SIDE:一之瀬帆波
今年の体育祭。綾小路くん――ご主人様からは、事前に当日は休むと聞いていた。事情までは聞かなかったけど、指示は前もって出されているので問題はない。
今回、指示されたことは2つ。
1つ目は当然、全力で頑張ること。運動力に長けた生徒に関しては、男女や複数人で組むことも指示されていて、効率よく得点を稼ぐ指示が出されている。
2つ目はクラス移動チケットの獲得。これは『出来るなら』というレベルでの指示で、柴田くんのように、Cクラスの中でも運動能力が高い生徒にはなるべく1位を狙ってほしいと頼まれていた。理由は聞かなかったけど、多分ご主人様はクラス移動をしたいのだろう。
「えっと、みんなも今日は頑張ろう……?」
そして、始まった体育祭――私は生徒会役員としての仕事を終えると、すぐにクラスに合流したのだが、協力型の特別試験でもないのに私の周りには何故かクラスメイト以外の生徒たちも集まっていた。
姿が見えるのは、主に私が力を貸している1年Cクラスを中心とした下級生たちと、3年Cクラス、Dクラスを中心とした上級生たち。
正直、今回の体育祭では他学年とは戦うことになるし、あまり固まる意味もないと思っていたのだが、彼らはまるでこちらをガードするかのように遠巻きに陣取っていた。
まぁ、下級生としては上級生の庇護を受けられるし、上級生としては下級生の実力が知れて上位を狙いやすいのかもしれない。よくわからないが、クラスメイトじゃなくても仲が良いことは悪いことではないので特に気にしないで体育祭を頑張ることにする。
「えっと、皆さんも頑張ってください……ね?」
流石に無視するのは悪いので軽く声をかけたのだが、何故か感動したかのように涙を流す生徒が続出していた。
すぐに「頑張ります!」、「任せてください!」といった声が返って来るが、とりあえずやる気になってくれるのはいいことだろう。たぶん。
「帆波ちゃん、いこ!」
「あ、うん……」
麻子ちゃんに連れられて体育館内を移動する。改めて、クラス移動チケットを入手するためには、個人成績で1位を取る必要があった。
でも、残念ながら私はそこまで運動能力が高い訳じゃない。自ずと、柴田くんや神崎くんを始めとした運動が得意な人をサポートして得点を稼ぐ必要がある。
私たちの武器はクラスメイト同士の連携だ。だから、普通なら嫌厭しそうな団体競技にも進んで参加して得点を稼いでいく。
とはいえ、各学年や男女で別れている基本競技と違って、特殊競技は学年別や男女別になっていないものもあるので、どうしても強力な生徒とぶつかりやすい。しかし、私たちの場合は何故かわざと相手が棄権することで団体競技に優勝することが出来てしまった。
これは、明らかに忖度だ。
ご主人様の狙いはこれだったのだろうか。確かに、他の学年が協力して1位を譲ってくれるなら私たちに負けはない。けど、これはもう競技の体を成していなかった。
「……みんな、ありがとう。気持ちは凄く有難いよ。でもね、私はこんな忖度されて勝っても全然嬉しくない。だから、これからはみんなも本気で体育祭を頑張ってほしい」
このまま忖度をさせ続けていれば1位は確約されたかもしれない。龍園くんなら、喜んで受け入れただろう――でも、私はこんな出来レースを認められなかった。
だって、ご主人様は忖度されろとは一言も口にしていない。それは、裁量は私に任せるということだ。これが負ければ退学という条件ならまだしも、負けても誰も失われないのであればちゃんと実力で1位を勝ち取りたかった。
幸いにもこちらの訴えは受け入れて貰えたようで、そこからは忖度も無くなっている。
ただ、午後からは龍園くんのクラスから妨害らしきものがあったようで、変ないちゃもんを付けられたと報告が入った。しかし、先輩や後輩たちが近くに居てくれたため、すぐに先生を呼んで対処できたという。
