10日目――夜に無事白波イベントが発生したが、事前の関係などの変化から、こちらの思ってもいない方向に白波が暴走した。
正直、こんなことになると思っていなかったので少し驚いたが、改めて白波の性癖を知ることが出来たし、なかなか面白い催し物を見させて貰っている。これで、このまま放置するのは流石に鬼の所業なので、白波を連れて竹本や小橋と合流することにした。
GPSサーチを使って、竹本や小橋の現在地を確認していく。やはり、向こうもサーチを使って白波を探しに来ているらしく、もう近くまで来ているようだった。
白波と共に数分森の中を歩くと、少し離れた所からライトの光が目に入ってくる。数は二つ、まず間違いなく竹本と小橋だろう。
白波が「夢ちゃん!」と声を上げると、向こうもこちらに気付いたようで小走りにこちらに寄ってくる。姿が見えるくらいの距離になると、「千尋ちゃん!」と白波の名を呼びながら小橋が白波を抱きしめた。
「もう、心配したんだからね!」
「ごめんね……」
同じグループの竹本も、白波が無事だとわかると、ホッとした様子を見せている。どうやら、原作通りに荷物を全部持ってこちらにやってきたようだった。
「ありがとね、綾小路くん。千尋ちゃんのこと助けてくれて」
「いや、助けたといっても、サーチを1、2回使ったくらいでたいしたことはしていない」
むしろ、貰ったものの方が多いかもしれない。
「保護してくれていただけでなく、わざわざサーチまで使ってくれたのか」
「そっちもサーチを使ったみたいだし、余計なことだったかもな」
「そんなことないさ。もっと遠くまで行っていたら怪我のリスクもあったし、見つけるのにも苦労しただろうしな」
と、改めてお礼を言われる。
こちらとしては坂柳への貸しを減らす目的しかないのでそこまで感謝されても困るのだが、小橋もいずれは――と、思っているし、好感度を稼げるのは悪いことではないか。
「綾小路はこの近くでキャンプしてるのか?」
「ああ。5分程歩いた所だ」
「俺たちも今日はそこでキャンプしてもいいか? 今からテントを立てる場所を探すのも大変だし……」
「そっちが構わないなら、こちらは別に構わない」
白波が迷子になったことで、流石に今から元の場所に戻ろうとは思えないのだろう。既に21時を過ぎているし、ここから夜の森を歩くのは賢い選択ではない。
小橋や白波も、流石にこの森を歩くという猛者ではないようで、竹本の提案に頷いていた。
そのまま、オレのテントがある場所へ一緒に戻って行く。流石にここからテントを2つ立てるのも一苦労なので、オレも設営を手伝うことにした。
「悪かったな綾小路。テントを立てるのまで手伝って貰って」
「流石に自分だけ見ているだけというのは気まずいからな。たいした手間でもないし、そんなに気にしなくていい」
「そう言って貰えると有難い。うちのリーダーは、こういう貸し借りに結構厳しいからな」
「坂柳か……そういえば、オレも坂柳には少し借りがあるんだよな」
「そうなのか? じゃあ、これで相殺できるかもな。わざわざサーチまで使って助けて貰ったし」
「そうしてくれるなら有難い」
これで竹本も、この試験が終わった後にでも坂柳にオレに貸しが出来たことを報告してくれるはずだ。
原作ではトランシーバーを借りて、椿対策をして貰うように頼んでいたが、その話については既に終わらせているし、わざわざ今連絡するほどのことでもない。この貸しを忘れてくれさえしなければ十分だ。
「千尋ちゃんを助けて貰った訳だし、少しくらい盛って報告してあげなよ」
「うん……改めてありがとう綾小路くん。助けてくれて」
「あー……まぁ、そこまで盛るのは難しいけど、助けられたことはちゃんと話すよ」
小橋や白波の援護もあって、これでこの話が坂柳の耳に入ることは確約されたようなものだった。
そのまま、お互いにテントの中で横になりながら普段は聞かないAクラスやCクラスの内情について聞いていく。
