ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯024 『1年生たちの動き』

 白波事件から少しして7月がやってきた。相変わらず2年生はいろいろとクラス間で揉めているが、それでも少しずつ各クラスもグループを作りつつある。

 驚いたのは、組むことはないと思っていた坂柳と龍園が組んだことだ。可能性は低いと思っていたが、どうやら二人ともオレに勝つために今回は手を取り合うことに決めたらしい。

 

 とはいえ、それでこちらの方針が変わるようなことはなかった。オレたちの戦略は既に固まっているし、3年の方も既に南雲包囲網を作りつつある。

 逆に1年は、宝泉率いるDクラスが、他クラスとのグループ作りを禁止していると聞いた。グループを作りたければ金を出せと他クラスを脅しており、1年は2年以上に動きを見せていないらしい。

 

 まぁ、宝泉に関しては龍園を抑えるのに手を貸せと言っただけで、行動自体を縛った訳ではないからそう動いても不思議はないな――と、カフェでお茶をしながら、雪と一緒に椿からいろいろな話を聞いていた。

 

 正確には、椿を経由して1年Cクラスの宇都宮がオレに話があるということでこうしてカフェにやって来たのだが、呼び出した当の宇都宮がまだ顔を出さないので、暇潰しに椿の話を聞いていたというのが正しい。

 

「桜子ちゃんは、もうグループ作ったの?」

「まだ。同じクラスの子と組んで無難に動くか、他クラスの優秀な子に交じって上位を目指すか迷い中。まぁ、仮に他クラスの子と組むとしても、まず宝泉くんをどうにかしないといけないんだけど……」

「1年生は4人組まで作れると言っても、やっぱり上級生に比べて不利だもんね。困ったことがあったらお姉ちゃんに言ってね! PPが足りないなら用意してあげるから!」

「退学する気はないから、余程の事故がなきゃ大丈夫だよ」

 

 今日も雪は妹である椿に好き好き光線を発射している。面倒くさそうにあしらっている椿ではあるが、それが好意の裏返しだというのはオレだけが知っていた。

 

「すみません。呼び出したのに遅れてしまって……」

 

 と、姉妹できゃいきゃい楽しくおしゃべりしているのを見ていると、ようやく呼び出し人である宇都宮がやってくる。

 

「遅いよ、宇都宮くん」

「そうだよー、本当なら呼び出した側が一番に来ないと。生徒会長ポイントマイナス1点です」

 

 楽しく話していたので別に待った気はしなかったが、女性陣は容赦なく宇都宮にブーイングを浴びせている。しっかし、生徒会長ポイントって、何に使えるポイントなんだそれ?

 

「申し訳ない。実は1年の各クラスの中でも優秀な4人を選出してグループを組もうと声をかけられまして、今さっきまでそれで集まっていたんだ……です」

「各クラスって、宝泉くんも来たの?」

「来たには来たが……相変わらず問題しか起こさない男だった。グループを組む条件は、大グループを作る際の残りの枠に自分の生徒を入れろと言ってきたんだ」

「……ちなみにグループのメンバーは?」

「Aクラスの高橋修、Bクラスの八神拓也、オレ、宝泉だ。一応な」

「それっておかしくない? 大グループを作る場合、最低でも男女比が半々にならないといけないってルールは覚えてるよね。男子4人で組んだら大グループは作れないよ」

「あ……」

「あの宝泉くんがそんなことに気付けないと思えない。多分、小グループに参加するつもりはなくて、後々適当に能力の高い女子を大グループにねじ込む気なんじゃないかな?」

 

 と、椿と宇都宮が真剣な顔で話し出してしまったので、オレたちはさらに置いてきぼりになってしまった。

 

 当の椿もすぐにそのことに気付いたようで、ハッとした表情で「ごめんなさい。こっちで話してばかりで……」と頭を下げてくる。宇都宮も「すみません」と謝罪してきた。

 別に、置いてきぼりにされるのは構わないのだが、雪は思ったよりも椿と宇都宮が仲良さげにしているのが気に入らないようでプクーと頬を膨らませて、椿に抱き着いている。

 