もし、他学年の生徒たちがおらず、うちのクラスだけで行動していたら、龍園くんお得意の盤外戦術で翻弄されていたかもしれない。
事実、2年Bクラスは、龍園くんにわかりやすいくらいしてやられているようだった。忖度は嬉しくないが、こういう妨害に対する対応は正直かなり助かっている。
とはいえ、うちもそこまで余裕がある訳じゃなかった。午後に入ってからは、得点でも龍園くんのクラスに負けてしまっている。
「……柴田くんや神崎くんたちの様子はどうかな?」
「紗代ちゃんやこずえちゃんも頑張ってるけど、やっぱり椿さんと高円寺くんのペアが強すぎるね」
「後、1年の宝泉くんもいろいろな試合で暴れまわってるって……」
各メンバーからの連絡役である夢ちゃんや千尋ちゃんからもあまり芳しくない報告が届く。
でも、雪ちゃんが当日になって高円寺くんと組んで動いたのは、もしかしたらご主人様からの命令の可能性がある。
多分、私たちと同じように、クラス移動チケットをゲットするように命令されているのだろう。だから、私たちには『出来るなら』という曖昧な指示が出ていた。雪ちゃんたちがゲットできればそれで良し、駄目なら私たちに頑張って貰う二段構えの策。
けど、こちらも各競技で各々かなりいい成績を出せている。上手く立ち回れれば高円寺くんや雪ちゃんを抜いて1位も夢じゃない――はずなのだが、龍園くんの妨害だけでは説明がつかないほど、うちクラスの点の伸びが悪かった。
開幕はそこそこ順調に見えていたが、時間が経つにつれてどんどん差が開いていき、Aクラスからも差を詰められていっている。
この時はよくわかっていなかったが、後から聞いた話によると、2年AクラスとDクラスは無人島試験に引き続き協力関係にあったらしい。
また、1年Bクラスの八神くんも龍園くんに協力していたようで、AクラスやDクラスの生徒へ的確に競技の参加指示を出し、各クラスの得点アップだけではなく他クラスの上位入賞妨害もしていたのだという。
そういえば、プレー中やけにラリーが長いと感じた瞬間があった。いや、それだけじゃない。靴ひもを結び直したり、転んで怪我を訴えたりして時間が経過することも――それももしかして時間を無駄に使わせるための作戦?
実際、あの遅延がなければ、もっと効率よく団体競技に参加して得点を稼げていた。
まさかのブレインの存在に気付けず、最終的に私たちは僅差でDクラスに敗北。学年2位という結果に終わっている。
おまけに、個人での入賞は柴田くんと紗代ちゃんのコンビがギリギリ2位に入ってくれたけど、やはり1位は雪ちゃんと高円寺くんのコンビに持っていかれてしまった。
とはいえ、マイナスは出ていない。
CPも+50で、柴田くんと紗代ちゃんは100万PPずつ稼いでくれている。ご主人様の命令を全ては果たすことが出来なかったが、それでも及第点くらいは貰ってもいいはずだ。
いいはず――なのだが、出来れば全ての指示をこなして体育祭を100点満点で終わらせたかったという気持ちも嘘じゃない。この敗北を糧に、次の戦いこそみんなで協力して1位を狙えるように頑張ろう。
◇◆
SIDE:八神拓也
今回の体育祭。綾小路先輩は、ホワイトルーム関係者から身を隠すために不参加するという連絡が入った。
実際、僕の方にもホワイトルームの関係者が来るかどうかの連絡は入ってきていないが、別に連絡なしで来ていてもおかしくはないので先輩の行動も納得できる。
とはいえ、体育祭は数少ない上級生と戦える機会なので、出来れば綾小路先輩と戦いたかったというのが本音だ。特に今年の体育祭は、純粋な運動能力の競い合いではなく、妨害を含めて如何に周りを上手く使うかのストラテジーゲームに近い。
先輩の持ち駒は3年Bクラスと、1年Dクラス、それに椿桜子や宇都宮、一夏といった少数の1年生と、自クラスに2年Cクラス。
