ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯048 『大乱闘Tレックスブラザーズ2』

 桐山との話を終え、行く当てもなくデッキをブラブラしていると、通路でオレを見かけた七瀬が「綾小路先輩!」と、いつもの笑顔で話しかけてきた。しかし、同時に「あれ、綾小路くん?」と聞き覚えの少ない声が背中からかけられる。

 振り返ると、帆波クラスの生徒であり、無人島試験でも少し関わりが出来た小橋夢が、丁度良かったと言わんばかりの様子でこちらに向かって歩いてきた。

 

 七瀬はこちらに気を使ったようで、「またお時間のある時に声をかけさせていただきます」と言って、そそくさと立ち去っていく。とはいえ、しっかり挨拶はしており、オレだけでなく近づいてきた小橋にも深々と頭を下げて走り去っていった。

 

「ごめんね、いきなり声かけちゃって。あの子にも悪いことしちゃったね……」

「問題ない。それよりも何か用事か?」

「あっ、うん。ちょっと……って、少し馴れ馴れしかったかな?」

 

 確かに、他クラスの生徒とこうして話し合うことはあまり多くない。少なくとも、ついこの間まで、オレと小橋は世間話をするような仲じゃなかったのは確かだ。

 

 思えば、二年になってから他学年と関わる機会が増え、同時に同学年間でもこうして別クラスの生徒と話すことが増えてきたように思う。それが良いことか悪いことかはともかくとして、オレとしては女子と話せる機会が増えるので純粋に有難いことだった。

 

「別にそんなことはないだろう。同じクラスじゃなくても、それなりに話をした仲なんだ。顔を見たら声をかけるくらいのことは普通だと思うぞ」

「そうだよね」

「それで、俺に何か用事か?」

「実は今日の夜、クラスの子たちでお疲れ様会をすることになってて。良かったら綾小路くんもどうかなって思って。千尋ちゃんを助けて貰ったお礼もしたかったし」

 

 そういえば、原作でもそんな名目で声をかけられていたっけか。原作通り行くなら、ここが姫野と話すキッカケになりそうだし喜んで受け入れたい所だが、あまりがっついた様子を見せるのはよろしくないので、タイミングを見て上手く話に乗らせて貰おう。

 

「どんなメンバーが参加するんだ?」

「今はまだ調整してる最中かな。そんなに気にしなくても変な子はいないから大丈夫」

「子ってことは女子だけか? ただでさえオレは男子だし、同じクラスでもないオレが参加するのは浮くんじゃないか?」

「そんなことないって。ね、ね、どうかな?」

「でもなぁ……」

「お願いっ! これも何かの縁だと思って! ねっ?」

 

 やはり、原作通りに小橋は内緒でオレを参加させて帆波を驚かせたいようで、何としてもオレを参加させたい様子だった。

 ここまで頼まれては仕方ないだろう。そろそろ首を縦に振るために、やれやれ系主人公の真似をする――つもりだったのだが、そんなオレの様子を見て、小橋が仕方ないとばかりにこちらに顔を寄せてきた。

 

「あまり弱みに付け込む真似はしたくないんだけど、来てくれないとうっかり私の口が開いちゃうかも?」

「うっかり?」

「私、見ちゃったんだよね。綾小路くんが千尋ちゃんを助けてくれた日の夜、千尋ちゃんがノーパンでジャージを履いてて、新しい下着に着替える所……」

 

 そういえば、あの時は白波を助けるついでに少し遊んだような――その後始末をしている所を同じテントだった小橋は見てしまったらしい。

 

「私たちと離れるまでは普通だったし、これは綾小路くんと二人っきりだった時にそういうことがあった……ってことだよね? 来てくれないとバラしちゃうかも……」

「何のことだかわからないな」

「じゃあ、別にクラスのみんなに話しても問題ないよね? 綾小路くんと千尋ちゃんは無人島試験で怪しいことしてたって」

「おいおい、冤罪だぞ?」

「そう? 異性の前で下着を脱ぐような事態ってそうそうないし、一概に冤罪とは言えないんじゃない?」

「オレの傍で脱いだ証拠なんかないだろう」

「真っ暗で誰も居ない森の中で下着を脱ぐことなんてある? 千尋ちゃんだよ?」

 