とはいえ、竹本や小橋もクラスの核心については話さない。白波もあまり進んで口を開く方ではないし、オレも相槌を打つ程度だ。ただ、最近の坂柳は少し雰囲気が変わって、前より話をするようになった――という話は、聞いていて意外と面白かった。
5月の敗北や森下との関係を経て、もしかしたら坂柳も少しずつ変わろうとしているのかもしれないな。
◇◆
11日目――朝6時過ぎ。既に起きて動く準備を始めていると、周囲に人の気配が多くなってきた。
サーチを使って状況を確認してみると、3年Aクラスを中心としたCクラス、Dクラスを含めた小グループ6つが、オレや竹本グループのテントの周りを囲っているのがわかる。
勿論、囲っているとはいえ、目に見えてわかるようにテントの周りにいる訳ではない。木や草むらに隠れてこちらを監視している。
どうやら、昨日順位を逆転したことで、南雲はオレを徹底的に抑えるつもりらしい。この包囲からも、もう二度と順位は逆転させないという意気込みを感じた。
「……竹本、小橋、白波、起きてるか?」
オレたちを囲んでいる3年生には聞こえないくらい音量で、テントの中からそれぞれに声をかける。どうやら起きてはいるようで、有難いことにすぐに返事がきた。
「起きてるがどうした?」
「ん~? なに~?」
「ほら夢ちゃん、呼ばれてるからちゃんと起きないと」
小橋はまだ眠そうだが白波に起こされたらしい。とはいえ、あまりのんびりしていられないので、今の状況を説明していく。
「今、3年生の小グループ集団に囲まれている。狙いは多分、オレだ」
「えっ、本当か?」
竹本が驚いたような声を出す。出来れば各自タブレットを使って位置を確認してほしいが、竹本たちは昨日も小橋を助けに来るのにサーチを使っている。これ以上の無駄遣いは出来ないだろう。
「サーチしたから間違いない。多分、上位のオレを落とそうと動き出したんだと思う。ああ、テントから顔は出さないでくれ。こちらが気づいたことに気付かれたくない」
竹本や小橋が動き出しそうだったので声をかけて止める。今ここで下手にこちらが警戒していることがバレると、強硬手段に出てくる可能性もあるので各自を落ち着かせていく。
「どうするつもりなんだ?」
「とりあえず、ここでお前たちとは別れる」
「えっ、なんで? 一緒に行動した方が安全じゃない?」
「そ、そうだよ」
小橋が純粋に疑問符を浮かべる。白波も、オレのことは敵として見てはいても、心配はしてくれているのか、同意するような声を上げた。
「次の指定エリアが同じ方向とは限らないし、見知らぬ先輩にずっと追われるのは精神的にも良くないだろう?」
と、こちらが白波のことを気遣う発言をすると、小橋も理解してくれたようで「あー、ね」と納得したような声を上げる。白波としても、その状況が容易に想像できたのか、「う、うぅ……」と、怖がる様子を見せた。
「それと、竹本に頼みがあるんだが、オレと別れた後に坂柳に連絡を取ってくれないか? 『そろそろ動いて欲しい』と言えば伝わるはずだ」
「例の借りってやつか?」
「ああ。ついでに、昨日の件を伝えてくれると有難い。オレの借りも少しはマシになるかもしれないしな」
そう冗談めかして頼み込むと、竹本も「わかったよ、伝えておく」と笑ってくれた。
正直、ここで竹本たちと行動を一緒にしても、こちらが派手に動けなくなるだけでメリットが殆どない。心配してくれるのは有難いが、有難迷惑になりかねなかった。
小橋や白波も、自分たちが何も出来ないと少し心苦しそうにしていたが、オレの頼みを聞いて、「私たちが竹本くんせっついておくから」、「任せて」と、声を上げている。実際、竹本が坂柳に今回の件を報告してくれればお釣りがくるレベルだ。
そんなこんなで、竹本たちは7時に指定エリアが更新される前にC8に戻っていった。
