ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯014 『その理由、知りたいなら教えてやるよ』

 放課後になると、今日は佐倉とのマンツーマンの勉強会の日なので図書室へ向かうことにした。

 

 佐倉も、まだオレと二人っきりは少し落ち着かないようだが、恐怖よりも緊張の方が大きそうだ。男に慣れていないから、ドキドキするのだろう。異性として意識されていると考えれば悪いことではない。

 

 だが、だからといって極端に性的な視線を向ければ、今の好感度もすぐ地に落ちてしまうだろう。佐倉と関わる時は、ホワイトルームに居た時のことを思い出して精神を落ち着かせていく。

 たまに完全に昔に戻りかけて、雪のトラウマを刺激するという一大事もあったが、今は純粋に講師と生徒の関係だ――言葉にすると、ちょっと卑猥に聞こえるかもしれないが、勉強は真面目に教えているので問題ない。

 

「こんにちは、綾小路くん、佐倉さん」

 

 試験範囲が変更になったので、過去問から作った問題を使って佐倉に勉強を教えていると、図書館の主であるCクラスの椎名が話しかけてきた。

 

 椎名とは、4月の段階で小説の感想を言い合う仲であり、こうして図書室で勉強しているとたまに接触してくる。まぁ、昼休みに須藤たちと一緒にいる時や、放課後の勉強会では接触してこないので、あまり人が多い時は遠慮しているみたいだが。

 

「こ、こんにちは……」

「椎名か。今日も本を読みに来たのか?」

 

 この一週間に何度か図書室で勉強していたため、佐倉も椎名とは知り合いになっている。

 

 佐倉も最初は椎名に慣れずにそわそわしていたが、椎名自体が大人しい性格をしていることや、オレから「友達を増やすいい機会じゃないか?」と言われたことで、何とか話ができるくらいには仲良くなっていた。

 

「ええ。私はわざわざテストのために勉強はしないので」

「凄い自信だな。佐倉もこれくらい言えるようになれると良いんだが……」

「わ、私にはまだ早い、かなぁ……」

「別に自信がある訳ではありませんよ。ただ、普段の授業を聞いていればテストのためにわざわざ勉強をする必要性がないだけです」

 

 まぁ、椎名は要領がいいのだろう。原作でもかなり切れ者のようだしな。

 

「所で、それはテスト……ですか?」

 

 椎名が近くに寄ってくると、佐倉がやっている問題用紙に目が移っていた。オレが過去問を元に作った模擬テストだ。

 

「ああ。試験範囲が少し前に変更になったからな。それに合わせて作ったんだ」

「綾小路くん。そのテスト、私もやってみていいですか?」

「コピーはまだあるし、別に構わないぞ」

 

 どうやら内容に興味を持ったようなので、椎名にも佐倉と同じテストを渡してやる。

 

「では、お言葉に甘えて。佐倉さんも、私が一緒でも大丈夫ですか?」

「は、はい。大丈夫です」

 

 まだ多少どもっているが、佐倉も椎名と一緒で嬉しそうにしていた。椎名も、佐倉の性格は理解しているようで、笑みを浮かべて佐倉の隣に座っていく。

 

「……よく出来ていますね。これが当日の問題だと言われても納得できる出来です」

 

 渡された問題用紙にざっと目を通すと、驚いたようにそう呟いた。実際、この問題は過去問をベースに文字や文章を少し変えただけだから、中間テストに出てくる問題の解き方を学ぶことが出来る優れモノだ。

 

 勿論、そんなことは、別のクラスである椎名には口が裂けても言えないことだが――

 

「流石に未来予知でもしないと、そんな芸当は不可能だろう」

「ですが、これをテスト範囲が変更になってから数日程度で作ったとはとても信じられませんね……」

 

 椎名も、想定した以上にオレの能力が高いことがわかったのだろう。意味深に探るような視線を向けてくる。とりあえず、ここは気付いていないふりをしておこう。

 

「解けそうか?」

 

