ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯021 『私を食べてという意味か?』

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

 次の日の朝、いつものように雪と一緒に寮を出ようとした所で、一之瀬が寮の管理人に何かをお願いしているのを見つけた。眺めていると、向こうもこちらに気付いたようで、手を上げながら元気に声をかけてくる。

 

「やっほ、綾小路くん、椿さん。おはよう。早いんだね」

「今日は少し早く目覚めてな」

「一之瀬さんこそ、こんなに早くどうしたの? 管理人さんに何かお願いしていたみたいだけど?」

「うちのクラスから何人か、寮に対する要望みたいなのがあってね。それをまとめた意見を管理人さんに伝えてたんだ。水回りとか騒音とかね」

「そういうのは個人で伝えればいいんじゃないか?」

「まぁ、そうなんだけどね。私、クラスの学級委員やってるから」

「……もしかして、クラスで係を決めてるの? 他のクラスも?」

「あぁ、心配しなくてもBクラスで勝手にやってるだけだよ。役割が決まってるといろいろ楽だから」

 

 聞けば、副委員長や書記などもいると話してくれた。とはいえ、参考にはならない。Dクラスでは平田、櫛田以外面倒くさがって誰もやりそうにないし、言うことを聞かないような奴もいる。一之瀬の影響力なしには出来そうにないルールだ。

 

「そういえば、綾小路くんはいつもはもう少し遅いの? 私はこの時間に来ることが多いんだけど」

「清隆は意外とお寝坊さんだから」

「別に早起きしない訳じゃない。気が付くと時間がなくなっているだけだ」

 

 そう、気が付くと朝に再戦が始まって時間が無くなるだけなのである。

 

 と、話していると、一之瀬も自然と横に並んできた。そのまま、当たり前のように三人で学校へと向かっていく。

 

「そういえば、綾小路くんたちは夏休みのこと聞いた?」

「夏休み? バカンスがどうとかいう話か?」

「それそれ。何か南の島でバカンスがあるって先生が言ってたんだよね」

 

 バカンス(無人島サバイバル)だな。次の試験だ。

 

「茶柱先生もそれ言ってたけど、胡散臭いことこの上ないよね。この学校がそんな優しいことするとは思えないし」

「怪しいよね、やっぱり。私はそこが一つのターニングポイントだと見てるんだよ」

「確かに、未だにクラスポイントを変動させるようなイベントは中間テストのボーナスのみだからな。そろそろ何か大きなイベントが来てもおかしくはない」

「私もそう思う。中間や期末より、グッと影響力のあるやつっていうか。そういうものがないとAクラスとの差って中々埋まらないからさ。私たちも離されて行っちゃってるし」

「今Aが1004、Bが663だったか」

「うん。大体350くらい離されてるね。中間じゃBクラスもポイントの伸びが悪かったし」

「今の所、他にクラスポイントを伸ばす手段もないもんね」

「だから、バカンスには期待もしてるんだ。もし、イベントが来るなら、巻き返すチャンスはあるかもしれないし。それに備えて気持ちだけは作っておかないと」

 

 ふんす、と力こぶを作る一之瀬。

 

「どれくらい動くかだね、そのイベントで」

「中間テストのボーナスが100。そこから考えて500や1000は動かないにしても、200も動けばDクラスもCクラスを射程圏内に出来るからな。それは同時に、BクラスがAクラスを射程圏内に入れるチャンスということでもある」

「お互いに頑張らないとだね」

 

 今、クラスポイントはAが1004、Bが663、Cが492、Dが175だ。200ポイントも入れば、その時点でDクラスはCクラスの後ろが見えてくるし、CクラスはBクラスに昇格が決定する。

 

「でも、本当に南の島でバカンスだったら、それはそれで面白そうだよね」

「そうだねー、遊ぶだけのイベントなら、新しい水着とか買っちゃうかも。ねっ、清隆?」

「あぁ、是非見たいものだな」

「えー、綾小路くんはそういうのあまり興味ないでしょ?」

「そんなことはないぞ」

「清隆は意外とえっちだもんね」

 

 意外か? 結構オープンにしているつもりだが。

 