対する僕は、掌握している1年Bクラスと、Aクラスの1/3程――だが、もし勝負が成立するなら、2年AクラスとDクラスも巻き込むつもりだった。
それでもこちらの方が駒は少ないが、坂柳有栖や龍園翔を上手く使えば勝機は十分にある。楽しいゲームになる予定だったのに――と、先輩の不参加を残念に思っていると、突如として2年Aクラスの坂柳有栖から呼び出しを受けた。
綾小路先輩と戦うに当たって、当然ながら2年生の情勢は把握している。今年の体育祭のルールでは、2年Aクラスは人数的に不利であり、リーダーの坂柳有栖は先天的な病気で運動が出来ない。
また、今年からの各クラスの動きを追っていけば、2年BクラスとCクラスは手を組んでいて、AクラスとDクラスが対峙しているというのもわかっている。つまりは、僕の能力を買いたいという呼び出しだろう。
綾小路先輩こそ休みだが、あのクラスには生徒会長の椿雪もいる。デモンストレーションがてら、ちょっかいを出してみるのも面白いかもしれない。椿雪には、無人島試験でしてやられた借りもあるし、その借りを体育祭で返すのは悪くない考えだった。
「こんにちは、坂柳先輩」
何よりも――ここで坂柳有栖に恩を売っておけば、後々先輩との勝負でも有利になる可能性が高い。故に、拒否するという選択肢は最初からなかった。
彼女から指定された喫茶店に入り、声をかける。
パッと見、坂柳一人だけに見えるが、後ろの席に一人と離れた箇所に二人――こちらに視線を向けている生徒がいた。
OAAを見るまでもなく、記憶にあるAクラスの生徒とも顔が一致したし、おそらくはボディガード代わりの存在だろう。坂柳有栖の貧弱さを考えれば、一対一で他人と相対するのは殺してくれと言っているようなものなので当然と言えば当然の備えだ。
「こんにちは、八神くん。今回はわざわざ足を運んでくれてありがとうございます」
坂柳有栖も、下手にこちらを威圧するつもりはないようで、表向きは一人であるとアピールしていた。
無人島試験では各学年同士が仲間という面もあったから先輩と協力していたようだが、やはり一時的な利害関係でしかなかったらしい。そうでなければ、ここで僕を呼び出す意味もないだろう。
「いえ、僕としても2年Aクラスのリーダーである坂柳先輩とは一度お話してみたいと思っていたので」
「そう言って頂けると助かります。私も、八神くんとは前からお話してみたいと思っていたんですよ」
「光栄です」
「無人島試験でも、なかなか優秀な成績を収めていましたね。後半で失速してしまったようですが、あれがなければ上位入賞も十分に有り得たと思っています」
「僕も上位を狙っていたんですが、やはり2週間のサバイバルとなると、どうしても体調不良者も出てしまいまして……」
と、軽く前回の試験について話しながら、まずはお互いに探りを入れていく。
坂柳としても、僕が綾小路先輩と争っていたのは知っているはずだし、僕が坂柳の存在を知っていることも既に知られていると考えて良い。そうでなければ、表向き指揮を執っていた椿ではなく、僕を名指しで呼びだす理由がなかった。
これは単なる儀式だ。お互いにお互いの能力は把握しているぞ――という、アピールタイムに過ぎない。本番は、ここからだった。
「それで、僕に御用とは……?」
改めて、本題を確認していく。
今回、呼びだしたのは向こう側だ。どれだけ坂柳が、言い値で僕の力を買ってくれるかが今後の関係性にも響いてくる。
「この体育祭で、力を貸して頂けないかと思い、声をかけさせて貰いました。今年の体育祭のルールは2年Aクラス――と、いうよりも、私と相性がよろしくないルールでして。こちらとしても、ホワイトルーム生であるあなたの力を借りられるのであれば有難いことだと考えています」