 試しにそう聞いてみると、椎名も真剣な表情で本格的に問題用紙へ目を通し始めた。

 

「そうですね……ざっと問題文を見た感じ、八割以上は解けると思います。ちょっと集中するので静かにして貰えますか?」

「ああ。佐倉もそろそろしっかり集中しようか」

「う、うん」

 

 椎名が静かに問題を解き始めると、佐倉も頑張って問題を解いていく。こうして、美少女二人がテストを解くのを眺めながら、放課後の時間を過ごしていくのも悪くないな。

 

 その後、30分程で二人ともテストを終えた。

 

 答え合わせをしていくと。佐倉の点数は69点、椎名の点数は93点と、学力の違いを見せつけられたが、佐倉はこれでも学力が少しずつ伸びている。今までやってきた勉強も無駄ではなかっただけ成長だろう。

 

「ふむ、椎名は流石に勉強をしなくても大丈夫と言うだけのことはあるな。特に難しい問題とケアレスミス以外に間違いが無い」

「95点は取れると思ったのですが、ミスがありましたか……」

「佐倉は教えた所がちゃんと出来ている。この調子で勉強していけば、本番には十分間に合うだろう」

「うん。良かった……」

「しかし……こちらの問題集も凄いですね。今やった模擬テストの解き方がわかりやすくなっていて覚えやすいです」

 

 どうやら椎名は、オレがテストの答え合わせをしている間、佐倉が持っているオレが作った問題集を見ていたようで、感心したようにそう褒めてくる。

 

 まぁ、単純な能力だけでいえば、オレはAクラスでもおかしくないからな。

 

「Dクラスはクラスポイントが80しか残らなかったそうですが、これを見るととてもそうとは思えないですね。うちのクラスよりも余程しっかりしています」

「Cクラスは勉強していないのか?」

「ここまでしっかりとしたことはしていませんね。Cクラスの方針も赤点を取らないくらいの勉強をしておけ……と、いうものですし」

 

 そういえば、原作でもCクラスは今頃、学校のシステムや罰則の把握に勤しんでいたっけか。勉強よりも、この先の戦いを見据えてBクラスにちょっかいを出しているのだろう。

 

「まぁ、クラスの方針もそれぞれだからな」

「そうですね。勉強を強要されないからこそ、私もこうして図書館で本を読んでいられる訳ですし、そういう意味では悪くありません」

 

 ――と、言いつつ、内心では龍園の暴力的な方針には賛同できないのか、何とも言えない表情をしていた。

 

「この先、クラス同士のいざこざは増えるかもしれませんが、出来ればこうしてまた楽しくお話が出来ると良いんですけどね……」

 

 椎名としては、数少ない読書家の同士と敵対したくはないのだろう。オレとしても、椎名とはこのまま友好を深めておきたい。いずれ、食べるためにも。

 

 ただ、椎名は見た目や体こそ100点だが、どうすればそういう雰囲気に持って行けるかが欠片も想像がつかない。流石に人の多い図書室で致す訳にはいかないし、かといって簡単に部屋に呼び出せるなら苦労はないからな。

 

 ――何か、良い方法はないものか。

 

 佐倉に勉強を教えつつ、椎名と小説トークをしながら、何とか椎名を食べる方法がないか考えていく。

 整った容姿に、むっちりとした太もも、どうにかして口にしたい。記憶内の、俺から与えられた原作知識を総動員して、オレの思考をフル加速させるが、なかなかこれと言ったアイデアは出てこなかった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 試験範囲が変更になってから一週間後。

 

 堀北が諦めた三馬鹿たちの勉強や、佐倉やクラスメイトたちの勉強も順調に進んでいた。今日も昼休み45分の間、残りの20分を図書室での勉強に使おうと三馬鹿と約束をしている。

 

 そんな訳で、食事の時間はたった25分しかないが、オレと雪は櫛田のお勧めで、最近学生の間で人気だと噂のカフェにお昼を食べに来ていた。

 