「ちょっ、おねーちゃん……苦しいってば」

「とりあえず、どんな要件があるのか聞いてもいいか? こっちの二人は置いておいていいから」

「あ、はい。話っていうのは、宝泉和臣に関してです」

 

 そういえば、原作でも宇都宮が宝泉を目の敵にしていたっけか。八神が犯人だとわかるまでは、自分のクラスの仲間を退学させた犯人が宝泉だと勘違いしていた記憶がある。

 

「宝泉がどうした?」

「綾小路先輩は、4月末の試験では宝泉とパートナーを組まれましたよね」

「パートナーを組んだと言っても、正確には1年Dクラスと協力したというだけだがな」

「正直、宝泉のクラスと組んだというだけでも驚きです。あのクラスが簡単に協力しないことは先輩もご存知ですよね? 今回の無人島サバイバル試験のグループ分けでも、最後まで非協力的な態度を示していました」

「それは椿から聞いたな。だが、示していましたってことは、最終的には協力するようになったんだろう?」

「まぁ、そうなんですが……」

「それで? 宝泉がどうしたんだ?」

「うちのクラスは前回の特別試験で退学者を出しました。波田野という学力の高い生徒です。俺は、この件に宝泉が関わっていると踏んでます」

 

 ようやく本題に入ったようで、宇都宮が唇を強く結んで視線をこちらに向けてくる。

 

「宝泉が波田野を退学させたと?」

「はい。だから俺は無人島サバイバルで宝泉に一泡吹かせたいと思っています」

「ふむ……椿はどう思う?」

「私は宝泉くんじゃないと思う。もし、彼が波田野くんを意図的に退学させたなら、もっと私たちを煽って精神的に責めてくる。それこそ、今宇都宮くんが怒ってるのなんて比じゃないくらいに冷静さを失わせようとしてもおかしくない」

「だが! 他に当てが――」

「当てはあるよ」

 

 原作でも切れ者だっただけはあって、どこから情報を集めて来るのかは知らないが、椿はどのクラスの誰が危険かをしっかりと調べ上げているようだった。

 

「そもそも、波田野くんと宝泉くんは特に深い関わりがある訳じゃなかった。無作為に選ばれたと言えばそれまでだけど、意図的にルールを破らせるなんて行動を取らせるには、ある程度波田野くんの性格を知っていてそう誘導させる必要がある」

「それは、そうだな……」

「宇都宮くんさ、波田野くんが生徒会に入ろうとしてたのは知ってる? 実はおねーちゃんが会長だからってことで、前に一度だけ相談を受けたんだよね。その時に言ってたの、Bクラスの八神くんと一緒に生徒会で学校を盛り上げようって話をしたって」

「それは俺も聞いた……まさか、八神が?」

「私は、かなり黒に近いと思ってる。同じクラス以外で、波田野くんの行動を誘導できるくらいに仲のいい生徒なんて他にいないと思うし」

 

 表向きはいい子ちゃんを演じているだけあって、宇都宮も八神が犯人だとは思わなかったのだろう。しかし、椿の推測は理に適っている。

 

「だが、まだ宝泉の可能性も――」

「勿論、宝泉くんの可能性もゼロじゃないよ。でも、彼が動くならもっと暴力的に仕掛けて来るんじゃないかなって思うし、こうして裏で手を回すようなやり方は彼らしくない」

「……結局、証拠がない」

「ねぇ、宇都宮くん。綾小路先輩を退学させたら2000万って話覚えてる? 宇都宮くんはそんなことでポイントなんか貰いたくないって言ったから、うちのクラスは動いてないけど2000万を狙ってる生徒は多分今回の試験で動き出すと思う」

 

 一瞬、宇都宮がオレの方を伺う素振りを見せたが、知っているとばかりに頷いてやるとすぐに視線を椿の方に戻した。

 