こちらが本題に入ろうとした瞬間、当たり前のように爆弾を放り込んできた。どうやら、坂柳はホワイトルームのことを知っているらしい。
いや、坂柳はこの学園の理事長の娘だ。親がホワイトルーム関係者と繋がりがある可能性は十分にあった。無人島で、綾小路先輩が彼女の力を借りたのも、事情を知っていたから――ということは普通にあり得る。
「綾小路先輩から聞いたんですか?」
「いえ、綾小路くんはホワイトルーム生が入学してきているとだけしか教えてくれませんでしたよ。ですが、入学してからの各自の動きを追っていけば、怪しい生徒は何人か浮かび上がってきます。その中で、あなたと天沢一夏さんが特に黒かった……というだけです」
ハッタリか? いや、無人島試験で僕が先輩と正面切って戦っていたのは、調べればすぐにわかることだ。
一夏だって、特に自分のことを言いふらしてはいないが隠している訳でもない。2年Aクラスのリーダーなら、僕たちのことを知っていても不思議ではなかった。
「……それで、力を借りたいということですが、どんな協力をお求めでしょうか?」
「そうですね……クラスを秒単位でスケジューリングして貰い、Aクラスを上手く指揮して他のクラスよりポイントを稼いで貰う。と、いうことは可能でしょうか?」
「と、いうことは……坂柳先輩は、当日はお休みということですか?」
「はい。この体ですからね……体育祭への参加は難しいと考えています。ですが、マイナスが大きいイベントなので最下位だけは回避したい。だからこそ、あなたに声をかけさせて頂きました」
「成程……先輩がそこまで僕の力を信じてくれているというのであれば、指揮権さえ頂ければ先輩の代わりにクラスを秒単位でスケジューリングしますよ。お求めなら、他クラスの妨害だってしてみせましょう。Aクラスをトップ――に、するのは流石に難しいかもしれませんが、最下位はまず防げる自信があります」
流石に他クラスとの差が40~50もある状態で1位を確約するのは難しいが、それでも僕の力ならばAクラスを最下位から引き上げるのはそう難しくなかった。
確実性を持たせるなら、2年Dクラスを巻き込んだって良い。CP差は十分あるし、2年Dクラスの力を借りられれば、Aクラスを最下位から引き上げるのはさらに容易になる。
「悪くない条件ですね。では、協力していただきましょうか。それで、お望みの報酬は?」
「Aクラスが3位であれば、成功報酬100万PP。2位で200万PP、1位で300万PP――で、どうでしょう? 仮に4位になった場合は、僕の力不足ということで逆に100万PPを先輩にお支払いします」
まぁ、そんな可能性0だけど。
「いいでしょう。ですが、今回私はDクラスの龍園くんと組んでこの体育祭に参加しています。なので、八神くんには龍園くんの下について貰う――ということになりますが、よろしいでしょうか?」
「構いませんよ。龍園先輩ともいつか話をしてみたいと思っていたので」
元々、この後は2年Dクラスの龍園翔にも話を持っていく予定だった。そういう意味では向こうの話は渡りに船だ。
龍園としても、持ち駒が増えるのは悪いことではないということで、僕のことを拒否することはなかった。後は実力を見せてやれば黙らせることが出来るだろう。
◇◆
当日、何とか龍園に取り入り、クラスのスケジュール管理をさせて貰いながら、龍園たちの妨害や2年Aクラスの得点力、他クラスの状況を見て点数を管理していく。
途中の流れから、この体育祭の順位は2年Dクラスが1位、Bクラスが4位という順番で決着がつくのが見えた。Aクラスを2位に持っていくのもこの調子なら難しくない。
しかし、坂柳有栖は欠席で使えなかったが、龍園翔は予想以上に使えそうな男だった。
いくら綾小路先輩がいないとはいえ、ああも2年Bクラスを翻弄するとは――いや、椿雪がクラスを捨てて個人報酬を狙っていることや、午後でBクラスの人手が少なかったという弱点もあったが、それにしても他者を翻弄するのが上手い男だ。