 トイレ――は、あの暗闇じゃ無理があるか。この特別試験も去年と同様にそこいらで用を足すのは禁止されている。

 白波の性格じゃ、あの暗闇の中で簡易トイレを設置することだって無理だろう。そもそも、迷子の白波は手ぶらで簡易トイレも持っていなかった。

 

 確かに、これに関しては白波の状況を見られているオレが不利だな。とはいえ、ここで変態の汚名を付けられるのは、女子を食べる上であまり望ましいことではない。

 だが、ここでオレが素直に参加の意思を示すのは、小橋の話を認めることになるし、意地を張り続けてもオレの印象が悪くなるだけでメリットが何もなかった。こうなれば、力づくで小橋をわからせるしかないだろう。

 

「……仕方ないな。オレもこの手は使いたくなかったんだが、小橋がそういうことをしてくるならオレも切り札を切ろう」

「切り札?」

「去年のクラス内投票で、お前たちは2000万PPを使用して退学を撤回したな。だが、その前の混合合宿でお前たちは貯金の2000万PPを既に使用した後だった。では、誰がどうやってその不足金を援助したんだろうな?」

 

 白波を脅した時と同じ文句だが、オレがCクラスの支配者であることを話せば、小橋もオレを脅すことが如何に暴挙かがわかるはずだ。

 

「えっと、それって……」

「帆波に貸している不足金を今すぐに請求してもいいんだぞ? その場合、誰が痛い目を見るかは火を見るよりも明らかだが……」

「ご、ごめんなさいっ! もう言わないからっ!」

 

 小橋も現実を理解したようで顔を真っ青にして頭を下げてくる。そう、オレが今すぐ不足金を回収すれば、痛い目を見る事態にもなりかねない。そうなれば、一番に火の粉を受けるのは彼女たちが誰よりも信頼している帆波しかいなかった。

 

「勘違いするな。お前の誘いに参加するのは別に嫌ではない。ただ、奇しくもお前には弱みを握られた形だからな。これを放置する訳には行かない」

「い、言わないから……」

「それを簡単に信じられるほどオレは優しくない。と、いうことで、お前には罰を与える」

 

 ここまで話がこじれてしまった以上、このまま小橋を解放して原作通りに話を進めるより、オレの好きに行動した方が良いだろう。

 少し危険もあるが、上手くすれば小橋を他のCクラスの女子をオレのセフレにするための切り込み隊長にも出来る。ハイリスク・ハイリターンだ。

 

「集合場所と時間は?」

「えっと、8時に5034号室……」

「なら、まだ十分時間はあるな」

 

 クラスの救世主をハメようとしたのだ。少しくらい痛い目を見せてやってもいいだろう――と、いう訳で、いきなりの提案に首を傾げている小橋をオレの部屋に連れていく。

 半ば脅されていることもあって、小橋は素直にオレの後に付いてきた。その間に、帆波に全て連絡をしておき、小橋抜きでもお疲れ様会の準備をするように言いつけておく。

 

 本来なら、ここまで性急にことを進めるつもりはなかったが、グダグダ時間をかけても仕方ないし、ここはお代官スタイルで小橋を美味しく頂こう。

 

 と、いうことで、完全に弱みに付け込む形で、小橋を美味しく食べていくことにした。

最初は嫌がっていた小橋だが、オレの脅しに屈服すると嫌々ながら服を脱いでいる。自分が抵抗すれば帆波が危険に晒される以上、小橋に逆らうという選択肢はなかった。

 しかし、見た感じ、経験豊富――という感じでもない。体に触れると、緊張や恐怖から体が固くなってきているし、好きでもない異性に体を触られるという嫌悪感も見える。

 

「ぁ……っ」

 

 ――が、そんなものは無駄な抵抗に過ぎない。

 

