8月7日――豪華客船でのバカンスも気が付けば折り返しを過ぎた。今日は綾小路グループで集まる約束をしており、原作通りにプライベートプール(いわゆる貸し切りのプール)で愛里と波瑠加が大胆な水着を披露している。
流石の啓誠や明人も、二人の水着の前では平常心を保つのに苦労しているようだが、もっと凄い姿を見ているオレからすると可愛いものだった。とはいえ、似合っていない訳ではなく、目の保養としても十分に楽しませて貰っている。
しかし、原作では恥ずかしそうにする愛里と波瑠加だが、この世界では堂々と自分の姿を仲間達に見せつけていた。
正確には、波瑠加の方はまだ少し恥ずかしそうにしてはいるが、愛里はもう見られるのはお手の物とばかりにポーズを決める余裕すら見せている。
赤の他人の前ではまだ難しいだろうが、もう綾小路グループのメンバーも一年近い付き合いだ。愛里も恥ずかしいとは思わないようで、男子二人を手玉に取って笑っていた。
雫という仮面を被って人前に立ち続けた時間は、確かな自信へと変わっていたのだろう。だからこそ、ああして笑顔を浮かべることが出来ている。
勿論、それは愛里一人で手に入れたものではない。セフレ仲間という友達や、波瑠加という親友が出来たというのも大きいだろう。OAAの結果でも、原作の愛里と今の愛里は全くの別人と言って良かった。
かつては他人の前に出るには勇気が必要だったが、今では仲間に自分を見て貰うことに喜びを感じられるくらいには自分のことを好きになれている。その証拠に、今の愛里の笑顔は無理をしている様子がない。体に無理な力の入っていない、自然体の笑みだった。
たった一年のテコ入れで、愛里は大きく成長した。まぁ、もう口にするのも恥ずかしい姿を何度もオレの前に晒しているのだから、水着くらいで恥ずかしがるはずもないのは当然なのだが、こうして愛里の成長を見るのはとても面白い。
波瑠加も、もう少しこちらに染まれば、愛里と同じように恥を感じることも無くなるだろうが、今はまだ常識が残っているせいもあって愛里ほど吹っ切れてはいないようだった。とはいえ、夜の方はいろいろ吹っ切れているので別にいいのだが――
「なーんか、えっちなこと考えてるでしょ?」
と、思っていると、わざと自分のメロンを背中に押し付けるようにして、波瑠加が小声でそう話しかけてくる。
愛里や啓誠、明人は楽しくビーチバレーで遊んでいるようで、こちらに視線が向いていない。背中に水着越しの柔らかい二つのおもちが潰れて、なかなかに気持ちよかった。
「愛里は変わったなって思っただけだ」
「あいりん? まぁ、そうね。いくら仲間内とはいえ、あんな水着を恥ずかしげもなく着られるとは私も思わなかったわ」
そう話しながら、波瑠加がプールサイドに座ったので、こちらも隣に座る。明人がふと視線をこちらに向けてきたが、やはり明人は原作通りに波瑠加に気があるのだろう。
流石にこんな所でやましいことをする気はない(今の所)ので、軽く手を振って安心させてやった。
「波瑠加はまだ少し恥ずかしそうだな?」
「当たり前でしょ! 自意識過剰って思われるかもしれないけど、こんな水着着て見られない訳ないじゃない! ゆきむーとかみやっちも頑張って視線逸らそうとしてくれるけど、やっぱりどうしても視線は集中するし……」
「まぁ、目立つからな」
「開き直ってガン見すんな!」
何を今更。見る所か揉み込んだこともあるだろう――とは、流石に言えないので自重する。
「……無人島試験で、あいりんともいろいろ話したんだ。小学生の頃の話とか、中学生の頃の話、この学校に入学して私たちと仲良くなるまでの話とか、それこそいろいろね」
「2週間も一緒に居たんだ。そういう話をしても別におかしくはないだろう」
「あいりんはさ。一年の時は私と同じ所にいると思ってたんだ。私もあの子も、人よりも目立つもの持ってるし、人に見られるのも好きじゃなさそうだった」
「そうだな」
「けど、あの子は変わろうとした。ううん、今も変わってる最中なんだろうね。自分を受け入れて、他人の視線も受け入れてる……それがちょっと羨ましいんだよね。私はどうしても嫌悪感の方が先に来ちゃうからさ」
原作でも、波瑠加は自分の胸に向けられる視線に敏感だった。愛里の場合は、一年かけてテコ入れをしたが、波瑠加に関しては特に手を出していないのでその差もあるだろう。
「あいりんが変わったキッカケがきよぽんなんだとしたら、私もあんな風に変われるのかな……って、ちょっと思った」
「って言っても、特に何かした訳じゃないけどな。人前で話すよりも恥ずかしいことをして慣れさせただけだ」
「ちょっ! ここ、貸し切りでも公共施設!」
「大声で話してる訳じゃないんだ。聞こえやしないさ」
明人や啓誠の視線がこちらに向いていないことを確認してグッと波瑠加の腰を抱いて体をこちらに寄せる。
そのまま、反対の手で軽く水着の上からメロンを撫でてやった。ビクンと良い反応を示すのは、これまでの夜の運動会の結果だろう。