最後までオレのことを心配してくれていたが、向こうも自分たちのことを考えればこのC9が次の指定エリアになる可能性もある以上、ずっとここにいる訳にもいかないので仕方がない。
対するオレは、次の指定エリアがC8になるとわかっていた。そして、今オレはC9の北西端にいるので、6組も小グループがいれば道を塞ぐのはそう難しくないだろう。
C9は北西と北東の極一部しか陸がなく、残りが海だ。今日動いてきたのは、南雲がオレを抜いたタイミングもあるが、おそらくオレを抑えるのに立地が良かったと見て良い。流石のオレもこの狭さでこれだけの人数に追い込まれたら抜くのに苦労する。
このまま、ここでオレを抑えておくのがこいつらの仕事――だが、それに付き合ってやるつもりはなかった。
7時になり、エリアが更新されるとオレも動き出す。テントを撤収して、さっさとこの場を後にする――と、前にもオレに絡んできた3年Aクラスの多々良がこちらに向かって歩いてきた。
「ちょっといいか、綾小路」
「何でしょう多々良先輩。直接会う“のは”久しぶりですね」
暗にずっと付けていたことは知っていると匂わせてやると、多々良も気づかれていたことはわかっていたとばかりに苦笑いを浮かべる。
「今回の特別試験、お前がここまで活躍するとは思わなかった。南雲からはくれぐれも注意するように言われていたが、その理由もここに来てやっとわかったよ」
「それで?」
「わかるだろ、綾小路。お前は得点を取り過ぎたんだ。南雲にしてみても、お前を抜くのにここまで時間がかかるのは想定外だった。お前を自由にすれば、またいつ順位が前後してもおかしくない。だからこそ今日一日、お前にはこの場所に居て貰う」
多々良の言葉と同時に、隠れていた3年が姿を見せた。3年Aクラスの3人小グループが4つ、3年Cクラスの3人小グループが1つ、3年Dクラスの3人小グループが1つ、合わせて小グループ6つ全員が男子、人数にして18人――オレ一人に大層な包囲網だ。
「3年CクラスとDクラスは、桐山先輩たちと協力関係を結んでいたと思いましたが?」
「人間関係は損得だけじゃねぇってことだ。ここにいる奴らは、南雲と個人的に親しい奴らさ。損得勘定なしで動いてくれる、数少ない信頼できるメンバーだ」
「へぇ」
3年Aクラスのメンバーは南雲の私兵ではあるが、退学者を出さないためにも全員を尖兵には出来ない。荒事に使える男子は精々10人ちょいと考えていたが、まさか損得勘定なしで南雲に手を貸す生徒がいるというのは予想外だった。
「こんなことしなくても、もうオレは南雲先輩には勝てないと思いますよ。こっちは1人なのに対して向こうは6人です。他にも大グループは増えてきましたし、実質単独のオレはどうしたって得点力では及ばない」
「かもな。けど、念には念をってな。お前と南雲にどんな因縁があるのかは知らないが、ここで負けておくのがお前の為だと思うぜ」
どうやら南雲は、朝比奈の件を周りの人間には伝えていないらしい。まぁ、常識で考えたら伝えられるはずがないか。
「1年に課題も封殺させているんでしょう? ここまでくっついてなくてもいいと思いますけどね」
「止まる気はないってことか」
「流石にここにずっといるのは気が滅入りますからね。では、失礼します」
確かに囲まれてはいるが、人が通れないほど余裕がない訳ではない。僅かな隙間を付いて包囲網を脱出し、木の上に飛び乗って森の中を駆けていく。
別に、そこまでして凄い得点が欲しいという訳ではないが、流石にこれだけの男子に囲まれて過ごす趣味はないので振り切らせて貰った。これが女子だったら言葉に甘えて一日ここで過ごすのも有りだったかもしれない。
「ターザンかよ、追うぞ!」
「待てよ、多々良。あいつのグループは高円寺がリタイアしてるんだ、着順報酬を奪われる心配はない。それに、アレに追いつくのが難しいってのはもうわかってたことだろう。ここは1年と協力して課題を抑えた方が良い」