 基本的に、女性は10代だとそこまで性欲がある訳ではないが、逆に性欲がない訳でもなかった。当然、体がその気になれば快感は簡単に発生する。

 体を開発している訳ではないので、ただ触るだけでは気持ちよくなる訳ではない――が、それでも大事な所を少しずつ刺激して体を作ればさくらんぼは収穫の時期を迎えた。

 

 夢見がちな処女は大体、好きな人同士で繋がるのが最高に気持ちいいと思いがちだが、精神的な満足度と肉体的な満足度は平等ではない。

 勿論、両方揃っているに越したことはないが、割合にしてみれば8:2か7:3くらいで、肉体的な刺激の方が強く感じる。特に経験の少ない女ほどそういう傾向が高い。故に、大学のサークルなんかで身持ちの固かった女子がヤリチンに軽く食べられてしまうのだ。

 

 実際、いざ事が始まってしまえば、何だかんだ小橋も素直にこちらを受け入れていた。

 

 どうやら無理やり男に押し倒される――と、いうシチュエーションが小橋の好みだったようで、初めてとは思えないくらいに乱れまくっている。

 Tレックスが馴染む頃には、もはや軽く動くだけで声が部屋に響き、興奮で小橋の体が桜色に染まっていった。その後、7時になる前には帆波も部屋にやってきて、小橋と共にTレックスを味わい尽くしている。そこからは、もうオレの独壇場だった。

 

 当然ながら、小橋の恥ずかしい姿は完全に写真や動画として記録してあり弱みも完全に握っている。元々、クラスの借金の件で弱みは握っているが、返済されたらその弱みも効力が無くなるのでこうして相手の脅しを封じる武器が必要だった。

 

 まぁ、小橋の場合は思っていた以上にこちらに靡くのが早かったので必要なかったかもしれないが、演技の可能性も残っているので油断はしない。

 

 また、オレに服従を誓った小橋にも、帆波がオレの奴隷であり、今のCクラスはオレの支配下にあることを周知させることにした。

 全ての事情を知った小橋は流石に驚いていたが、オレに逆らうとどうなることになるかも同時に理解できたようで、これまで以上に帆波を助けることを誓い、オレの指示にも絶対服従することを確約させている。これなら、流石に反抗する気にもならないだろう。

 

 こうして、小橋を完全に屈服させると、そろそろ時間なので帆波と小橋を連れて5034号室へと向かっていく。

 

 8時になり部屋に入ると、中には白波や姫野、網倉、安藤、津辺、二宮、初川、南方と、帆波クラスの綺麗所が揃っており、お菓子とジュースで軽いパーティが始まった。

 とはいえ、変わったことと言えば、小橋がオレ側についたことくらいで後は原作通りにほぼ女子会といった様子――だが、原作通りに姫野が頭痛を訴えて途中離席する様子を見せたので、オレもその辺を区切りにしてパーティから抜け出していった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

「頭痛はもういいのか?」

「っぜ……」

 

 半ば後を追う形で姫野に声をかけると、原作通りにこちらを警戒して悪態をついてきた。

 

 まぁ、頭痛を訴えて部屋を出たのに部屋に戻らずデッキで外を眺めていたのだ。そんな姿を見られては、さぞかしバツが悪かろう――と、思いつつも、姫野と関わりが持てる数少ない機会を逃す訳には行かないので近くに寄っていく。

 

「……風に当たったら落ち着くかと思って立ち寄っただけ」

 

 言い訳のようにそう呟く姫野。全身から話しかけて来るなオーラが溢れているが、それ以上に均等にバランスの取れたいい体をしている方が目に入った。

 

「頭痛はよくあるのか?」

「偏頭痛持ちだから」

「偏頭痛なら、冷やすのは正解だな」

「だる……」

 

 姫野は原作でも帆波クラスとしては浮いているタイプの女子だ。集団行動の多い帆波クラスでも一人でいることを好む傾向にある。

 原作では、帆波や自クラスのやり方でAクラスに行けるかどうか迷う神崎と共に、クラスを何とかしようと動く姫野だが、この世界ではオレがCクラスを掌握しているため、こいつが活躍できる機会はなくなってしまっていた。