「そうだ。話は少し変わるんだけど、疑問に思ってることがあるから相談に乗ってくれない?」

「別にいいぞ」

「ほら、最初に四つのクラスに分けられたじゃない? あれって本当に実力順なのかな?」

「正確には完全な実力順じゃないだろうな。試験の結果の他に、運動能力やコミュニケーション能力なんかも加えて、将来性を踏まえつつ総合力で順位付けしていると見ている」

 

 正確には過去に問題を起こしている場合もマイナス査定になるが、それは原作知識でしか知りようのないことだ。

 

「な、なんか、やけに詳しいね」

「五月にこの学校のシステムが開示された時、うちの担任が意味深なことを言っていたんだよ。勉強ができるだけでは優秀とは言えない。運動能力やコミュニケーション能力は足りているか? とな」

「成程ね。正直、勉強は出来るけど、運動が苦手。運動は出来るけど、勉強は苦手みたいな感じで、総合力の判断だと下位クラスは不利になるんじゃないかと思ってたんだけど、他にも評価ポイントがあるなら納得できるね……」

「勉強も運動も出来ても、コミュニケーション能力なんかが欠落している生徒もいるもんね。他人と関わりたくないーって人とか」

「そういう場合も査定が下がるから一概に下のクラスが不利とは言えない。現に堀北なんか、能力だけならAクラスだが、あの性格でDに居るんだ。他にもそういう生徒は多いだろう」

 

 と、話したが、この一之瀬は堀北の事を知らなかったんだった。「そういう子もいるんだね」と頷いている。

 

 とはいえ、上位クラスに優秀な生徒が多いのは事実だ。そうでなければ、五月の結果で、毎年A~Dが奇麗に並ぶことなどないだろう。

 

「私はね。現段階でAからDまでのクラスに差があるのは事実だけど、それは些細なことで埋まって行くんじゃないかと思ってるの。それこそ、綾小路くんが言った将来性とかね」

「そうだな。人間は成長する生き物だ。最初の結果で全てが決まるとは限らない」

「現に、Dクラスのポイントは七月前よりも確実に上のクラスに詰め寄っているもんね」

「ふふっ、二人に聞いて貰ってよかった。ちょっと安心したよ。同じ考えを持ってる人はいるんだって」

「クラスは別だけどな」

「今は協力関係なんだから問題なし! それにやっぱり人と意見を交換すると得るものが多いし、話をしたから出てくる情報もあるだろうしね――」

 

 と、言った所で、一之瀬の動きが止まった。どうやら、原作でもあった告白イベントのことを思い出したらしく、何か縋るようにオレに真剣なまなざしを向けてくる。

 

「あ、あのさ、いきなりでその、あれなんだけど、Dクラスでもモテるって噂のある参謀の綾小路くんに聞きたいことがあって――」

「別にモテないが……なんだ?」

「綾小路くんって、女の子に告白されたことある?」

「ないな」

「じゃあ、自分から?」

「いや、そもそも恋人がいたことがない。オレは今もフリーだ」

「えっ!? 椿さんと付き合ってるんじゃないの?」

「雪は大切な――幼馴染だ」

 

 大切な駒と言いかけたので修正をかける。

 

 実際、雪は、オレが雪を始め、セフレたちに愛情を持っていないことは知っているので、「残念ながら、ただの幼馴染だよ」と苦笑いしていた。雪にしてみれば恋人に間違われるのは嬉しいが否定するのが辛いのだろう。

 

 だが、仕方ない。

 

 オレに、愛情なんてモノは存在しなかった。

 

 あるのは、俺がくれた身を焦がすような情欲だ。

 

「そ、そっか。ごめんね。変なこと聞いちゃって……」

「その様子だと、誰かに告白でもされたのか?」

「え? あーうん、そんな感じ」

 

 実際はラブレターで、差出人が女子なのは原作知識で知っているが、まるで何も知らないフリをする。

 

「でも、綾小路くんに恋人がいないなら丁度いいかも……あのさ、良かったら今日の放課後、少しだけ時間貰えないかな? 告白のことでちょっと問題を抱えててね」

「別に大丈夫だ。Bクラスには借りもあるしな」

「椿さんもいいかな? 綾小路くん借りちゃって」

「いいよ。今回だけ、特別に貸してあげる。でも、ちゃんと返してね」

 