と、言い争う声を聞きながらも、B9から遠回りでC8に向かうことにした。ここ数日で、オレを追うのが難しいと理解したようで、普通に追うのはすぐに諦めてくれたらしい。
念のために、30分後にもう一度、そこから1時間後にもう一度サーチを使ったが、オレを追いかけてくるようなグループはいなかった。
代わりに、近場の課題を封殺しているのだろう。下手をすれば、少し距離のある課題すら受けられない可能性もあった。とはいえ、得点はもうそこまで気にする必要はないし、水も食料もある程度余裕があるので、今どうしても課題を受けたい訳ではない。
それに、今日はそれ所ではなかった。
次の9時にランダム指定でH9が指定され、その次の13時もJ9、15時はJ10と完全にエリアが東側に移動する。
流石のオレも2時間ではH9には間に合わない。とはいえ、あからさまにエリアがわかっていますという動きも出来ないので、ギリギリまではこちら側にいる必要がある。
どうにかして隙間を縫って課題を受けつつ、13時のJ9には到着できるように動く必要があった。
が、そんなに上手く行けば苦労はなく、やはり課題は全て封殺されている。どうやら、かなり頻繁にサーチを使っているようで、向こうは完全にオレの動きを読んでいるようだった。
物理的に追いつくのが無理でも、動きを先読みできれば数の有利で事前に課題を封殺するのは難しいことではない。結局、13時にJ9の到着ボーナスを得るまで得点は増えずに、東側にあるオレ付近の課題も完全に抑えられてしまっていた。
◇◆
15時の指定エリアでJ10が指定され、少し遠回り気味して踏みに行った。途中で課題がいくつか出ており、3年や1年に鉢合わせすると妨害される可能性があったからだ。
やはりランダム指定で遠くのエリアが指定されると、移動で手一杯になってなかなか課題を受けられない。その上、3年や1年が協力して課題を封殺している以上、もうエリアを踏む以外で得点するのは難しいと考えて良いだろう。
と、考えていると、椿から報告が来た。
実は前にも何度か報告は来ており、最初が6日目の夜で、その時は1年で集まって作戦会議をしてオレを襲う決行日を8日から10日目のどこかに予定しているということだったが、7日目に悪天候で試験が中断したことで延期となったと8日目に報告されている。
そこから予定が決まり次第伝えるということだったが、どうやら12日から仕掛けるということだった。原作とは微妙に日にちがズレているが、八神グループの得点が思ったよりも伸びが悪いので後半に稼ぐ余裕が欲しいのだろう。
もし原作通りに1年生たちが襲ってくるのであれば力自慢チームを結成してオレを襲ってくると見て良い。
基本的な動きは、オレの動きを封じながら指定エリアを踏ませないようにしつつ、もし強引に来るなら力で問題を起こすというものだ。仮に、喧嘩両成敗になれば月城が出張ってくる以上、不利なのはオレだった。当然、真っ向から戦うという選択肢は取れない。
そして、こちらが指定エリアを踏めずに得点を下げている間に、八神たちが得点を上回るという寸法だ。
八神としても、椿が本当に自分の味方か確信できずとも、オレの足止めをしてくれるのであればそれに乗っかるのは吝かではないと考えるはず――こちらも動くならそろそろだな。
どうせ課題は受けられないと判断して、今日はもうこれからの仕込みに使うことにした。
トランシーバーでいろいろ連絡を取りながら、この先の試験での動きを指示していく。
オレの考えたプラン通りに動いてくれさえすれば、これでまず確実に勝利できるはずだ――と、考えていると、西側の海の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