「八神も動くと?」

「多分ね。ああいうタイプって腹の内では何考えてるかわからないから……だから、もし協力をお願いされたら受け入れて。八神くんのやり方がわかれば、自ずと誰が波田野くんをハメたかも見えてくると思うし」

「しかし、それでは綾小路先輩が危険に……」

「心配しなくても先輩なら大丈夫。だよね、先輩?」

「おいおい、そう言われたら大丈夫としか言えないぞ」

 

 しかし、流石のオレもビックリだ。八神もホワイトルーム生だけあって、普通の学生を演じているはずなのに、椿は僅かな情報から八神の危険性を感じ取ったのである。

 

 やはり、雪の妹ということだけあって、原作のように思考能力が高いらしい。姉の雪も、妹の推理を聞いて、「桜子ちゃんは賢い可愛いだねー!」と言って、嬉しそうに抱き着いている。

 

「……わかった。つまり、八神を探ればいいんだな?」

「ううん、逆に探らないで。こっちが疑ってるとバレると面倒だから、何も知らないまま普通に仲間として接触して。むしろ、宇都宮くんは宝泉くんを疑ったままの方が良いかも」

「そうか……そうだな。実際、俺は元々宝泉を疑ってたし、まだあいつが犯人の可能性も残ってる。無人島試験では予定通りに、宝泉を退学させるために動く」

 

 と、話していると、いい加減暑くなってきたのか、椿が雪を「おねーちゃん、暑苦しい」と言って引きはがした。

 

「先輩、いろいろ話が逸れてしまいましたが、本当は宝泉を退学させるのに先輩の協力を借りたくて呼び出したんです。もし、宝泉を早期敗退させて退学に出来たら、その時は相応の報酬を支払うつもりでした」

「そうか……だが、それはいくつか懸念点があるな」

「懸念点、ですか?」

「一つ目はオレが宝泉の仲間である可能性。パートナーを組むからにはそれなりの関係であることだってある。二つ目は、お前と宝泉が同じグループになった場合、お前も巻き添えになる可能性があるということだ。まぁ、これは椿の推測からまず有り得ないとは思うが……いろいろ杜撰な考えと言わざるを得ない」

「先輩、宝泉くんに怪我させられましたよね? だから宇都宮くんは先輩を仲間に引き込められるって思ったんだと思いますよ」

 

 そういえば原作でも、ナイフで傷が出来たことから宇都宮はこちらに接触してきたんだっけか。

 

「とりあえず、今回は俺が宝泉を退学させたいと思っているとだけ覚えておいてくれればいいです。仮にあいつが真犯人じゃなかったとしても、問題ばかり起こす人間を残しておいて百害あって一利なしだ……です」

「で、裏では桜子ちゃんが八神くんを調べる訳ね」

「今の所は調べるってほど大きく動くつもりはないけど、状況次第では探りを入れるかも。もしかしたら、先輩にも協力して貰うかもしれないけど……」

「出来るだけのことはやるさ」

 

 ここで椿や宇都宮に協力すれば、後々こちらのメリットにもなるしな。貸しを作っておくに越したことはない。

 

「そういえば、その八神くん。少し前に生徒会に入りたいってやってきたんだよね。お姉ちゃんのほうでも調べてあげよっか?」

 

 と、今まで静かにこちらの話を聞いていた雪が、まるで世間話でもするかのようにそう呟いた。思えば原作でも、八神は生徒会に入っていたし、この世界でも生徒会に入る道を選んだらしい。

 

「ううん、いい。おねーちゃんが探りを入れたら、逆に八神くんが警戒しそう」

「お姉ちゃん、そんなに馬鹿じゃないんだけど……」

「どっちかっていうと、おねーちゃん云々よりも八神くんの能力を警戒してるの。宝泉くんとは違って人徳でBクラスのリーダーを務めている彼の能力はまだ底が知れないし」

 