 と、いうことで、オレは別に雪の所有物じゃないのだが、貸し出しが決まってしまった。詳しい話は放課後ということで、放課後に再び玄関で集合の約束をする。はてさて、どうなることやら――

 

 

 

◇◆

 

 

 

 改めて放課後に玄関へ行くと、大勢の生徒に囲まれている一之瀬を見つけた。とてもではないが、こちらから話しかけられる雰囲気ではないので尻込みしていると、オレに気づいた一之瀬に体育館裏へと連れていかれる。同時に、真剣な顔で一之瀬がこちらに振り返った。

 

「私、ここで告白されるみたいなの」

「まぁ、ベタな場所ではあるな」

 

 一之瀬が手紙をこちらに渡してくる。ハートマークのシールが貼られたとても男子からとは思えない可愛らしいラブレターだ。中身を見て良いとのことだが、流石に他人のラブレターを見るのは失礼なので、「大体、予想が付く」と言って遠慮する。

 

「それで? 相手が女子なのは驚いたが、オレにどうしろと?」

「実は私、恥ずかしいことに恋愛には疎くって……どうしたら相手を傷つけずに済むのか。仲のいい友達でいられるかが分からないから……それで助けて欲しかったの」

「同じクラスの友達に相談しなかった所を見ると、相手はBクラスの生徒か?」

「うん。それで、今日のことはできる限り秘密にしたいの。そうじゃないとこれからも気まずくなりそうだし。綾小路くんなら、誰かに言いふらしたりもしなそうだから」

「一之瀬が恋愛に疎いのは意外だな」

「えっ!? そんなことないよ! 私、告白なんてされたことないもん……だからもう、ほんとどうして、って感じ」

 

 その様子から、一之瀬が本当に困っているのが伝わってきた。これだけ可愛ければ、告白など山のように来てもおかしくないと思うのだが――

 

「だから……彼氏のフリ、してもらってもいいかな?」

「構わないぞ」

 

 と、いうことで、一之瀬の彼氏のフリを頼まれたので即OKした。原作のオレは良くないことだと拒否していたが、別に一之瀬にそこまで世話を焼いてやる義理もない。

 

 むしろ、これを利用して、彼氏のフリをしていたけど、そのまま本当に食べちゃった大作戦を決行しよう。

 

 そんなこんなで、一之瀬にはオレという恋人がいるので付き合えないと、告白してきた白波という女子生徒に伝えた――が、今まで一緒に過ごしていなかったことや、別のクラスの男子といきなり付き合うのはおかしいと言って、白波もなかなか認めようとしてこない。

 

 仕方がないので、白波の前で一之瀬の唇を奪ってやると、ショックのあまり何も言えなくなっていた。

 

 まぁ、何も言えなくなっていたのは、いきなりキスされた一之瀬も同様のようだが、ここで突き飛ばしてしまえば彼氏のフリなど出来ないのはわかっているようで、真っ赤になってされるがままになっている。

 

 丁度いいので、舌を入れて一之瀬を味わう。

 

 鍛え上げてきたオレの舌テクで一之瀬の口の中を犯していく。逃げる舌を追って無理矢理絡ませると、段々足に力が入らなくなってきたのか、オレに身を預けるように倒れてきた。

 

 流石にそこまで見せられたら信じない訳にはいかないようで、白波は涙を流しながらこの場を立ち去っていく。

 

 一之瀬の方を見ると、真っ赤になって腰砕けになっているが、内股に液体のようなものが垂れているのを見ると、どうやら悪い気分ではなかったらしい。

 

「はぁ、はぁ……ご、ごめんね。綾小路くん、ちょっと立てなくて」

「いや、オレも白波を信じさせるためにちょっと本気を出した。そうなっても仕方ない」

 

 キスをしたこと自体は謝らなかった。悪いことはしていないし、一之瀬も恥ずかしいとは思っていても、それが必要だったことは理解しているだろう。

 

「千尋ちゃんには悪いことしちゃったかな……」

「告白を断る以上、大なり小なり傷つけることにはなる。これは仕方のないことだ」

「そ、そうだね……でも、いきなりキスされるとは思わなかったよ。凄いテクニックだったし……」

 

 先程のキスを思い出しているのか、一之瀬がトロンとした表情を浮かべている。

 