とりあえず、必要な連絡は終えたので、声のする方に歩いていく。と、4日目の午後に別れて以来の、真澄、ひより、西野、篠原の4人組の姿を発見した。
向こうもこちらに気付いたようで軽く手を振っている。別れてからは会う機会もなかったが、どうやら上手くやっていたようで、西野や篠原も元気そうに見えた。
「久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「清隆もね。まぁ、揉め事がない訳じゃないけど、それでもそこそこは頑張ってるって感じ」
「清隆くんは流石に大分順位が落ちてしまったようですね、先ほど見たら8位になっていました」
「8位か、下がったな」
「いや、それでも1人で8位なのは十分に凄いから」
「そういえば、七瀬さんはいないの? ずっと一緒だったのに」
と、もみくちゃにされる。とりあえず、篠原の質問には「七瀬とは8日目に別れた」と返した。なんか恋人同士が別れたみたいになって少しシーンとしたが、西野が「まぁ、1年生と2年生が一緒に居る方が変だったしね」と、場を纏めてくれる。
しかし、真澄とひよりは何となくオレが七瀬を食べたことを察したようで、くんくん匂いを嗅ぎながら、「知らない女の匂いね」、「金髪で巨乳の匂いです」と、こちらにジト目を向けてきた。
それを聞いて、篠原も「えっ、もしかしてそういうこと?」と、驚愕の視線を向けてくる。どうやら、この数日で篠原も真澄とひよりがオレのセフレであることは知ったらしく、遅れて状況を理解したようだった。
ただ一人、西野だけが「なになに、どういうこと?」と首を傾げているが、誰も教える気はないようで黙ったままだ。
「ごほんっ! お前たちも今日はI9でキャンプするのか?」
と、仕方なく話題を変えると、渋々といった様子で真澄とひよりが話に乗ってくる。
「そうね。この周りは風も強くて岩だらけだから」
「清隆くんもそのためにこっちに来たのでは?」
「まぁ、そうだが……」
「綾小路くんの指定エリアってどこだったの?」
篠原がそう質問してきた。
「J10だ。とてもテントを張るような場所じゃないから、こっちまで歩いてきたんだ」
「な、ならさ。綾小路くんもこの辺で一緒にキャンプしない? ほら、もう今日は試験ないんだし」
そう、西野がオレを誘ってくる。そんな顔を赤らめてこちらを誘う姿を見て、真澄とひよりが遅まきながら察したようで、何とも言えない表情を浮かべた。
そのまま小声で、「こんな愛も恋も知らない男に惚れちゃうかぁ」、「西野さんはまだまだ純情ですね」と、言いたい放題言ってくれている。
また、それを聞いて、篠原も「あっ、えっ、そういうこと!?」と、再び驚愕の視線を向けてきた。どうやら、またも遅れて状況を理解したらしい。
「まぁこんなんでも、ボディガードが一人いた方が安心か……」
「ボディガードが狼にならなければいいんですけどね」
「えっ、だって、試験中だよ? あっ、でも七瀬さん……」
「七瀬さんがどうかしたの、篠原さん?」
「い、いやっ!? な、何でもないよ、何でも!」
とりあえず、オレが一緒にキャンプをすることに反対意見はないようだったので、今日はこのI9で一緒に一夜を共にすることになった。
夕方、食事を一緒にしながらタブレットで周囲をサーチしてみると、意外にもこの周辺には人がいない。これなら、多少やんちゃしても誰かに気付かれることはないだろう。
と、いうことで、夜21時が過ぎ、各自がテントで休む中、一人ずつ狼さんがテントの中の赤ずきんを食べていくことにした。
真澄は何だかんだこうなることを察していたようで、最初は渋い表情を浮かべていたが、一度事が始まると背を反らしてもう快楽の虜になってしまっている。
続けて、二番目のテントに入っていくと真澄の声が聞こえていたようで、ひよりが枕で頭を隠しながら、こちらに真っ白な桃を向けて食べてくれとばかりにフリフリしていた。