「ちょ、ちょっと……んっ、まずいって……」
「見られるのは嫌でも、さわられるのは嫌じゃないんじゃないか?」
「それとこれとは、んくっ……別……だって……」
「まぁ、波瑠加は別に無理に変わることはないとは思うけどな。別に今の自分が嫌いって訳でもないんだろう?」
あまり長い間ちょっかいを出しても気づかれる危険があるので、そろそろ手を離す。同時に、顔を赤くした波瑠加が急いでお尻一つ分隣に座り直した。
「ま、まぁ、それはそうだけど……」
「それに、恥ずかしい姿を見せるのは俺だけでいいしな。警戒心があるに越したことはない」
「もうっ! 本当にえっちなんだからっ」
顔のほてりを取るかのように、再び波瑠加が水の中に入って明人や啓誠たちのいる方へ泳いでいく。照れているのを隠したかったのだろうが、明人に「顔が赤いぞ?」と指摘されていた。
そんな波瑠加と入れ替わるように、今度は愛里がこちらにやってくる。どうやら休憩するつもりのようで、波瑠加同様にオレの隣に腰を降ろしてきた。
「何話してたの?」
「波瑠加が愛里みたいにえっちになりたいと悩んでいたから、そのままでも十分可愛いと言ってやったんだ」
「嘘でしょ?」
「良く分かったな」
「だって、私えっちじゃないもん」
「そうか? 無人島試験が始まる前に、オレの部屋で嬉しそうに尻を振っていたのは気のせいだったか」
「あ、あれは波瑠加ちゃんも一緒だったから……」
自分だけじゃないからセーフと誤魔化す辺り、愛里もなかなかしたたかになってきているな。
「本当は、愛里が去年よりも成長したから羨ましいと言っていた」
「……変わったかな?」
「少なくとも、お喋りにはなったな。昔は恥ずかしがって口数も少なかった」
「そっか、そうだよね。昔の私なら、こんな風に水着にもなれなかったかも……」
そう言いながら、こてんと愛里が頭をオレの肩に乗せてきた。何というか、この一年で甘えるのも上手になったもんだ。
「昔は勇気が出ないと泣いていたが、今ではどうだ?」
「勇気は変わらずないよ。ただ、みんなのおかげで少しずつ出来ることが増えただけ」
原作だと愛里は波瑠加が唯一の女友達だが、この世界では雪や千秋を始め、セフレたちとも仲がいい。だからこそ、彼女たちに引っ張られて、愛里も少しずつ変わっていったのだろう。
結果として、雫という仮面は今ではもう愛里の一部となっている。素の自分で、雫を表現できるくらいには、愛里も精神的に成長していた。
「私が変われたのは清隆くんのおかげだよ。清隆くんが居なかったら、私はずっと弱くて臆病なままだった」
「そうだな。こんなにえっちになることもなかったかもしれないな」
「え、えっちになったのは清隆くんのせいだよ!」
「おかげとせいはかなり違うな。出来れば、そっちもおかげと言って欲しかった」
そう言いながら、波瑠加の時のように視線が向いていないタイミングを見て腰を抱いて体を抱き寄せる。
そのまま、反対の手で軽く水着の上からおもちを撫でてやると、恥ずかしそうに内股をすりすりと擦り合わせ始めた。
「き、清隆くん……みんなにバレちゃうっ」
「そうだな。愛里のえっちな顔が見られちゃうな」
「だ、だめ……だめだよぉ……」
トロンとした表情で駄目と言っているが抵抗はまるでなかった。とはいえ、波瑠加の時同様にいつまでも遊んでいると気付かれる危険があるので程々で手を離――そうとした瞬間、ビーチバレーのボールが物凄い速度でこちらに飛んできた。
咄嗟にボールを受け止めると、波瑠加が怒ってますと言わんばかりの表情で、「あっ、ごめーん。ボールがそっちいっちゃったー」と、棒読みで謝罪してくる。
愛里もすぐにハッとしたように水の中に潜って顔を隠す辺り、自分が随分とまずい顔をしていた自覚があるのだろう。丁度いいので、そろそろ休みも終えて合流することにした。
「貸し切りとはいえ、ゆきむーやみやっちもいるんだから自重しなさいよね」
「ご、ごめんね。波瑠加ちゃん……」
「なら、今度は三人で貸し切りたいものだ」
「……何されるかわかったもんじゃないから却下で」
「そ、そうだね……」
解せぬ。
◇◆
プライベートプールの貸し切り時間もあっという間に過ぎると、手っ取り早くシャワーと着替えを済ませて、男三人で愛里と波瑠加が出てくるのを待つことになった。
男三人で適当な話をしていると、「綾小路先輩!」といつもの笑みを浮かべて七瀬が声をかけてくる。この豪華客船生活で七瀬は毎日のように声をかけてくるが、一応オレの護衛として警戒してくれているのだろう。
ちなみに、原作では七瀬が無人島試験でオレと和解した後、試験中にサーチを使って見つけた八神の遣いを船の中で追跡するというイベントがあるのだが、当然ながらそんな遣いはいないので何も起きていない。
しかし、龍園は小宮と木下を襲った犯人の手がかりが七瀬にあると考えているようで、原作通りに龍園クラスの中泉と鈴木が七瀬のことを追跡しているみたいだった。