 

 故に、出来れば早めに手を出して、こちらの手元に置いておきたいというのが本音だ。

 

「口が悪い……どうやら、その様子ではやはり頭痛は嫌な空間から逃げ出すための口実だったようだな」

「は? 私が嘘ついてるって?」

「ムキになった所を見ると図星か?」

「違うし。っていうか、何なの? あー、また頭痛くなってきた……部屋に戻るね」

 

 ほぼ初対面のオレに痛い所を突かれたからか、逃げるようにこちらに背を向ける。

 

「そうか、それじゃ仕方ないな。オレはこれから女子会に戻って、姫野が仮病かもしれないと報告することにしよう」

 

 だが、当然ながら逃がすつもりなどなかった。この機を逃せば、次はいつ関われるかわかったものではない。

 

「はぁ? 勝手に仮病扱いしないでよ。この嘘つき」

「嘘? オレは仮病“かもしれない”って言うだけだ。少なくとも、善意で心配した相手に悪態を吐くくらい元気なお前を見てそう感じた以上、一石を投じる権利はあるだろう。本当か嘘かは、後日クラスメイトの前で証明すればいい」

「頭痛なんて、証明しようがないでしょ」

「かもな」

「なんだよ……全員、あんたのこと褒めてたけど、嫌な性格してんじゃん」

「少なくとも、オレは自分が良い性格だと言った覚えはないし、周りも性格については褒めていなかっただろう」

 

 事実、あのお疲れ様会では、原作通りに無人島試験で白波を助けたことを感謝されただけだ。

 

「それにしても、変わっているな姫野は。何というか、一之瀬クラスらしくない」

「変わってる? 私に言わせれば、クラスの連中がお人よし過ぎるんだよ」

「ふむ」

「うちのクラスって大勢で集まって何かすることが多いんだよね。ま、それ自体は別にいいんだけどさ、とにかく一回一回が長いって言うか、帰らないのが問題でさ」

 

 姫野も、クラスで自分が心を許せる相手が居ればまた話は別なのだろうが、そうではないから今日のように逃げ出したのだろう。

 そりゃ、あまり興味のない集会に呼ばれて長時間拘束されたら誰だって嫌だ。しかし、帆波のクラスメイトたちはその集まりを楽しんでいる。結果、一回の集まりが長時間になって、姫野には苦痛の場になってしまうという訳か。

 

「嫌なら参加しなければいい。うちにも、一人でいることを好む生徒はいるし、そういうやつはたまの集まりにも不参加を表明するぞ?」

「それが出来たら苦労はないっての。うちのクラスは仲良しこよしだから、うっとおしいって思ってても足並み揃えないとやっていけない」

「ま、周囲に合わせるってのも社交性か」

 

 ただでさえ、帆波のクラスは団結力が強い上、女子間は結束力みたいなものも強い。下手に波風を起こせば、いらぬ善意や悪意を呼びかねなかった。

 あのクラスに限っていじめはないと思うが、クラスで浮くことになれば下手をすると普通のいじめ以上にもなり得る。善意で近づくのをやめて腫物のように扱われるのは、それはそれで嫌だろう。

 

「ストレスを発散したいなら、こんな所でボーっとしているよりも大きな声で叫ぶのが一番なんじゃないか?」

「叫ぶ? こんなところで叫んだら引かれるっつの」

 

 原作では、それでも口八丁で姫野を叫ばせたが、ぶっちゃけて言えばそんな行動に意味はない。目的は姫野をオレの部屋に連れていくことだ。

 

「なら、叫んでも問題ない場所ならいいだろ」

「……そんな所あるの?」

「ああ、付いてこい」

 

 そう言って、オレの個室に向かって歩き出す。あそこは防音がしっかりしているので、行為中にセフレたちが大きな嬌声を出しても外には響かない。

 

 どうやら姫野は個室の存在を知らないようで、首を傾げながらも後を付いてきた。

 本来なら付いてくる義理はないが、ここでオレを放置してクラスメイトたちに今のことを言いふらされたくないのだろう。渋々という様子で少し後ろを歩いている。

 