「うわー……混んでるねぇ」

「櫛田のお勧めだから来てみたが、男が来るような所じゃないな」

 

 メニューもパスタやパンケーキ等で女性向けだ。

 

 やはり、基本的に腹を満たす目的ではなく、男女のデートなどで来るような場所だろう。まぁ、雪も頑張ってくれているし、今日は雪へのご褒美ということで、このまま付き合うつもりだが――

 

「あっ、でも高円寺くんがいるよ」

 

 と、考えていると、雪が高円寺を見つけた。上級生と思われる女生徒を何人も侍らせている。

 

 高円寺もまた、オレや雪に気付いたようで、こちらに来いとジェスチャーしていた。無視してもいいのだが、ここは素直に高円寺の所へ行くことにする。

 

「よっ、高円寺。普段見ないと思ったらこんな所に居たんだな」

「綾小路ボーイにスノーガールじゃないか。こちらへ来たまえ、一緒に食事でもどうかね?」

 

 誘われたので、ご一緒させてもらうことにした。雪も一緒で構わないとのことだったので二人で近くの席へ座る。

 

「随分とモテモテだね、高円寺くん」

「ははは、やはり女性は年上に限る。同世代以下は包容力が足りなくてねぇ」

「三年になったら苦労しそうだな」

「確かに、楽しみは大分減りそうだねぇ」

 

 と、他愛のない会話をしていく。

 

 とはいえ、三年の女生徒たちも本心から高円寺に惚れている訳ではない。あくまで金が目当て――だが、高円寺からすれば、楽しみたいだけなのでそれで十分なのだろう。いわば、キャバクラやラウンジのようなものと同じだ。

 

「なぁ、高円寺。ダメ元で聞いてみるが、今のクラスを真面目にAクラスにするつもりはないか?」

「残念ながら、今の所その予定はないねぇ」

 

 試しに聞くだけ聞いてみたが、やはり高円寺はクラスに協力するつもりは無さそうだな。

 

「まぁ、そうだろうな。お前は、完璧な個人主義者だし、自分が確実にAクラスに行く手段を確保できている以上、わざわざAクラスを目指すなんて無駄なことをしようとは思わなくても不思議ではない」

「ほう……その言い方だと、君は私がAクラスに行くための手段を知っているように聞こえるが?」

「あぁ、少なくともお前が退屈している理由くらいはわかっているつもりだ。何なら、答え合わせでもしようか?」

「面白そうな話題だねぇ。是非、聞かせてくれないか」

「いいぞ。もし間違っていたら、ここの払いはオレが持ってもいい」

「ははは、良いねぇ。では、もしその推測が私の退屈を癒せるものであったなら、なんでも一つだけ言うことを聞こう。この私が言うことを聞くんだ。報酬としては十分だろう?」

 

 売り言葉に買い言葉ではないが、高円寺がオレの賭けに乗ってきた。しかし、何でも言うことを聞く――ね。

 

 やらなくてもいいことはやらないを信条としているこいつの言葉を、どこまで信用して良いものか。

 

「まぁ、順序良く行くか。最初におや? と思ったのは、五月の頭、茶柱先生が学校の秘密について話をした時だ。あの時、お前は『学校が勝手にD判定を下そうとも、私にとっては何の意味もなさない』と言ったな」

「それがどうかしたのかね?」

「おかしいだろう。いくら、お前が高円寺コンツェルンの御曹司でも、Dクラス卒業というレッテルを貼られるのは良いことではない。将来、お前が親父さんの跡を継ぐにしても、学歴と言うのはそれなりに重要なはずだ」

 

 携帯からインターネットに繋げ、高円寺コンツェルンのホームページへ飛ぶ。

 社員紹介の上の方には、原作通り次期社長である高円寺の写真とプロフィールが乗っていた。その中から、社長のプロフィールを見ると、当然だが学歴についても乗っているのがわかる。

 