だが、それ以上に2年Bクラスが烏合の衆過ぎて酷い。ただでさえ、あのクラスは人数の有利で他クラスよりもポイントを多く持っていたのだ。にも関わらず、そのポイントを全て吐きだしてマイナスに突入してしまっている。
椿雪が本気でクラスのために協力すればまた話は変わったのかもしれないが、やはり綾小路先輩のいない2年Bクラスは脅威足りえない――と、考えていると、このまま普通にBクラスを最下位にさせるのは面白くないと考えてしまった。
「……いや、そもそもこんなくだらないゲームに勝っても意味なんてない」
僕の能力を持ってすれば、もはや勝敗は動かない――が、このままゲームをクリアした場合、この先に戦う機会があった時、先輩が僕との戦いを拒否してしまう可能性があった。
仮に、この体育祭で僕が勝ち、2年BクラスのCPを減らしてしまったとする。しかし、もし次に僕と先輩が戦える機会があったとしても、先輩はCPを稼ぐことにシフトして僕と真剣勝負をしないというかもしれない。
勿論、あの先輩がそんな心の狭いことを言うとは思えないが、他の事情が重なれば先輩が僕を優先しない可能性は十分に有り得る。こんな面白くないゲームでそんな可能性を作るのはあまりにも馬鹿のすることだった。
「……よし、勝ちは見えたな。おい、八神、後はお前に任せる。Aクラスを3位以上にするのももう難しくねぇだろ。協力関係もこれで終わりだ」
15時現在――2年の得点差は1位がDクラス807点、2位がCクラス787点、3位がAクラス758点、4位がBクラス753点と、龍園のクラスは2位に30点差をつけている。
ここに監視役として出していた10名分の参加賞がプラスされてさらに10点差がつく。逆に2位の一之瀬のクラスは、ここまでにかなり団体競技に多く参加していたため、もう大型競技に参加できる生徒が少なかった。残り1時間では盛り返せないと判断したのだろう。
実際、その判断は間違っていなかった。
「……好きにしていいんですね?」
「ああ。なんなら、坂柳のクラスを最下位にしても良いぜ。それで契約違反になるのはお前だけどな」
と、笑いながら龍園が歩いていく。
お付きの葛城は1時間程前に龍園と指揮を交代してとっくにいなくなっており、偶然にも監視の目がなくなってゲームもしやすい状況となってくれた。連絡員の目は減ったが、まだ2年Aクラスと僕のクラスが残っている。それだけあれば十分だろう。
「言質は取った……」
好きにしていいと言われたのだ。
なら、ここから僕がこの体育祭で何をしようと、文句を言われる筋合いはないだろう。
「……では、エクストラゲームの開幕です」
このまま綾小路先輩のいないBクラスに勝った所で面白くも何ともないし、先輩だって僕に負けたとは思わないはずだ。だからこそ、ここでゲームの難易度を上げていく。
2年Aクラスと2年Bクラス。下位にいるこの両方を、同率の3位にしてやるのだ。
普通であれば、同率の結果を狙うのはまず無理だが、こちらである程度得点をコントロールできるのなら満更不可能ではない。最悪駄目でも、Aクラスが3位になればいいし、暇潰しがてら針に糸を通すように得点を調節していく。
「鬼頭先輩、町田先輩、清水先輩、六角先輩、福山先輩、元土肥先輩で男女混合バレーボールに参加してください。この競技は、Bクラスが一か八かに賭けている競技です。ここで勝利出来ればAクラスの3位はほぼ確実と言っていい。念のため、保険で矢野先輩、司城先輩もテニスの男女混合ダブルスに参加してください。ポイントが手に入れば御の字です」
そもそも、先輩が参加しないと分かった時点で、体育祭など暇潰しレベルのゲームだったのだ。