ここまで来ると、流石にもう西野も篠原も状況を理解しているようで、二人のテントからはもぞもぞと動く音が聞こえてくる。
そのままひよりのジューシーな桃を食べ終えると、次をどちらにしようか迷った末に、この試験くらいしかもう食べる機会のなさそうな篠原を先にすることにした。
篠原も、既に目がトロンとしていて「こ、これはお礼だから……浮気じゃないから……」と言い訳をしながら、されるがままになっており、何だかんだこの状況を楽しんでいるようだった。
正直、オレの視点だと、篠原は池を非難する資格などないような気もするが、楽しければそれで良し――と、いうことで、オレも全てを無視している。
最後に、まだ手を付けたことのない西野のテントに入っていく。西野も、ずっと真澄やひより、篠原の声が聞こえていたようで、潤んだ瞳でこちらを見ていた。
「あ、綾小路くん……」
「狼さんがやってきたぞ」
「だ、駄目だよ……私たち、そういう関係じゃないし……」
「別に駄目じゃないだろう。そういう関係があってもいい」
と、細い腰に腕を回して引き寄せながら、西野の首筋に軽く唇を這わせていく。それだけで、西野の体がビクンと跳ね上がった。
もし、西野のオレへの好感度がここまで高くなかったら普通に跳ね退けられていただろう。しかし、オレと会えなかった長い時間や、この無人島試験で自覚しつつある気持ち――それらが、西野から抵抗力を奪っていた。
「なんで……神室さんや椎名さん、篠原さんも……」
「世の中にはセ〇クスフレンドというものがある。肉体だけの関係と世間では批判されるが、オレたちがそれだけの仲じゃないことはお前にだってわかるだろう。いい意味で、体の付き合いというやつだ」
「じゃあ、女の子と付き合ったことないっていうのも……」
「それも嘘じゃない。オレが特定の女性と付き合った場合、残りのセフレたちが暴動を起こす。だから、彼女になる人間が迷惑をこうむるから付き合えない。付き合えないからこそ、肉体関係を築くしかないという訳だ」
ずっと嘘は言っていなかった――が、真実を濁して伝えていたのは確かだ。だが、騙されていたとわかっても西野は怒らなかった。
普通なら引っぱたいて逃げてもおかしくない場面、実際会ったばかりの頃に同じことをしていたらそうなっていただろう。しかし、もう逃げるという選択肢は西野の中にはない。
ここまで来るまでに耳に入っていた3人の嬌声を聞いて逃げなかった時点で、もう興奮してしまっている体がオレを跳ねのける気力を奪っていた。
なし崩しという形で、西野も素直にオレの責めを受けていく。思ったよりも反応は悪くないようで、可愛い声が口から溢れ出てきた。
流石に初めてということもあって、念入りに体を解してやると、焦らされていると思ったのか、「もう、もうセフレでいいから、お願い……っ」と、半泣きで懇願の声を漏らす。
別に、無理に同意させる気はなかったのだが、納得してくれたのなら何よりということで、そのままTレックスをプレゼントしてやった。
どうやら西野は、比較的痛みの少ないタイプのようですぐにTレックスに順応している。ここまで来れば、もうTレックスのこと以外何も考えられなくなっているはずだ。
全ては、明日になってからのお楽しみということで、西野と楽しく夜を過ごしていく。
後から聞いた話によると、外の月明かりでテントに人影が出来ており、四つん這いになって首を反らした西野がTレックスを飲み込んでいるシルエットが浮かんでいたらしい――また、途中、我慢できなくなった他の3人も押しかけて来て、結局は入りきらずに外に出て大乱闘Tレックスブラザーズが開催されることになった。
朝になると、正気を取り戻した西野は、「私、なんてこと……」と、昨日の一夜を後悔するような素振りを見せる。が、昨日の痴態を見ていた真澄は冷徹に「アンタ、もう戻れないわよ」と告げていた。
ひよりも篠原も、うんうんと頷ている。