「これにお前のプロフィールも乗っているし、三年後はここの学歴も乗るはずだ。そうなれば、Dクラス卒業というのは恥にしかならない。だから、最初はただの強がりかと思った。何だかんだ言っても結局はAクラスになるために努力をするだろうと」

「ふむ」

「だが、お前は授業で明らかに手を抜き始めた。四月と五月では明らかに授業への取り組み方が違うし、負けることが嫌いと言っていた体育の授業ですら本気を出すことなく流している。さらに、中間テストが近いにも関わらず、焦った様子もなくこうして遊び惚けているのは明らかにおかしい」

 

 そう、ただでさえ二週間前にテスト範囲が変更になれば、不安になって勉強をする――にも関わらず、高円寺は余裕を崩していない。

 勿論、それだけの学力がこいつにはあるということなのだろうが、普通に考えればそもそも高得点を取る気がないと考えた方がしっくりくる。

 

「つまり、お前は本気でDクラスで居ても問題ないと思っているということだ。じゃあ、何故学校の評価が何の意味もなさないのか――そう考えた時、また別の言葉が疑問になった」

「ふふ、続けたまえ」

「お前がオレや雪を高円寺コンツェルンに勧誘した時のことだ。お前は『つまらない学校生活を過ごすことになると憂いていた』と言ったな。この学校システムを知ってつまらなさを感じるのは明らかにおかしい。だが、お前は早々に余裕を見せつけた。何故、そんなことが出来るのか――そう考えた時、オレはお前がAクラスで卒業することの出来る裏道を見つけたのだと確信した」

「ふっ、そんな僅かな会話でよくそこまで読めるものだ。面白い、教えてくれホームズ。君が確信した裏道とやらを」

 

 誰がホームズだ。

 

「おそらく、うちのクラスでこれを知っているのは、オレとお前だけだと思うが、2000万プライベートポイントでクラスの移動ができる。お前はこのシステムを知って、Aクラスへ行けると確信したんだろう?」

「2000万!?」

 

 これまで黙って話を聞いていた雪も驚いていた。まぁ、額が額だからな。

 

 また、今まで高円寺のお世話をしながら黙ってこちらの話を聞いていた先輩たちも、流石に驚きが顔に出ている。金にモノを言わせた高円寺はともかく、普通の生徒がそんなことを知っているとは思わなかったのだろう。

 

「普通に考えれば不可能だ。仮に、ひと月に10万ポイント貰えたとして、一年で120万、三年間でも360万。学業や運動でボーナスを貰っても、個人で集められるのはいい所500万が限界だろう。だが、一つだけ、そのポイントを確実に溜めることが出来る方法が存在する。この学校でも、お前にしか出来ない悪魔の手口が――」

「あ、悪魔の手口?」

「先生はこの学校のポイントは卒業時に回収され、現金化は出来ないと言っていた。だとすれば、卒業を控えた先輩達は多くのポイントを持っていても無駄にしてしまうということでもある」

 

 ここで重要なのは、現金化できることを知らないふりをすることだ。

 

 高円寺はおそらくリアルマネートレードを提案し、ポイントが現金化されることを知ったのだろうが、これは原作でも下級生に教えるのを強く禁止されている情報で、普通に調べただけではわからない情報だからな。

 

「お前はそれに目を付けた。上級生の先輩たちにちょっかいをかけているのも、年上趣味というだけじゃないだろう。お前は彼女たちから、卒業時に清算されるポイントを買うと確約したんだ。現金化されないポイントが金になるなら、先輩達も文句は言わないだろう。2000万は大金だが、高円寺コンツェルンの御曹司であるお前なら支払えない額じゃない」

 

 雪もハッとした表情で高円寺を見ている。

 

「だから、お前は退屈になったんだろう? 最終的にAクラスへ行けるなら、何をしても意味がないし、学校からの評価も意味がない、という訳だ」

「正解だ、ホームズ」

 

 ぱちぱちぱちと、乾いた拍手が響いた。

 