まぁ、犯人は原作と違って天沢なので、仮にバレたとしても天沢が龍園に屈することはない。それこそ、本人の自供以外の証拠なしに取り押さえるのは無理のはずだ。
と、考えていると、七瀬も「私はこれで失礼します」と言って離れていった。
そんな七瀬と入れ替わるように、愛里と波瑠加が着替えを終えて戻って来る。そのまま、プライベートプールから離れようとすると、見覚えのある二人組がこちらに歩いてくるのが見えた。
池と篠原だ。原作通りに遊びに来たのだろう。
篠原は無人島試験での一幕を思い出したのか、オレを見るなり顔を真っ赤にしている。しかし、池は全然そんな篠原の変化に気付いていないようで、「行こうぜ、さつき」と手を取って前に進んでいった。
すれ違いざまに「無人島試験ではありがとな」と池にお礼を言われる。篠原も、「あ、ありがとう綾小路くん」と、顔を伏せて池と一緒に歩いて行った――が、視線が地味にこちらに向いている。
「一時は別れる寸前って感じだったけど、結局は雨降って地固まるって感じ?」
「池くんも篠原さんも仲直りできてよかったね」
どうやら篠原の異変には誰も気づいていないようで、事情をよく知らない波瑠加や愛里からすれば、池と篠原は試験前に喧嘩して気が付いたら元鞘に戻っていたという認識らしい。
実際はいろいろあったのだが、ここで素直にそれを話すのは問題なので、「そうだな」と頷きを返しておく。
しかし、啓誠は今でも、あの二人が付き合っていることが信じられないようで、「あの2人が付き合ってるっていうのが未だに理解できない」と小さく呟いていた。
「ゆきむーって頭は良いけど……バカよね」
「最初は嫌い合ってても、少しずつ距離が縮まっていくっていうのは恋愛の王道だよ」
波瑠加や愛里のツッコミを受けても、「そ、そんなもんか……」と、何とか二人の言葉を飲み込もうとしたが、それでも違和感の方が強いようで、「いや、やっぱり理解できない」と首を横に振っている。
こんな調子では、もし愛里と波瑠加もオレのセフレでこれからオレの部屋で楽しむ予定だとわかったら、啓誠は頭が爆発してしまうのではないだろうか?
まぁ、そんなことになれば波瑠加に惚れている明人はまずグループから抜けてしまうだろうし、そんなことをバラす予定はない。少なくとも、この世界で愛里を退学させるつもりがない以上、綾小路グループが分裂してしまうような事態にはしないつもりだった。
とはいえ、それとこれとは話が別ということで、個室に戻ると再び二人を水着に着替えさせ、先程までは出来なかったことをお風呂で楽しませて貰う。
人目がない個室だからか、愛里も波瑠加も先程よりも大胆なことをしてきて、無人島試験前に楽しんだ時とはまた違った楽しさを味わうことが出来た。
このまま夜までワッショイ――と、行きたい所ではあるが、一昨日無理をしたせいで、月城から注意を受けたと星之宮から報告があったので、無理はせずに早い段階で切り上げていく。
そのまま夕食を一緒に食べて解散し一人で個室に帰ったが、やはりこんなにいい部屋を夜に一人でしか使えないとか、今回の夜間活動禁止というルールは本当に最低だった。月城に恨みはなかったが、これだけは恨まざるを得ないだろう。
原作との変化点。
・綾小路グループと遊んだ。
原作と違って、愛里が完全体になっている。
・波瑠加、愛里の話を聞いた。
波瑠加は、愛里の成長を喜びながらも停滞している自分を強く意識している。まだどうすればいいかわかってはいないが、何かをしなければいけないという意識は持っている。
愛里は、昔と今との自分の違いを改めて認識し、変われたのは自分を取り巻く環境が変わったからだと認識していた。少しずつ出来ることが増えたが故に自分に自信が持てている。
・七瀬と会った。
今日も頑張って警戒中。だが、龍園も動きだした。
・池と篠原。
池は何も気づかすに清隆に感謝しており、篠原は何だかんだ清隆を目で追っていた。もはや、救いようもない状況だが、退学するかどうかはまだわからない。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
久しぶりに綾小路グループで遊んだ。その後もハッスルしている。
・七瀬翼
変わらず清隆の周りをウロチョロしている。龍園に、小宮・木下事件の解決の鍵だと思われているようで少し前から周囲を監視され始めた。
・佐倉愛里
無人島試験も何だかんだ突破し、1年でかなりの成長を見せている。
・長谷部波瑠加
愛里の成長に、焦りを感じつつもどうすればいいかわからないでいる。その鬱憤を晴らすかのように、清隆にサービスしていた。
・幸村輝彦
池と篠原の関係を改めて疑問視していた。
・三宅明人
目で波瑠加を追っている。まだ、清隆との関係には気づいていないが、波瑠加が無意識に清隆を見ていることには気が付いている。