坂柳有栖との契約さえ守れれば、他のクラスがどうなろうと僕には関係ない。むしろ、先輩と戦えなくなる可能性が出る分、2年Bクラスを最下位にするのはマイナスと言って良かった。
「……少し足りないか。バレーに参加したメンバーはそのまま自分の自信のある基本競技か、特別競技に参加してください。後、吉田先輩、竹本先輩、島崎先輩は、3人競技のセパタクローへ。人数が少ないので入賞の可能性が高いです」
向こうの主力である高円寺六助、椿雪は10種目を終えた。また今、須藤健、小野寺かや乃のペアも宝泉に負けそうと報告が入っている。後、あのクラスが出来ることと言えば、苦し紛れに堀北辺りが基本競技で1位を取るくらいだろう。
よし、須藤が負けた。もうここまで来れば盤面は動かない。坂柳の好きなチェスで言うならチェックメイトだ。
「鬼頭先輩。柔道で10種目目を1位で終えてください。連絡員の皆さんも、もう解散で大丈夫です。最後の競技に適当に参加して参加賞を受け取って終わりにしてください」
読みは正しかった。堀北は苦し紛れに基本競技で1位を取り、こちらの予想通りに点数を動かしてくれている。
こちらも鬼頭が柔道の特殊競技で1位を取ったことで目的の得点に並んだ。後は、連絡員として使っていた10名が参加賞を受け取れば望み通りの数字が出てくるはず――
「ふふ、パーフェクトゲーム。難易度はノーマル寄りのハードって所かな」
結果――僕は、863点で2年AクラスとBクラスを、同率の3位へと導くことに成功した。
やはり、綾小路先輩がいないのではこんなものだろう。龍園翔や坂柳有栖にも顔を売れたし、この体育祭は十分楽しむことが出来た。
後は、また次の機会に先輩には挑戦させて貰う。
その間に、こちらも面倒な椿や宇都宮との決着をつけておかないと――奴らも、波田野の件でまだ僕を狙うのを諦めていない。この体育祭は退学のルールがなかったから仕掛けてこなかったが、特別試験で退学があるルールならばおそらく仕掛けてきていただろう。
椿はともかく、宇都宮はあの熱くなりやすい性格を利用してやれば退学にするのはそう難しくない。宇都宮が退学になれば、駒を失った椿も動きが止まるはずだ。いい加減、あいつらも誰に喧嘩を売っているのかハッキリとわからせてやる。
僕に勝てるのは綾小路先輩だけ――そして、僕は必ずその綾小路先輩に勝つんだ。
帆波クラスの動きと、八神の動きについてでした。
もし、帆波が意地張ってなければ一位も取れたかもしれませんが、高潔さを見せたことで信者たちの心を掴めたので、将来的に見た場合は正解だったかも?
ちなみに隠れ独自ルールで、一度参加した競技には二度参加できないというルールを設けています。もし、何度も参加可能にしてしまうと、それこそ100M走を繰り返すだけという生徒も出てきて、得意競技にしか参加しないという状況になりかねないので。
また、男女別と男女混合の種目が存在しています。原作ではバレーは女子のみでしたが、うちのSSでは男女混合と男子のみも存在しています。テニスも同じで、男女混合、男子のみ、女子のみで分けています。得点の配点も決めていますが、あまり表に出す意味がないのでそこは良いでしょう。
また、アルティメットやセパタクローといったマイナー競技については興味があれば調べてみてください。
簡単に言うと、アルティメットがフリスビーを使ったアメフトみたいなもので本当は7人競技ですが、このSSでは4人制にしています。
セパタクローはネットを挟んで頭や足を使ってボールを相手に返す足版のバレーボールみたいな感じで、このSSでは三人競技に設定しています。
最後に八神の遊びについて。
最初はAクラスを2位にして終わらせるつもりでしたが、本文にも書いた清隆と戦えない可能性を危惧して同率3位にしています。もし八神が馬鹿なら、Bクラスが最下位で-150CPになっていました。