 まぁ、偉そうにそれらしい推理をしたが、全て原作で南雲がやったことを先取りしているだけだ。しかし、高円寺にしてみれば満足いく推理だったようで、楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「きっかけは、入学初日。スノーガールがティーチャーにした三つの質問だ。あれがなければ、私も五月まで気付かなかっただろう。この学校のシステムにね」

「私がした質問でわかるのは、ポイントが評価で変わるって所までだと思うんだけど……クラス分けについては、別の所で知ったの?」

「私は金持ちだ。往々にして金持ちは、金がないと息が詰まるものでね、10万という金額ははした金にしか見えなかった。ティーチャーが卒業後はポイントを回収すると言っていたのでね、リアルマネートレードは成立すると考え、私は即行動した。しかし、私がDクラスだとわかると誰もが態度を変え、急に話を聞かなくなったのだよ」

「それで、クラス分けが評価に繋がるとわかったんだな」

「私は公式の身分を使うことにした。幸いにも、君が先程見せた通り、私はこの学校に入る前、既に企業のホームページで次期社長として顔写真やプロフィールを載せていたからねぇ。信用してもらうのは比較的簡単だったよ」

 

 雪ですら予想だにしなかっただろう。外部と遮断されているこの場所で、リアルマネートレードが成立するなど――

 

「一度、信用を勝ち取ればこちらのものだ。後は金にものを言わせて、情報を得、私はこの学校の真実を知った。その時だよ。在学中、どれだけ地に落ちようとも、最終的、かつ合法な手段でプライベートポイントを手に入れれば、実に呆気なくAクラスで卒業できることを思いついたのは――」

 

 まさに、別領域からの刃――学校も想定していないルール外からの必殺技だ。

 

「それは退屈にもなるだろう。さっきも言ったが、お前はいい意味でも悪い意味でも自分本位な人間だ。クラスでAクラスになろうなんて欠片も考えない。自分だけAクラスに行けばよくて、確実な方法が手に入ったなら、やる気がなくなるのも頷ける」

「とはいえ、確証はなかったからねぇ。一応、四月まではそれなりに授業に取り組んだ。しかし、人間は飽きるものだ。やって意味のないものなら特にだ。やる必要性を感じないならやらない。私のポリシーだ」

「だから、女性と遊んで暇をつぶしている訳だ」

「レディたちとの逢瀬も楽しいが、君もまた面白い。まさか、こんなに早く、私の策が見破られるとは思わなかった。その推理力、視野の広さ、思考の柔軟性、全てにおいてパーフェクトな私ですらそこまでは出来ないだろう。楽しいひと時だったよ」

「じゃあ、賭けはオレの勝ちでいいのか?」

「あぁ、何でも言うことを聞こうじゃないか。何をして欲しいんだい? 君ならつまらないことには使わないとは思っているが、なるべくなら楽しいことをお願いしてくれ」

 

 さて、どうするか。何だかんだ、高円寺は退学にならないレベルでそれなりに活躍してくれる。今の所、これと言って頼みたいことも特にない。強いて言えばマイナス行動を取らないで欲しいくらいか――

 

「オレからの願いは一つだ。この中間試験が終わった後か、もう少し先、クラスのポイントを賭けたイベントが行われると見ている。そのイベントでお前の力を貸して欲しい」

 

 原作知識を利用した未来予知――これも、高円寺にしてみれば領域外からの刃だ。

 

「ほう、なんでそんなイベントが行われると思うのだね?」

「わざわざクラスを評価で分けているのに、このまま学校が何もしないなんてありえない。まず間違いなく、クラスポイントを賭けた何かが存在する。それも、他クラスと競わせるタイプのな」

「成程ねぇ。しかし、まだその内容が何かもわかっていないのに、ここで貴重な願いを使ってしまっても良いのかい? もし、そのイベントが君だけで出来るような簡単なもので、後からもっと難しいイベントが来ても私は手を貸さないかもしれないのだよ?」

