。

 

 その中に宝泉が混じるのも面白いかもしれない。

 

 本人は「俺なんかに票を入れる奴は居ねぇよ」と、自身の現状を理解している素振りを見せているが、雪が「票なんか買えばいいんだよ。私だって、去年半分以上票を買収したしね」と、当たり前のようにズルをしたと言っている。

 

 また、この時に帆波が去年の無効票のくだりについて話をし、地味に初耳だった鈴音と宝泉がドン引きする一幕があった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 正直、要件を済ませたらすぐに宝泉は立ち去ると思っていたが、タイミングを逃したのか、意外と居心地が悪くないと思ってくれたのか、結局生徒会室を締めるまで残っていた。

 

 やはり、帆波が居たのが大きかったのかもしれない。原作でも、宝泉は帆波に惚れているような描写があったが、この世界でも好みは同じなのだろう。まぁ、その帆波は一生をオレに捧げる奴隷なのだが――と、思いながら、生徒会室を後にしてオレの部屋へ向かう。

 

 改めて、オレの部屋に到着すると、既に千秋が先に来ていたようで中で待っていた。呼び出した目的は、雪、鈴音、千秋、帆波を含めた5P――ではなく、本格的に無人島サバイバル試験での動き方についての指示出しをするためである。

 

 前にも少し千秋の参加は匂わせていたが、最初こそ帆波には雪と鈴音と組んで、1位を目指して素直に動いて貰う予定でいた。

 しかし、オレの持っている『試練』のカードは最終的に帆波に渡し、代わりに帆波クラスの網倉が持っている『増員』のカードをこちらに持たせて貰うのであれば話は変わってくる。

 

 この『増員』の効果は、男女比関係なく、枠を使わずに7人目になれるというのものだが、これを雪に持たせて4日目まで1人で居させ、帆波たちがグループ枠を拡張したら合流させるという動きの方が最終的な効率が良かった。

 雪ならば、1人でも帆波たちとそう変わらない点数を取ってくれるだろうし、大グループを作る際に一番リスクが少なくて済む。雪の代わりに、能力の高い千秋を帆波と鈴音を組ませれば、雪が居ないマイナスもある程度埋められるはずだ。

 

 ちなみに、残りの3人に関しては洋介、神崎、柴田という、BクラスとCクラスの男子の中でも、優秀な生徒を取り入れた組み合わせになっている。

 洋介は原作通り、最初は下位に沈みそうなメンバーのフォローに回りたがっていたが、クラスのフォローは今回グループを作っている桔梗に任せて上位を狙うように頼み込んだ。

 

 実際、原作でも2年で下位に落ちる危険があるのは、愛里、波瑠加、明人の綾小路小グループだが、ここも愛里が原作よりも運動を頑張っているので結果は変わってくるだろう。

 それなら下手に洋介を使い捨てるよりも、上位を狙えるグループに組み込んだ方が得だった。当然、雪を抜いても男女比は半々だから、帆波たちと洋介たちで問題なく大グループも組める。

 

 当然だが、この試験は人数が多い方が受けられるメリットが多い。雪、鈴音、帆波――今はもう雪の代わりに千秋が入る予定だが、女子三人でグループを組ませたのは、大グループを作る際に制限をなくすためでもある。

 ここに雪を加えた7人で、1位を狙っていく。

 勿論、状況に応じてメンバーは変わる可能性があるかもしれないが、今の所は能力の高い洋介たちと組ませるつもりだった。男子が居た方が便利な場面もあるだろうし、BクラスとCクラスの最大火力をぶつけていく予定でいる。

 

 最終的には、1位を取ってBクラスとCクラスで大きくCPを稼いで貰うというのが今回の目的だった。

 

 ちなみにオレの方は、裏で七瀬の攻略だったり、西野を堕とす準備だったりと、他にもすることはある――が、表向きの戦略については、今言った通り単純に雪たちの実力で乗り切るというだけだった。

 単純明快だが、それ故にわかりやすい。

 下手にいろいろさせるよりも、真っ直ぐに結果を出すだけの方が、雪たちも迷わず試験に集中できるし、雪のスペックに鈴音、千秋、帆波のサポート、さらには洋介、神崎、柴田の能力が合わさればまさに鬼に金棒だ。

 

 ぶっちゃけ、今の時点でほぼ勝負はついている。

 

 3年については桐山を裏でコントロールしているので南雲も脅威になり得ないし、1年も宝泉と天沢、桜子を抑えている以上、原作のようには動かない。

 

 2年については、龍園は宝泉を使って抑える予定だ。坂柳も原作通りに帆波と組めればまだ勝ちの目もあったが、そうでない以上は上位を狙うのはかなり厳しくなってくるだろう。

 原作と違って『増員』がこちらにあるから、人数差でこちらが有利だし、坂柳は参加できてもスタート地点から動けない半リタイア状態である以上、どうやっても動くのに限界がある。使える駒が限られている現状では、坂柳の脅威は半減してしまっていた。

 

 もし、坂柳と龍園が組むようなことがあれば少しは面白くなるかもしれないが、あのプライドの塊のような二人がお手手繋いで仲良く協力――なんて構図を、簡単には思い浮かべられない。

 まぁ、仮にあの二人が組んで、こちらの想定を超えるようなことがあったとしても、天沢を使えば問題なく処理できる。ホワイトルームクラスの実力者を複数人抱えているこちらに、まず敗北はなかった。

 

 と、いうことで、ここからはお楽しみの時間ということで、5人で夕食を食べ終えると生徒会メンバー+千秋で5Pを行っていく。

 

 えっ、5Pはしないはずではって?