「勉強したからな。雪もキスは好きだし」

「つ、椿さんとは付き合ってないんじゃないの!?」

「雪はセフレだ」

「セフッ!?」

「他にもいるぞ。昨日会った佐倉や、櫛田なんかもそうだな。内緒だが」

「く、櫛田さんまで!?」

 

 一応、外なので「内緒だぞ」と念押ししておいた。

 

「そ、そういう関係って良くないと思うんだけど……?」

「そうか? これが本人たちにも内緒にしているなら問題かもしれないが、全員オレのセフレであることを了承してくれているし、他にセフレがいることも知っている。なら、別に責められることではないだろう。それにオレがフリーだからこそ、一之瀬も恋人役を頼めたわけだしな」

「それはそうだけど……」

 

 それでも、納得のいかなそうな顔をしていたので、一之瀬のスカートに手を突っ込んで無理矢理黙らせてやる。

 

「あっ、ちょっ、ちょっと、綾小路くん……っ」

「びしょ濡れだな。お前も興味がない訳じゃなさそうだ」

「そ、それは――」

「丁度いい。今回の礼が欲しいんだが、嫌なら首を横に振ってくれ」

 

 一之瀬も馬鹿ではないので、こちらが何を求めているかはわかっただろう。とはいえ、無理強いはしないつもりなので、嫌なら反らせと言って顔を近づけていく。

 

 突然の行動に、一之瀬は「そんな、駄目だよ……」と、小さく否定の声を上げたが、首は横に振らなかった。一度唇を許したことでタガが外れ、場の雰囲気に呑まれてしまっているのだろう。

 

 再び、一之瀬の口の中を侵略していく。

 

 スカートの中に入れていた手は何もしなくても湿り気を増し、一之瀬の体が跳ねるように震える。正直、今回で食べる所まで行くとは思わなかったが、この世界の巨乳女子は意外とむっつりで押しに弱い性格をしているらしい。

 

 完全に立てなくなってしまった一之瀬を抱いて寮まで戻る。丁度、微妙な時間だったおかげで、あまり人に見つかるようなことはなかった。

 

 そのまま、一之瀬を部屋にお持ち帰りする。

 

 流石に少し間が空いて、本番はまずいと思ったのか、「あのね、綾小路くん、やっぱり――」と、一之瀬が言い訳をしようとしていたので、再三その口を塞いでやった。

 

 それだけでまたすぐにトロンとした目になり、オレのことを拒否できなくなる。勿論、同意を取らないとまずい。最後に、「いいな?」と確認を取ると、顔を赤くしながら黙って頷いた。

 

 

 




 原作との変化点。

・朝、3人で登校した。
 原作だと一之瀬と二人きりだが、この世界では雪も一緒。3人で夏休みの話や、学校の振り分けについて語った。

・一之瀬の恋人のフリを引き受けた。
 原作では良くないことだと拒絶しているが、この世界では当たり前のように受け入れている。親しくもない男子に恋人のフリを頼むなど、私を食べてと言っているようなものと清隆は判断した。

・白波を撃退した。
 百聞は一見ということで、キスを見せて黙らせた。後日、一之瀬が正式に謝罪している。

・一之瀬を食べた。
 原作だと南雲との関係など、意外と貞操概念が固いイメージがあるが、一度内側に潜り込んでしまえばガードは甘々だった。キスを許したのが全ての失敗。その後も、仮とはいえ恋人関係なのでずるずる関係を継続している。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 想像よりも一之瀬がチョロくて驚いた。他のセフレと違って、弱みや信頼で繋がらず、なぁなぁの関係を続けている。

・椿雪
 一之瀬が食べられることを察した。そのためのちゃんと返してねだったが、当然ながら約束は守られなかった。

・一之瀬帆波
 性知識はあまりないし興味もなかったが、体は感じやすいタイプでキスだけで洪水状態だった。当然、本番になればもっと酷くなり、ベッドが使い物にならなくなっている。清隆はおねしょシーツを買うことを検討中。

・白波千尋
 一之瀬攻略のための当て馬にされた。清隆も俺小路くんもレズに興味がないので、白波は守備範囲外となっている。機会があれば、食べることもあるかもね?


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