「ここだ」

 

 部屋の中に姫野を招待すると、エアコンが効いた室内に入った瞬間、「涼し……」と声を上げた。

 高いPPを払っているだけあって、この部屋は普通の生徒に与えられている以上に広く、内装もかなり高価なものが使われている。姫野にしてみれば別世界に見えるだろう。

 

「ここは?」

「オレの部屋だ。学校側にPPを支払えば個室を使う権利も買える」

「いくらなの?」

「この部屋は一晩3万PPだったか? まぁ、2週間は無人島にいたからな。そこまで大金という訳ではない」

「いや、それでも1週間で21万PPは大金でしょ……」

 

 と、ツッコミを入れながらキョロキョロと姫野が部屋の中を見渡している。先程までの警戒心はどこに行ったのか、男の部屋にやってきたという自覚があまりない。

 

 ま、今すぐ食べることはしないが――

 

「ここなら思う存分叫べるだろう。防音もしっかりしているから、外に声も漏れない」

「いや、でも……」

「どうした? 怖気づいたか?」

「そりゃ、いきなり叫べって言われても……」

「叫ぶのが嫌なら愚痴でもいいぞ。普段、クラスでは言えないようなこともあるだろう? 言いたいことを言うというのもストレス発散になると思うが?」

「愚痴か……それなら、まぁ……」

 

 これも一種のドアインザフェイスだった。叫ぶ――という、敷居の高い行動を強要した後に、簡単に口に出来る愚痴を言わせるように仕向ける。

 

 姫野としても、叫ぶよりは愚痴を言った方が楽だと思ったのだろう。普段、抱えているクラスやクラスメイトへの不満をぽつぽつと口にし始めた。

 

「……さっきも言ったけど、うちのクラスって話が長いんだよね。何がそんなに面白いのか、一回の集まりで馬鹿みたいに話が止まらなくてさ。実際には話が途中から逸れて、最終的には全く違う話になってたりもする。最初の話はどこ行ったって感じ」

 

 それこそ、最初はちょっとしたことだった。

 

 クラスの集まりの話が長い。

 

 どうでもいいことに拘る。

 

 誰が誰を好きでけん制してくるのがウザい――と、口にしていた姫野だが、段々と乗って来たようで、少しずつ個人への不満を爆発させている。

 

「一之瀬さんが頑張ってるのはわかるよ。一年生の時からみんなのこと助けて凄いって思うし、私だって一之瀬さんのために頑張りたいって気持ちはある。けど、それとこれとはまた話が別だと思わない? みんな仲良くってのは確かに良いことだけど、中には一人でいる方が気が休まる人だっているんだっての!」

「まぁ、オレも基本は一人でいるタイプだから、何となく言いたいことはわかる」

「でしょ!? そもそも友情ってのは強要することじゃないと私は思う訳。なのに、あのクラスは仲良くないとおかしいって空気でさ。おかしいのはお前らの認識でしょ! もし、また誰かが退学しなきゃいけない試験が来て、どうしようもない状況になったらどうするつもり!? お得意の努力と友情でどうにかなる訳!?」

 

 思った以上にエスカレートしてきた。もはや、ここまで来るとこちらは合いの手を入れるだけで良い。

 

「そりゃさ。私だって、みんながクラスのために頑張ってるってのはわかるよ。でもさ、女の子が男に媚びうるような作戦ってどうなの!?」

 

 今では遠慮なくストレスをぶちまけており、今年度最初の特別試験でオレが帆波に命じた色仕掛けへの文句を炸裂させていた。まぁ、半分キャバクラのようなことをしろと言ったのだ。姫野のように他人と関わるのが得意じゃない女子には苦痛でしかなかっただろう。

 

「確かに、あれはかなり女性に負担のかかる策だったな」

「効果的なのは理解できるよ。男子なんて、何だかんだ言って女子の胸とかスカートとか見てるんだし。ちょっと、誘ってやれば中卒の一年坊ならコロッと騙されるってのはわかる。わかるけど、できるかどうかはまた別の問題でしょ!」