 

 いや、後回しにしていただけで別にしないとは言っていない。最近はただでさえ、順番待ちが渋滞しているし、全員を満足させるにはどうしたって複数人プレイは必須だ。

 

 都合のいいことに明日は土曜日だし、途中で休むことなく朝まで愉しもう。普通なら4人を相手にすれば男の方が先にダウンするが、オレのTレックスは去年10人を同時に相手して勝利した実績を持っている。

 おまけに、普段から恵や千秋が他の人の日に乱入してくることが多いため、4P、5Pもそこまで珍しくなかった。つまり、仮に経験豊富な雪や鈴音、千秋、帆波が相手だったとしてもオレが負ける通りなど存在しない。

 

 と、いう訳で、当然の如くTレックスを振り回して女たちを鳴かせていく。

 

 途中、4人の綺麗な桃を並べて順番に指を這わせていき、最初にギブアップしたやつが後日紐パンで登校の刑――という疑似桃太郎大会を開いたのだが、結果を先に言うと僅かな差で帆波が羞恥の悲鳴を上げた。

 

 ちなみに雪と鈴音は甘い声を漏らしながらも顔を赤くして耐えており、腰を震わせている千秋と帆波のデッドヒートが繰り広げられていたが、最終的には帆波の甲高い声が千秋の勝ちを祝福している。

 

 これにより、後日帆波はスカートを捲られたらアウトの紐パン状態で一日学校生活を送ることに決まった。

 

 当たり前だが帆波も初期組であり、今ではかなり体の感覚もいろいろ敏感になっている。仮に、紐が擦れようものなら、どんなことになるのか考えるだけで恐ろしい。

 他のメンバーも罰ゲームを逃れてホッとした表情を浮かべており、何とは言わないが他の人よりも多いことを自覚している帆波は、真っ青な顔をして罰ゲームを受け入れていた。

 

 




 原作との変化点。

・生徒会室で各学年に仕込みをした。
 ちなみに、今の生徒会は3年が南雲クラスの2人(南雲は生徒会追放)。雪が会長、帆波、鈴音の3人。1年生は八神と阿賀の2人。副会長がいない状態だが、新たに任命はしていない。

・桐山を利用して南雲包囲網の作成に踏み切った。
 南雲ももうPPは大分少なくなっているはずだが、Aクラスも逆転のためにそこそこPPを貯蓄している可能性があるため、下手に利用される前に駒を奪いに行った。これで南雲は3年生で使用できる駒がかなり減少した形。

・宝泉を仲間にした。
 原作と違って一度痛い目を見せているので素直に従っている。原作では龍園を使って宝泉を抑えたが、うちでは宝泉を使って龍園を抑えることになった。

・増員について。
 原作の情報が不足していて解釈が間違っている可能性はあります。もしかしたら、人数無視なので最初から4人グループとして動ける(雪・鈴音・帆波・千秋)かもしれませんが、4人グループが1年だけの特権ということを考えると微妙なのでやめておきました。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 各学年の仕込みに動いた。桐山は口ではいろいろ言ってくるが、本質的に清隆にビビっているので動かすのは容易。宝泉も頭を叩いておいたおかげもあってスムーズに話が進んだ。

・椿雪
 1年の枠はまだあるので、宝泉が望むなら入れても良いと真面目に考えていた。その場合、八神と宝泉というヤバい組み合わせが生徒会でバチバチすることになる。

・堀北鈴音
 宝泉が真面目に生徒会活動をする姿が思い描けなかった。また、今回は何も考えずに1位を取れとわかりやすい命令なのでやる気に満ちている。

・松下千秋
 今まではずっと裏方だったが、今回は珍しく表での活躍を期待されて喜んでいる。恵たちと一緒も嫌ではないが、メイン組は頭がいいので話していて苦労がない。

・一之瀬帆波
 決行日はずっと顔色が悪く、スカートをずっと気にしていた。気にするあまりに太腿から汗のような液体が流れ出ることも有り、授業終わりは毎回トイレに走っていった。下着とスカートの替えを用意していなかったらどうなっていたかわからない。

・朝比奈なずな
 完全に南雲を裏切っている。勿論、罪悪感もしっかりある。でも、逆らえない。むしろ、尽くすことに喜びを感じる。今は、そんな心境。

・桐山生叶
 実は雪の生徒会には入っていない。去年の生徒会総選挙での無効票のせいで裏切りがバレたことで、そこからは雪や堀北兄からもずっと距離を取っていた。が、混合合宿で背中を押されてからは頑張ってクラスをAにしようと努力している。無能ではないが秀才止まり。

・宝泉和臣
 清隆は早めに首輪を外そうとしているが、本人は約束は守ると言って聞かない。男の真剣勝負の結果はそう簡単に引っ込めないタイプ。生徒会に少し興味を示したが、今は入る気がなかった。帆波と一緒にいることを地味に楽しんでいる。


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