 どうやら椿は今の時点でかなり八神を警戒しているようだ。そういえば、原作でも八神の後を付けて様子を探る描写があったような気がする。

 

 結局、特に何かが起きたと言うことはなかったが、とりあえず八神は少し警戒しておこうということで、宇都宮主催のお茶会は幕を下ろした。

 改めて、椿の能力の高さが良くわかるお茶会だったな。八神も証拠という証拠は残していないが、こういう細々とした状況証拠を多く残したせいで最終的には退学となる。

 

 しっかし、八神も今回の無人島試験ではどう動いてくるつもりなのか。既に宝泉と椿がこちら側にいるせいで、あいつの使える駒は少なくなってしまっている。

 ただでさえ桔梗と関わりがないので、原作のようにオレの暴行シーンを撮影させるという手段は取らせにくい。まぁ、それは他の駒を使えばいいだけの話だが――原作通りに、適当に動いてくれればいいが、変に暴走して爆発しないかだけが心配だった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 そんなこんなで、早くも7月6日。

 

 椿から話を聞いて数日が過ぎ、部活がある明人を除いた綾小路グループで啓誠の部屋に集まろうと話をしていると、雪が「清隆。ちょっと時間良いかな?」と声をかけてきた。

 生徒会の仕事があるので、先に教室を出ていったはずの雪がいきなり戻ってきたことで、綾小路グループの面々も少しびっくりしたのか、何やら興味深そうにこちらに視線を向けてくる。

 

「どうした、雪?」

「実は清隆に会いたいって言ってる1年生がいるんだけど……」

「今からか?」

「うん。多分、話自体は一時間もかからないと思うんだけど、どうする?」

「何々、きよぽん、もしかして後輩の女の子から愛の告白?」

「え、ええっ!? そうなの!?」

「だとしたら、話は一時間所か十分もかからないだろう」

 

 波瑠加や愛里が茶化したり驚いたりしているので、一先ず愛里を安心させるようにそう声を上げた。告白に一時間も時間をかける猛者は早々いないだろう。

 

「大丈夫だよ、愛里ちゃん。会いたいって言ってるのは男の子だから」

 

 雪も笑顔でそう捕捉すると、愛里があからさまにホッとした様子を見せた。逆に波瑠加は、揶揄えなくてつまらなそうに唇を尖らせている。

 

「ま、いいんじゃない? 1年生とは少しでも交流しておいた方がいいだろうし」

「そうだな。俺たちのグループは特に人間関係を不得意としているから、清隆がその辺りをサポートしてくれるのは悪いことではないと思う」

「そうだね。私も、そう思う」

 

 綾小路グループの面々は自分たちに気にせず行ってこいという感じなので、雪に頷きを返して一緒に教室を出ていく。

 一応、啓誠には「終わったら合流するつもりだが、もし駄目そうならまた連絡する」と声をかけたが、「流石に男子一人で女子二人の相手が出来る程豪胆じゃない。今日は解散で良いだろう」ということで、今日の集まりはなくなってしまった。

 

「ごめんね、清隆。約束があったのに」

 

 教室の外に出ると、雪が携帯を弄りながらそう謝ってくる。おそらく、その1年に連絡を取ろうとしているのだろう。

 実際、雪は余程のことがなければ、オレの行動を邪魔することはない。と、いうことは、その余程のことが起きてしまったと見るべきか。

 

「たいしたことじゃない。グループの皆も、その程度で文句は言わないさ」

「実は呼び出し相手が、八神くんでさ」

 

 つい数日前に椿から警戒しろと言われた相手からの呼び出し――それは雪もこちらに声をかけようと思うはずだ。

 

 そういえば、原作でも八神は桔梗を通じて一度オレに接触しにきていた。おそらく、この世界では桔梗との接点がない代わりに、生徒会繋がりで雪を経由してきたのだろう。

 

「あ、もしもし八神くん? 清隆が今から会えるって……うん、うん。あ、そうなんだ。じゃあ、ここで待ってるね」

 