「納得と理解は違うってやつだな」

「そう、それ! 嫌ならやらなくても良いって言ってくれたし、実際に強要はされなかったけど、やっぱりやらなかった人への風当たりは強かった。でも、知らない男相手にあんな体を寄せるような真似、私には出来ないし……」

 

 オレも強要はしなくても良いと言ったが、やらなかったらやらなかったで頑張った女子との間に溝が出来たようで、何も言われなくとも責められている気分になったらしい。

 

「白波さんも白波さんだよ。一之瀬さんのために何でもやるみたいなこと言ってるけど、男子に関わるようなことは絶対にしないし、クラスのみんなも『千尋ちゃんは男子が苦手だからー』って甘やかしてさ。別に男子が苦手なのは白波さんだけじゃないじゃん。私には恨みがましい視線向けて来るのに、なんであの子だけそんなに甘やかしてんの? 意味が分からないんだけど?」

「白波はそんなに甘やかされてるのか?」

「庇護欲がそそられるんじゃないの。私は、ほら、そういう愛嬌とかないし……」

「そんなことないと思うけどな。少なくともオレは話していて、白波よりも姫野の方が楽だ。言いたいことも言ってくれるし、下手に怖がられることもない。まぁ、オレが男子って言うのもあるかもしれないが」

 

 と、話すと、姫野の少し嬉しそうに「そ、そうかな」と照れたように前髪を弄り出した。

 これでいい。自己否定した場合はそれとなく持ち上げてやる。ここで、山内のように、「お前、根暗っぽいもんなー」とノンデリ発言をするのだけはNGだ。

 

「なんか、綾小路くんって結構いい人?」

「おいおい、さっき嫌な性格していると言ったばかりだろう。話を聞いているだけだ」

「ま、そうなんだけどさ。でも、その話を聞いてくれるだけが有難いって言うか……楽になったっていうか……」

 

 今まで誰にも言えなかった本音をぶちまけられたことが余程嬉しかったようで、姫野が小さく笑みを浮かべる。

 

「それだけストレスを抱え込んでいたと言うことだろう。大声を出せとまでは言わないが、オレくらい嫌なやつなら愚痴を言っても罪悪感も出ないんじゃないか?」

 

 女は正論ではなく、共感を求める生き物だ。だから、好きなだけ話させて頷いてやるだけでいい。

 

 勿論、ただ聞いているだけではなく、これまでの会話はしっかり録音させて貰っていた。

 まさか姫野も、オレがこの会話を録音しているとは思わず、「そうだね」と笑いながら、普段抱えていたストレスをこれでもかというほど愚痴っている――それこそ、門限の10時になろうという時間まで。

 

「あっ、もうこんな時間か……」

 

 結局、言いたいことを好きなだけ言えたからか、姫野もスッキリしたようだった。むしろ、まだ話した以内と言った様子だが――当然、これで終わりにするはずもなかった。

 

「そうだな。ここからが本番だ」

「……本番?」

「おいおい、男の部屋に無防備に入って、そのまま帰れるとでも?」

 

 在り来たりなセリフだが、姫野にしては予想外だったようで一瞬呆けた様子を見せる。

 

「……まさか、私を襲う気? そんなことして、後でどうなるかわかってんの?」

「そうだな。だから脅しをかけよう。今、お前がぶちまけていた愚痴をクラスメイトにばらされたくなければ言うことを聞け」

 

 ここで、録音していたボイスレコーダーを姫野に見せた。頭痛云々に関しては冤罪でも、今さっきまで実際に零していた愚痴は本当だ。

 これをクラスメイトに聞かされれば、まず姫野はクラスで居場所を無くす。普通なら、櫛田が過去をバラされるのを拒絶するように、何を置いてもバレたくはないと考える――が、自分の身を守るために、それでも反抗してくる可能性は十分にあった。

 

「最低……綾小路くんのこと信じてたのに……」

「さっきも言ったが、嫌な相手に気を許し過ぎだ。お前も言っていた通り、男子ってのは女子の体に興味のある猿のような生き物なんだよ」

「……ハッ。なら、ばらしたかったらばらせばいいじゃない。ここであんたに屈するよりは100倍マシよ」

 

 と、まぁこういう可能性もある。自分自身を一番大切にするために、他者との関わりを全て捨てる選択肢――だが、口では何とでも言えるが、実際にその地獄が目の前に起きたら、それでも姫野は今の言葉を突き通せるのだろうか?