確かに、3人に煽られてタガが外れていたといっても、後半にTレックスを求めてオレに向かって全力で尻を振って媚びていた姿を見れば、これっきりの関係で済ませるのは無理だと誰だって思うだろう。
西野も真っ赤になって反論しようとするが、段々と昨日の自分がどんなことをして、どんなことを口走ってそれを全部見られていたと思い出すと、その言葉も萎んでいく。
まぁ、オレとしては半分くらい騙す形になってしまったし、西野がこれっきりというのならそれに従うのも吝かではなかった。
だが、西野も「べ、別にこれっきりとは言ってないじゃん……」と小声で呟いている。この時点で、もうTレックスから離れられなくなった女の典型となっていた。
真澄も散々、こういう女を見てきたということで、「ようこそ、こちら側へ」と、嫌そうに迎え入れている。ひよりも、「これで何人目ですかね?」と首を傾げ、篠原や西野が「「えっ、そんなにいるの?」」と驚いた声を出している。
オレも数を数えていた訳ではないので覚えてはいないが、真澄が「私が把握しているだけでも20人近くはいるわよ」とため息を吐くと、ひよりも「増えましたねぇ」と声を漏らす。想像以上の人数に、西野と篠原も「「そんなに!?」」と悲鳴のような声を上げた。
原作との変化点。
・竹本、小橋と再会した。
ノーパンのまま再会。そのまま一緒に泊まり、小橋はノーパン状態から着替える白波の姿を目撃している。
・多々良たちが接触してきた。
強引に抑え込みに来たが、余裕で抜けられている。とはいえ、こうなることは半ば想定内であり、予定通りに課題の封殺にかかった。1年と合わさることで近場の課題は抑え込められている。
・1年生の襲撃日が1日早くなっている。
原作と違って、清隆に得点で勝たなければならないので得点を稼ぐ時間が必要になっている。そのため、襲撃日を1日早めて八神グループの得点を稼ぐ時間を作った。が、変わらず高橋修がうんこマンなのでその得点も伸び悩んでいる。
・真澄グループと再会した。
原作では石崎グループがひよりグループと組んでこの場で再会するが、流れが変わっている。西野の焦らしもいい感じに進んでいたので、この機に収穫に入った。結果、夜はテント外でもパーリナイしている。途中、邪魔が入る危険を考えて何度かサーチを使った。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
想定外のデザートを貰って元気百倍。ここから無人島試験も終盤に差し掛かって来る。
・神室真澄
口ではなんやかんや言いながらも一番期待していた。約束通り、水のお礼にたっぷりサービスしている。
・椎名ひより
余裕ぶっていても、この手のことはまだ清隆には勝てないので誘惑だけして主導権を預けている。食べる前から桃は汁がたっぷり垂れていた。
・篠原さつき
ついでに食べられた。もはや、池のことをどうこう言えないレベルで裏切りをしまくっている。
・西野武子
ついに食べられてしまった。どこかでこうなることを期待していたこともあって逃げるに逃げられなかった形。
・白波千尋
清隆はそっけないけど自分に優しくしてくれるので絆されかけている。酷いことされても謝ったら許してしまうDV彼氏を持つ女みたいな感じになっている。
・小橋夢
地味に白波の不自然さに気付いている。が、この場で特に追及することはなかった。
・竹本茂
地味にずっと竹中と勘違いしていた。なので、一応全部竹本に直したはずだけど、もしかしたらどこかが竹中になっているかも。ただ、竹本も貸しを減らす要因としては地味に重要なキャラだったりする。
・多々良
前に何度か感想でも疑問に持たれていることがあったが、3年Aクラスの南雲以外のメンバーは今回南雲が清隆とした取引については何も知らない状況。ただ、要注意人物として妨害を指示されており、その指示を忠実に守っている。