 どうやら通話が繋がったようで、特に変わった様子もなく連絡を終えると、雪がこちらに向き直る。

 

「もうこっちに向かってるって。すれ違うと面倒だし、ここで待ってようか」

「そうだな」

「……八神くんの目的、なんだと思う?」

「普通に考えたら顔見せって所だろう。オレとあいつはまだ会ったことすらないからな」

「見た感じは素直ないい子そうなんだけどね。でも桜子ちゃんが警戒するくらいだし、相当裏の顔を隠すのが上手いのかも。もしかしたら桔梗ちゃん並かな?」

「さてな。ただどちらにしろ、あまり警戒心は出さないことだ」

「そうだね、それはわかってる。こっちが警戒してるのバレたら向こうも違和感を覚えちゃうだろうし。まだ敵対すると決まった訳でもないしね」

 

 雪には、八神や天沢がホワイトルームからの刺客だということは話していない。聞けば、どうしたって体のどこかに警戒心が出る。その僅かな揺らぎを、あいつらは見逃さないだろう。

 自分の正体がバレたとわかれば、天沢はともかく八神は武力に出てくる可能性だってあった。同じ元ホワイトルーム生でも、雪はドロップアウトした側だ。努力で能力を戻したとはいえ、ブランクも長かったし、おそらく現役の八神や天沢には勝てないのではないかと思っている。

 

 故に、下手に情報を流すのはやめていた。もしかしたら心配しすぎの可能性もあるが、いらぬリスクを背負う必要もない。

 

 しかし、それでも八神が自分の存在を雪に隠し通せているというのは、それだけ周囲に上手く溶け込んでいる証拠でもあった。天沢もそうだが、事前情報なしでは正体を確信することは出来なかっただろう。

 

「椿会長」

 

 そのまま、聞かれても問題ないような適当な話をしていると、2年生のフロアに八神がやってくる。

 

 声をかけられた雪は、まるで無警戒と言わんばかりの笑みを浮かべながら、「あ、八神くん。こっちこっち」と声を上げた。

 

「清隆。この子が、会いたいって言ってた八神くん。生徒会の有望な新1年生だよ」

「初めまして綾小路先輩。お時間を作って頂きありがとうございます」

 

 そう言って、八神は丁寧に頭を下げてくる。とても一見ではホワイトルーム生とは思えないくらいに上手く擬態していた。

 

 しかし、相手がホワイトルーム生だとわかると、やはり動きに癖はある。無意識の重心の取り方や、周囲を探る仕草など、随所で長年の教育で付いたであろう動きが垣間見えた。おそらく、オレも同じような癖を持っているのだろう。長年付いた癖というのはそう簡単に消せるものではない。

 

「確か八神、だったか?」

「はい。1年Bクラスの八神拓也です」

 

 こちらも一応初めましてなので、あたかも何も知らないフリをする。実際、前回の特別試験で宝泉が初めて2年のフロアにやって来た時も来なかったので、これが本当の顔見せだった。

 

 パッと見た感じだけでは、とてもオレに嫉妬や恨みを抱いているようには思えない。ホワイトルーム生だけあって、しっかりと自分の感情を表に出さないように抑え込むことが出来ているみたいだった。

 

「話す場所なんですが、流石に立ち話も何ですし、僕の部屋なんかはどうでしょうか? 丁度珍しい紅茶の茶葉が取り寄せで手に入ったんです」

「いいんじゃない? 清隆はどう?」

「問題ない」

 

 綾小路グループの集まりがなくなった以上、特にこの後用事がある訳ではない。それなら、八神の誘いに乗って奴のテリトリーに入るのも一興だった。

 

 そのまま、オレ、雪、八神の三人で、去年まで旧3年生が使っていた新1年生の寮へ向かって歩いていく。こういう時、オレは自分から話を振るのが苦手なのだが、八神は当たり前のようにこちらに話を振ってきた。

 