 

「そうか。なら、そうしよう」

 

 オレはスマホを取り出し、とある人物たちに連絡を取る。すると、5分もしない内にドアがノックされ、帆波と小橋の二人が部屋の中に入ってきた。

 

「な、なんでこんな時間に一之瀬さんと小橋さんが……?」

「オレが呼んだ。お前は抵抗するみたいだからな。先程言った通り、この二人を通じて、お前の本音をクラス中に暴露させる」

 

 そう言って、実際にボイスレコーダーのスイッチを押してやると、『……さっきも言ったけど、うちのクラスって話が長いんだよね――』と、姫野の声が部屋に流れ出す。

 

「待って!」

 

 まさか、この場で暴露されるとは思わなかったらしく、姫野が慌てた様子でこちらに近づいてきたので、一度ボイスレコーダーを止めてやった。

 先程までは自陣満々に腹をくくったというような態度をしていたが、実際にこうして目の前で実行されると、その覚悟も簡単に崩れ去ってしまったらしい。

 

「ちなみに、この二人もお前と同類だ。オレに弱みを握られて逆らえない。オレの命令にはなんでも従う存在だ」

 

 その証拠に、「脱げ」と命じると、帆波と小橋が黙って服を脱ぎ始める。当然ながら、呼び出す際に、オレに無理やり命じられているフリをするように言ってあるので、二人共その命令に従って嫌々という演技をしてくれていた。小橋は半分本気で嫌がっているが――

 

「お前が逃げるならそれでもいい。だが、そうなった場合、お前にはもうこの学校で居場所がなくなる」

「……最低」

「ふむ。なら、もっと最低なことをしてやろう。お前がオレに従わないのであれば、この二人の秘密を暴露してやる。お前の掌に、あの二人の命運がかかっている状態だ。さて、どうする?」

 

 半分は嘘だった。帆波はもうオレに全てを捧げているので秘密という秘密はない。

 小橋の場合は、先程の初体験時の写真や録画でばらされた場合は結構なダメージになるだろうが、これはあくまでも脅しなのでばらすつもりなど最初から欠片もなかった。

 

 しかし、こう見えて意外と仲間思いでもある姫野にしてみれば、二人を見捨てるなんてことは出来ないだろう。

 

「……ちなみに、もうすぐ門限だけど?」

「問題ない。星之宮もオレ側だ。誤魔化す方法などいくらでもある」

 

 本来であれば、門限である10時を超えての外出は禁止されている――が、Cクラスに限っては話が別だった。

 生徒の管理は教師の仕事であり、その管理というのも12時に見回りをして生徒の人数を確認するというものでしかない。そして、Cクラスの教師は星之宮だ。夜中に何人か部屋に生徒が居なくなったとしても、虚偽の報告で騙すことが出来る。

 

 この辺は、まだ茶柱では出来ない領域だ。

 

「……先生まで?」

「嘘だと思うなら後で呼びだしてやる。今はオレの命令に従うかどうかだ。従うなら、服を脱げ」

 

 もはや逃げ場はないとわかったようで、姫野も渋々と言った様子でこちらの命令に従って制服のボタンに手をかけた。

 ここまで来ればもう終わりだ。小橋同様に、初体験時の写真や録画で縛り、オレから離れられなくさせる。最初は文句を言いつつも、回数を重ねればいずれTレックスから離れられなくなるだろう。それはもう、他の反抗期だったセフレたちが証明してくれている。

 

 ――こうして、無人島試験に引き続き、大乱闘Tレックスブラザーズ2が始まった。

 