「その時はその時だ。ただ、お前の都合で約束を反故にする場合は延期を提案するぞ。どうせ、無駄に自由を縛るような頼みをしても拒否するだけだろうしな」

「ハハハハハ。確かに、面倒臭いことだと私も拒否するかもしれないねぇ。言うことを聞くとは言ったが、拒否しないとは言っていない」

 

 そう言って笑うと、高円寺は「いいだろう」と、言葉を続けた。

 

「協力要請請け負った。君の頼みを聞こうではないか」

「その言葉が聞けただけ、来た甲斐はあったな」

 

 結局、昼飯は食べそびれてしまったが、それに見合った成果は得ることが出来たので良しとしよう。それに、そろそろ時間だ。

 

「もう行ってしまうのかね? もっと、ゆっくりしていけばいい」

 

 オレが席から立ち上がり、それに雪が続くと、高円寺が少し残念そうな声を上げる。残念ながらもう昼休みも20分が過ぎようとしていた。もう5分もすれば、三馬鹿達との勉強の時間になってしまう。

 

「そうしたい所だが、まだやることがある。あまりお前とばかり遊んではいられないんだ」

「それは残念」

「次にどこかで会ったら、その時はまたお茶でもしよう。じゃあ高円寺、また教室でな」

「おじゃましましたー」

 

 頼んでいたパンケーキはテイクアウトにして貰って、オレたちは喫茶店を後にした。

 

 高円寺との予想外の出会いではあったが、面白い約束を取り付けることが出来たし、個人的には満足な時間だった――が、雪には少し申し訳ないことをしてしまったな。

 

 ――と、思っていると、雪がオレの腕に抱きついてきた。

 

「私ね、清隆と一緒に居られるだけで嬉しいよ」

 

 まるで、オレの内心を見抜いたように嬉しそうに頭も寄せてくる。

 まぁ、こんなことで満足できるなら、今は雪の好きにさせてやろう。代わりに、今夜はオレの自由にさせてもらうことになるだろうしな。

 

 

 




 原作との変化点。

・佐倉との勉強会をした。
 椎名も登場して、美少女を二人侍らしている。

・原作では櫛田と一緒に行くカフェに雪と一緒に行った。
 原作ではここでイケメンランキングが明らかになり、櫛田から「イケメンだけど――頭がいいだとか、運動神経が抜群だとか、凄く話し上手だとか、そういう魅力が欠けてる」と言われるが、改めて見るとうちの清隆は俺小路くんのおかげで全部揃っていた。この世界では何位なのだろう?

・高円寺に呼びかけられた。
 原作よりも能力が認められているので気さくに話しかけられた。原作知識をこすって、高円寺の余裕の理由を明らかにしたらホームズというニックネームを頂いた。おまけに、何でも一つ言うことを聞く件を得ている。無駄だとは思うが、無人島のリタイアを止めるように頼んでみるつもりでいる(成功率は良くて5%くらい)。



 今話登場人物一覧

・綾小路清隆
 本格的にひよりを食べることを考え始めた。高円寺とたまたま会ったので、適当に余裕でいる理由を話すと益々気に入られてしまった。

・椿雪
 自分では全く気づけなかった高円寺の謎を軽く暴いた清隆にますますホの字になっている。これがエロ漫画なら何もせずにびしょびしょになるレベル。

・佐倉愛里
 清隆と一緒に勉強するのが楽しい。かなり好意を抱きつつある。原作違って、椎名とも仲がいい。

・椎名ひより
 図書館で清隆を見つけると寄ってくるくらいには好感を持っている。しかし、集団でいる時は寄ってこない。今はまだそんな距離感。

・高円寺六助
 自分の僅かな言葉から論理を組み立てた清隆にホームズの名を送っている。実際は原作知識をこすっているだけだが、高円寺には名探偵にしか見えていないため、原作よりも好感度が高い。


 ※予約時間間違えました。申し訳ないです。


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