「そういえば、もうすぐ無人島での特別試験が始まりますね。椿会長たちは去年も似たような試験を経験したとか?」

「そうだね。私たちは無人島試験が初めての特別試験だったから、あの時は特に大変だったよ」

「どんなルールだったのか、どういったことがあったのか教えて貰ってもいいですか? 僕たち1年生には経験がないので、せめて情報だけでも集めておきたくて……」

「別にいいけど……去年とはルールが全く違うから、役に立つようなことはないと思うよ?」

「そんなに違うんですか?」

「同じなのは無人島でサバイバル生活をするって部分だけだね。後は全部別物だよ」

「……風の噂で、現3年生も1年生の時に無人島試験をやったと聞きました」

「そうだね、去年私も聞いたよ。その時もルールが全然違って、私たちの時はクラス対抗だったけど、3年生の時はクラス内で4つずつのグループを作って計16グループで競い合ったんだって」

「毎年同じルールで競うことはまずない、ということなんですね……」

 

 頷く八神に、雪が詳しい試験内容を説明していく。3年の試験のことも知っているのは意外だったが、おそらく去年生徒会長になる前に、南雲辺りから話を聞いていたのだろう。

 

 雪も割と話し上手なので、オレたちが経験した無人島試験と、3年が経験した無人島試験の概要をわかりやすく話しながら、どういう攻略をしていったかという点まで余さず話している。今の所、八神は特に尻尾を出すことはなく、真面目な顔でうんうん頷いていた。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・宇都宮からガチ目の相談を受けた。
 原作では思惑が読めないが、この世界では真面目に波多野の敵を取ろうとしている。

・椿が八神に行きついた。
 原作と違って清隆退学に思考を割いていない分、早く答えに行きついている。雪がいることで椿自身も自身の成長を促しているということも有り、思考能力だけならば原作よりも上。

・宝泉の思惑について。
 原作でも読んでいて割と謎だった。男4人で小グループ作って、残りの枠の女子をDクラスから選ぶって、大グループ作成時の人数比あってないやんって。と、いうことで、この世界では独自解釈で、先んじて宝泉がグループを組む気がないと明らかにしておいた。

・八神からの接触があった。
 原作では桔梗経由でアクセスがあるが、このSSでは八神と桔梗の接点がないため、生徒会に入って強引に雪との接点を作っている。とはいえ、原作でも生徒会に入っているのでオリジナル設定ではない。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 1年のドタバタを聞かされた。各クラスの動きも大分つかめている。八神の対処は未定。

・椿雪
 妹から八神にちょっかいを出すなと言われたので、八神とは普通に接している。そのため、向こうも雪が自分に気付いていると思っていない。

・佐倉愛里
 清隆の呼び出しを受けて、また増えるのかと少しドキッとした。現状、30~40人近い人数がいるため、ただでさえ渋滞中なのが少し不満。また、雫モード解禁によって、地味に同じグループを組もうと誘いの声が来ている。

・長谷部波瑠加
 愛里を勧誘から守っている。正確には守ろうとすることで、自分の焦りを誤魔化している。原作通り、綾小路グループで小グループを組む予定でいる。

・椿桜子
 原作よりも思考能力が上がっていることも有り、八神の存在に早めに気付いた。現段階では7割黒いと見ている。

・宇都宮陸
 波多野の復讐絶対するマン。「波多野の敵を取るんだー! あいつは退学した! もうドラゴンボールでも戻れねぇんだ! 波多野は良い奴だった……本当に良い奴だったんだ。俺の一番(?)の仲間を……」的な感じ。

・八神拓也
 まだ自分の正体がバレてないと思っている可愛い子犬ちゃん。退学するかしないかは神のみぞ知る。

・幸村輝彦
 原作と違ってぎくしゃくもしていない。今回の無人島試験では、綾小路グループから離れて自分の能力を活かせるグループに入るつもりでいる(元々、男女2ずつでは小グループは組めないため)。


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