 姫野も抵抗する素振りは見せないが不快感はあるようで、小さく「キモ」と口にしたが、それが強がりなのは一目瞭然だった。その証拠に恥ずかしさで顔を真っ赤に染めている。

 

 また、小橋の方も相手はまさかの帆波ということもあって、されるがままになっていた。

 普段、責める側の経験が少ない帆波だが、責められる側の経験は散々してきた――と、いうことで、これまで自分がやられてきたことを思い出しながら頑張っており、小橋の方も相手が帆波では抵抗らしい抵抗も出来ずに体を震わせている。

 

 まずはお手本――ではないが、そのまま準備の出来た小橋にTレックスの味を思い出させてやると、そこからはもう総崩れだった。

 

 タガが外れた帆波と小橋に当てられ、姫野も段々と勢いに呑まれていく。姫野もやはり初めてだったようで、紅い血潮がTレックスの顔を染め上げ、一つ一つ違う味わいの肉を美味しく味合わせて貰った。

 それでも思い出したようにこちらを睨みつけてくるのは、昔の澪を思い出させる。今では屈してしまったが、澪も最初は今の姫野のように頑張ってオレに抵抗しようとしていた。

 

「随分、動きが良くなってきたな。余程、よくなってきたと見える」

「……そんな訳ないでしょ――ッ!」

 

 口ではそう否定する――が、未経験者が経験者に勝てるはずもなく、最終的にはビクンと体を大きく跳ねさせていた。

 しかし、決して屈しようとはしない。気を取り直す度にこちらを睨みつけ、挑発には何かと反抗してくる。それでも、Tレックスの咆哮の前では無力だった。

 

 その後、時計の針が12時を指し示すと、夜遅くにひと仕事を終えた星之宮が乱入してくる事態も起きたが、人数が増えたことで久しぶりに朝まで愉しむことが出来ている。

 月城にバレるリスクがあるので、基本的にルールは守るようにしていたが、やはりこんないい部屋にいる以上、たまには普段できないようなハッスルをしても良いだろう。

 

 

 




 原作との変化点。

・小橋が脅してきたので脅し返した。
 小橋としてもまさかここまでの大事になるとは思わなかった形。しかし、一度食べられてしまえばもう総崩れだった。また、帆波がこれまで秘密にしていたクラスのことも知り、新しい奴隷となっている。

・姫野を脅した。
 原作ではデッキで大声を出す遊びをするだけだが、このSSでは言葉巧みに自室に誘い込んで愚痴を履かせている。スッキリした所を脅して美味しく頂いた。ここで姫野を食べなかった場合、神崎が反抗しないので関わり合いになることがほぼなくなるため、強行作戦を取っている。

・裏技。
 星之宮を味方に付けたが故に、門限を無視して大乱闘している。とはいえ、これが通じるのは一度きりであり、二度目はないと清隆もわかっている。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 予定外ではあったが、小橋を攻略しその流れで姫野も頂いている。最近は甘々作戦が多かったので久しぶりの脅しである。

・七瀬翼
 地味に清隆のボディガードをしている。何だかんだいってまだ天沢を警戒していた。

・一之瀬帆波
 自分以外に駒が増えたことを心苦しく思いながらも少し気持ち的に楽にもなっている。誰にも相談できないというのは地味に負担だった。

・小橋夢
 本人としては半ば冗談レベルの脅しをしたら、気が付いたら清隆の奴隷にさせられていた。しかし、帆波がずっと独りでいろいろ抱えていたことも知ってこれで良かったのかもしれないとも思っている。姫野脅しの前まではまだ反抗心があったが、それもすぐに折られた。

・姫野ユキ
 枠的には西野に近い。もし、姫野が帆波クラス以外に所属していたら、もっと一人で過ごしていただろう。しかし、何だかんだクラスメイトを見捨てられないこともあって上手いこと食べられてしまった。

・星之宮知恵
 実は今日と明日は休み。最低限の仕事だけしていればいいようで、点呼を終えると合流した。流石に生徒と一緒は初めてなので最初は緊張していたが、星之宮が来る頃には全員もう雰囲気に流されていたため、その流れに乗って楽しんでいる。


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